「やっと見つけた。キョーコ…会いたかった。」


とても優しくてとても穏やかな彼と
結婚して６ヶ月

幸せな日々を過ごしていた私の前に現れたのは
小さい頃
私の両親を殺した隣に住んでいた男の子

『な、んで……っ』

成長して見た目も変わっていた彼
百之介くん…いや尾形さん
ひと目見てわかったのは尾形さんの目

私をじっと見つめてくるあの目は
今も変わらず恐怖でしかなかった…

「なんで…？逆になんでキョーコが北海道にいる？そんなに嫌だったのか？」

いるはずのない人が目の前にいて思わずでた言葉に反応する尾形さん
彼の言う通り
私は尾形さんが怖くて故郷から逃げるように出たのだ


ある会話がきっかけで
親に怒った私はそのまま家を出たが
そこらへんを歩き周り
夕方くらいには怒りが収まり反省して家に戻ると血まみれで倒れてる両親。
その両親を見下ろしてる尾形さん…

そんな光景を見てから私は尾形さんが怖くて震えが止まらなくなったのだ

もしかしたら私も殺されるのではないか。
そんな恐怖が毎日私を苦しました
安心して寝れなくなり日中も外に出るのが怖くて
いっその事自分で……なんて考えるようにもなった

でもそんな勇気があるはずもなく
耐えきれなくなった私は逃げるように村から出たのだ

見つからないようにと何年もかけていろんな所へ行った
やっと海をこえて北海道にたどり着き
ここまで来たら大丈夫なんて思って
ここで出会った彼と結婚したのに
幸せな時間は終わってしまった
そう思った。

「まぁ…そうだよな。村の連中もうるさかったもんなぁ」

『………は？』

「あの日。キョーコの親を消した日からあいつ等ベラベラとうるさかったからな」

あんな村で俺と結婚なんてしたくない気持ちもわかる…
なんて言いながら私の手を優しく握ってくる尾形さん…

「でも…なんでお前…結婚してんだ？あんなクソ野郎と……」


なにを言っているのか私には全く理解できなくて
一言も声が出せなくア然と見ていた私だったが
ギロリと見下ろす尾形さんに
思わずビクッと震えあがる

「早く結婚したいね。なんてキョーコが言ってたのに…ほかの男と結婚してるなんてなぁ…」

優しく握っていた手だが
話が進むにつれギチギチと力が入り握りしめる尾形さん…
痛くて顔が歪むも怖くて未だに声が出なかった

『………っ』

「あぁ…すまんすまん。痛かったよなぁ」


なにも喋らずただ顔を歪ます私に気づいた尾形さんは
軽く謝り手の力を緩ます
自分が悪いと思ってないのは私でもわかる…

『わ、私が茨城出た理由は、、』

「あ？もうわかってるからいいよ。あいつ等のせいだろ」

『ち、ちが……』

「俺にも言わず出たって事は相当辛かったんだろう。遠い知らない地で女１人でやっていくのも………大変だもんな」


尾形さんが怖くて逃げました。
勇気を出して言おうとするも私の言葉を遮り話を進める尾形さん

気付けなくてすまん。
そう言って頭をポンポンと撫でてくる

「大丈夫。また俺がなんとかしてやるから」

『ま、また……？』

「あ？お前の両親殺してあげただろ」

『』

「親と喧嘩した理由が俺と結婚させてくれないからって……泣いて怒るキョーコは本当に可愛かったなぁ…」


殺してあげた

私も殺されると思っていたが彼は
私のために両親を殺したみたいだ…

『な、んで、…っ』

やっと尾形さんを見上げた私に
満足そうな顔でニヤリと笑う尾形さん。
両手で私の頬を包むように顔を上げられた

「親に反対されるのが嫌だったんだろう？
なら、そんな言葉を発せないようにしたらいいだけだろう？」

『………っ』

真剣に答える尾形さんの言葉に
思わずヒュッと息が止まった気がした

尾形さんの言ってる言葉が全くわからない
でも両親が殺された理由が私のせいだというだけなのはわかった…

「あいつ等全員殺す事ができればよかったんだがな…」


尾形さんの言葉が理解できないまま
またわからない事を淡々と話を勧めていく


殺されると思って何年もかけ逃げてきた
でもそれは無駄だったみたい…
そして両親が殺されたのは私のせいで…

そんな事を考えてると
頭が真っ白になって…

真っ黒なあの怖い目に見下され自然と目を閉じてしまった







「……キョーコ？泣いて、、どうしたの？」
『百之介くんと結婚するんだってお父さんに言ったら…よく考えなさいって……』
「……え？」
『なんでそんなひどい事言うんだろ…ひどいよ…』
「キョーコ……」
『私は絶対百之介くんと結婚……するもん』
「じゃあ…言わせないようにしなきゃ……ね」