第一章
夢小説設定
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今日は珍しく目覚めが良く、スッキリと朝を迎えられた。しかも朝テレビで流れていた占いは堂々の一位。何か良いことが起きそうだと意気揚々と学校へ向かった。
が、そんなわけないだろとでも言わんばかりに予想もしていなかった事が起こった。
「うわー…」
靴箱を開けた瞬間見えたのは一枚の紙。新聞や広告の文字を切り貼りして書かれたそれには「男好きも程々にしないと痛い目を見るぞ」とだけ記されていた。心当たりのない忠告に頭を悩ませる。そういえば以前、みっちゃんがそんな感じの噂話を聞いたと言っていたな、とようやく思い出した。かといって女子と全く絡んでいないわけでもないし、別に男好きでもない。彼らはただの友達。全く失礼な話だ。
紙を四つ折りにし、何事もなかったかのように鞄へと押し込んだ。差出人の心当たりはまるでないが、いつか呼び出しでもされるんじゃないだろうか。それはそれで面倒くさい。だからと言ってせっかくできた友達との関係を絶ちたくはない。
「何考えこんでんだ、えりな」
「あ…当真…おはよー」
靴箱の前でぼーっとしている私はさぞ可笑しな奴に見えているのだろう。不思議そうにしている当真に「今日の晩御飯何にしようかと思って」と適当なことを言って誤魔化した。事を大きくしたくないし、こんなことで心配をかけたくない。特に当真には、なんとなくバレたくない。
「まだ朝じゃん。早すぎだろ」
「帰りにスーパー寄ろうと思って」
「今日は本部行かねぇの?」
「あー…一回家帰ってから行くわー」
「ふーん…」
「あ、柚宇ちゃんに用事あるからちょっと行ってくるわー!また後でな!」
訝しげな当真から逃げるように柚宇ちゃんのクラスへと走った。柚宇ちゃんには本当に用事があったけど、少し怪しすぎたかもしれない。それでも、あのまま根掘り葉掘り聞かれていたら絶対ボロが出る。私はあまり嘘が得意ではないからできるだけバレないように気を付けよう。そうでなくても、当真は何かと勘が鋭いから気をつけなくては。
「柚宇ちゃーん」
「あれー?えりなちゃんどうしたのー?」
「借りてたゲーム返しに来た!めっちゃおもろかったわー!」
ゲームの話に花を咲かせ、「あのストーリーが良かった」だとか、「あの敵強すぎ」とか、語彙力のない感想を話した。柚宇ちゃんは満足そうに頷いて聞いてくれたから多分伝わっていると思う。一頻り語り、続編も借りることにしてその話は落ち着いた。
「えりなちゃん、オンラインゲームとかどう?興味ある?」
「あー、そういや気になってたけどした事なかったなー」
「今ハマってるのがあってねー」
そこからは柚宇ちゃんによるオンラインゲームのプレゼンが始まり、終わる頃には朝のHR前の予鈴が鳴るところだった。つい話し込んでしまったが、教室に居ればゾエくんと話してしまうし、今日のところは逆に良かったかもしれない。
「ほんじゃちょっとやってみるわー!」
「いい感じだったら一緒にやろうねー」
教室に帰ってから、真っ直ぐ自分の席に行って座る。授業の合間の休憩時間と昼休みも女友達の所へ積極的に行った。先週の席替えで席が離れてしまったゾエくんと話す機会も減り、いつも一緒に帰っている当真が来る前に素早く教室を出て家へと帰った。これ、続けてたら多方面から怒られそう。どうしようかと悩んでいた思考が、家の郵便受けを見た途端ぴたりと止まる。
「何やこれ…」
郵便受けに入っていたのは名無しの白い封筒。その中身を見て顔が引きつる。「あの男とはどうゆう関係なんだ」と新聞やチラシで切り貼りされた紙の他に、私の写真が数枚入っていた。どれも視線が合っていない、俗に言う盗撮写真だ。隣には当真が写り込んでいたり見切れたりしている。一枚だけ太刀川先輩らしき人が写っているが、隣にいる頻度から考えてあの男とは当真のことだろう。どうゆう関係と言われても、大事な友達としか言えないから困る。
まさか自分がこういった事をされる対象になるとは思わなかった。思わず頭を抱えてしまう。誰かに相談した方が良いのだろうか。でも誰に?一番頼れるのは誰?私が一番安心できるのは…
自問自答をしても、結局最初に浮かぶのはあいつで、一番気心知れた友人であり、一番最初に知られたくないと思った人だった。
□■□■□
「西宮ちゃん、最近元気ないんだよねー…」
ラウンジで昼飯を食ってる時に、ぽつりとゾエの口から心配そうな言葉が溢れた。あのノリと勢いで生きてるようなバカが、周りから心配されるほど元気がないというのは想像がつかない。いつ見ても能天気そうに笑っている姿しか思い浮かばないからだ。
「何だかゾエさんや当真くんのこと避けてる感じがするし…何かしちゃったかな…?訓練場にはたまに来てるけど、すぐに居なくなっちゃうらしいし…」
確かに最近「漫画貸せ」とメールしても「今友達に貸してる」だとか「予定が埋まってる」だとか、中々貸そうとしない。特に気にしてなかったが、俺の事も避けているのか。そういえば本部でも前以上に見かけていない気がする。
「そういや…前の…」
同期で遊びに行ったあの日、変な視線が刺さった時があった。何とも言い難いもの、よく刺さる不愉快なもの、様々な感覚が混じっていた。その中でもはっきり感じ取れた「可哀想」とでも言うような同情の視線、そして強い「怒り」の視線が刺さったことを不思議に思ったことを覚えてる。
「チッ…めんどくせぇ…」
俺は西宮に一番近い存在であろう、アイツへとメールを送った。返ってきたメールを読み、めそめそと鬱陶しいゾエを置いてそいつの元へと向かった。くそめんどくせぇことになりそうだと頭を掻くことしか、今はできそうにない。