彼方の星までの乗車券とか
主人公のお名前を変えたい方
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「愛してる」
こんな暑苦しい昼間に似合わない言葉が聞こえた。
いつもより少しだけ静かな昼休み。柳川は唇を震わせて何かを堪えるように視線を逸らそうとする。
「葵凪、世界で1番…………愛してる」
「〜〜〜ッブ八ッ!!!!や、もう駄目!!!無理無理!!!!」
静かだったのはほんの一瞬だったようだ。『愛してるゲーム』というのが最近周りで流行っていて、柳川達も休み時間の度にやっている。
「いや、本当に葵凪弱すぎでしょ〜」
「真剣な顔で言われると笑うに決まってんじゃん
!」
休み時間や移動時間もずっとやっていてよく飽きないなとも思うが、柳川は本当に弱かった。言うのも言われるのも笑う。というか他の人が言っているのを見ているだけで笑う。
「好き、とかなら笑わない気がするんだけどなーなんで愛してるは駄目なんだろ」
「キザだからじゃない?ほら愛してるってバラの花束って感じする」
「うわーわかる」
ふと前に買ったインディーズのバンドの曲を思い出した。激しめの曲が多いそのバンドの唯一のバラード曲で歌詞もよく覚えていた。笑い話じゃない俺の言葉を聞いてくれ。俺の愛してるを君に捧げよう。人生で1回きりの言葉さ。
そんなクサイ歌詞はあんまり好みじゃないはずなのにそのフレーズだけ妙に覚えていた。
「あ〜面白いけどそろそろバリエーション増やしたいな〜おーい財前!ネタくれ!」
「急に振るなや。自分で考えろ。」
「辛辣!じゃあ財前だったらどんな風に言うか勝手に想像して言うわ!」
突拍子もないこと言ってからうーんうーん唸る。ホンマアホやなこいつ。あのバンドのような言葉とは縁がないんやろな。
「…なんか失礼なこと考えてない?」
「いや全然。」
放課後部活が終わった後に図書委員に提出する紙があったことを思い出し手早く片付けを済ませる。
「なんや財前、いつもよりバタバタやな」
「委員会にだすプリントあるんすわ。昼休み行っとけば良かった…。」
「あ!丁度ええわこれ一緒に返しといてや!」
謙也さんが星の図鑑を渡してきた。
「うわ重…てかこんな本読むんすね」
「いや図鑑は読むやろ!でもそれはテストで星が範囲やったから白石と回し読みしてたんや。」
急いでるのに重たい荷物が増えて面倒臭いこと極まりないが仕方なく図書室へ向かった。
図書室のドアを開けると誰もいない。先生は留守にしています。返却の本はボックスへ。委員会の紙はここ。とボードに書いてある。用事は直ぐに済んだのでさっさとするとドアが勢いよく開く。
「あっ財前!」
「柳川」
柳川はへへ、と笑いながら本を返却ボックスに入れる。花言葉全集。こんな本読むんやな。
「ゲームに使おうと思ったけどなんか読み進まなくてやめちゃった。てかこの星の図鑑財前の?」
「謙也さんのや。委員会のプリントついでに押し付けられた。」
「へ〜…う〜ん……謙也先輩……あの星の数だけ愛してるとお前に言うで!みたいなの……とか……」
「いや急に愛してるゲーム始めんなや」
「私今日1日めっちゃ考えてたから上手くなったと思うよ!えっとね、財前だったら…」
「そんなに面白いん?そのゲーム」
「えっ?」
思わず食い気味に言ってしまって自分で驚いた。昼に思い出したバンドの曲を思い出した。激しめの曲が多いあのバンドの唯一のバラード曲。
「告白はそんな笑い話やないやろ。愛してるなんて一緒に1度しか言わん言葉やから………だから、あ……………」
だからあの曲覚えてるのか。と言いながら納得した。クサイ歌詞でも1回きりだから妙に覚えていて…。
「……ごめん」
「あ、いや、ちゃうねん今のは」
柳川は切なそうな顔をしていた。また見たことの無い顔。最近こんなのばっかだ。前の映画館の時も。ただのアホのクラスメイトなのに不意に全然違う人に見える瞬間。変な感覚に心がぐら、と傾くような嫌な感覚。
「財前めっちゃ大人じゃん。うわー。もう。」
「バンド、今のはバンドの曲の話やって」
「いいって。ごめん。クソガキはもう帰ります」
「んなこと言うてないやろ!ホンマうざっ…」
思わず柳川の腕を掴んだ。柳川が振り返るとその頬は赤く染まってて目には涙が潤んでいた。
「い……」
「財前は大人じゃないじゃん。私と同い年じゃん。クソガキじゃん!距離感とか感じさせないでよ!」
「何言うてんのか全然わからんし、なんで泣いてんねん。お前よりはマシやけど俺やってクソガキやわ。テニスだってまだまだやし」
「お前よりはって言うとこホント余計!急にバンドの曲の話すんな!ちょっと部活でキャーキャーされてるからってかっこつけんな!」
「はぁ?!別にテニスしてるだけでキャーキャー言われても嬉しないし?!そんならクソガキ柳川の方がマシや!!」
「そんな理由で選ばれても嬉しくないし!クソガキ財前なんかと付き合わないし!」
言い合いを続けていると戻ってきた図書室の先生がもう下校時刻過ぎてるから帰りなさい!と怒ってきた。
下駄箱までの道、俺と柳川は何も話さなかった。空気が悪くなったとかそういった物ではなくて、話をしてくてもいい空気。だった。
「じゃあねクソガキ財前」
「だからお前よりマシや」
そうやって下駄箱で馬鹿にしてきた柳川はいつもの顔だった。そして次の日から柳川は愛してるゲームはやらなくなった。
こんな暑苦しい昼間に似合わない言葉が聞こえた。
いつもより少しだけ静かな昼休み。柳川は唇を震わせて何かを堪えるように視線を逸らそうとする。
「葵凪、世界で1番…………愛してる」
「〜〜〜ッブ八ッ!!!!や、もう駄目!!!無理無理!!!!」
静かだったのはほんの一瞬だったようだ。『愛してるゲーム』というのが最近周りで流行っていて、柳川達も休み時間の度にやっている。
「いや、本当に葵凪弱すぎでしょ〜」
「真剣な顔で言われると笑うに決まってんじゃん
!」
休み時間や移動時間もずっとやっていてよく飽きないなとも思うが、柳川は本当に弱かった。言うのも言われるのも笑う。というか他の人が言っているのを見ているだけで笑う。
「好き、とかなら笑わない気がするんだけどなーなんで愛してるは駄目なんだろ」
「キザだからじゃない?ほら愛してるってバラの花束って感じする」
「うわーわかる」
ふと前に買ったインディーズのバンドの曲を思い出した。激しめの曲が多いそのバンドの唯一のバラード曲で歌詞もよく覚えていた。笑い話じゃない俺の言葉を聞いてくれ。俺の愛してるを君に捧げよう。人生で1回きりの言葉さ。
そんなクサイ歌詞はあんまり好みじゃないはずなのにそのフレーズだけ妙に覚えていた。
「あ〜面白いけどそろそろバリエーション増やしたいな〜おーい財前!ネタくれ!」
「急に振るなや。自分で考えろ。」
「辛辣!じゃあ財前だったらどんな風に言うか勝手に想像して言うわ!」
突拍子もないこと言ってからうーんうーん唸る。ホンマアホやなこいつ。あのバンドのような言葉とは縁がないんやろな。
「…なんか失礼なこと考えてない?」
「いや全然。」
放課後部活が終わった後に図書委員に提出する紙があったことを思い出し手早く片付けを済ませる。
「なんや財前、いつもよりバタバタやな」
「委員会にだすプリントあるんすわ。昼休み行っとけば良かった…。」
「あ!丁度ええわこれ一緒に返しといてや!」
謙也さんが星の図鑑を渡してきた。
「うわ重…てかこんな本読むんすね」
「いや図鑑は読むやろ!でもそれはテストで星が範囲やったから白石と回し読みしてたんや。」
急いでるのに重たい荷物が増えて面倒臭いこと極まりないが仕方なく図書室へ向かった。
図書室のドアを開けると誰もいない。先生は留守にしています。返却の本はボックスへ。委員会の紙はここ。とボードに書いてある。用事は直ぐに済んだのでさっさとするとドアが勢いよく開く。
「あっ財前!」
「柳川」
柳川はへへ、と笑いながら本を返却ボックスに入れる。花言葉全集。こんな本読むんやな。
「ゲームに使おうと思ったけどなんか読み進まなくてやめちゃった。てかこの星の図鑑財前の?」
「謙也さんのや。委員会のプリントついでに押し付けられた。」
「へ〜…う〜ん……謙也先輩……あの星の数だけ愛してるとお前に言うで!みたいなの……とか……」
「いや急に愛してるゲーム始めんなや」
「私今日1日めっちゃ考えてたから上手くなったと思うよ!えっとね、財前だったら…」
「そんなに面白いん?そのゲーム」
「えっ?」
思わず食い気味に言ってしまって自分で驚いた。昼に思い出したバンドの曲を思い出した。激しめの曲が多いあのバンドの唯一のバラード曲。
「告白はそんな笑い話やないやろ。愛してるなんて一緒に1度しか言わん言葉やから………だから、あ……………」
だからあの曲覚えてるのか。と言いながら納得した。クサイ歌詞でも1回きりだから妙に覚えていて…。
「……ごめん」
「あ、いや、ちゃうねん今のは」
柳川は切なそうな顔をしていた。また見たことの無い顔。最近こんなのばっかだ。前の映画館の時も。ただのアホのクラスメイトなのに不意に全然違う人に見える瞬間。変な感覚に心がぐら、と傾くような嫌な感覚。
「財前めっちゃ大人じゃん。うわー。もう。」
「バンド、今のはバンドの曲の話やって」
「いいって。ごめん。クソガキはもう帰ります」
「んなこと言うてないやろ!ホンマうざっ…」
思わず柳川の腕を掴んだ。柳川が振り返るとその頬は赤く染まってて目には涙が潤んでいた。
「い……」
「財前は大人じゃないじゃん。私と同い年じゃん。クソガキじゃん!距離感とか感じさせないでよ!」
「何言うてんのか全然わからんし、なんで泣いてんねん。お前よりはマシやけど俺やってクソガキやわ。テニスだってまだまだやし」
「お前よりはって言うとこホント余計!急にバンドの曲の話すんな!ちょっと部活でキャーキャーされてるからってかっこつけんな!」
「はぁ?!別にテニスしてるだけでキャーキャー言われても嬉しないし?!そんならクソガキ柳川の方がマシや!!」
「そんな理由で選ばれても嬉しくないし!クソガキ財前なんかと付き合わないし!」
言い合いを続けていると戻ってきた図書室の先生がもう下校時刻過ぎてるから帰りなさい!と怒ってきた。
下駄箱までの道、俺と柳川は何も話さなかった。空気が悪くなったとかそういった物ではなくて、話をしてくてもいい空気。だった。
「じゃあねクソガキ財前」
「だからお前よりマシや」
そうやって下駄箱で馬鹿にしてきた柳川はいつもの顔だった。そして次の日から柳川は愛してるゲームはやらなくなった。
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