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【N】にのへ。

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貴方の名前は…
幼馴染のあの子の名前は…
貴方の苗字は…?

『はあ、はあ…』

初心者コースでも、今まで運動を避けてきた私には結構きつい道のりだった。
だんだん息が上がってくる。

「大丈夫?休憩しようか。」
『う、うん…そうしようかな…。』

クロくんに肩を支えてもらいながら、近くの切り株のようなところに腰かけた。

『ごめんね…初心者コースなのにこんなんで…』
「いいんだよ、俺もあんまり得意じゃないからさ。」

って言ってるけど、体格はにのよりいいし、背も高いし、体力ありそうだけどなあ…
クロくんにまで、気を使わせちゃったかな。

『クロくん、先に行ってても大丈夫だよ?』
「なんのためにランカちゃんといると思ってるの?笑」
『あ、ごめん。にのに言われたんだよね…』
「まあね。でもそれだけじゃないよ。」
『え…?』

肩を支えてくれてたクロくんの手が、私の頬に移動した。

『クロくん?』
「…俺、ずっとランカちゃん可愛いなって思ってたんだ。」
『…あ、えっと…そう、なんだ。』

頬をずっと撫でるクロくんの手は、なんだか、嫌な感じがした。
にのや相葉ちゃんに頭をポンポンと撫でられるのとは、何かが違う…。
二人には気を許してるからかな?

「でもずっと二宮とか相葉とかといるでしょ?なかなか声かけれなくて。」
『あ、はは…幼馴染だからね…』
「そうなんだ、まあでも、今やっと二人になれたし。」

クロくんの手が、どんどん腰のあたりにまで下りてくる。
私は急に”怖い”という感情に襲われた。

…あ、携帯!
ポケットを確認しようとしたときに、クロくんの手に触れてしまった。
男の人に触れる機会がなかったから、変に恥ずかしくなってしまう。

「顔赤いよ、かわいい。誘ってる?」
『そ、そんなんじゃ…』

クロくんの変なスイッチを押してしまったことに気づく。
どうしよう…
相葉ちゃんたちに助けを求めようとしたのに、肝心の携帯を持ってきていなかった。

さっきにのとのことで急いで部屋を出ちゃったから…

もうすでにクロくんの手は私のスカートの中に入りかけていた。

『や、やめっ』
「しー…恥ずかしいのはわかるけど、ちょっと静かに、ね。」
『んん!!んんんーーー!!!』

クロくんは私が嫌で声をあげてるんじゃないと思い込んでいて、私の口を手で押さえた。

どんどん、服が脱がされていく。
抵抗しようにも、疲れていた体に力はなく、クロくんには子猫ほどの抵抗にしかなかったと思う。

それでも精いっぱい抵抗していると、服が破れてしまった。

「はは、結構大胆なんだ。ギャップだね。」
『んん…』

もう、何をやっても無駄だと悟った。
いま私が何をしても、クロくんには私が興奮してるようにしか見えないんだ…。

そのまま、私は、

もう、何も抵抗できなかった。

ハンカチを口に押し込められて、

手は縛られなかったけど、その手でクロくんを押し返すこともできないまま。

痛い。下半身が動かない…。


「あれ、初めてなんだ。…もらっちゃった。」

そうだ。
今日は、ファーストキスも、初体験も…
全部、なくなっちゃった。

にの…


もう、あの嫌だったファーストキスも、嫌じゃなくなってしまうくらい、今が地獄で…

どうせなら、にのが私の初めてを全部もらってほしかった、な…。

ちょっとだけ、こんなことになる前ににのが来てくれることを期待していた。
まだにのに甘えようとしてる自分に、罰が当たったんだ。


クロくんにされてる時、そっちに集中したくなくて、無心になろうと思ったら、そんなことばかり考えてしまっていた。


「…はあ、はあ、さすがに中はまずいもんね…。」
『……。』

すでにハンカチを口から出されていたのに、何も言えなかった。

…終わった、のかな…。

「…起きてる?なんの反応もないのはさすがにおもしろくなかったなあ…。」

おもしろく、ない?
人の初めてをあんな風に勝手に奪っておいて…

「わ~、きれいだね~!」
「空気がおいしい~!」
「…やば、俺先行くから!」

ほかの登山者の声が聞こえた途端、クロくんは急いでズボンを履いて先へ行ってしまった。

私は、いっとき立ち上がる事ができなかった…。

体が痛い。
葉っぱが素肌にこすれて、ヒリヒリする。
腰も上がらない。
息も苦しくなって、整えるのに精いっぱいで。

あれから、襲われてからどれくらいたったんだろう。


みんなに、会いたいよ…。

『にの…会いたいよ…』


『に、の…』


ランカ!?!?」


あれ、走馬灯?
幻かな、にのの声が聞こえた気がする。

「おい!大丈夫!?ランカ!?」
『にの…?ほんもの…?』
「そうだよ!本物!生きてるよな!?」
『へへ、そんな簡単に死なないよ…』
「お前…これ…」

にのは私を抱きかかえたときに、私の不自然に破れた服や、傷。
それに…太ももに付いた血、服にかけられたモノを見て絶句した。

『あんまり…見ないで…』
「ばか…ばか…!」

初めて、にのの涙を見た。

にのの大粒の涙が、私の頬に落ちる。

『なんで、にのが泣いてるの…』
「うっ…俺のせいだ…俺のせいで…」
『にののせいじゃないよ…私は…』






そこからの記憶が、なくなっていた。
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