彼方の星までの乗車券とか
主人公のお名前を変えたい方
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「葵凪〜そんな落ち込むなって!」
「だって、だってせっかく買ったのに!!これどうしよ…ねぇ楓、一緒に行ってよ〜〜!」
「ぜっったい嫌!!」
昼休みにやたら騒がしい奴がおる。悲しんでいるのかはしゃいでるのか分からない。目が合うと厄介だから絶対に合わせないようにする。背を向けて座ろ。
「財前!!!!」
「うおっ!?」
背を向けたと思ったら走って目の前まで回ってきた。
「やめろやこのアホ!びっくりしたやろ!」
「はあ!?………いや、今は許してやろう。そんなアホのお願いを聞いてください」
そういって柳川は2枚紙を差し出した。映画のチケットだった。…なんとなく話が読めてきているのだが一応確認してみることにした。
「謙也さんと行こうとしたんやな」
「はい」
「でも謙也さん、柳川が知ってる通り長編映画なんて無理やもんなぁ」
「…はい」
「更に怖い映画やから着いてきてくれる友達もおらんと」
「…その通りでございます」
チケットを見ると今週の日曜日。部活がたまたま無い日だ。柳川のことだからきちんと調べてチケットを取ったのだと思うが爪が甘いというかなんと言うか。
「……ホンマにアホやな…聞いてから買えば良かったやろ。典型的なデート失敗例って感じやわ」
「そういうこと言うなよ…傷つくじゃん……」
…でもこの映画、お気に入りのブロガーが海外で凄く話題になっていてやっと日本上映が決まったってオススメしてて気になってたやつやん。予告も中々興味を唆られる内容やったし…。ブログのネタにもなるしどっちみちいつか行く予定やったから、このアホを助けてやってもええか。
*
10時に駅前集合の約束。すると遠くからパタパタと人混みの中を颯爽とかき分けて走ってくる人が1人。
「ごめん待たせた!」
「いや時間前やから。あと前髪ぐっしゃぐしゃやで。」
「うわっ」
柳川の私服、初めてみた。白いTシャツにデニムのタイトスカートにスニーカー。柳川らしい服だった。
「それにしてもまさか財前が付き合ってくれるなんて思わなかったわ〜」
「好きなブロガーが薦めてて気になってたからな。それよりも柳川がこんなホラー映画見るなんて思ってなかったわ」
「謙也先輩と夏といえば肝試しだよねって話してたの。だから今やってる映画で1番怖いって言われてる映画のチケット取ったのに買った後にそういえば謙也先輩肝試しは好きだけど怖い話はオチまでが長いから苦手だって言ってたの思い出したの」
「あぁ……」
確かにそうだった。去年の夏に合宿で怖い話大会をした時に「いつになったらその霊出てくんねん!!」とか「そこまで焦らしたら最早ギャグや!!」とかコントでもしてるのかってレベルでツッコミ入れてたのを覚えてる。
映画が始まるまで少し暇だったから俺と柳川は近くの本屋で適当に時間を潰してから映画館に向かった。
*
「私メロンソーダ飲も。ポップコーンはキャラメルでいいよね」
「いや塩やろ」
「映画館の中こんなにキャラメルのいい匂いしてんのにあえて塩選ぶとかかっこつけてるわぁ」
「なんやそれ。キャラメルとかそんな甘いのムシャムシャ食ってたら太るで。」
「太るの気にしてたらそもそもポップコーン食べませ〜ん」
この前ダイエットするって言ってたのはどうなったんや。メロンソーダとコーラ。ポップコーンは安くなるし塩とキャラメルのハーフで注文する。
シアターに入ると話題になってるとはいえ長編でかなり怖いと言われてるだけあって大人ばかりで子供は全然いなかった。
「寝るなよ〜」
「こっちのセリフや。開始5分で寝るやろお前」
シアターが暗くなる。CMが流れ出すと隣からもうむしゃむしゃ音がする。誘われない限りは映画は端の席で1人で静かにみたいタイプだからこんなスクリーンの真ん前の席で見るのも隣にこんな風に誰かが座っているのがなんだか新鮮だ。でも不思議と嫌とは感じなかった。
映画が始まって物語が進んでいく。舞台は田舎町にある小さな学校。不可解な事件や奇妙な死を遂げる教師。その学校の生徒がその事件の真相に触れていくにつれ自分達の中で事件に巻き込まれる人も出てきて…といった話だった。ミステリーホラーと言われていたけど事件が起こるシーンは中々に迫力があった。柳川はそんなに怖がりではないみたいで普通に観ている。
事件に巻き込まれて死んだはずの仲間が後ろから呼びかけてくるシーン。振り返ったら絶対アカンやつやん、ポップコーンに手を伸ばすとひやっと冷たくて滑らかなものの感触がした。
「うひゃっ」
柳川が声を上げる。自分もびっくりして手を引っ込めた、柳川の手だったのか。思わず顔を合わせると柳川がわははって少し恥ずかしそうに笑って前を向いた。見たことない表情だった。いやなんでそんな顔すんねん。するとスクリーンから悲鳴が。いやもう、どんな状況。映画に集中しようとして飲み物を一気に口に含む。
あんなに長かったはずの映画はもうエンドロールに入っていた。
終わってシアターが明るくなる。他に見に来ていた人が時々面白かった、なんて感想を言う人もいればそろそろと出ていく人も。
「最後めっちゃ怖かったぁ!まさかあの先生が犯人だったなんて」
「生身の人間があんなに刺されて生きてるなんて信じられへんけどな。伏線回収もガッツリしてスカッとしたわ」
「途中から飲み物飲むの忘れて見てたから喉カラカラ〜」
柳川がメロンソーダを飲む。
「あれ、意外と飲んでた」
「CMの時めっちゃ食べて飲んでしてたからやろ」
そういえば俺もあの時から飲んでなかった。とふと思い出す。カラカラなのに口の中に最後に飲んだメロンのほのかに甘い味が。
「………、…」
……メロン?
「財前?どうしたの?黙り込んで、そんなに怖かった?」
「……怖ないわ全然。腹減ったしファミレスでも行くか」
やらかした。
おうって可愛げのない返事をする柳川。映画館を出るとカップルが腕を組みながら歩いている。
「カップル多いなぁ、私達もそういう風に見えちゃってたりして」
「…んな訳あるか。アホ」
ただのクラスメイトやろ。ただ一緒に歩いて映画みて、そんで、間接的に
「………………………ホンマにアホやわあぁ……」
「そんな言う?!」
「だって、だってせっかく買ったのに!!これどうしよ…ねぇ楓、一緒に行ってよ〜〜!」
「ぜっったい嫌!!」
昼休みにやたら騒がしい奴がおる。悲しんでいるのかはしゃいでるのか分からない。目が合うと厄介だから絶対に合わせないようにする。背を向けて座ろ。
「財前!!!!」
「うおっ!?」
背を向けたと思ったら走って目の前まで回ってきた。
「やめろやこのアホ!びっくりしたやろ!」
「はあ!?………いや、今は許してやろう。そんなアホのお願いを聞いてください」
そういって柳川は2枚紙を差し出した。映画のチケットだった。…なんとなく話が読めてきているのだが一応確認してみることにした。
「謙也さんと行こうとしたんやな」
「はい」
「でも謙也さん、柳川が知ってる通り長編映画なんて無理やもんなぁ」
「…はい」
「更に怖い映画やから着いてきてくれる友達もおらんと」
「…その通りでございます」
チケットを見ると今週の日曜日。部活がたまたま無い日だ。柳川のことだからきちんと調べてチケットを取ったのだと思うが爪が甘いというかなんと言うか。
「……ホンマにアホやな…聞いてから買えば良かったやろ。典型的なデート失敗例って感じやわ」
「そういうこと言うなよ…傷つくじゃん……」
…でもこの映画、お気に入りのブロガーが海外で凄く話題になっていてやっと日本上映が決まったってオススメしてて気になってたやつやん。予告も中々興味を唆られる内容やったし…。ブログのネタにもなるしどっちみちいつか行く予定やったから、このアホを助けてやってもええか。
*
10時に駅前集合の約束。すると遠くからパタパタと人混みの中を颯爽とかき分けて走ってくる人が1人。
「ごめん待たせた!」
「いや時間前やから。あと前髪ぐっしゃぐしゃやで。」
「うわっ」
柳川の私服、初めてみた。白いTシャツにデニムのタイトスカートにスニーカー。柳川らしい服だった。
「それにしてもまさか財前が付き合ってくれるなんて思わなかったわ〜」
「好きなブロガーが薦めてて気になってたからな。それよりも柳川がこんなホラー映画見るなんて思ってなかったわ」
「謙也先輩と夏といえば肝試しだよねって話してたの。だから今やってる映画で1番怖いって言われてる映画のチケット取ったのに買った後にそういえば謙也先輩肝試しは好きだけど怖い話はオチまでが長いから苦手だって言ってたの思い出したの」
「あぁ……」
確かにそうだった。去年の夏に合宿で怖い話大会をした時に「いつになったらその霊出てくんねん!!」とか「そこまで焦らしたら最早ギャグや!!」とかコントでもしてるのかってレベルでツッコミ入れてたのを覚えてる。
映画が始まるまで少し暇だったから俺と柳川は近くの本屋で適当に時間を潰してから映画館に向かった。
*
「私メロンソーダ飲も。ポップコーンはキャラメルでいいよね」
「いや塩やろ」
「映画館の中こんなにキャラメルのいい匂いしてんのにあえて塩選ぶとかかっこつけてるわぁ」
「なんやそれ。キャラメルとかそんな甘いのムシャムシャ食ってたら太るで。」
「太るの気にしてたらそもそもポップコーン食べませ〜ん」
この前ダイエットするって言ってたのはどうなったんや。メロンソーダとコーラ。ポップコーンは安くなるし塩とキャラメルのハーフで注文する。
シアターに入ると話題になってるとはいえ長編でかなり怖いと言われてるだけあって大人ばかりで子供は全然いなかった。
「寝るなよ〜」
「こっちのセリフや。開始5分で寝るやろお前」
シアターが暗くなる。CMが流れ出すと隣からもうむしゃむしゃ音がする。誘われない限りは映画は端の席で1人で静かにみたいタイプだからこんなスクリーンの真ん前の席で見るのも隣にこんな風に誰かが座っているのがなんだか新鮮だ。でも不思議と嫌とは感じなかった。
映画が始まって物語が進んでいく。舞台は田舎町にある小さな学校。不可解な事件や奇妙な死を遂げる教師。その学校の生徒がその事件の真相に触れていくにつれ自分達の中で事件に巻き込まれる人も出てきて…といった話だった。ミステリーホラーと言われていたけど事件が起こるシーンは中々に迫力があった。柳川はそんなに怖がりではないみたいで普通に観ている。
事件に巻き込まれて死んだはずの仲間が後ろから呼びかけてくるシーン。振り返ったら絶対アカンやつやん、ポップコーンに手を伸ばすとひやっと冷たくて滑らかなものの感触がした。
「うひゃっ」
柳川が声を上げる。自分もびっくりして手を引っ込めた、柳川の手だったのか。思わず顔を合わせると柳川がわははって少し恥ずかしそうに笑って前を向いた。見たことない表情だった。いやなんでそんな顔すんねん。するとスクリーンから悲鳴が。いやもう、どんな状況。映画に集中しようとして飲み物を一気に口に含む。
あんなに長かったはずの映画はもうエンドロールに入っていた。
終わってシアターが明るくなる。他に見に来ていた人が時々面白かった、なんて感想を言う人もいればそろそろと出ていく人も。
「最後めっちゃ怖かったぁ!まさかあの先生が犯人だったなんて」
「生身の人間があんなに刺されて生きてるなんて信じられへんけどな。伏線回収もガッツリしてスカッとしたわ」
「途中から飲み物飲むの忘れて見てたから喉カラカラ〜」
柳川がメロンソーダを飲む。
「あれ、意外と飲んでた」
「CMの時めっちゃ食べて飲んでしてたからやろ」
そういえば俺もあの時から飲んでなかった。とふと思い出す。カラカラなのに口の中に最後に飲んだメロンのほのかに甘い味が。
「………、…」
……メロン?
「財前?どうしたの?黙り込んで、そんなに怖かった?」
「……怖ないわ全然。腹減ったしファミレスでも行くか」
やらかした。
おうって可愛げのない返事をする柳川。映画館を出るとカップルが腕を組みながら歩いている。
「カップル多いなぁ、私達もそういう風に見えちゃってたりして」
「…んな訳あるか。アホ」
ただのクラスメイトやろ。ただ一緒に歩いて映画みて、そんで、間接的に
「………………………ホンマにアホやわあぁ……」
「そんな言う?!」