第一章
夢小説設定
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B級に上がった俺とえりなは、ボーダーの仕事の一つである防衛任務があった。 学校が休みである日曜日の今日も、朝から俺達とB級数名を合わせた混合部隊で任務がある。だがその日の任務中、えりなの姿はなかった。この前の事で気まずかったとはいえ、任務に来ないのはおかしい。あいつは面倒くさがりでビビリだが、連絡もなしにサボるなんて事はしない奴だ。
俺、やっぱ嫌われたか?
「おい当真、西宮は?」
休憩時間の間、本部をブラついているとカゲから話しかけられた。えりなを探してると言ったカゲの手には、漫画が数冊入った紙袋が握られていた。
「今日はまだ会ってねぇよ」
「チッ…あいつ、任務サボりやがったな…」
「用事はそれか?」
紙袋を指差すと、眉間に皺を寄せたまま頷かれた。前にえりなから借りていた物らしい。任務には来ると思って持ってきたが、誤算だったようだ。
「お前持ってけ」
「はぁ?なんで俺が…」
「いいから持ってけ。こうでもしねぇと会わねぇだろ」
確かに、俺からはもう会わないようにしようかと思っていたところだ。見透かされたカゲの言葉に、少し居たたまれなくなる。
カゲは存外、人の事をよく見ている。サイドエフェクトの所為か、持ち前の勘か。えりなの様子がおかしくなった時も真っ先に俺へと連絡が来た。
結局カゲから漫画を預かり、俺はまた本部をぶらぶら歩き回った。えりなが居れば退屈しのぎになるが、一人だとやることがなくて暇だった。
「当真、西宮知らねぇか?」
その言葉を、本部を歩いている間に何度も聞いた。なんで皆俺とあいつをセット扱いしてるんだ。確かに一緒にいることは多かったけど。
「お前も探してんのかよ…大人気だなあいつ」
「なんだ、俺以外も探してたのか」
えりなを探していた何人目かの隊員、荒船は、苦笑いを浮かべた。俺は声を掛けてきたやつらを思い出しながら、指を折って数える。
「お前とカゲ、ゾエ、東さん、穂刈、国近…あぁ、後は諏訪さん」
「ほんとに大人気だな…まぁ俺のは急用じゃねぇから、直接会った時伝える」
はやく仲直りしろよ、と去り際に言い残し、荒船は去って行った。仲直りなんて、できてればとっくにやってる。どうしたもんかと頭を悩ませていると、後ろからやけに焦った声が聞こえた。
「当真!!」
「迅さん…あんたもえりなに用事?」
「今すぐ西宮ちゃんの家に行け!!」
「は?」
切羽詰まったような迅さんの顔は、初めて見た気がする。その言葉と勢いに、俺は最悪の事態を想像した。
「西宮ちゃんが危ない!!これは、一番悪いルートに近い未来だ!!」
気付いた時には紙袋を迅さんに押し付け、えりなの家の方へ走っていた。急がないと、もう一生会えないような、そんな気がした。
「えりな…!!」
□■□■□
「う、うわぁ……何これ……」
当真とひと悶着あった次の日、郵便受けに入っていたのは差出人不明のいつもの手紙。その中には毎度毎度、ご丁寧に私の隠し撮り写真が入っているのだが、今回はそれに加えて手紙のボリュームがすごかった。誰が得するんだよっていう私の写真だけでもストレスだというのに、手紙の内容もまたドギツい。
「……今日外出るのやめよ」
『俺と一緒に二人きりで、誰にも邪魔されずに暮らそう』という文字を見た瞬間、外出する活力が一気になくなった。今日は食料調達しようと思っていたのに、今外を一人で歩かない方がいいと私のサイドエフェクトが言っている。サイドエフェクトなんかないけど。
「…ゲームしてれば空腹もなくなるよな?」
うん、一日くらい何も食べなくても死にはしないでしょ。水分とってれば一週間は生きられるって聞いたことあるし。
そんな軽い思いで、私はゲームに没頭した。時間も忘れ、その日はひたすらゲーム、ゲーム、ゲーム。ストーカーのことも、当真達とのいざこざも、何もかも忘れたかったんだと思う。
気付けば水も何も口にせず、徹夜でゲームをしていた。外は明るくなり、小鳥の鳴く声が聞こえている。そろそろ防衛任務に行く支度をしないと、と立ち上がった瞬間だ。ガチャリと聞こえるはずのない音が聞こえた。この家の鍵は、私しか持ってないはずなのに。
「へへっ…遅くなってごめんねぇ…」
ごめん当真、防衛任務行けそうにないわ。
□■□■□
彼女と出会ったのは、彼女が三門市に来てすぐの頃だ。コンビニの前で焼き鳥を美味しそうに頬張る姿に一目惚れした。直感したのだ、彼女こそ僕の運命の人だと。それからは彼女の事を知りたくて全て調べ尽くし、写真を撮って、ラブレターを毎日毎日送った。いつもはあの不良が邪魔で会えなかったけど…
これからは二人きりで過ごせると思うと嬉しくて、新居の準備に時間をかけすぎてしまった。おかげで彼女のことをすっかり待たせちゃったけど、優しい彼女はきっと許してくれるだろう。
彼女と会う為に作った合鍵を取り出し、ドアをゆっくり開けた。彼女はまだ寝てるかな?
「へへっ…遅くなってごめんねぇ…」
「え?…え?」
彼女はもう起きていた、というよりは徹夜でゲームをしていたようだ。僕の帰りを待っていてくれたんだね。嬉しいなぁ。
「やっと二人きりになれたね…長かったなぁ…キミ、いつもあの不良に付き纏われてただろう?もう大丈夫だよ…オレがずーっとキミの側にいるから…」
「え、えーっと…どちら様で…?」
「キミの運命の人だよ。分かるでしょ?」
「は?いや、え?」
驚きと喜びで震えている彼女の手をぎゅっと握る。はぁ、やっと触れることができた。温かい手から手汗がじわりと滲む。君も緊張しているんだね。僕もだよ。
「さぁ、オレと一緒に行こう」
「い、やだっ…当真っ…!!」
「触んじゃねーよ、ストーカー野郎」