雷の御子
そして、数ヶ月経った。子撃神は父と共に鍛錬を積み、迅雷の力をさらに磨いていった。
そんなある日、法螺貝を吹く音がタカマガハラ中に響き渡った。筆神達の収集の合図である。
撃神と壁神は子撃神を連れ、大神アマテラスの御殿へと向かった。そこには他の筆神達が騒がしく集まっていた。一度集えばお祭り騒ぎになるのである。筆神達の中には子を連れた者たちも多かった。
「ワン!」
鶴の一声…ならぬ慈母の一吠え?アマテラスが吠えると筆神達は皆一斉に口を紡ぎ、神々しい白狼の御姿に目を向ける。
「訳:皆、よく集まってくれた。凍神も収集ご苦労。さて、ここで本題だが、我らがタカマガハラに帰還してから9ヶ月が経過した。しかし、我らの活躍も虚しく、ナカツクニの者達の信仰心はかなり薄れ始めている。そのため、また妖魔共の数が増えているのだ。我もまた下って人々に安寧をもたらしたいのは山々だが、ここでやるべきことが多く、それもままならない。そこでだ。」
アマテラスはそう言って自分の後ろに居た可愛らしい子狼を前に突き出す。
「訳:我が子、チビテラスをナカツクニに下し、世直しの旅に出させようと思っている。だが、チビテラスは光明以外の筆しらべは使えないのだ。だから、皆の力を貸してほしい。」
アマテラスの言葉に筆神達は口々に了承の声を述べる。アマテラスは続ける。
「訳:そう言ってくれてありがとう。しかし、懸念点があるのだが…。」そう言ってチビテラスの方を見る。
「訳:それというのも、元々一人の神だったのが分かれた我と違い、この子は初めから何も使えないのだ。だから、今ここで全員分の筆しらべを回収するとなると、恐らくその容量を超えてしまう。しかし、ナカツクニの旅でチビテラスは力をつけていくことだろう。そうなれば、筆神ほどのものは無理でも、子筆神の筆しらべなら回収することも可能となるだろう。」アマテラスは全員を見渡し、続けて言う。
「子筆神達よ、ナカツクニに下りチビテラスの筆しらべの手助けをしてほしい。そして、筆神達は子筆神を連れて行ってくれ。チビテラスが筆しらべを回収したら、戻ってきてくれ。」
筆神、子筆神達はそのようなことなら任せろと言わんばかりに答える。また活躍できるのが嬉しいようだ。
その様子にアマテラスは微笑む。その顔はまさに「慈母」と呼ばられるにふさわしいほど、慈愛に満ちあふれていた。
「母上、行って参ります。あなたと父上から授かったこの名に恥じぬよう、精進して参ります。」
愛くるしい白い子虎はもう大人のような表情で母に別れの言葉を告げる。
「壁神、俺も行ってくる。タカマガハラのことは頼んだ。」
猛々しい白い虎は笑って妻に別れを告げる。
「また…離れ離れになっちゃうね…。」
わたしの口はそんな言葉を発していた。100年も会えないなんてことはもうないけど、愛する人ととの別れはやはり寂しかった。
「そうだな…。でも、俺は必ず戻ってくる。帰ってきたら、お前の心の黒雲を晴らしてやるからな。楽しみにして待っててくれ。」
ああ、彼もきっと、同じ気持ちなのだろう。わたしも前を向かなければ。
「…うん。ありがとう。それじゃ、いってらっしゃい。」
さよならは言わないでおく。笑って見送ろう。彼らの旅の無事を祈って。
「「いってきます!」」
愛おしき二人は声を揃えて言う。やっぱり親子なのだな、と思いそれが可笑しくて笑ってしまう。
壁を登って、だんだん小さくなっていく二人を見届ける。ほろりと溢れた滴を無視し、わたしは今日もお気に入りの寝床で眠る。
そんなある日、法螺貝を吹く音がタカマガハラ中に響き渡った。筆神達の収集の合図である。
撃神と壁神は子撃神を連れ、大神アマテラスの御殿へと向かった。そこには他の筆神達が騒がしく集まっていた。一度集えばお祭り騒ぎになるのである。筆神達の中には子を連れた者たちも多かった。
「ワン!」
鶴の一声…ならぬ慈母の一吠え?アマテラスが吠えると筆神達は皆一斉に口を紡ぎ、神々しい白狼の御姿に目を向ける。
「訳:皆、よく集まってくれた。凍神も収集ご苦労。さて、ここで本題だが、我らがタカマガハラに帰還してから9ヶ月が経過した。しかし、我らの活躍も虚しく、ナカツクニの者達の信仰心はかなり薄れ始めている。そのため、また妖魔共の数が増えているのだ。我もまた下って人々に安寧をもたらしたいのは山々だが、ここでやるべきことが多く、それもままならない。そこでだ。」
アマテラスはそう言って自分の後ろに居た可愛らしい子狼を前に突き出す。
「訳:我が子、チビテラスをナカツクニに下し、世直しの旅に出させようと思っている。だが、チビテラスは光明以外の筆しらべは使えないのだ。だから、皆の力を貸してほしい。」
アマテラスの言葉に筆神達は口々に了承の声を述べる。アマテラスは続ける。
「訳:そう言ってくれてありがとう。しかし、懸念点があるのだが…。」そう言ってチビテラスの方を見る。
「訳:それというのも、元々一人の神だったのが分かれた我と違い、この子は初めから何も使えないのだ。だから、今ここで全員分の筆しらべを回収するとなると、恐らくその容量を超えてしまう。しかし、ナカツクニの旅でチビテラスは力をつけていくことだろう。そうなれば、筆神ほどのものは無理でも、子筆神の筆しらべなら回収することも可能となるだろう。」アマテラスは全員を見渡し、続けて言う。
「子筆神達よ、ナカツクニに下りチビテラスの筆しらべの手助けをしてほしい。そして、筆神達は子筆神を連れて行ってくれ。チビテラスが筆しらべを回収したら、戻ってきてくれ。」
筆神、子筆神達はそのようなことなら任せろと言わんばかりに答える。また活躍できるのが嬉しいようだ。
その様子にアマテラスは微笑む。その顔はまさに「慈母」と呼ばられるにふさわしいほど、慈愛に満ちあふれていた。
「母上、行って参ります。あなたと父上から授かったこの名に恥じぬよう、精進して参ります。」
愛くるしい白い子虎はもう大人のような表情で母に別れの言葉を告げる。
「壁神、俺も行ってくる。タカマガハラのことは頼んだ。」
猛々しい白い虎は笑って妻に別れを告げる。
「また…離れ離れになっちゃうね…。」
わたしの口はそんな言葉を発していた。100年も会えないなんてことはもうないけど、愛する人ととの別れはやはり寂しかった。
「そうだな…。でも、俺は必ず戻ってくる。帰ってきたら、お前の心の黒雲を晴らしてやるからな。楽しみにして待っててくれ。」
ああ、彼もきっと、同じ気持ちなのだろう。わたしも前を向かなければ。
「…うん。ありがとう。それじゃ、いってらっしゃい。」
さよならは言わないでおく。笑って見送ろう。彼らの旅の無事を祈って。
「「いってきます!」」
愛おしき二人は声を揃えて言う。やっぱり親子なのだな、と思いそれが可笑しくて笑ってしまう。
壁を登って、だんだん小さくなっていく二人を見届ける。ほろりと溢れた滴を無視し、わたしは今日もお気に入りの寝床で眠る。
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