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「―――ぃ、ぉい、おい!!」
いつ眠ってしまったのか。
いつも以上にカーテンから朝日が入ってきているのか、こんなに眩しいと思う朝は初めてだ。
「あー、あと五分寝かせて。あと五分で、起きる・・・・と思うから、さ・・・・・・・・・・」
「てめぇ、ここを俺様の領地と知ってのことか。ふざけてんじゃねぇよ、あーん?」
「だーかーらー、五分後に起きるってば・・・」
「こんなとこで寝ていいと思ってんのか、てめぇは。いい加減起きろ」
少しずれた会話に耐えられなくなったのか、彼は寝ている彼女の手を引き、無理やり身体を起こす。
「なによー、お父さん」
「誰がお父さんだ」
「・・・・・・・・・・・・・あれ?どちら様??」
彼がため息をつくまで、あと一秒。
「――で、貴方はここに住んでいる坊ちゃんなんですね」
「御曹司って言え。坊ちゃんなんて言うな」
「朝から人を叩き起こしておいて命令口調ですか。腹立ちますね貴方」
「てめぇ・・・この俺様が親切に起こしてやったって言うのにその態度はなんだ!!?礼の一つも言えねぇのかてめぇは!!」
俺は、頭に完全に血が上っていた。
「あの、そんなに朝から怒ってると顔に血が上りますよ。ほら、今も頬が赤くなってます」
「これはてめぇがさっき俺をひっぱたいたからだろぅが!!忘れたとは言わせねぇぞ!!!」
俺が手を引いて起こせば、父親と勘違いされた。
怒りをなんとか納めて否定してから、立たせてやろうとしたらいきなり「チカン――ッ!!」などと言い、俺の左頬を強打。
思い出しても腹立たしいことこの上ない。
それでも相手は女。
しかも、我が家の警備体制は万全にも関わらず、朝起きてみると彼女は庭に倒れるように眠っていたのだ。
何かよくわからないが、事情はきっとあるのだろう。それを聞くために、今庭で俺は立っているのだから。
「で、お前名前は?住所は?学校は?どうしてここで寝ていた?」
俺が一度に質問をすると、女は少し首を傾げた。
(まさかコイツ・・・・・・・・迷子?いや、記憶喪失か?)
俺の脳内を、この二つの単語がグルグルと目まぐるしく回る。
「あの、景吾様・・・・・」
背後から、慎ましい態度で現れたセバスチャン。俺は、視線をそちらへ向けた。
「そろそろ学校への準備をなされた方がよろしいかと・・・」
「あぁ、そうだな。なら、この女を警察に届けてくれ」
「・・・・・・・?」
先ほどの女と同じように首を傾げたセバスチャンに俺の怒りのゲージはさらに上へと上昇していく。
「このバカ面した女だ!さっさと警察に連れて行けっ!!」
「・・・・・け、景吾様・・・どこに、女性が、いらっしゃるので・・・・・・?」
その言葉に、俺はただ驚くしかなかった。
「なに・・・・・・?お前、この女が見えないのか」
「・・・・・・・・・は、はい。申し訳ありません」
全く以って否はないのだが、セバスチャンはしきりに謝罪の言葉を繰り返す。
しかし、こうも何度も謝られると、まるで俺の目が可笑しいのではないかと思えてきた。
(・・・・俺にしか、見えないのか?)
「・・・あの、お取り込み中すいませんが」
「・・・・・・・景吾様?」
女とセバスチャンの声が、重なる。
おそらく、声も俺にしか聞こえないんだろう。
「セバスチャン、朝食はいい。それと、すぐに車を手配しろ。もう学校へ行く」
「か、かしこまりました」
慌てて室内へと駆けていったセバスチャンを見送り、俺は女の方へ振り向く。
「なんだ」
「あ、えっと・・・・・・」
「早く言え」
「・・・・・・・・・・お手洗いをお借りしたいのですが」
跡部景吾、本日二度目のため息。
お手洗いを借りて出ると、そこには制服に着替えた彼の姿があった。
先ほどひっぱたいてしまった頬の赤みは、だいぶ消えていたので、少しホッとしながらもアタシは改めてこの家の大きさを実感した。
まず、トイレも無駄に広かった。
「おい、着いて来い」
「あ、はい」
なんとなく着いていけば、車に乗せられた。
車内は、運転手さんとは話せないように遮断された間仕切りのようなものがあった。
「これでゆっくり話せる」
「はぁ・・・」
「お前、名前は?」
「天月ヒカルです」
「そうか。天月、お前の住所は?」
先ほどの庭の時とは違い、少し落ち着きのある流れるような声に、思わずアタシは素直に質問に答え続けた。質問攻めが終わったかと思うと、彼は何かを考えているようだった。
「天月、お前の住所は・・・・ここには存在していない」
「は?」
「俺の知る限りだ。家に帰ってから調べてみるが、多分存在していないだろう。しかし、お前が住所を偽っているとは考えにくい」
彼は、私と視線を合わせて更に続ける。
「お前の着ている制服も、この辺じゃ見ない制服だ。しかも、お前が寝ていた庭。あそこは一般人はおろか、凄腕の強盗犯ですら侵入困難と言われている。更に、お前の姿は今のところ俺にしか見えていない」
「そ、そうですね・・・何故なんでしょう?」
「何故かはわからねぇが、俺は家を出る前に全てのメイド達に見送られている。そんなアイツらが、俺の隣にいたお前の存在に気付かないはずがねぇ」
そうか、そのために私をあんな大勢のところを通らせたのか。そして、私が家の中を見ながら歩き、彼に話しかけていても彼が無視をしていたのは、メイドたちの反応を見るためだったんだ。
「つまり、俺の結論は――」
「結論は?」
「お前が幽霊だということだ」
「失礼ですね、幽霊じゃありませんよ!!」
「俺様には霊感はないと思ってたんだがな。まさか見えるとは思わなかったぜ」
「ちょ、一人で自己完結しないでください!私は確かに生きて・・・・・・・・」
そこではた、と私は思い返した。自分が眠りにつく以前のことを。
「死んでても、おかしくは・・・・・ないですけど」
「やはりな。とりあえず、警察にお前の身元の確認を頼んでおいた。お前がいつ死んだのか、どうやって死んだのかもわかる。それがわかってからお前を成仏させるために霊媒師も呼んでやるから、それまではおとなしくしてろよ」
べらべらと沢山話してくれた彼は、フッと初めて微笑んだ。優しい微笑みではなく、邪魔だお前と言わんばかりの微笑みだったけど。
(やっぱりこの人、なんか腹立つ)
いつ眠ってしまったのか。
いつも以上にカーテンから朝日が入ってきているのか、こんなに眩しいと思う朝は初めてだ。
「あー、あと五分寝かせて。あと五分で、起きる・・・・と思うから、さ・・・・・・・・・・」
「てめぇ、ここを俺様の領地と知ってのことか。ふざけてんじゃねぇよ、あーん?」
「だーかーらー、五分後に起きるってば・・・」
「こんなとこで寝ていいと思ってんのか、てめぇは。いい加減起きろ」
少しずれた会話に耐えられなくなったのか、彼は寝ている彼女の手を引き、無理やり身体を起こす。
「なによー、お父さん」
「誰がお父さんだ」
「・・・・・・・・・・・・・あれ?どちら様??」
彼がため息をつくまで、あと一秒。
「――で、貴方はここに住んでいる坊ちゃんなんですね」
「御曹司って言え。坊ちゃんなんて言うな」
「朝から人を叩き起こしておいて命令口調ですか。腹立ちますね貴方」
「てめぇ・・・この俺様が親切に起こしてやったって言うのにその態度はなんだ!!?礼の一つも言えねぇのかてめぇは!!」
俺は、頭に完全に血が上っていた。
「あの、そんなに朝から怒ってると顔に血が上りますよ。ほら、今も頬が赤くなってます」
「これはてめぇがさっき俺をひっぱたいたからだろぅが!!忘れたとは言わせねぇぞ!!!」
俺が手を引いて起こせば、父親と勘違いされた。
怒りをなんとか納めて否定してから、立たせてやろうとしたらいきなり「チカン――ッ!!」などと言い、俺の左頬を強打。
思い出しても腹立たしいことこの上ない。
それでも相手は女。
しかも、我が家の警備体制は万全にも関わらず、朝起きてみると彼女は庭に倒れるように眠っていたのだ。
何かよくわからないが、事情はきっとあるのだろう。それを聞くために、今庭で俺は立っているのだから。
「で、お前名前は?住所は?学校は?どうしてここで寝ていた?」
俺が一度に質問をすると、女は少し首を傾げた。
(まさかコイツ・・・・・・・・迷子?いや、記憶喪失か?)
俺の脳内を、この二つの単語がグルグルと目まぐるしく回る。
「あの、景吾様・・・・・」
背後から、慎ましい態度で現れたセバスチャン。俺は、視線をそちらへ向けた。
「そろそろ学校への準備をなされた方がよろしいかと・・・」
「あぁ、そうだな。なら、この女を警察に届けてくれ」
「・・・・・・・?」
先ほどの女と同じように首を傾げたセバスチャンに俺の怒りのゲージはさらに上へと上昇していく。
「このバカ面した女だ!さっさと警察に連れて行けっ!!」
「・・・・・け、景吾様・・・どこに、女性が、いらっしゃるので・・・・・・?」
その言葉に、俺はただ驚くしかなかった。
「なに・・・・・・?お前、この女が見えないのか」
「・・・・・・・・・は、はい。申し訳ありません」
全く以って否はないのだが、セバスチャンはしきりに謝罪の言葉を繰り返す。
しかし、こうも何度も謝られると、まるで俺の目が可笑しいのではないかと思えてきた。
(・・・・俺にしか、見えないのか?)
「・・・あの、お取り込み中すいませんが」
「・・・・・・・景吾様?」
女とセバスチャンの声が、重なる。
おそらく、声も俺にしか聞こえないんだろう。
「セバスチャン、朝食はいい。それと、すぐに車を手配しろ。もう学校へ行く」
「か、かしこまりました」
慌てて室内へと駆けていったセバスチャンを見送り、俺は女の方へ振り向く。
「なんだ」
「あ、えっと・・・・・・」
「早く言え」
「・・・・・・・・・・お手洗いをお借りしたいのですが」
跡部景吾、本日二度目のため息。
お手洗いを借りて出ると、そこには制服に着替えた彼の姿があった。
先ほどひっぱたいてしまった頬の赤みは、だいぶ消えていたので、少しホッとしながらもアタシは改めてこの家の大きさを実感した。
まず、トイレも無駄に広かった。
「おい、着いて来い」
「あ、はい」
なんとなく着いていけば、車に乗せられた。
車内は、運転手さんとは話せないように遮断された間仕切りのようなものがあった。
「これでゆっくり話せる」
「はぁ・・・」
「お前、名前は?」
「天月ヒカルです」
「そうか。天月、お前の住所は?」
先ほどの庭の時とは違い、少し落ち着きのある流れるような声に、思わずアタシは素直に質問に答え続けた。質問攻めが終わったかと思うと、彼は何かを考えているようだった。
「天月、お前の住所は・・・・ここには存在していない」
「は?」
「俺の知る限りだ。家に帰ってから調べてみるが、多分存在していないだろう。しかし、お前が住所を偽っているとは考えにくい」
彼は、私と視線を合わせて更に続ける。
「お前の着ている制服も、この辺じゃ見ない制服だ。しかも、お前が寝ていた庭。あそこは一般人はおろか、凄腕の強盗犯ですら侵入困難と言われている。更に、お前の姿は今のところ俺にしか見えていない」
「そ、そうですね・・・何故なんでしょう?」
「何故かはわからねぇが、俺は家を出る前に全てのメイド達に見送られている。そんなアイツらが、俺の隣にいたお前の存在に気付かないはずがねぇ」
そうか、そのために私をあんな大勢のところを通らせたのか。そして、私が家の中を見ながら歩き、彼に話しかけていても彼が無視をしていたのは、メイドたちの反応を見るためだったんだ。
「つまり、俺の結論は――」
「結論は?」
「お前が幽霊だということだ」
「失礼ですね、幽霊じゃありませんよ!!」
「俺様には霊感はないと思ってたんだがな。まさか見えるとは思わなかったぜ」
「ちょ、一人で自己完結しないでください!私は確かに生きて・・・・・・・・」
そこではた、と私は思い返した。自分が眠りにつく以前のことを。
「死んでても、おかしくは・・・・・ないですけど」
「やはりな。とりあえず、警察にお前の身元の確認を頼んでおいた。お前がいつ死んだのか、どうやって死んだのかもわかる。それがわかってからお前を成仏させるために霊媒師も呼んでやるから、それまではおとなしくしてろよ」
べらべらと沢山話してくれた彼は、フッと初めて微笑んだ。優しい微笑みではなく、邪魔だお前と言わんばかりの微笑みだったけど。
(やっぱりこの人、なんか腹立つ)