第1夜~第7夜
少女の案内の元、やってきたのはたくさんのベットがある病室だ。
だが、部屋へ入る寸前で大声で嘆き声が聞こえる。
「五回!?五回も飲むの?一日に!?三か月間飲み続けるのこの薬!?これ飲んだら飯食えないよ。すげぇ苦いんだけどつらいんだけど、薬飲むだけで俺の腕と足治るわけ!?ほんと!?」
「静かにしてください~~」
「もっと説明して誰か。一回でも飲み損ねたらどうなるの!?ねぇ!!」
「また騒いでるのあの人・・・」
ベットの上で大声で泣き喚く黄色い髪の少年と困った様子でおどおどとしている少女。
そんな2人のやり取りの中、部屋へ足を踏み入れた炭治郎たちを連れてきた少女は泣き喚く少年に気づきベットに駆け足で近づいていく。
少女がベットへ向かっている中、穏の背中で炭治郎は仲間の無事といろんなものがこみ上げてきた。
「静かになさってください!!説明は何度もしましたでしょう!いい加減にしないと縛りますからね!!」
黄色い髪の少年に向かって仁王立ちで何度も説明したはずです!と怒った様子で言うと黄色い髪の少年は布団を頭まで被って震えると、少女たちはもうここには用がないとばかりに他のベットの方へ向かう。
少女たちがいなくなると、穏の人にベットまで近づいてもらうと炭治郎は布団を被った少年に大声で呼びかける。
「善逸!!」
「ギャーッ」
「大丈夫か!?怪我したのか!?山に入ってくれたんだな・・・!!」
「た、炭治郎・・・」
炭治郎に名を呼ばれ、黄色い髪の少年――善逸は涙でぐちゃぐちゃになった顔で見知った顔を見つけ、穏の人に縋りつく。
「うわぁあ。炭治郎聞いてくれよ――っ!くさい蜘蛛に刺されるし、毒ですごい痛かったんだよ――っ!さっきからあの女の子にガミガミ怒られるし最悪だよ――っ!!」
善逸が叫んだ途端、先ほどまで善逸に怒っていた少女が振り返り睨みつけると善逸はビクッと全身を跳ねさせ、またしても穏の腰に縋りつく。
そんな善逸に炭治郎は先ほどから気になることを善逸に聞いてみる。
「伊之助は?村田さんは見なかったか?」
「ちょっと離れろよ・・・俺関係ない・・・」
「村田って人は知らんけど伊之助なら隣にいるよ」
穏の人に縋りついたまま顔を上げた善逸と穏の隊服の間に鼻水が付く。その様を間近で見た穏の人は嫌な顔をする。
善逸は炭治郎の質問に隣のベットを振り向き、視線で知らせるかのようだ。ただ、隣にいるにも関わらず、全く気づかなかった理由は言わずもがな、おとなしすぎる伊之助にあるだろう。
「あっ、ほんとだっ。思いっきりいた!!気づかなかった!」
炭治郎は穏の背から善逸のベットに滑り落ちるように移ると、一歩這いずるように伊之助に近づく。
「伊之助!!無事でよかった・・・!!ごめんな助けに行けなくて・・・!!」
「・・・イイヨ。気ニシナイデ」
必死に声をかけていた炭治郎は伊之助の声と音量に唖然とした。
目の前にいる伊之助は自分が知る伊之助なのか、と。
そんな炭治郎に善逸が事実を伝える。
「なんか喉が潰れてるらしいよ」
「え――っ!?」
「詳しいことよくわかんないけど首をこうガッとやられたらしくて。そんで最後自分で大声出したのが止めだったみたいで喉がえらいことに」
「自分で止め?」
「落ち込んでるんのか、すごい丸くなっててめちゃくちゃ面白いんだよな」
一目見ても様子のおかしい伊之助と那田蜘蛛山に行く前の伊之助を思い返しているのか善逸は特徴的な笑い方をする。そんな善逸に炭治郎はどうして気持ち悪い笑い方をするのかと直接声をかけていると、それまで空気を読んで――いや、言葉を挟むことができず、自分のポケモンたちと戯れていたサトシが炭治郎に声をかける。
「なぁ」
「ん?なんだ?サトシ」
「この・・・イノムーみたい?な被り物したやつ」
「・・・?イノムー?」
「・・・この人、声が枯れてるのか?」
「まぁ、そうだな」
「だったら・・・」
サトシは背負っているリュックを下ろすと中を漁り、一つの果物を取り出し伊之助のところまで近づいていく。
「こんにちは。えっと・・・」
「ダレ?」
「オレはサトシっていうんだ」
「オレニカマワナイデ」
「これ、食ってみろよ!」
サトシは二カッと笑いながら果物を差し出す。だが、伊之助は構わないでと言うと、サトシに背を向ける。
そんな様子に一番切れそうになっているものが一人――いや、正確には一匹。
「ピィカ?ピカ(なに腐ってんだ?イノムー野郎)」
「へ?あの・・・ピカチュウさん?」
「ピ?ピカピ!(なに?サトシ!)」
ぼそりと吐き捨てるように呟いたピカチュウと、ピカチュウの言っている言葉が分かるサトシは口元を引き付けながら声をかけるが、ピカチュウは先ほどの黒い発言が無かったかのように可愛らしい鳴き声と表情をサトシに向ける。
一方、匂いを嗅ぎ取ることのできる炭治郎は可愛らしい様子のピカチュウと内側から漂う黒い匂いに訝し気になる。また、人一倍音に敏感な善逸はというと見知らぬ人と生き物に誰?この子達誰!?と騒ぎ立てる前に黄色い悪魔、基、生き物の音からビクゥと身体を震わせた。
「こわっ何この生き物!?めっちゃ怖いんですけど――っ!ちょぉっと炭治郎この生き物何――っ!?」
善逸の叫びにピカチュウはゆらりと一歩踏み出すと、ぴょんとひとっ飛びすると黒い笑みを浮かべ善逸に向けて赤い頬袋からパチパチッと放電を見せた。
「ピィカ」
サトシに聞こえないようドスのきいた声を出す生き物に善逸は気絶する一歩手前。
「ピカチュウ?だめだぞ」
「チャァ」
サトシの一声でピカチュウはくるっと可愛らしい顔をサトシに向けた。一瞬で黙ることになった善逸を離れた位置から見てた、ここまで運んだ少女は感心しているようだ。
そして、サトシは伊之助に向き直り――
「これさ。オレの友達――っていっても困ったやつではあるけど。そいつが食べたら声を出せたんだ。だから食べてみてよ」
サトシの脳裏には、初めての旅から度々登場する、油性ペンをマイクに見立て【うたう】を使うピンク色のボディを思い浮かべた。
「イラナイ」
「しょうがないなぁ」
背を向け続ける伊之助にため息を一つ吐くとサトシはガシッと肩を掴むと振り向かせ、猪の被り物に手をかけ、スポっと剝ぎ取り口を乱暴に開けると果物を齧りつかせる。
シャキッと果物に齧りつく音が響いた後、驚くべきことが起こった。
「なんだ?この味・・・」
「!」
伊之助の発した言葉を聞いたその場にいた人は驚愕した。
つい先ほどまで擦れた声を出していた人物の声が、張りを取り戻しているからだ。特に炭治郎と善逸は元の声に戻っていたので、驚いたってものではなかった。
そして、またこの人たちも信じられないとばかりに目を見張り、慌てて伊之助の方へ駆けつける少女たち。
「今、何をされたんですか!?」
「え?」
ここまで連れてきた少女が何が起こったのかとサトシに詰め寄った。
「この実を食べさせただけ――・・・」
「これは何ですか!?」
「ええ?えっと・・・水分が多い果物・・・です」
随分前にタケシが声が出せなくなったプリンのためにといって、いろんな果物を試していたことを思い出すが、これは何ていう果物だったか思い出せない。が、水分を多く含んだ果物は喉にいいと言っていたことを思い出し思わず呟いた言葉だが――
目の前にいる少年が全く異なる世界からやってきたとは思わない少女は混乱の渦に飲み込まれていた。
それは、蝶柱のしのぶが柱合会議を終え戻ってくるまで続くのであった―――。
つづく
だが、部屋へ入る寸前で大声で嘆き声が聞こえる。
「五回!?五回も飲むの?一日に!?三か月間飲み続けるのこの薬!?これ飲んだら飯食えないよ。すげぇ苦いんだけどつらいんだけど、薬飲むだけで俺の腕と足治るわけ!?ほんと!?」
「静かにしてください~~」
「もっと説明して誰か。一回でも飲み損ねたらどうなるの!?ねぇ!!」
「また騒いでるのあの人・・・」
ベットの上で大声で泣き喚く黄色い髪の少年と困った様子でおどおどとしている少女。
そんな2人のやり取りの中、部屋へ足を踏み入れた炭治郎たちを連れてきた少女は泣き喚く少年に気づきベットに駆け足で近づいていく。
少女がベットへ向かっている中、穏の背中で炭治郎は仲間の無事といろんなものがこみ上げてきた。
「静かになさってください!!説明は何度もしましたでしょう!いい加減にしないと縛りますからね!!」
黄色い髪の少年に向かって仁王立ちで何度も説明したはずです!と怒った様子で言うと黄色い髪の少年は布団を頭まで被って震えると、少女たちはもうここには用がないとばかりに他のベットの方へ向かう。
少女たちがいなくなると、穏の人にベットまで近づいてもらうと炭治郎は布団を被った少年に大声で呼びかける。
「善逸!!」
「ギャーッ」
「大丈夫か!?怪我したのか!?山に入ってくれたんだな・・・!!」
「た、炭治郎・・・」
炭治郎に名を呼ばれ、黄色い髪の少年――善逸は涙でぐちゃぐちゃになった顔で見知った顔を見つけ、穏の人に縋りつく。
「うわぁあ。炭治郎聞いてくれよ――っ!くさい蜘蛛に刺されるし、毒ですごい痛かったんだよ――っ!さっきからあの女の子にガミガミ怒られるし最悪だよ――っ!!」
善逸が叫んだ途端、先ほどまで善逸に怒っていた少女が振り返り睨みつけると善逸はビクッと全身を跳ねさせ、またしても穏の腰に縋りつく。
そんな善逸に炭治郎は先ほどから気になることを善逸に聞いてみる。
「伊之助は?村田さんは見なかったか?」
「ちょっと離れろよ・・・俺関係ない・・・」
「村田って人は知らんけど伊之助なら隣にいるよ」
穏の人に縋りついたまま顔を上げた善逸と穏の隊服の間に鼻水が付く。その様を間近で見た穏の人は嫌な顔をする。
善逸は炭治郎の質問に隣のベットを振り向き、視線で知らせるかのようだ。ただ、隣にいるにも関わらず、全く気づかなかった理由は言わずもがな、おとなしすぎる伊之助にあるだろう。
「あっ、ほんとだっ。思いっきりいた!!気づかなかった!」
炭治郎は穏の背から善逸のベットに滑り落ちるように移ると、一歩這いずるように伊之助に近づく。
「伊之助!!無事でよかった・・・!!ごめんな助けに行けなくて・・・!!」
「・・・イイヨ。気ニシナイデ」
必死に声をかけていた炭治郎は伊之助の声と音量に唖然とした。
目の前にいる伊之助は自分が知る伊之助なのか、と。
そんな炭治郎に善逸が事実を伝える。
「なんか喉が潰れてるらしいよ」
「え――っ!?」
「詳しいことよくわかんないけど首をこうガッとやられたらしくて。そんで最後自分で大声出したのが止めだったみたいで喉がえらいことに」
「自分で止め?」
「落ち込んでるんのか、すごい丸くなっててめちゃくちゃ面白いんだよな」
一目見ても様子のおかしい伊之助と那田蜘蛛山に行く前の伊之助を思い返しているのか善逸は特徴的な笑い方をする。そんな善逸に炭治郎はどうして気持ち悪い笑い方をするのかと直接声をかけていると、それまで空気を読んで――いや、言葉を挟むことができず、自分のポケモンたちと戯れていたサトシが炭治郎に声をかける。
「なぁ」
「ん?なんだ?サトシ」
「この・・・イノムーみたい?な被り物したやつ」
「・・・?イノムー?」
「・・・この人、声が枯れてるのか?」
「まぁ、そうだな」
「だったら・・・」
サトシは背負っているリュックを下ろすと中を漁り、一つの果物を取り出し伊之助のところまで近づいていく。
「こんにちは。えっと・・・」
「ダレ?」
「オレはサトシっていうんだ」
「オレニカマワナイデ」
「これ、食ってみろよ!」
サトシは二カッと笑いながら果物を差し出す。だが、伊之助は構わないでと言うと、サトシに背を向ける。
そんな様子に一番切れそうになっているものが一人――いや、正確には一匹。
「ピィカ?ピカ(なに腐ってんだ?イノムー野郎)」
「へ?あの・・・ピカチュウさん?」
「ピ?ピカピ!(なに?サトシ!)」
ぼそりと吐き捨てるように呟いたピカチュウと、ピカチュウの言っている言葉が分かるサトシは口元を引き付けながら声をかけるが、ピカチュウは先ほどの黒い発言が無かったかのように可愛らしい鳴き声と表情をサトシに向ける。
一方、匂いを嗅ぎ取ることのできる炭治郎は可愛らしい様子のピカチュウと内側から漂う黒い匂いに訝し気になる。また、人一倍音に敏感な善逸はというと見知らぬ人と生き物に誰?この子達誰!?と騒ぎ立てる前に黄色い悪魔、基、生き物の音からビクゥと身体を震わせた。
「こわっ何この生き物!?めっちゃ怖いんですけど――っ!ちょぉっと炭治郎この生き物何――っ!?」
善逸の叫びにピカチュウはゆらりと一歩踏み出すと、ぴょんとひとっ飛びすると黒い笑みを浮かべ善逸に向けて赤い頬袋からパチパチッと放電を見せた。
「ピィカ」
サトシに聞こえないようドスのきいた声を出す生き物に善逸は気絶する一歩手前。
「ピカチュウ?だめだぞ」
「チャァ」
サトシの一声でピカチュウはくるっと可愛らしい顔をサトシに向けた。一瞬で黙ることになった善逸を離れた位置から見てた、ここまで運んだ少女は感心しているようだ。
そして、サトシは伊之助に向き直り――
「これさ。オレの友達――っていっても困ったやつではあるけど。そいつが食べたら声を出せたんだ。だから食べてみてよ」
サトシの脳裏には、初めての旅から度々登場する、油性ペンをマイクに見立て【うたう】を使うピンク色のボディを思い浮かべた。
「イラナイ」
「しょうがないなぁ」
背を向け続ける伊之助にため息を一つ吐くとサトシはガシッと肩を掴むと振り向かせ、猪の被り物に手をかけ、スポっと剝ぎ取り口を乱暴に開けると果物を齧りつかせる。
シャキッと果物に齧りつく音が響いた後、驚くべきことが起こった。
「なんだ?この味・・・」
「!」
伊之助の発した言葉を聞いたその場にいた人は驚愕した。
つい先ほどまで擦れた声を出していた人物の声が、張りを取り戻しているからだ。特に炭治郎と善逸は元の声に戻っていたので、驚いたってものではなかった。
そして、またこの人たちも信じられないとばかりに目を見張り、慌てて伊之助の方へ駆けつける少女たち。
「今、何をされたんですか!?」
「え?」
ここまで連れてきた少女が何が起こったのかとサトシに詰め寄った。
「この実を食べさせただけ――・・・」
「これは何ですか!?」
「ええ?えっと・・・水分が多い果物・・・です」
随分前にタケシが声が出せなくなったプリンのためにといって、いろんな果物を試していたことを思い出すが、これは何ていう果物だったか思い出せない。が、水分を多く含んだ果物は喉にいいと言っていたことを思い出し思わず呟いた言葉だが――
目の前にいる少年が全く異なる世界からやってきたとは思わない少女は混乱の渦に飲み込まれていた。
それは、蝶柱のしのぶが柱合会議を終え戻ってくるまで続くのであった―――。
つづく
