君に望むマネッチア
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露出を酷く厭い、極端に晒されていなかった為、少しも日に焼けていない白い肌。
けれどそれよりも目を奪ったのは、捜査官だからと結論付けるには余りに多く、痛々しい痕跡。
手袋に守られていた手にも、シャツに隠されていた躯幹にも存在が伺えるが、恐らくはこれだけに留まらない。
治癒の度合いを見れば、捜査官になるよりずっと前、悪意を以て付けられたことが容易く予想出来る傷痕に、流石の巌徒も黙り込む。
何かを隠した儘、体を許すことを躊躇いながらも漸く腹を括った儚は、それでも肌が見える位の明かりと必要最低限以上の脱衣を拒んでいた。
瞳に涙さえ浮かべ、最早怯えに近い様子を見せる彼女を奇妙に思い、両手を括るように押さえ付け、そうして暴いた素肌を見てその理由を理解した。
「も、見ないで、下さい。
こんなもの、見ても楽しくないでしょう…?」
余程見られたくなかったのか、今にも泣きそう程に瞳を歪ませ、薄く紅を引いた唇で懇願を紡ぐ儚の顔を眺めながら、古傷の一つに手を這わせる。
皮膚の拘縮の所為で滑らかさが失われ、幾分硬質な質感を確かめるように指先で撫でれば、体がひくりと震えた。
「痛い?」
問えば、儚は何も言わずに首を横に振る。
塞がってから随分と経ち、痛みも殆ど消え失せているのだろう。
それでもきっと、蟠る全てが霧散した訳ではない。
「でも、さ。
コワかったでしょ。
儚ちゃん」
囁いた刹那、儚の吐息が引き攣るように震えたかと思えば、やがてその声は嗚咽に変わる。
頼りなく、今にも消え入りそうなその体躯を抱き寄せ、儚の頬を伝い、零れ落ちる涙の温度を感じながら、巌徒は慈しむようにその背中を撫でた。
「儚ちゃん」
涙を留める術を忘れたかのように、泣き続ける恋人の名を、そっと呼ぶ。
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