【M】会えない距離じゃないのに
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あれから数年。
いまだに松本くんとは連絡が取れていない。
共通の知人はいるものの、松本くんが私と完全に縁を切るようにしているため、遠くはないけどどこにいるのかも教えられないそう。
ただ、松本くんだけが、
私をまだ殺人犯だと思っているのには違いないらしい。
あの時、きちんと向き合っていれば、今でも話が出来ていたのかな。
今でも、真実を知らない松本くんが一番苦しんでいると思う。
私が…殺したのに、不慮の事故と処理されたと、
松本くんの中では言いようのない怒りがあると思う。
その火種を作ったのも、私なのに。
会いたい。
会って、ちゃんと話したい。
会えない距離じゃないのに、会えない。
ただただ、私と松本くんの間には消えない溝がある。
「…今日、命日だよな。」
『うん…お墓参り行こうね。』
私は今、翔と結婚して子供もいる。
お互いが始まりたての恋を無くし、支えあえるのはお互いでしかなかった。
それに、私たちが新しい恋なんてしなければ、
あの二人も幸せだったかもしれないのに。
周りには一部、こんなことがあったのに翔と結婚した私を非難する人もいた。
至極、真っ当な事だと思う。
それでも私は、最初から最後まで支えてくれた翔と結婚できて本当に良かったと思ってる。
…松本くんとは、恋というものになる前に消え去ってしまった。
今でも好きかと聞かれれば、もちろん好きだと答えると思う。
それは、翔も同じだと思う。
でもそれは、心の中に閉じ込められた感情のままだから。
あの時の想いは成長することなく留まっているだけ。
それでも、私たちはイマを生きる存在として、
成長し続ける感情を選んだ。
それが、お姉さんへの償いとも思っているから。
『お姉さん、お久しぶりです。』
「…まだ弟は来ねえから、みんなで昼飯ってのもなかなか叶わないんだよな、ごめんな?」
私たちはお姉さんのお墓参りをする際、必ずお昼に行くことにしている。
亡くなる直前、お姉さんに伝えていたこと。
”みんなでお昼ご飯を食べよう”
このことは翔にも話していたから、いつかみんなで揃って食べたいねって。
けど、松本くんが現れることはないから…
『…松本くんは来ないけど、ほら、この子…。』
「生まれたんだよ、俺たちに子供が。」
『ふふ、名前なんだと思います?』
「こいつったら、松本の存在がいつも一緒にあるようにってさ、」
男の子。
名前は、潤にした。
『女の子だったら、お姉さんの名前にしたんですけどね。』
「…まあ、みんなで揃って昼飯は、この子もいるからこれで勘弁してくれな?」
『じゃあ、食べよっか。』
お姉さんのお墓の前で、軽い食事をする。
翔はおにぎりを食べて、私は子供にミルクをあげる。
『潤…おいしい?』
「はは…すっげえ美味そうに飲むじゃん。」
『ふふ、だね。』
ふと、空を見上げる。
よく歌の歌詞とかで
「同じ空の下」「みんなつながってる」っていうけど
お姉さんは、空の上なんだよね。
生きてても亡くなってても、繋がっていたい。
松本くんにも、お姉さんと私たちは繋がってるんだって
みんな仲良しなんだって、伝えたい。
子供にあげているミルクの甘い香りが漂う中、
淡いスッとした花の香りがした。
『…翔、私たちこんな香りの花持ってきてたっけ?』
「ん?いや…俺たちのじゃないと思うけど…」
その時、ふっと振り返えると。
綺麗な紫色の花を抱えた、彼の姿が。
『まつもと…くん…?』
高校生のころから変わらない華やかな顔立ちに
大人びた雰囲気が加わっていて
一瞬誰か分からなかった。
けど、その立ち姿は、確かに…
「…結婚、したんだね。」
『…うん、子供も、生まれたよ…。』
何事もないように再会を果たす。
あふれ出てくる涙も堪えることを忘れるくらいに。
「子供の名前、潤なんだよ。」
「ええ、まじっすか…意図的?笑」
『もちろん…笑』
「へへ、同じ名前じゃん…。」
松本くんは、潤の頬をちょんちょんとつつく。
普段他の人に触られると泣き出す潤も、松本くんには笑顔を見せる。
それがなんだか、すごく微笑ましくて。
お姉さんが、松本くんを呼んでくれたような気もした。
『…松本くん、あのね…』
「…ごめんな。」
『…え?』
「ずっと、悲しい思いさせて…」
松本くんは、全てを知ったようだった。
…やっと、誤解が晴れたんだ。
お姉さんのことで、私が苦しませることも、なくなったんだ。
『私こそ…ごめんね…ちゃんと言えなくて…。』
「お互い、長かったな…。」
そういうと、松本くんは綺麗な紫の花をお姉さんのお墓に供えた。
「…もう、大丈夫なのか?」
「はい…姉ちゃんもいい加減にしろって言ってると思うんで…。」
「あ~、言ってそうだな。笑」
翔と松本くんの話す姿に、私はもう、涙が止まらなかった。
「もう泣くなよ…」
「そうだぞランカ、ほら、みんなで食おうぜ。」
『ふふ…うん、食べよっか。』
そうして、もう叶う事のないと思っていた”みんなでお昼ご飯を食べる”。
形は違うけれど、叶う事が出来た。
それから、私たちは
もう二度と会うことはなかった。
みんなが、これでけじめをつけたのだ。
それぞれが違う道で幸せになっていく。
みんな同じ空の下にいる。
空の上からお姉さんがつなげてくれたこの絆を大切にしながら。
「ねえ、まま?」
『ん?』
「ことしも、おねえさんのとこいってごはんたべようね!」
『…もちろん。みんなでご飯、食べようね。』
END.
いまだに松本くんとは連絡が取れていない。
共通の知人はいるものの、松本くんが私と完全に縁を切るようにしているため、遠くはないけどどこにいるのかも教えられないそう。
ただ、松本くんだけが、
私をまだ殺人犯だと思っているのには違いないらしい。
あの時、きちんと向き合っていれば、今でも話が出来ていたのかな。
今でも、真実を知らない松本くんが一番苦しんでいると思う。
私が…殺したのに、不慮の事故と処理されたと、
松本くんの中では言いようのない怒りがあると思う。
その火種を作ったのも、私なのに。
会いたい。
会って、ちゃんと話したい。
会えない距離じゃないのに、会えない。
ただただ、私と松本くんの間には消えない溝がある。
「…今日、命日だよな。」
『うん…お墓参り行こうね。』
私は今、翔と結婚して子供もいる。
お互いが始まりたての恋を無くし、支えあえるのはお互いでしかなかった。
それに、私たちが新しい恋なんてしなければ、
あの二人も幸せだったかもしれないのに。
周りには一部、こんなことがあったのに翔と結婚した私を非難する人もいた。
至極、真っ当な事だと思う。
それでも私は、最初から最後まで支えてくれた翔と結婚できて本当に良かったと思ってる。
…松本くんとは、恋というものになる前に消え去ってしまった。
今でも好きかと聞かれれば、もちろん好きだと答えると思う。
それは、翔も同じだと思う。
でもそれは、心の中に閉じ込められた感情のままだから。
あの時の想いは成長することなく留まっているだけ。
それでも、私たちはイマを生きる存在として、
成長し続ける感情を選んだ。
それが、お姉さんへの償いとも思っているから。
『お姉さん、お久しぶりです。』
「…まだ弟は来ねえから、みんなで昼飯ってのもなかなか叶わないんだよな、ごめんな?」
私たちはお姉さんのお墓参りをする際、必ずお昼に行くことにしている。
亡くなる直前、お姉さんに伝えていたこと。
”みんなでお昼ご飯を食べよう”
このことは翔にも話していたから、いつかみんなで揃って食べたいねって。
けど、松本くんが現れることはないから…
『…松本くんは来ないけど、ほら、この子…。』
「生まれたんだよ、俺たちに子供が。」
『ふふ、名前なんだと思います?』
「こいつったら、松本の存在がいつも一緒にあるようにってさ、」
男の子。
名前は、潤にした。
『女の子だったら、お姉さんの名前にしたんですけどね。』
「…まあ、みんなで揃って昼飯は、この子もいるからこれで勘弁してくれな?」
『じゃあ、食べよっか。』
お姉さんのお墓の前で、軽い食事をする。
翔はおにぎりを食べて、私は子供にミルクをあげる。
『潤…おいしい?』
「はは…すっげえ美味そうに飲むじゃん。」
『ふふ、だね。』
ふと、空を見上げる。
よく歌の歌詞とかで
「同じ空の下」「みんなつながってる」っていうけど
お姉さんは、空の上なんだよね。
生きてても亡くなってても、繋がっていたい。
松本くんにも、お姉さんと私たちは繋がってるんだって
みんな仲良しなんだって、伝えたい。
子供にあげているミルクの甘い香りが漂う中、
淡いスッとした花の香りがした。
『…翔、私たちこんな香りの花持ってきてたっけ?』
「ん?いや…俺たちのじゃないと思うけど…」
その時、ふっと振り返えると。
綺麗な紫色の花を抱えた、彼の姿が。
『まつもと…くん…?』
高校生のころから変わらない華やかな顔立ちに
大人びた雰囲気が加わっていて
一瞬誰か分からなかった。
けど、その立ち姿は、確かに…
「…結婚、したんだね。」
『…うん、子供も、生まれたよ…。』
何事もないように再会を果たす。
あふれ出てくる涙も堪えることを忘れるくらいに。
「子供の名前、潤なんだよ。」
「ええ、まじっすか…意図的?笑」
『もちろん…笑』
「へへ、同じ名前じゃん…。」
松本くんは、潤の頬をちょんちょんとつつく。
普段他の人に触られると泣き出す潤も、松本くんには笑顔を見せる。
それがなんだか、すごく微笑ましくて。
お姉さんが、松本くんを呼んでくれたような気もした。
『…松本くん、あのね…』
「…ごめんな。」
『…え?』
「ずっと、悲しい思いさせて…」
松本くんは、全てを知ったようだった。
…やっと、誤解が晴れたんだ。
お姉さんのことで、私が苦しませることも、なくなったんだ。
『私こそ…ごめんね…ちゃんと言えなくて…。』
「お互い、長かったな…。」
そういうと、松本くんは綺麗な紫の花をお姉さんのお墓に供えた。
「…もう、大丈夫なのか?」
「はい…姉ちゃんもいい加減にしろって言ってると思うんで…。」
「あ~、言ってそうだな。笑」
翔と松本くんの話す姿に、私はもう、涙が止まらなかった。
「もう泣くなよ…」
「そうだぞランカ、ほら、みんなで食おうぜ。」
『ふふ…うん、食べよっか。』
そうして、もう叶う事のないと思っていた”みんなでお昼ご飯を食べる”。
形は違うけれど、叶う事が出来た。
それから、私たちは
もう二度と会うことはなかった。
みんなが、これでけじめをつけたのだ。
それぞれが違う道で幸せになっていく。
みんな同じ空の下にいる。
空の上からお姉さんがつなげてくれたこの絆を大切にしながら。
「ねえ、まま?」
『ん?』
「ことしも、おねえさんのとこいってごはんたべようね!」
『…もちろん。みんなでご飯、食べようね。』
END.