【M】会えない距離じゃないのに
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会えない距離じゃないのに、会わない。
それが、今の私たちの現状だ。
私にとっては、会わないんじゃなく、会えないという表現のほうが合っている。
会えない距離じゃないのに、会えない。
どんなもの事にも、理由がつきもの。
私と彼にも、会えない理由が存在する。
それが例え、仕方のない理由だとしても。
納得のできない理由だとしても。
結果がそうなってしまったのなら、仕方のないこと。
それでも私は、彼に会いたいと今でも思っている。
私たちの会えない理由は、学生の頃にさかのぼる。
「桜庭、消しゴム貸してくんねえ?」
『またなくなったの?』
「うん、なんか最近めっちゃなくなんのよ。」
『も~…じゃあ2個持ってるからこれあげるよ。』
「まじか、サンキュ。」
彼は私の隣の席だった。
野球部エース。容姿端麗。
モテる要素の詰まった彼は、案の定女の子からの告白は絶えなかった。
私と彼は、すごく仲良しとまではいかないものの、隣の席という環境で毎日話すくらいの仲だった。
私だって普通の女子。
優しくて頼りがいのある彼に少なからず好意を持っていたのは事実。
でも、当時私には彼氏がいた。
だから、好意と言っても友達が好きっていう感覚。
「見て!松本くんの消しゴムゲットできちゃった!」
「え!やば!すごいね!」
「私も今度狙ってみよ~」
休み時間、女の子グループの会話が聞こえる。
その頃、私たちの学校では「好きな人の消しゴムをこっそり使い切ったら恋が叶う」などという迷信が流行っていた。
「好きな人の名前を書いて使い切る」なら聞いたことあるけど、そんな盗難じみた迷信を、私は信じていなかった。
『…そんなの信じる人いるんだ。』
でも、今思えばそういうおまじないを信じ込むのも、若さながらの楽しみ方だったんだと納得する。
当時の少し冷めていた私には、子供じみているように見えた。
「ランカ、お待たせ。」
『あ、翔。』
彼氏の翔はひとつ上の学年だった。
冷めているというか、大人じみていた私には翔のような落ち着いた年上が魅力的に見えていた。
「今日購買の弁当買えなかったのショックなんだよな~。」
『じゃあ今日は何食べるの?』
「これしかねえの。」
翔は小さなパンを出す。
サッカー部で朝練などをしていた翔には少ないお昼ご飯。
『え、足りないでしょ。』
「でもまあしょうがないし。」
『私のお弁当と交換しよ。』
「え、いいの?」
『私そんなに食べないしね~。』
「じゃあありがたく頂戴いたします。」
『ふふ、どうぞどうぞ。』
私と翔はお弁当とパンを交換する。
『…飲み物ないね。買ってくる。』
「俺が行くよ。」
『いいのいいの、待ってて。』
いつも一緒にお昼を食べる非常階段に翔を残して
私は自動販売機まで二人分の飲み物を買いに走った。
年上の翔だけど、当時尽くしたい欲があった私はなんでもしてあげたいと思う子だった。
自販機まで走ると、そこにいたのは松本くんだった。
「…お、桜庭。」
『よっ。』
松本くんはオレンジジュースと水を抱えていた。
『2本も飲むの?笑』
「ちげえよ、姉貴の分。」
松本くんには一つ上のお姉さんがいた。
翔と同い年で、同じクラス。
松本くんとそっくりで、目鼻立ちがはっきりしててきれいな人。
2人は仲がいいらしい。
美男美女の姉弟だってみんな言ってた。
『お昼一緒に食べてるの?』
「それはさすがにないよ、パシられてるだけ。笑」
すでに2本を抱えている松本くんはもう一本買おうとしていた。
『何本買うのよ笑』
「俺が飲むやつと、姉貴のと、その友達の分。」
『本当にパシりじゃん笑』
「うるせえよ笑」
普段は女の子にモテる松本くんも、お姉さんには逆らえない松本くんがなんだか可愛く感じた。
4本目を買おうとしてもたつく松本くんに、私は手を貸した。
『持つよ。』
「っと…ありがと。」
『お姉さんのクラス、2組だよね?ついでに一緒に持ってってあげる。』
「なんで知ってんの?」
『彼氏と同じクラスなんだ。』
「あ、そういえば櫻井先輩と付き合ってたね。」
私は2本のペットボトルを持ってあげて、松本くんと一緒に2年生のクラスへ向かった。
「…姉ちゃんいますか?」
「わ、松本くんだあ~やっぱ可愛い~」
「あの…」
先輩方にキュンキュンされる松本くんの隣は居づらかったな…。
「あ、潤。ありがとね~。」
『あの。これも…。』
「…ん?潤の彼女ちゃん?」
「ばか、ちげえよ。櫻井先輩と付き合ってる子。」
「あ~櫻井の!かわいい子だね~。」
『いやいや…』
松本くんのお姉さんはとってもいい匂いがした。
松本くんと同じ柔軟剤の、優しい香り。
お姉さんは私からペットボトルを受け取った。
「ごめんね、潤が手伝わせちゃったみたいで。」
『いえ、私が勝手に手伝っただけなので…』
「じゃ、戻るわ。」
「は~い、潤もありがとね~。」
そして私も、先輩たちに会釈をして1年のクラスへ戻った。
それが、今の私たちの現状だ。
私にとっては、会わないんじゃなく、会えないという表現のほうが合っている。
会えない距離じゃないのに、会えない。
どんなもの事にも、理由がつきもの。
私と彼にも、会えない理由が存在する。
それが例え、仕方のない理由だとしても。
納得のできない理由だとしても。
結果がそうなってしまったのなら、仕方のないこと。
それでも私は、彼に会いたいと今でも思っている。
私たちの会えない理由は、学生の頃にさかのぼる。
「桜庭、消しゴム貸してくんねえ?」
『またなくなったの?』
「うん、なんか最近めっちゃなくなんのよ。」
『も~…じゃあ2個持ってるからこれあげるよ。』
「まじか、サンキュ。」
彼は私の隣の席だった。
野球部エース。容姿端麗。
モテる要素の詰まった彼は、案の定女の子からの告白は絶えなかった。
私と彼は、すごく仲良しとまではいかないものの、隣の席という環境で毎日話すくらいの仲だった。
私だって普通の女子。
優しくて頼りがいのある彼に少なからず好意を持っていたのは事実。
でも、当時私には彼氏がいた。
だから、好意と言っても友達が好きっていう感覚。
「見て!松本くんの消しゴムゲットできちゃった!」
「え!やば!すごいね!」
「私も今度狙ってみよ~」
休み時間、女の子グループの会話が聞こえる。
その頃、私たちの学校では「好きな人の消しゴムをこっそり使い切ったら恋が叶う」などという迷信が流行っていた。
「好きな人の名前を書いて使い切る」なら聞いたことあるけど、そんな盗難じみた迷信を、私は信じていなかった。
『…そんなの信じる人いるんだ。』
でも、今思えばそういうおまじないを信じ込むのも、若さながらの楽しみ方だったんだと納得する。
当時の少し冷めていた私には、子供じみているように見えた。
「ランカ、お待たせ。」
『あ、翔。』
彼氏の翔はひとつ上の学年だった。
冷めているというか、大人じみていた私には翔のような落ち着いた年上が魅力的に見えていた。
「今日購買の弁当買えなかったのショックなんだよな~。」
『じゃあ今日は何食べるの?』
「これしかねえの。」
翔は小さなパンを出す。
サッカー部で朝練などをしていた翔には少ないお昼ご飯。
『え、足りないでしょ。』
「でもまあしょうがないし。」
『私のお弁当と交換しよ。』
「え、いいの?」
『私そんなに食べないしね~。』
「じゃあありがたく頂戴いたします。」
『ふふ、どうぞどうぞ。』
私と翔はお弁当とパンを交換する。
『…飲み物ないね。買ってくる。』
「俺が行くよ。」
『いいのいいの、待ってて。』
いつも一緒にお昼を食べる非常階段に翔を残して
私は自動販売機まで二人分の飲み物を買いに走った。
年上の翔だけど、当時尽くしたい欲があった私はなんでもしてあげたいと思う子だった。
自販機まで走ると、そこにいたのは松本くんだった。
「…お、桜庭。」
『よっ。』
松本くんはオレンジジュースと水を抱えていた。
『2本も飲むの?笑』
「ちげえよ、姉貴の分。」
松本くんには一つ上のお姉さんがいた。
翔と同い年で、同じクラス。
松本くんとそっくりで、目鼻立ちがはっきりしててきれいな人。
2人は仲がいいらしい。
美男美女の姉弟だってみんな言ってた。
『お昼一緒に食べてるの?』
「それはさすがにないよ、パシられてるだけ。笑」
すでに2本を抱えている松本くんはもう一本買おうとしていた。
『何本買うのよ笑』
「俺が飲むやつと、姉貴のと、その友達の分。」
『本当にパシりじゃん笑』
「うるせえよ笑」
普段は女の子にモテる松本くんも、お姉さんには逆らえない松本くんがなんだか可愛く感じた。
4本目を買おうとしてもたつく松本くんに、私は手を貸した。
『持つよ。』
「っと…ありがと。」
『お姉さんのクラス、2組だよね?ついでに一緒に持ってってあげる。』
「なんで知ってんの?」
『彼氏と同じクラスなんだ。』
「あ、そういえば櫻井先輩と付き合ってたね。」
私は2本のペットボトルを持ってあげて、松本くんと一緒に2年生のクラスへ向かった。
「…姉ちゃんいますか?」
「わ、松本くんだあ~やっぱ可愛い~」
「あの…」
先輩方にキュンキュンされる松本くんの隣は居づらかったな…。
「あ、潤。ありがとね~。」
『あの。これも…。』
「…ん?潤の彼女ちゃん?」
「ばか、ちげえよ。櫻井先輩と付き合ってる子。」
「あ~櫻井の!かわいい子だね~。」
『いやいや…』
松本くんのお姉さんはとってもいい匂いがした。
松本くんと同じ柔軟剤の、優しい香り。
お姉さんは私からペットボトルを受け取った。
「ごめんね、潤が手伝わせちゃったみたいで。」
『いえ、私が勝手に手伝っただけなので…』
「じゃ、戻るわ。」
「は~い、潤もありがとね~。」
そして私も、先輩たちに会釈をして1年のクラスへ戻った。
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