猫可愛がり
疾きこと風の如く。「疾風」の筆神、風神は今日も自慢の足を鍛える。走っているところをアマテラスに抜かされてからと言うもの、今度こそは自分が追い抜いてみせると己の走りに磨きをかけているのだ。
駆け抜ける美馬の姿を一匹の白い猫が座って見ていた。馬も猫も青空の雲のように白い体に、紅い隈取をしていた。駆ける度になびく風神のたてがみは勇ましいながらも美麗であった。
「おっ、壁神じゃないか。こんな所でいったいなにしてるんだい?」
自分を見ている白猫の姿に気付いた風神は、爽やかに話しかけた。
「蘇神に猫じゃらし瓶を直してもらってね。今その帰りで、風神が物凄い速さで走ってるから何してるんだろーなって見てたんだ。」
「俺は慈母に追いつく為、風神の名に恥じないよう鍛錬しているのさ。壁神も一緒にどうだい?」 「走るの?わたしも走るの好き!やる!」
長い尻尾を立てて壁神は言った。
背の低い草の生えた地面を蹴る。音もなく走る壁神の姿を関心深く風神は見ていた。馬には蹄があるので、走る度に音が鳴る風神は静かに走る壁神が気になったようだ。
「壁神はなんでそんな静かに走るんだ?」
風神は早速壁神本人に聞いてみる。
「うーんとねぇ。肉球があるからかなぁ?あ、あとね、爪を出し入れできるからかな?」
「爪を!?君はそんなこともできるのかい!?」
壁神は大きく頷く。風神はさらに興味深そうに壁神を見る。
「もしよければでいいんだけど…。君の前足を見せてもらえないかい?」
「うん。いいよー。」
壁神はすんなり了承し、小さな前足をちょこんと出す。風神はその可愛い足をまじまじと見る。
モフモフの足には何やらぷっくりとしたもので、大きいのが真ん中にひとつ、小さいのが大きいのの上の方に四つくっついていた。
「これはねー、肉球。ぷにぷにしてるでしょ?」 「おぉ…。そう言えば慈母にもこれが付いていたような。」
「まぁ、そうだね。でも、爪を出し入れできるのはわたしと撃神だけだよ。」
そこで壁神が自慢げに爪を出したり入れたりしてみせると、風神はまた興味津々でその様子を見ていた。
しばらくして。
「とっても面白いものが見れたよ。ありがとな、壁神。」
「こっちこそー。楽しかったよ、風神!」
壁神はそのまま静かに駆けていった。
(壁神、本当に愛おしいなぁ…。)
風神はそよ風ほど静かにため息を漏らす。美しい白馬は可憐なる白猫に恋をしていた。
実は、先程壁神と話していた時の風神の心は春の嵐のようなのであった。壁神の小さな小さな前足を思い出してまた自身の鼓動の速さを感じる風神。
「もし慈母に追いつけることが出来たら…俺は君に見合う神になるはずだ…。」
そう言って風神はまた、心地の良い音と風を立て走り出すのだった。
駆け抜ける美馬の姿を一匹の白い猫が座って見ていた。馬も猫も青空の雲のように白い体に、紅い隈取をしていた。駆ける度になびく風神のたてがみは勇ましいながらも美麗であった。
「おっ、壁神じゃないか。こんな所でいったいなにしてるんだい?」
自分を見ている白猫の姿に気付いた風神は、爽やかに話しかけた。
「蘇神に猫じゃらし瓶を直してもらってね。今その帰りで、風神が物凄い速さで走ってるから何してるんだろーなって見てたんだ。」
「俺は慈母に追いつく為、風神の名に恥じないよう鍛錬しているのさ。壁神も一緒にどうだい?」 「走るの?わたしも走るの好き!やる!」
長い尻尾を立てて壁神は言った。
背の低い草の生えた地面を蹴る。音もなく走る壁神の姿を関心深く風神は見ていた。馬には蹄があるので、走る度に音が鳴る風神は静かに走る壁神が気になったようだ。
「壁神はなんでそんな静かに走るんだ?」
風神は早速壁神本人に聞いてみる。
「うーんとねぇ。肉球があるからかなぁ?あ、あとね、爪を出し入れできるからかな?」
「爪を!?君はそんなこともできるのかい!?」
壁神は大きく頷く。風神はさらに興味深そうに壁神を見る。
「もしよければでいいんだけど…。君の前足を見せてもらえないかい?」
「うん。いいよー。」
壁神はすんなり了承し、小さな前足をちょこんと出す。風神はその可愛い足をまじまじと見る。
モフモフの足には何やらぷっくりとしたもので、大きいのが真ん中にひとつ、小さいのが大きいのの上の方に四つくっついていた。
「これはねー、肉球。ぷにぷにしてるでしょ?」 「おぉ…。そう言えば慈母にもこれが付いていたような。」
「まぁ、そうだね。でも、爪を出し入れできるのはわたしと撃神だけだよ。」
そこで壁神が自慢げに爪を出したり入れたりしてみせると、風神はまた興味津々でその様子を見ていた。
しばらくして。
「とっても面白いものが見れたよ。ありがとな、壁神。」
「こっちこそー。楽しかったよ、風神!」
壁神はそのまま静かに駆けていった。
(壁神、本当に愛おしいなぁ…。)
風神はそよ風ほど静かにため息を漏らす。美しい白馬は可憐なる白猫に恋をしていた。
実は、先程壁神と話していた時の風神の心は春の嵐のようなのであった。壁神の小さな小さな前足を思い出してまた自身の鼓動の速さを感じる風神。
「もし慈母に追いつけることが出来たら…俺は君に見合う神になるはずだ…。」
そう言って風神はまた、心地の良い音と風を立て走り出すのだった。
