猫可愛がり
神々しい白龍の蘇神は今日は壊れた小さな壺と睨み合っていた。蘇神の筆しらべ、「画龍」はそこにあるはずの物を元通りに戻すことができる。そのため、よく他の筆神が壊れた物を直してくれるよう頼みにくるのであった。
白いその尾に墨をつけ、筆で塗るように壺の壊れた箇所をそっと撫でる。蘇神が撫でた所が黒く塗りつぶされる。すると、“そこ”に墨が集まり、そして、固まったと思ったら壺は元の立派な姿に戻っていた。
「よし…咲ノ花神の壺は直ったぞ…。あとは…、」
そう言って蘇神は後方を見やる。そこには、割れた鏡や縁の欠けた茶碗、その他多くの壊れた物達が転がっていた。
「うむ…。いくら何でも流石に多すぎやしないかのう?これも皆妖怪共が暴れ回って破壊したそうじゃが…。」
この壊れ物を持ってきた、自分と同じ白い身体に紅の隈取をした獣達の姿を思い浮かべる。
「全く…儂も休んどられんのう。」 そう言う蘇神の目は手にしている宝玉のように輝いていた。
「よみがみー!あーそーぼー!」
蘇神がまた修復作業をしていると、どこからか自分を呼ぶ声がした。声のする方を見てみると、白銀の可愛らしい子猫がちょこんと座っていた。 「壁神か。少し待っていておくれ。」
蘇神はそう言って壊れた花瓶に向き直り、作業を再開した。しかし、遊び盛りの子猫の壁神が犬のように「待て」などするはずもない。
壁神は作業をする蘇神の上に跳び乗って蘇神の画龍をじいっと見つめる。蘇神の尾の動きは子猫にとって相当面白いものだったのだろう。壁神は蘇神の尾に飛び掛かった。大きな獲物を捕まえて壁神は嬉しそうに尻尾をゆるりと揺らす。
「壁神。」
白龍が子猫を呼ぶ。怒られるのかと思い壁神は縮こまるが、次に聞こえたのは思ってもみない言葉だった。
「大丈夫か?怪我はしとらんかのう?」 蘇神は穏やかにそう言った。
「え、だ、だいじょうぶだけど…。よみがみ、おこらないの?」
「ほっほっほ、何故怒る必要がある。子どもが元気なのは良いことではないか。それより儂はお前が花瓶の破片を踏んづけていないかが心配じゃ。」
「え?」
壁神が見てみると、自分が先程飛び掛かった所にひっくり返った壊れた花瓶と白色の小さな欠片が点々と散らばっていた。
「壊れた物だからのう。破片が中に残っていることがあるのじゃ。…本当に大丈夫か?」
「うん!どこもふんでないよ!」
「それならよかった。」
蘇神は静かに笑った。長い長いひげがそうっとなびく。
「蘇神ー。わたしの猫じゃらし瓶が壊れちゃったぁ。」
小さく高い声で壁神が蘇神を呼ぶ。背負っていた風呂敷を広げる。すると中から割れた白い花瓶が出てきた。
「おぉ、これはまた…立派な花瓶じゃのう…。今直してやるからのう。」
少しして。
「直ったぞ。壁神。それにしても、本当にいい花瓶じゃ。」
「えへへー。ありがとう。わたしのお気に入りなんだ。」
壁神は満足気に笑って答える。蘇神も優しく目を細め壁神を見つめる。
「昔は儂が待てと言っても聞かずに儂の邪魔をしていたが、今となってはしっかりと待てるようになったものじゃ。」
「そ、それはもう昔の話だよ!わたし、もう大人だもん!」
「そうじゃったな。…ほれ。」
蘇神は花瓶もとい猫じゃらし瓶を包んで壁神に渡した。
「ありがとう!」
「またのう。」
だんだんと小さくなっていく白猫を白龍は愛しい孫のように大切に、大切に見守っていた。
白いその尾に墨をつけ、筆で塗るように壺の壊れた箇所をそっと撫でる。蘇神が撫でた所が黒く塗りつぶされる。すると、“そこ”に墨が集まり、そして、固まったと思ったら壺は元の立派な姿に戻っていた。
「よし…咲ノ花神の壺は直ったぞ…。あとは…、」
そう言って蘇神は後方を見やる。そこには、割れた鏡や縁の欠けた茶碗、その他多くの壊れた物達が転がっていた。
「うむ…。いくら何でも流石に多すぎやしないかのう?これも皆妖怪共が暴れ回って破壊したそうじゃが…。」
この壊れ物を持ってきた、自分と同じ白い身体に紅の隈取をした獣達の姿を思い浮かべる。
「全く…儂も休んどられんのう。」 そう言う蘇神の目は手にしている宝玉のように輝いていた。
「よみがみー!あーそーぼー!」
蘇神がまた修復作業をしていると、どこからか自分を呼ぶ声がした。声のする方を見てみると、白銀の可愛らしい子猫がちょこんと座っていた。 「壁神か。少し待っていておくれ。」
蘇神はそう言って壊れた花瓶に向き直り、作業を再開した。しかし、遊び盛りの子猫の壁神が犬のように「待て」などするはずもない。
壁神は作業をする蘇神の上に跳び乗って蘇神の画龍をじいっと見つめる。蘇神の尾の動きは子猫にとって相当面白いものだったのだろう。壁神は蘇神の尾に飛び掛かった。大きな獲物を捕まえて壁神は嬉しそうに尻尾をゆるりと揺らす。
「壁神。」
白龍が子猫を呼ぶ。怒られるのかと思い壁神は縮こまるが、次に聞こえたのは思ってもみない言葉だった。
「大丈夫か?怪我はしとらんかのう?」 蘇神は穏やかにそう言った。
「え、だ、だいじょうぶだけど…。よみがみ、おこらないの?」
「ほっほっほ、何故怒る必要がある。子どもが元気なのは良いことではないか。それより儂はお前が花瓶の破片を踏んづけていないかが心配じゃ。」
「え?」
壁神が見てみると、自分が先程飛び掛かった所にひっくり返った壊れた花瓶と白色の小さな欠片が点々と散らばっていた。
「壊れた物だからのう。破片が中に残っていることがあるのじゃ。…本当に大丈夫か?」
「うん!どこもふんでないよ!」
「それならよかった。」
蘇神は静かに笑った。長い長いひげがそうっとなびく。
「蘇神ー。わたしの猫じゃらし瓶が壊れちゃったぁ。」
小さく高い声で壁神が蘇神を呼ぶ。背負っていた風呂敷を広げる。すると中から割れた白い花瓶が出てきた。
「おぉ、これはまた…立派な花瓶じゃのう…。今直してやるからのう。」
少しして。
「直ったぞ。壁神。それにしても、本当にいい花瓶じゃ。」
「えへへー。ありがとう。わたしのお気に入りなんだ。」
壁神は満足気に笑って答える。蘇神も優しく目を細め壁神を見つめる。
「昔は儂が待てと言っても聞かずに儂の邪魔をしていたが、今となってはしっかりと待てるようになったものじゃ。」
「そ、それはもう昔の話だよ!わたし、もう大人だもん!」
「そうじゃったな。…ほれ。」
蘇神は花瓶もとい猫じゃらし瓶を包んで壁神に渡した。
「ありがとう!」
「またのう。」
だんだんと小さくなっていく白猫を白龍は愛しい孫のように大切に、大切に見守っていた。
