Existant Hero
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「これより、新兵の入団式を執り行う!」
外で、重々しい空気の中新兵たちが心臓を捧げている姿を、リヴァイとジーンは窓の内側から嫌々眺めていた。
「おい、クソババァ。お前、団長じゃねぇのか」
「団長が、あれやるって決まりはないの。あーんなめんどくさそうなこと、やってらんないわよ。どうせ、半分以上は使い物にもならない雑魚ばっかりだし」
そんな中でも、彼女の眼は何かを探しているように見えた。
嫌そうな顔をしていても、やはり戦闘技術に長けた人物を見抜き得ようとしているのかと、リヴァイは同じように窓の外に目を向けたが、そんなものはちっともわかりそうになかった。
「アンタ、今強いのと弱いのを見分けようとしたでしょ」
図星を突かれて、リヴァイは彼女を睨む。
すると、窓の外を見たまま彼女は小さく笑った。
「そんなもん、わかるわけないでしょ。ビビリを探すのよ。その中でも、取り分け周辺視野に長けたビビリをね」
「そんなやつ、生き残っても戦えないだろ」
「戦闘技術は、後からいくらでも叩き込める。でも、生きるための手段は、どれだけ本人が生に執着してるかよ。私みたいに完璧な人間じゃない限り、どれだけ強くたって生きる気持ちがなけりゃ、巨人に食われる時に抵抗もせず死ぬのよ」
仲間が、上司が、部下が散々巨人に食われていく姿を見ていた彼女が放った言葉は、リヴァイの中にも響いた。
それは彼にとって、わからないでもない言葉だったからかもしれない。
地下都市で生きてきた彼にとって、何より重要なのは今を生きること。
いつ死ぬかわからない状況において、危機察知能力や回避能力は必須条件だ。
その上で、どう反撃に出て戦うがが重要となる。
「見て、わかるのか」
「わかんないわよ。だから、今ビビってるやつを見てるの。人数少なすぎるから、今回の二週間後の壁外調査には新兵も交えて行うしかないから。生き残りそうな奴は少し後方に回して、残りは前線に持っていく」
「なぜ、俺にそれを言う」
「聞きたそうな顔してたからよ、クソガキ」
ジーンがそういうと、リヴァイはさらに眉間の皺を濃くした。
「そういえば、今日のエルヴィンとの早朝訓練、楽しそうだったじゃない。アンタ達、気が合うんじゃない?」
「黙れ、削ぐぞ」
「やってみろクソガキ」
言うが早いか、先手必勝とばかりに手刀で襲いかかってきたリヴァイの一撃を、ジーンはさらりと避けて彼の背後に回る。
それを読んでいたかのように、彼は空中でくるりと半回転して彼女を視界に捉える。
その素早い反応と、ついこの間までとは違う明らかな成長の見える動きに、彼女は思わず嬉しくなりながらも遠慮なく彼の頭目掛けて、思いきり足を振り回した。
その一撃は、見事彼の頭にクリーンヒットし、彼は窓とは反対側にある壁に吹き飛ばされた。
脳がクラクラするからか、彼は壁に沿うように横たわっており、その頭をクツで踏みつけて彼女は笑った。
「私を削ぐんじゃなかったっけ~? 粋がってたくせに、所詮は口だけの男だったってわけ?」
彼女がニヤニヤと、踏みつけているリヴァイに言っていると、近くにあった扉が開いて入ってきた男はため息をついた。
「それぐらいにしてやってくれないか、団長」
「あら、エルヴィン。新兵の入団式は終わったのー?」
「とっくの昔にな。それより、リヴァイの額から血が出てる。手当てをしてやる必要があるようだが?」
「……おい、エルヴィン。馬鹿にするな、この程度のかすり傷に手当てなど必要ない」
彼女の足が頭から退いた途端、彼はすぐさま起き上がり額に流れる血を服の裾で拭った。
それを静かに見ていた彼女は、目をスッと細めて微笑を浮かべながら言った。
「強がらない方がいいわよ。たんこぶが出来るぐらいの強さで蹴ってあげたんだから」
ニヤリと微笑む彼女を見て、眉間に皺を寄せるリヴァイ。
それをみて、エルヴィンは咄嗟に彼らの間に入った。
「ジーン、これ以上リヴァイで遊ぶのは止めてくれないか。彼は、俺がこの調査兵団に迎え入れた大事な兵士の一人だ。とんでもない才能を秘めていることに、お前が嫉妬しているのかもしれないが、彼はまだ子どもだ。そんなに苛めていては彼が可哀想ではないか!」
ジーンに捲し立てるように語尾を荒げて叫んだエルヴィン。
彼の言い分は、正しいものだろう。
「………………エルヴィン」
彼女が見えないよう、目の前に立ちはだかった男の名を背後から呼ぶリヴァイの声は、地の底から這い出てきたかのようなものだった。
とても、今庇ってもらった相手に出すような声ではない。
「どうした、リヴァイ」
もちろん、心優しきエルヴィンは彼の方を向く。
そして、その二人を見ていたジーンは両手で口を抑え、真っ赤な顔をしていた。
「お前、さっき何て言った」
「そんなに苛めては、というところか? 確かに、訓練をしてもらっていたと言えないこともないが、先ほどのは明らかに一方的にやられていたではないか。それでは訓練とは言えないだろう。そもそも訓練とは――――」
「違う。その前だ」
リヴァイよりエルヴィンの方が身長が高いからか、エルヴィンはリヴァイの顔を見ようとしたが、彼の前髪が邪魔して表情を見ることはできなかった。
首を傾げながら、答えようとしたエルヴィンは気付いた。
「そうか、子ども扱いされたくないということだな。だが、壁外に出れば、年齢など関係なくなる。実力社会のこの中では、確かに子ども扱いされることは不快かも知れない。だが、先ほどのような扱いをされることは間違っている。大人でも子どもでもだ。つまりは、――――」
エルヴィンが話を続けようとしたとき、リヴァイはわなわなと震えていた。
それを見てからか、もう我慢が限界だったのか、ジーンがブフッ!と噴き出した。
「あっはっはっはっはっはっはっはっは!! だめ、もう我慢できない!」
彼女の笑いは止まらない。
「黙れっ! 笑うなクソババァ!」
「おい、ジーン! 何を笑っている」
リヴァイがジーンを怒っていることと、ジーンが大爆笑して笑い泣きしていることの意味がわからないエルヴィンは、何がどうなっているのかと、ただただ首を傾げるばかり。
そんな彼の姿を見て、リヴァイはますます眉間の皺を濃くし、ジーンは笑い転げるのであった。
「――――で、何故さっきまでそんなに笑い転げていた」
暫く笑いの止まらなかったジーンが、笑い止むのを待ち続けてからようやくエルヴィンは質問した。
まだ後遺症が残っているのか、エルヴィンを見た後にちらりとリヴァイを見た彼女はブフッ!と再び噴き出してはいたものの、笑い過ぎて痛いという腹を抑えながら答えた。
「エルヴィン、アンタ馬鹿?」
だが、帰ってきた答えはエルヴィンが聞いた質問の答えではなかった。
「リヴァイ、あんなに怒ってるんだからさ、いい加減理由ぐらいわかってあげなよ。上司でしょ」
「黙れクソババァ。お前もう喋るな」
何が何やらわからなくなってきているエルヴィンは、リヴァイに尋ねた。
「そういえば聞いたことがなかったが、お前今歳はいくつなんだ?」
ブチッと、何かが切れる音がした。
「…………30」
「30がどうした?」
「過ぎてるんだよ、俺は。30歳を」
「……………………」
とんでもなく機嫌の悪いリヴァイの口から出た言葉を聞いて、エルヴィンは比喩表現ではなく本当に固まってしまった。
しかし、それも一瞬のこと。
すぐさま通常の状態に戻ったエルヴィンは少し笑って言った。
「そんな嘘は、さすがの俺でもわかる。本当は半分の15歳とでもいうつもりだろう」
「お前、覚悟はできてるだろうな……削ぐ」
「何を怒っているんだ、リヴァイ。お前のその身長で30歳を超えているなど、いくらなんでも無理がありすぎる」
「あははははははは!」
「てめぇも削ぐからな、クソババァ」
またしても飛び掛かってきたリヴァイに対して、ジーンとエルヴィンは容赦なく二人がかりで反撃したことは、言うまでもない。
「す、すまないリヴァイ! わざとではないんだ! つい、防衛本能がだな――――」
「正当防衛よ、正当防衛。行くわよエルヴィン、新兵たちの歓迎会がもうすぐ始まるわ。アンタも早く来ないと、肉なくなるわよ」
リヴァイがどれだけ凶悪な顔で睨みつけても、彼女は微笑むだけだった。
外で、重々しい空気の中新兵たちが心臓を捧げている姿を、リヴァイとジーンは窓の内側から嫌々眺めていた。
「おい、クソババァ。お前、団長じゃねぇのか」
「団長が、あれやるって決まりはないの。あーんなめんどくさそうなこと、やってらんないわよ。どうせ、半分以上は使い物にもならない雑魚ばっかりだし」
そんな中でも、彼女の眼は何かを探しているように見えた。
嫌そうな顔をしていても、やはり戦闘技術に長けた人物を見抜き得ようとしているのかと、リヴァイは同じように窓の外に目を向けたが、そんなものはちっともわかりそうになかった。
「アンタ、今強いのと弱いのを見分けようとしたでしょ」
図星を突かれて、リヴァイは彼女を睨む。
すると、窓の外を見たまま彼女は小さく笑った。
「そんなもん、わかるわけないでしょ。ビビリを探すのよ。その中でも、取り分け周辺視野に長けたビビリをね」
「そんなやつ、生き残っても戦えないだろ」
「戦闘技術は、後からいくらでも叩き込める。でも、生きるための手段は、どれだけ本人が生に執着してるかよ。私みたいに完璧な人間じゃない限り、どれだけ強くたって生きる気持ちがなけりゃ、巨人に食われる時に抵抗もせず死ぬのよ」
仲間が、上司が、部下が散々巨人に食われていく姿を見ていた彼女が放った言葉は、リヴァイの中にも響いた。
それは彼にとって、わからないでもない言葉だったからかもしれない。
地下都市で生きてきた彼にとって、何より重要なのは今を生きること。
いつ死ぬかわからない状況において、危機察知能力や回避能力は必須条件だ。
その上で、どう反撃に出て戦うがが重要となる。
「見て、わかるのか」
「わかんないわよ。だから、今ビビってるやつを見てるの。人数少なすぎるから、今回の二週間後の壁外調査には新兵も交えて行うしかないから。生き残りそうな奴は少し後方に回して、残りは前線に持っていく」
「なぜ、俺にそれを言う」
「聞きたそうな顔してたからよ、クソガキ」
ジーンがそういうと、リヴァイはさらに眉間の皺を濃くした。
「そういえば、今日のエルヴィンとの早朝訓練、楽しそうだったじゃない。アンタ達、気が合うんじゃない?」
「黙れ、削ぐぞ」
「やってみろクソガキ」
言うが早いか、先手必勝とばかりに手刀で襲いかかってきたリヴァイの一撃を、ジーンはさらりと避けて彼の背後に回る。
それを読んでいたかのように、彼は空中でくるりと半回転して彼女を視界に捉える。
その素早い反応と、ついこの間までとは違う明らかな成長の見える動きに、彼女は思わず嬉しくなりながらも遠慮なく彼の頭目掛けて、思いきり足を振り回した。
その一撃は、見事彼の頭にクリーンヒットし、彼は窓とは反対側にある壁に吹き飛ばされた。
脳がクラクラするからか、彼は壁に沿うように横たわっており、その頭をクツで踏みつけて彼女は笑った。
「私を削ぐんじゃなかったっけ~? 粋がってたくせに、所詮は口だけの男だったってわけ?」
彼女がニヤニヤと、踏みつけているリヴァイに言っていると、近くにあった扉が開いて入ってきた男はため息をついた。
「それぐらいにしてやってくれないか、団長」
「あら、エルヴィン。新兵の入団式は終わったのー?」
「とっくの昔にな。それより、リヴァイの額から血が出てる。手当てをしてやる必要があるようだが?」
「……おい、エルヴィン。馬鹿にするな、この程度のかすり傷に手当てなど必要ない」
彼女の足が頭から退いた途端、彼はすぐさま起き上がり額に流れる血を服の裾で拭った。
それを静かに見ていた彼女は、目をスッと細めて微笑を浮かべながら言った。
「強がらない方がいいわよ。たんこぶが出来るぐらいの強さで蹴ってあげたんだから」
ニヤリと微笑む彼女を見て、眉間に皺を寄せるリヴァイ。
それをみて、エルヴィンは咄嗟に彼らの間に入った。
「ジーン、これ以上リヴァイで遊ぶのは止めてくれないか。彼は、俺がこの調査兵団に迎え入れた大事な兵士の一人だ。とんでもない才能を秘めていることに、お前が嫉妬しているのかもしれないが、彼はまだ子どもだ。そんなに苛めていては彼が可哀想ではないか!」
ジーンに捲し立てるように語尾を荒げて叫んだエルヴィン。
彼の言い分は、正しいものだろう。
「………………エルヴィン」
彼女が見えないよう、目の前に立ちはだかった男の名を背後から呼ぶリヴァイの声は、地の底から這い出てきたかのようなものだった。
とても、今庇ってもらった相手に出すような声ではない。
「どうした、リヴァイ」
もちろん、心優しきエルヴィンは彼の方を向く。
そして、その二人を見ていたジーンは両手で口を抑え、真っ赤な顔をしていた。
「お前、さっき何て言った」
「そんなに苛めては、というところか? 確かに、訓練をしてもらっていたと言えないこともないが、先ほどのは明らかに一方的にやられていたではないか。それでは訓練とは言えないだろう。そもそも訓練とは――――」
「違う。その前だ」
リヴァイよりエルヴィンの方が身長が高いからか、エルヴィンはリヴァイの顔を見ようとしたが、彼の前髪が邪魔して表情を見ることはできなかった。
首を傾げながら、答えようとしたエルヴィンは気付いた。
「そうか、子ども扱いされたくないということだな。だが、壁外に出れば、年齢など関係なくなる。実力社会のこの中では、確かに子ども扱いされることは不快かも知れない。だが、先ほどのような扱いをされることは間違っている。大人でも子どもでもだ。つまりは、――――」
エルヴィンが話を続けようとしたとき、リヴァイはわなわなと震えていた。
それを見てからか、もう我慢が限界だったのか、ジーンがブフッ!と噴き出した。
「あっはっはっはっはっはっはっはっは!! だめ、もう我慢できない!」
彼女の笑いは止まらない。
「黙れっ! 笑うなクソババァ!」
「おい、ジーン! 何を笑っている」
リヴァイがジーンを怒っていることと、ジーンが大爆笑して笑い泣きしていることの意味がわからないエルヴィンは、何がどうなっているのかと、ただただ首を傾げるばかり。
そんな彼の姿を見て、リヴァイはますます眉間の皺を濃くし、ジーンは笑い転げるのであった。
「――――で、何故さっきまでそんなに笑い転げていた」
暫く笑いの止まらなかったジーンが、笑い止むのを待ち続けてからようやくエルヴィンは質問した。
まだ後遺症が残っているのか、エルヴィンを見た後にちらりとリヴァイを見た彼女はブフッ!と再び噴き出してはいたものの、笑い過ぎて痛いという腹を抑えながら答えた。
「エルヴィン、アンタ馬鹿?」
だが、帰ってきた答えはエルヴィンが聞いた質問の答えではなかった。
「リヴァイ、あんなに怒ってるんだからさ、いい加減理由ぐらいわかってあげなよ。上司でしょ」
「黙れクソババァ。お前もう喋るな」
何が何やらわからなくなってきているエルヴィンは、リヴァイに尋ねた。
「そういえば聞いたことがなかったが、お前今歳はいくつなんだ?」
ブチッと、何かが切れる音がした。
「…………30」
「30がどうした?」
「過ぎてるんだよ、俺は。30歳を」
「……………………」
とんでもなく機嫌の悪いリヴァイの口から出た言葉を聞いて、エルヴィンは比喩表現ではなく本当に固まってしまった。
しかし、それも一瞬のこと。
すぐさま通常の状態に戻ったエルヴィンは少し笑って言った。
「そんな嘘は、さすがの俺でもわかる。本当は半分の15歳とでもいうつもりだろう」
「お前、覚悟はできてるだろうな……削ぐ」
「何を怒っているんだ、リヴァイ。お前のその身長で30歳を超えているなど、いくらなんでも無理がありすぎる」
「あははははははは!」
「てめぇも削ぐからな、クソババァ」
またしても飛び掛かってきたリヴァイに対して、ジーンとエルヴィンは容赦なく二人がかりで反撃したことは、言うまでもない。
「す、すまないリヴァイ! わざとではないんだ! つい、防衛本能がだな――――」
「正当防衛よ、正当防衛。行くわよエルヴィン、新兵たちの歓迎会がもうすぐ始まるわ。アンタも早く来ないと、肉なくなるわよ」
リヴァイがどれだけ凶悪な顔で睨みつけても、彼女は微笑むだけだった。