審神者と騎空士と魔法使いと英霊が来る特異点

※このお話は携帯アプリの刀剣、グラブル、FGO、タガタメ、アカセカのヒロインちゃんたちが集うクロスオーバーな世界(クラフィは世界観とキャラのみ)のお話です。完璧俺得内容のため少しでも嫌悪感を持たれる方はそのまま見なかったことにして他のお話へ旅立たれた方が良さげです。
※アカセカの主人公はコミカライズ版から拝借し“天宮朱里”という名前で出てきます(外見は公式とは異なり、性格もクールビューティー?な感じに寄せてます)。
※筆者がFGOの人理修復終えてないため設定がばがばです。ご了承ください。






 黒髪の女性「どうやら皆さんお揃いのようですね」

 がらんとした京都駅にまた別の女性の声が響いた。5、6人の男性を後ろに従えた女性がエスカレーターを降りて来るのが見える。といってもヘリコプター衝突事故のせいでエスカレーターは止まっているため自分の足で階段を降りるように下って来た。女性の風貌は黒髪を後ろで一つに束ね、服装は巫女装束のような、丁度審神者が普段来ている装束に近い服装をしている。明らかに只者ではない。こんな現代の20XX年にもなって着物やらの和装男子をぞろぞろ引き連れて歩く巫女装束の女性なんて審神者以外にいるだろうか。そこまで考えて審神者は自分の同業者であると考え降りて来た女性へ駆け寄った。

 審神者「あの、初めまして。あなたも審神者ですか?」

 審神者は聞いてからその女性が審神者ではないと確信した。なぜなら女性の後ろに控えている男性たちは皆刀剣男子として登録されている名鑑に載っていない人たちだったからだ。自分の軽率な行動に反省しながらも思わず後退る。

 黒髪の女性「はじめまして。さにわ……は何か存じ上げませんが、太陽の巫女を務めています、天宮朱里と申します。」

 天宮朱里は深々と頭を下げた。後ろの男性たちは普通に立ってはいるが、いつでも天宮朱里を守れる位置に留まっている。しかしどうやら自分たちに危害を加える気はないようで、審神者は少しの警戒を解いた。

 藤丸立夏「私は藤丸立夏。さっき言ってた“皆揃ってる”っていうのはどういう意味?」

 藤丸の問いにここに居合わせた全員が頷いた。しかし口を開こうとした天宮朱里の代わりに、天宮朱里の足元から飛び出た白いウサギのようなそうじゃないような小動物が先に声を上げた。

 白い小動物「敵だぞー!!」
 天宮朱里「そうね。皆さん、敵のようです」

 白い小動物は慌てふためいているが、まるで正反対かの様に天宮朱里は落ち着いた様子で藤丸立夏たちに敵の襲来を告げた。藤丸立夏たちが周囲を見渡すと、少し離れたところだが周囲を敵と思わしき姿の異形な者たちが取り囲んでいた。魚の骨のようなものが宙に浮かび、口には刀を加えている。それが何十匹も浮遊しているのだ。

 審神者「あれ、時間遡行軍です!」
 ジータ「っていうと?」
 審神者「敵です!」
 ジータ「だよね!」

 マシュ「先輩!」
 藤丸立夏「うん、カルデアとの通信が途絶えてるみたい」

 空に向かって話しかけるマシュと藤丸立夏に審神者は首を傾げた。

 乱藤四郎「主さん! この辺りなんか変だよ。さっきと違う」
 審神者「違うって?」
 乱藤四郎「うーん、なんか変な感じする」
 審神者「それじゃあ皆になんて言えばいいかわからないよ」

 審神者は鞄に忍ばせている短刀、乱藤四郎と小声でやり取りしていた。乱藤四郎に言われ、審神者は周辺を見回すが、敵の数が異常に増えてきていることしかわからない。敵が時間遡行軍なら刀剣男子でなければ戦うことが出来ない筈だ。ならここに刀剣男子たちを呼び寄せなければならないが、周囲の人間――ジータや藤丸立夏たち――を信頼して良いものかもわからない。ただ、同じ危機的状況下にいることはわかっていた。

 リズベット「うー、何か変な感じがするー」
 審神者「あなたも!?」
 リズベット「ってことはあなたもわかる!? 敵が来てからこの周囲が何かに包まれてる気がするの」
 藤丸立夏「何かに包まれるって?」
 リズベット「詳しいことはわかんないけど、空気が違うっていうかなんていうか……」
 マシュ「そのせいで通信が途絶えているんでしょうか?」
 リズベット「藤丸立夏さん、ツウシンって何?」
 藤丸立夏「立夏でいいよ。なんていうか、私たちが別世界に飛ばされた後のサポート? みたいなことをしてくれてる人がいて、別世界から通信を使って私たちと話すことが出来るんだ」
 リズベット「なるほど。便利な魔法ですね!」
 立夏「うーん、魔法……とは違うような、でもそう言っていいのかどうか……」

 立夏がうーんと唸っている間にもジータは戦闘態勢に入っていた。「でやぁ!」と大きな掛け声とともに剣を振り回す。ルリアを庇いながらも器用に1匹、2匹と敵をなぎ倒していった。ジータの死角はビィが代わりに目となって指示を飛ばしたりしている。

 審神者「ジータさんって人、時間遡行軍を斬ってる?」
 乱藤四郎「あの人本当に人間?」
 審神者「人間にも斬れないことはないってことなのかな?」

 そもそも人間が過去に行くことは出来ないため刀剣男子という刀に降ろした付喪神に代わりに戦ってもらっているため敵を刀剣男子たちが倒してはいるが、現代に時間遡行軍が来れば軍や自衛隊が出動して対応するだろう。人間に倒せないことはない。ただ過去には人間が行けないというだけだ。

 審神者「それにしても、本当に現代に時間遡行軍がいる。本当に、時代修正者は私たちよりも未来人ということなの?」
 乱藤四郎「主さんっ!!」

 審神者も目の前まで敵が迫って来ていた。前線でリズベット達が奮戦するもそれ以上に敵の数が多く、少しずつ押され始めたのだ。鞄の中の乱藤四郎が叫んだが、彼が人間の姿へと具現化される前に敵は後方へ吹っ飛ばされた。

 ジータ「大丈夫!?」
 審神者「あ、ありがとう!」
 ルリア「ジータ、敵が多すぎます」
 ジータ「そうだね、そろそろ援軍が欲しいかも!」

 言いながらジータは敵をなぎ倒していく。

 ビィ「おい! 危ねぇぞっ!!」
 ルリア「ジータッ!!」

 前方から3体の敵に同時に攻撃を仕掛けられ、避けようとしたジータにそれを見計らってか横から敵が襲い掛かって来た。流石にこの数を目で追うことも難しく、ビィの補助にも限界があった。マシュも既に戦闘態勢に入り、立夏は召喚を行っている。リズベットも敵の数が多いため錬金術を使用し、ファントムを呼び出していた。敵を知らせてくれた天宮朱里と名乗る女性たちも戦っているが場所が離れている。

 審神者「ジータさんっ!!」

 審神者はとっさに鞄から短刀を取り出していた。短刀は自ら審神者の手を離れると刀の姿から人型へと変貌しジータの元へ飛ぶように駆ける。

 乱藤四郎「間に、合わ……ない!!」

 乱藤四郎は懸命に手を伸ばすがどう考えても届く距離ではなかった。自分が太刀なら目の前の人間を助けることが出来たんだろうか。乱藤四郎は小さな体の自分を呪った。敵の刀がジータの首目掛けて振り下ろされる。その時だった。

 ジータ「わわわっ!」

 ジータの周りにいる全ての敵に光の矢が降り注いだ。その衝撃に耐えかねてジータが後ろに倒れこんだところを乱藤四郎が抱き留めた。

 乱藤四郎「大丈夫!?」
 ジータ「ありがとう! ……あれ、でも誰でしたっけ?」
 乱藤四郎「(ずっと傍で話聞いてたとか今説明面倒っ!)味方です!」
 ジータ「そっか! ありがとう!」
 乱藤四郎「(あっさり信じた!)」

 審神者「ジータさん、大丈夫ですか? 乱ナイスキャッチ!」
 ジータ「ミダレちゃん、審神者さんの仲間だったんだね!」
 乱藤四郎「仲間というか……そう! 仲間です!」
 審神者「(乱、説明面倒になったな!)それにしてもさっきの光の嵐みたいなのなんだったんでしょうか?」
 ジータ「あれね! うん、さすが天才!」

 ジータが形無しに褒めると空から女性が降って来た。審神者は慌てたがジータは平然としている。

 空から降って来た女性「もう一人の天才を忘れてるんじゃなぁい?」
 ジータ「ぶちかましてやって! メーテラ!」
 メーテラ「そう、完全無欠のメーテラ様とは……私のことよ!!」

 メーテラが弓を構えた。何もないはずの右手からピンクの矢が形成されていく。その弓を弾くと今度はピンクの矢が周囲の敵へ降り注いだ。

 メーテラ「はいおしまーい」

 そう言うとひらりと回ってウインクして見せた。しかし砂煙の向こうからまだまだ敵は湧いてくる。

 天宮朱里「一度蹴散らしましょう」

 天宮朱里はそう言って腕を真っすぐに伸ばすと、手の先には何もない空間から天宮朱里の周囲を囲めるくらいのスクリーンが出現した。スクリーンには6色のカラーボールが所狭しと並んでいる。

 天宮朱里「あら、いつもは5色なのに、6色になっていますね。それにいつもよりまとまりがないように見えます」

 スクリーンをまじまじと観察している朱里の目の前でリズベットが氷の魔法を繰り出していたが思うように操れていなかった。未だ思うように魔術をコントロール出来ていないようだ。

 天宮朱里「リズベットさんでしたか?」
 リズベット「え? うん! そうだよ!」
 天宮朱里「もう一度氷の魔法を出せますか?」
 リズベット「出来るけど、うまくコントロール出来ないみたいなの!」
 天宮朱里「私がサポートします」

 天宮朱里はそう言ってスクリーンに手を触れた。左から右へ、手を何度か動かすと天宮朱里の目の前のスクリーンが青一色に染まる。

 天宮朱里「今です!」
 リズベット「なんかよくわかんないけど、アイシクルエッジ!!」

 今までとは比にならないくらいの巨大な氷が群がる敵の中心部に落とされ、地震のように駅が震えた。

 リズベット「え、ええぇぇぇぇぇぇぇ!? なんで? うまくコントロールできなかったのに、それどころかいつもよりめちゃくちゃ大きな魔法になっちゃった!」
 天宮朱里「見たところこの周囲は様々な属性で溢れかえっている上、入れ替わりが激しいみたいです。でも今みたいに属性を一つに固めてしまえばきっといつもより効果が大きくなると思ったんです」
 高杉晋作「さ、流石太陽の巫女……か?」
 安倍晴明「というよりも彼女の適応能力と判断能力が素晴らしく高かったということでしょう。この状況で自分は何が出来るかを判断し実行できる。素晴らしいですね」
 リズベット「んーよくわかんないけど、助かったよ。ありがとう! 天宮朱里さん!」
 天宮朱里「朱里でいいですよ」

 そう言って朱里はにっこりと微笑んだ。あんな優しい笑顔はそうそう見られない、と高杉晋作は後に語ったと言う……。朱里は太陽の巫女として祈りをささげることによりツクヨミ男子たちのお攻撃力を高めていた。そのおかげで襲い掛かってくる式神を倒すことが出来たのだ。正確には太陽の巫女にしか見えない周囲の属性の色をまとめることによって人が持つそれぞれの属性の力を高め、それが攻撃力向上に繋がっていた。
 
 朱里「では、いったん引きましょうか」

 朱里の提案に同意し、皆一様に出口へと駆ける。

 ジータ「いったい!!」

 しかし先頭を走っていたジータは何かにぶつかって悲鳴をあげた。けれどジータの前には何もない。外への景色が見えるだけだ。

 リズベット「なんにもないよ?」
 審神者「あれ? ガラス? ここにガラスがあるかも!」

 審神者はジータがぶつかったらしきところを手で探ると確かにそこには壁のようなものがあった。けれどガラスの様に見えない。何もないように見えるのだ。それはガラスよりも成功に作られた壁の様だった。

 立夏「これ……もしかして結界?」

 立夏は見えない壁に向かってこんこんとノックするように叩いた。ジータ達が結界に向かって攻撃を仕掛けるもその結界はびくともしない。物理も魔法も何も反応が返って来ないのだ。

 立夏「固有結界を作れるほどのサーヴァントともなると数も絞られてくるけど……」

 立夏はここにいる面々を見回した。そもそも違う世界の人間たちがここにいる時点で自分たちの常識は壊れている。自分たちの常識が常識として成り立たない。非常識の世界だ。これではまるで世界そのものの現実と空想を反転させているようだ。そんなことが出来るのは恐らく、

 立夏「聖杯を誰かが使った?」

 女性の声「いいえ。その答えは少しばかり外れています」

 立夏の問いにまた新しい女性の声が答えた。その女性は立夏たちを追いかけてくる敵のその奥から現れた。

 マシュ「キアラさん!?」

 敵の奥から出てきたのは立夏たちの知り合いである女性だった。その姿、声も殺生院キアラそのものだ。

 リズベット「なんでっ!?」
 立夏「リズベット?」

 リズベットが持っている杖をぎゅっと握りなおして女性に向かって振りかざした。

 リズベット「どうしてあなたが聖石を持ってるの!?」
 立夏「聖石?」

 聖石は聖杯とは違う。ただ膨大な魔力がその石には含まれ、リズベットの世界では度々その聖石をめぐって戦争が行われたほどだ。リズベットが生きている現代の時代でも聖石をめぐって争いが生まれようとしている。また、聖石については謎も多く、解明されていない部分も多い。その女性の胸元には確かに石が食い込むように埋め込まれていた。

 キアラ?「正確にはわたくし、殺生院キアラではございません」
 マシュ「キアラさん、じゃない?」
 キアラ?「ええ、ええ。そうですね、“殺生院キアラもどき”とでも言いましょうか」
 立夏「確かに似てるけど、違うと言われればちょっと違うかも。似てるけど」

 朱里「あなたがアバターですか」

 朱里が進み出ると“キアラもどき”はにっこりと微笑んだ。

 審神者「アバターってあのネットで使う?」
 朱里「私も詳しいわけではないですが、このウサギがそのようなことを申していました」

 審神者が朱里の足元を見ると、先ほど声を荒げて敵を告げてくれた白いうさぎのようなそうじゃないような小動物が一生懸命首を横に振っていた。

 朱里「これはイナバです。そちらではなくこちらのウサギです」

 朱里が右手でとある方角を指したので審神者はそっちへ視線を向けるも誰もいない。

 ウサギ?「ここです!」
 審神者「え、これ!?」

 思わず審神者が“これ”と称してしまうのも仕方がない。そのウサギは朱里の手のひらの上に首だけが浮いている状態だったのだ。正確にはウサギというよりもウサギの顔をしたマーク、いやアイコンと呼んだ方が的確かもしれない。目と鼻は描かれているが口がない。一体どこから声を出したのか不明である。ミッ〇ィーと違うところはウサギの形を模しているだけで可愛らしさが見当たらないところだろうか。それとも顔だけ浮いているという不気味感だろうか。

 立夏「じゃああなたは殺生院キアラを模して造られたアバターだと?」
 キアラのアバター「ええ、その様に解釈していただいて構いません。わたくしは殺生院キアラのアバターとして生み出され、この仮想世界でも殺生院キアラとして振る舞うようにプログラムされているのです」
 ジータ「仮想世界?」
 ウサギ?「正確には仮想世界と現実世界が入り混じったサーバー空間です」
 ジータ「ん、んんん?」
 朱里「まあつまり、端的に言うと空想の世界と現実の世界が混じってしまったということだと」
 ウサギ?「その解釈でいいと思います」

 サーバーとはそもそも一つのパソコンだ――複数のパソコンを用いることもある――。それが物理サーバーとなり、実体のあるサーバーとなる。その物理サーバーを複数台の仮想サーバーに分割して利用することが出来る。この世界はそんな複数ある仮想サーバーにて作られたシステムの世界だと、ウサギは続けて説明した。

 ジータ「う、うん」
 リズベット「全然わかんない」

 ジータやリズベットの世界ではパソコンが普及されているわけではないため聞きなれない単語に首を傾げるばかりだ。けれど立夏たちはある程度の知識があるためウサギに説明を促した。

 ウサギ?「僕はそのシステムを作ったプログラマーです。元々このプログラム自体が以前から暴走してしまって修正をかけていたところでした。ところがプログラム自体が“なにか大きな力”によって現実とこの仮想世界を繋げてしまったんです」
 立夏「繋げた? それだけでアバターがどうして別世界の敵を従えることになるの?」
 審神者「それに、世間にあまり混乱は感じられなかった。飛行機墜落事故があったから駅にいた人たちは慌てて逃げたけど、それ以外で混乱があったのは別世界から来た人たちが物珍しくて騒いでるだけだった」

 キアラのアバター「その問いにはわたくしがお答えいたしましょう」
 男性の声「そいつは俺から説明しようか」

 キアラのアバターの声と同時に男の声が響いた。キアラのアバターから少し離れたあたりから、また別の敵の軍勢が現れた。敵は黒い影のような体を揺らし、顔のような仮面が張り付けられている。その仮面は無機質で冷たく、何の感情も表していなかった。その大群の奥から男は姿を現した。
 
 ジータ「ベ、ベリアル!? どうして!?」
 ビィ「お前、次元の狭間に吸い込まれちまったんじゃねぇのかぁ!?」
 ルリア「待ってください! あの人、ベリアルさんに似てるけど、別人です!」

 キアラのアバター「せっかくあなたの身体を空間ごと斬り捨てたと思ったんですが、全くしぶとい人ですねぇ。少しくらい強引な男性なら良いですが、しつこすぎるのは返って気持ちが悪いですよ」
 ベリアル?「あんたに俺の楽しみを奪われちゃあ堪ったものじゃないからな」

 ウサギ?「あれもアバターです!」
 ジータ「つまり!?」
 ウサギ?「え!? えっと……」
 立夏「つまり、そのベリアルって男に似せて作られた偽物ってことよ」

 ベリアルのアバター「まあ、そういうこと」

 忌々しそうにベリアルのアバターを睨むキアラのアバター。舌なめずりで怪しく笑うベリアルのアバター。2人の敵が、審神者、ジータ、立夏、リズベット、朱里たちの前に立ちはだかるのだった。
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