第一章
夢小説設定
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「えりなと当真くんって付き合ってるの?」
「はぁ?」
昼ご飯を食べながら唐突にそう聞いてきたのは、クラスメイトで仲の良い女の子のさっちゃんだった。いつも昼食中の女子会には恋バナ大会がよく開催されている。だが私は特にそうゆう経験もないし、今までは皆の話を聞いているだけだった。だからストレートに話をふられて驚いたし、当真の名前が出てさらに驚いた。
「なんで当真?」
「えー、だってよくこっちのクラスまで遊びに来てるし、いっつも一緒に帰ってるし、めっちゃ仲良くていい雰囲気じゃん」
「まぁ仲は良いけど…普通に友達やからそんなん考えたことないなぁ」
よくうちのクラスに来るのは教科書忘れたとか傘忘れたとかそんなよくあるやり取りをしてるだけだ。一緒に帰るのは目的地が本部で同じだから必然的にそうなるだけ。仲が良いのは認めるけど、恋人とかそうゆう感じではない。というか、まだ出会って二ヶ月少々の間柄の相手に恋愛的な想いを抱くのは早すぎると私は思っている。…まぁ、不覚にもときめいてしまったことはあるが。
「…あの、えりなちゃん」
「どしたん?」
「えっと…言うか言わないかすごく迷ったんだけど…」
すごく話しづらそうな雰囲気でもう一人の仲の良い友達、みっちゃんが口を開いた。口の端にお米かケチャップでも付いちゃってるとかいうオチかな。なんて気の抜けたことを考えていたが、みっちゃんが話し始めたのは、私には理解不能な話だった。
「…噂でね、えりなちゃんが男の子達を取っ替え引っ替えしてるって、たまたま聞いちゃって」
「?…?……???」
「あ、こいつキャパオーバーしてる」
「ご、ごめんね!?でも、一応言っといた方が良いかなって…!」
「えっ、いや、あの…ちょっと待って???ん???」
私が男を取っ替え引っ替えしてる、なんて、どこをどう見ればそんな風に見えるんだろう。確かに、ボーダーの人達とはよく話すし、とりわけ関わることが多いのは戦闘員でありその多くが男子なのだから、必然的に男友達は増えた。けれど、皆ただの友達だし、そんな少女漫画のような甘い雰囲気には一切なってない。
「誰がそんなアホみたいなことを…」
「誰かまでは分からないけど…なんでだろうね…」
「言わせとけばいいんじゃない?」
「うーん、面倒やし放っとくわ〜みっちゃんありがとうなぁ」
特に被害があるわけではないし、そんな根も葉もない噂話なんて早々に消えるだろう。そんな呑気な考えで、その話は終了した。
それからはいつも通り、新しく美味しそうなケーキ屋さんが出来たから今度行こうだとか、昨日やってた番組が面白かっただとか、特に変わり映えのしない普通の話をして楽しく昼休みは終わっていった。
■□■□■
狙撃手は毎週A級〜C級全員参加の合同訓練がある。その訓練で上位15%以上を三週間キープすることができれば、晴れてC級からB級へと昇格できるわけだ。
そして、ついに今日。
「やったー!!」
「ま、こんなもんだろ」
私と当真はB級へと昇格することができた。順位は当真に勝てなかったものの、脱C級は素直に嬉しい。喜びを隠さず、余裕そうだが心なしか嬉しそうな顔の当真とハイタッチをした。
「二人共お疲れ様」
「あ!東さん!」
「よく頑張ったな」
「へへ〜東さんのおかげです」
合同訓練に参加していた東さんがわざわざ私達の所まで来てくれた。大好きな東さんに褒めてもらえて、思わず表情筋がゆるゆるになってしまう。今まで頑張ってきて良かった。
「今度飯でも行こう。お祝いに奢るよ」
「お、まじすか」
「わーい!」
東さんとご飯というだけでも嬉しいのに、その上東さんの奢り。当真と顔を見合わせ、やったねという思いを込めてブイサインをする。当真もニヤニヤという効果音がついてそうな顔でブイサインを返してくれた。
「じゃあ今日は二人でお祝いにどっか食べに行く?」
「いいぜ〜」
東さんと別れ、訓練室を後にしながら今日の予定を考える。やっぱりおめでたい日にはその日の内にお祝いがしたい。お祝いをするならば一人より二人でやりたい。となれば必然的に二人でご飯というのが最適だろう。
「あれ?迅さん?」
どこへ行こうかと二人で話し合っていると、前方から見知った人が歩いてきた。暇そうで忙しそうな実力派エリートさんだ。
「よぉ、お二人さん。B級昇格おめでとう!よく頑張ったな」
「えへへ〜どうもどうも」
視えていたのか、誰かから聞いたのか。きっと前者ではあるがお祝いの言葉は素直に受け取っておく。やっぱり人から頑張りを認めてもらえると嬉しいものだ。
「はい、俺からのお祝いの印」
「あざ〜っす…って、やっぱぼんち揚げかよ」
「ほんま好きやなぁ、迅さん」
迅さんから差し出されたのは、もうお決まり化しているぼんち揚げだ。お祝いの品でぼんち揚げ、という流れが入隊日と重なって思わず笑ってしまう。
「あ、そうそう…西宮ちゃん」
「はい?」
名前を呼ばれ手招きをされる。何の用だろうと思いながら近付くと、迅さんは私の耳元に顔を寄せた。至近距離で聞こえる声は何となくこそばゆい。
「困った事があったら、玉狛支部においで」
「えっ?」
「じゃ、オレはこの辺で!じゃーなー」
「ちょ、迅さん!」
今のはどうゆう意味、と聞く暇もなく迅さんは行ってしまった。迅さんのことだから何か意味のある助言だとは思う。そうだとすると、私にはこれから困るような出来事が起こることになる。なんとも気の重い話だ。
「何言われたんだ?」
「困ったらおいで〜って」
「なんじゃそりゃ」
「まぁええわ。それよりラーメン!ラーメン食べに行こ!」
「へーへー、分かった分かった」
満更でもなさそうな当真の手を引き、行きつけのラーメン店へと歩を進める。二人仲良くラーメンを啜り、仲良く味の違うラーメンを一口ずつ分け合う。帰りにコンビニで大好きなプリンを買い、だらだらと取り留めもないことを話しながら並んで歩く。こんな平穏な日がずっと続けばいいと思った。
しかし、玉狛支部へと足を運ぶことになるのに、そう時間はかからなかった。