浸食性の、毒にも似た
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嘗て、決定的な証拠を掴めず、難航していた捜査に光明を齎した、一人の捜査官。
その捜査の直接的な関係者ではなかったにも関わらず、自身の犠牲も厭わない行動の果てに決定的な証拠を掴み、惜しげも無く差し出した儚に興味が湧いた。
憧れを抱かれているのは態度からも明白だったので、食事に誘い、上手く距離を詰めていけば、案の定彼女の憧れは巌徒への恋に変わった。
儚当人は年の差云々よりも、その想いに応えてもらえる訳がないと思い込んでいたらしく、交際を申し込んだ時はとんでもなく驚かれたが、結局彼女は躊躇いがちに頷いた。
ただ、気に入っていた自覚はあったが、恋人として手中に収めるだけに留まらず、婚約者に据える程に入れ込むとは、巌徒としても想定外であったが。
「儚ちゃん」
婚約者に迎え、今は寮から住まいを移させて共に暮らす儚の名を呼びながら、その体を抱き寄せる。
食生活を疎かにしていた所為で痩せ気味だった肢体が、今では程好く肉が付き、沈めた指に応える質感が好ましい。
儚自身は『太った!』と嘆いていた気がするが、しなやかな筋肉は保たれているし、そもそも以前が適正体重かどうかも怪しかったので、聞き入れるつもりは微塵も無い。
唐突な抱擁に儚は驚いた様子を一瞬だけ覗かせたが、直ぐに抱き締める腕を甘受し、幸福感も露に破顔して、巌徒と比べればずっと細く華奢な腕を回す。
「海慈さん」
滴る程の愛情を宿した声で巌徒の名を呼ぶ儚の手に普段の手袋は無く、手首や鎖骨が覗くワンピースを纏っている。
儚を傷付けていた存在から引き剥がし、愛情を以て養育したと云う祖父母と、私生活では親友と呼べる程に親しい相棒。
彼らを除いては存在の露呈を恐れ、過去の出来事から余計に晒せなくなったと聞く傷を、巌徒の前では隠さなくなった。
それでもやはり人目に触れることは嫌がるので、いずれは治す手筈を整える必要があるだろう。
治癒してから時間が経ってしまっている為、完全に消すのは難しいかもしれないが、目立たない程度にまで落ち着けば、きっと彼女は気兼ねなく泳ぎに行ける。
「愛しています、海慈さん」
躊躇いなく紡がれる、傾慕の言葉。
最早逃げ道など与えてやらず、そう遠くない将来、自分の妻として生涯傍らに置き続ける儚の言葉に、巌徒は笑いながら同様に愛情を告げた。
「ボクも、愛してるよ」
ー 浸食性の、毒にも似た ー
(それでも確かに、一つの愛の形)
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所々物騒な気もしますが、夢主は逃げないのでハッピーエンドです。
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