「毎日がさぁ、平凡すぎると思うんだ。日常に刺激が欲しい。そう……たとえば彼氏とか」

「なんや急に。キモいわ」

ちょうど期末テストが終わった頃だった。急に気温は上がり蝉がジュワジュワ鳴き始めていた。うるさいと思う蝉も初めは夏のはじまりを感じさせ中々いいなとも思える。でもそれと同時に私は夏休みが近づくとある病気を発症してしまうのだ。

「別に病気やないやろ。ただ飢えとるだけやそんなの」

「病気だよ!? 何にも手がつかなくなるし夜になると泣きたくなる」

心底呆れたようにこいつは笑う。くそ。テニス部だから彼女とかそういうの困ってないっすわみたいな顔して。1年の時から同じクラスだったけどいけ好かないやつだ。この財前光という男は。

「飢えとるのは否定しないんやな。まぁ、テニス部のマネージャーになろうとか下心丸出しなこと言い出さない限りはどうでもええわ」

「昨年やりたいって言ったら嫌がったの財前じゃん」

「お前が謙也さんと付き合いたいとか言い出すからやろ。アホな先輩とアホなマネージャーが付き合うとかどんな世紀末や。うるさくてしゃぁないわ」

…まあ、実際は財前に止められたとかじゃなくて顧問のオサムちゃんにやんわりと断られたからなんだけど。噂によると”そういう”の目当てで入部する女子ばかりできちんとマネージャーしてくれる子が中々いないから今は募集してないらしいって話だ。でも自分もそんな不純な動機で始めようとしたわけだからそれを聞いてあっさりマネージャーは諦めた。それ以降は財前といるときにたまに会えるくらいでまったく謙也先輩とのフラグは立たなかったんだけど。

「財前」

「なんや」

「私と謙也先輩をくっつけるためにセッティングしてよ」

「…………それ、俺に何の得があるん？」

「何でも言うこと聞くから」

「…ふーん。じゃあええよ」

思わず言ってしまったのだがあっさりOKが出たので逆に焦る。いや財前ってこんなに話が通るやつだったっけ。何でもとか言ってしまったわけだしもしも多額の金額を請求されたり、連帯保証人になれとか…終いには小指を出せみたいn「はい」

「はい？」

「謙也さんのLINE」

「そんなの勝手に教えていいのか」

「ええやろ、謙也さんやし」

急展開過ぎてついていけてないんだけど嬉しいからいいや。とりあえず挨拶のLINE送ろう。ホーム画面のイグアナ可愛いな、名前がシンプルに「KENYA☆彡」なのも可愛い。☆彡ってなんだもうしんどいな。

「財前、帰りにアイスでも奢るわ」

「よっしゃ」

そんなこんなで私の謙也先輩の片思いロードが開けた。ダイエット再開しよ。白米は明日から減らそう。もぐもぐ。