炎天下に水を打て
主人公のお名前を変えたい方
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まだ7月の初めだと言うのに蝉がジュワジュワと世話しなく鳴いている。そういえば日焼け止め塗るの忘れたとか、今日の英語は当たるのに翻訳まだだったとか。早くも熱で浮かされそうな頭で考え事をしながらとぼとぼ歩き学校に向かっていた。
「あっつ……」
信号に引っ掛かり止まる。すると一気に体に熱が溜まるような気がした。このまま倒れそうだなぁとか呑気に考えながら。
「おーい! 鳴坂!! 」
後ろから元気な声が聞こえる。朝から蝉の声ばっか聞いてうんざりだったけど一気に気持ちが晴れる。
「桃ちゃん!! 」
「よっ! 珍しいなこの時間に合うの。」
「英語の予習やろうと思って。桃ちゃんは朝練?」
まあな! って前カゴに乗せてるラケットバッグをばしばし叩く。桃ちゃんが入ってるテニス部は都大会を勝ち進んでついに関東大会に行くらしい。
「頑張ってね、関東大会。私これから暇になるから応援いけるし 」
「??……あー、そうだったな……」
桃ちゃんが少し気まずそうな顔をした。やめてよ。思い出しちゃうじゃん。
先週のこと。私が入っている水泳部の大会。予選敗退してしまったのだ。……実は大会直前で足首を捻挫してしまったのだ。オーバーワークだって医者に言われた。でも私がメドレーに入っていないとシード権は難しいって先生も言っていたからどうすればいいかわからなくなって。捻挫をしていたことを黙って大会に出た。自分が泳ぎきってプールサイドに上がった瞬間その場で足の感覚が無くなって倒れたのを覚えている。怪我を黙っていたことに先生は叱った。先輩達は気づいてあげられなくてごめんね。って泣いてた。1秒ほどの差が付き、負けた。
暫く安静にしてることになって部活に参加できなくなった。あの時どうするのが正解だったか今でもわからないんだ。
「桃ちゃんまでそんな風にならないで。ほら朝練行った行った」
「あ、あぁ! じゃあまた後でな! 」
なんとなく、水泳部に顔を出せない。少し怖かった。友達の葉月 は皆戻ってくるの待ってるよって言ってたけど。
自転車を全速力で飛ばす桃ちゃんの背中がなんだか羨ましかった。私もあんな風に早く前に進みたかった。でも、そんなことを考えても仕方がないからじりじりと太陽に焼かれながら少しずつ学校へと歩いていった。
+
「おはよー」
教室に入ると友達の柊子 からはよーって気の抜けた挨拶が返ってくる。葉月は朝練。英語の翻訳に苦戦しながらも柊子から助けてもらって何とか終わった。
「そういえば日誌どこいったか知らない?今日私当番なんだけど無くって」
「昨日桃ちゃんが当番だったような……? 」
そういえば前に私もやったことあったような。部活の日誌とごっちゃになって持ち帰ってしまうことがあった。部活日誌と似すぎなんだよね。
柊子が今すぐ回収しとかないと絶対忘れる。とのことでテニス部に一緒に取りに行った。
+
「マムシ! だからなんでさっきから俺に並んで走んだよ! 」
「それはこっちのセリフだ! 抜かされたからってムキになってんじゃねぇよ」
「なんだと?! 」
なんか同じ部の人と喧嘩しながら走ってた。こういう時に声掛けるのって悪いかな……と思っていたら一緒に走ってた人が巻いていたバンダナがひら、ってほどけて地面に落ちた。拾い上げると気づいたようで彼は振り返った。
「あ……すんません。」
「いやいや。桃ちゃんの友達?」
「はぁ?!」
彼は何言ってんだと言わんばかりの声だった。蛇みたいに鋭い目をしてるし三白眼。正直目付きはよくない。ちょっとびびってバンダナをぎゅって握りしめてしまった。
「ご、ごめん……?違うの?」
桃ちゃんが間を割って入ってきた。
「ちげーよ! こいつはただの部活が一緒ってだけで」
「桃! 日誌は?! 」
「あ? あー!! 忘れてたぜ」
桃ちゃんと柊子がわちゃわちゃ話してる。なんとなく彼になんて言えばいいかわからなくってとりあえずバンダナを返す。
「私、桃ちゃんと同じクラスなの。マムシとか言ってたなぁって思って。あだ名なの?」
「そんな呼び方するのアイツだけだ。その呼び方は好きじゃねぇ」
「そ、そう……名前なんていうの?」
「……海堂薫」
マムシとか名前に掠りもしないじゃない。やっぱ目付きとかそういうアレなのかな。バンダナを巻き直す海堂くんの顔をじっと見つめる。あ、でも見開かなかったらそうでも……
「何見てんだ」
「ごめん」
なんか謝ってばっかりだな……。柊子と桃ちゃんが帰って来た。柊子の手には日誌。
「海堂が女子と話してんの初めてみたぜ」
「……そんなことねぇだろうが」
というか話と言うほど話してねぇ。そう言ってくるりと振り返って外周しに戻ってしまった。
「あの人7組の人だよね」
「そうなの?あんま人の顔とか覚えないから……」
「男子テニス部のレギュラーの顔覚えないとかほんとそういうの興味ないのね……」
「だーかーらそんなことないって」
男子テニス部のレギュラーは皆イケメンだーとか友達が言ってたけど、イケメンだったら全員覚えるとかそういう問題ではなくないか。部長の手塚さんくらいなら私も知ってる。
「私不二先輩かっこいいって思う」
「……どんな見た目だっけ?」
「…………あんたねぇ……」
「あっつ……」
信号に引っ掛かり止まる。すると一気に体に熱が溜まるような気がした。このまま倒れそうだなぁとか呑気に考えながら。
「おーい! 鳴坂!! 」
後ろから元気な声が聞こえる。朝から蝉の声ばっか聞いてうんざりだったけど一気に気持ちが晴れる。
「桃ちゃん!! 」
「よっ! 珍しいなこの時間に合うの。」
「英語の予習やろうと思って。桃ちゃんは朝練?」
まあな! って前カゴに乗せてるラケットバッグをばしばし叩く。桃ちゃんが入ってるテニス部は都大会を勝ち進んでついに関東大会に行くらしい。
「頑張ってね、関東大会。私これから暇になるから応援いけるし 」
「??……あー、そうだったな……」
桃ちゃんが少し気まずそうな顔をした。やめてよ。思い出しちゃうじゃん。
先週のこと。私が入っている水泳部の大会。予選敗退してしまったのだ。……実は大会直前で足首を捻挫してしまったのだ。オーバーワークだって医者に言われた。でも私がメドレーに入っていないとシード権は難しいって先生も言っていたからどうすればいいかわからなくなって。捻挫をしていたことを黙って大会に出た。自分が泳ぎきってプールサイドに上がった瞬間その場で足の感覚が無くなって倒れたのを覚えている。怪我を黙っていたことに先生は叱った。先輩達は気づいてあげられなくてごめんね。って泣いてた。1秒ほどの差が付き、負けた。
暫く安静にしてることになって部活に参加できなくなった。あの時どうするのが正解だったか今でもわからないんだ。
「桃ちゃんまでそんな風にならないで。ほら朝練行った行った」
「あ、あぁ! じゃあまた後でな! 」
なんとなく、水泳部に顔を出せない。少し怖かった。友達の
自転車を全速力で飛ばす桃ちゃんの背中がなんだか羨ましかった。私もあんな風に早く前に進みたかった。でも、そんなことを考えても仕方がないからじりじりと太陽に焼かれながら少しずつ学校へと歩いていった。
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「おはよー」
教室に入ると友達の
「そういえば日誌どこいったか知らない?今日私当番なんだけど無くって」
「昨日桃ちゃんが当番だったような……? 」
そういえば前に私もやったことあったような。部活の日誌とごっちゃになって持ち帰ってしまうことがあった。部活日誌と似すぎなんだよね。
柊子が今すぐ回収しとかないと絶対忘れる。とのことでテニス部に一緒に取りに行った。
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「マムシ! だからなんでさっきから俺に並んで走んだよ! 」
「それはこっちのセリフだ! 抜かされたからってムキになってんじゃねぇよ」
「なんだと?! 」
なんか同じ部の人と喧嘩しながら走ってた。こういう時に声掛けるのって悪いかな……と思っていたら一緒に走ってた人が巻いていたバンダナがひら、ってほどけて地面に落ちた。拾い上げると気づいたようで彼は振り返った。
「あ……すんません。」
「いやいや。桃ちゃんの友達?」
「はぁ?!」
彼は何言ってんだと言わんばかりの声だった。蛇みたいに鋭い目をしてるし三白眼。正直目付きはよくない。ちょっとびびってバンダナをぎゅって握りしめてしまった。
「ご、ごめん……?違うの?」
桃ちゃんが間を割って入ってきた。
「ちげーよ! こいつはただの部活が一緒ってだけで」
「桃! 日誌は?! 」
「あ? あー!! 忘れてたぜ」
桃ちゃんと柊子がわちゃわちゃ話してる。なんとなく彼になんて言えばいいかわからなくってとりあえずバンダナを返す。
「私、桃ちゃんと同じクラスなの。マムシとか言ってたなぁって思って。あだ名なの?」
「そんな呼び方するのアイツだけだ。その呼び方は好きじゃねぇ」
「そ、そう……名前なんていうの?」
「……海堂薫」
マムシとか名前に掠りもしないじゃない。やっぱ目付きとかそういうアレなのかな。バンダナを巻き直す海堂くんの顔をじっと見つめる。あ、でも見開かなかったらそうでも……
「何見てんだ」
「ごめん」
なんか謝ってばっかりだな……。柊子と桃ちゃんが帰って来た。柊子の手には日誌。
「海堂が女子と話してんの初めてみたぜ」
「……そんなことねぇだろうが」
というか話と言うほど話してねぇ。そう言ってくるりと振り返って外周しに戻ってしまった。
「あの人7組の人だよね」
「そうなの?あんま人の顔とか覚えないから……」
「男子テニス部のレギュラーの顔覚えないとかほんとそういうの興味ないのね……」
「だーかーらそんなことないって」
男子テニス部のレギュラーは皆イケメンだーとか友達が言ってたけど、イケメンだったら全員覚えるとかそういう問題ではなくないか。部長の手塚さんくらいなら私も知ってる。
「私不二先輩かっこいいって思う」
「……どんな見た目だっけ?」
「…………あんたねぇ……」
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