Existant Hero
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マリア奪還作戦当日、ジーンは夜明け前から目覚めていた。
何故なら、本日の奪還作戦において急遽団員となった元囚人たちや、参加するはずの町人が数人逃亡したからだ。
全く余計な手間を増やしてくれると、大きく愚痴を溢しながら、彼女はそれらの処理に昨日の晩からチマチマと働いていた。
本来なら、団長自らが行う必要はないのだが、それ以外の仕事を部下たちに既に割り振ってしまったため、手が空いているのが団長であるジーンしかいなかったのだ。
そのため、仕方なく逃亡した人たちを彼女は探し回っていた。
「堪ったもんじゃないよ、ほんとに。なんでこのクソ忙しい時に、さらに余計なことしてくれてるんだか……」
彼女は、そう言って死人を片付けた。
「結構前から説明されてたのにねー。敵前逃亡は死罪に値するって」
答えるはずのない者に語りかけて、彼女はすぐにそれらの後始末を始めた。
「おい、何してる」
巨人と戦う前に血だらけになった服を変える為、自室へ向かう途中、王都の地下の闘技場でエルヴィンと互角以上に戦っていた男がいた。
「あー、誰だっけアンタ」
「誰を殺してきた」
「ムシかよ」
「血の臭いがする。汚ねぇやつが、俺に近付くな」
「じゃあ話かけなきゃいいでしょ」
小さなその男の横をすり抜けて、廊下をさらに歩こうとすると、首元に刃を突き立てられた。
「――――なんのつもり?」
「誰を殺してきた」
「巨人だと思う?」
「てめぇ……」
「私は、ちゃんと言ったわ。ここから逃亡することは、死罪に値すると」
「てめぇの腕は、巨人を絶滅させるためのものじゃねぇのか。なぜ、あいつ等を殺した」
「今さっき言ったでしょ。なに、耳が悪いの?」
「お前があいつ等を殺しても許されるのなら、俺がお前を殺すのも道理に合っていることになるんだな」
「アンタねぇ……」
ジーンは、思いっきり眉を顰めた。
そして次の瞬間、男の前から姿を消した彼女は彼の胸ぐらを掴み、廊下の壁に思いっきりぶつけた。
「もう一度だけ言ってあげる。この作戦から逃げる者、巨人から逃げる者は、死罪に値する。それを粛清することは私を含めて、数人には許可されている。わかった?」
彼女は、そう聞きながらも彼が頷けないよう、掴んだ胸ぐらを上に引き上げる。
彼の足が付くか付かないか、ギリギリのところでその腕を固定する。
「私に剣を向けたことは黙っていてやるから、さっさとマリア奪還作戦の準備に取り掛かれ」
そう言って、パッと手を離して、彼がしゃがみこんだのを確認して、ジーンは再び歩き出した。
しかし、彼はジーンに斬りかかった。
奪還作戦に参加する者には、特別に数日前から立体起動装置と剣の使い方を教え込まれている。
それにしては、呑み込みが良すぎるような動きに、数秒彼女は感心したが、それでも彼女は平然と彼が力の限り奮ってきた剣を、二本の指で止めた。
「話してること、理解できなかった?」
「黙れ。だからといって、貴様が人を殺していい訳がねぇだろ!」
「散々、地下で人殺しをしてたのはアンタでしょ? うちのエルヴィンと互角程度の実力なら、まぁそれぐらいできるだろうけど。ここは地下じゃない。アンタの道理やルールなんて関係ない。ここでは、私に従え。悔しければ実力をつけて、私を殺してアンタが上に立てばいい。そして、王政府を言いなりにできるように努力することね」
「今、殺してやる」
くるりと身体を反転させて、もう片方の剣を彼が抜いたのを確認したジーンは、すぐさま一歩半彼から距離を取る。
剣は空を切り、男はすぐさま彼女への距離を詰めようとしたが、先ほどまで前に立っていた彼女の姿は、既にそこにはない。
彼は四方に目をやるが彼女の姿は見当たらず、視線を彷徨わせる。
「上だっての」
突如、男の上に思いっきり圧し掛かったジーンは、彼の両腕から剣を叩き落とし、両腕を拘束した状態で地面に伏せさせた。
「アンタのせいで、沢山喋って疲れたじゃん。イライラさせないでよねー、まったく」
「くそっ! どきやがれ、このクソババァ」
「なんて言った? 聞こえなかった」
クツで、彼の顔をギリギリと思いっきり踏みつけながら、彼女は男に尋ねる。
勿論、その状態では話すことも出来ず、男は何も言えない。
「仕事柄、襲われることも多いからねぇ。アンタ程度じゃ、私には勝てないわよ。さすがにわかったでしょ?」
ようやく、彼女が彼の上から退くと、彼はすぐさま立ち上がって服に付いたゴミや埃をひとつ残らず手で落としていく。
「じゃーね」
やっとこれで着替えられる、と血塗れの服を見下ろしてジーンは笑顔になった。
「あ、そうだ。ねぇ、アンタ」
彼女に負けたのが余程悔しいのか、心底嫌そうにこれでもかと顰められた眉を見ながら彼女は言った。
「名前は?」
すると、忌々しそうに彼は聞こえるか聞こえないかの小さな声で「リヴァイだ」と呟いた。
「リヴァイ? ふーん。体が小さいと声も小さいものなのね。さっきとは大違い」
彼女の言葉に、リヴァイは先ほどより眉を顰めた皺を一つ増やした。
何故なら、本日の奪還作戦において急遽団員となった元囚人たちや、参加するはずの町人が数人逃亡したからだ。
全く余計な手間を増やしてくれると、大きく愚痴を溢しながら、彼女はそれらの処理に昨日の晩からチマチマと働いていた。
本来なら、団長自らが行う必要はないのだが、それ以外の仕事を部下たちに既に割り振ってしまったため、手が空いているのが団長であるジーンしかいなかったのだ。
そのため、仕方なく逃亡した人たちを彼女は探し回っていた。
「堪ったもんじゃないよ、ほんとに。なんでこのクソ忙しい時に、さらに余計なことしてくれてるんだか……」
彼女は、そう言って死人を片付けた。
「結構前から説明されてたのにねー。敵前逃亡は死罪に値するって」
答えるはずのない者に語りかけて、彼女はすぐにそれらの後始末を始めた。
「おい、何してる」
巨人と戦う前に血だらけになった服を変える為、自室へ向かう途中、王都の地下の闘技場でエルヴィンと互角以上に戦っていた男がいた。
「あー、誰だっけアンタ」
「誰を殺してきた」
「ムシかよ」
「血の臭いがする。汚ねぇやつが、俺に近付くな」
「じゃあ話かけなきゃいいでしょ」
小さなその男の横をすり抜けて、廊下をさらに歩こうとすると、首元に刃を突き立てられた。
「――――なんのつもり?」
「誰を殺してきた」
「巨人だと思う?」
「てめぇ……」
「私は、ちゃんと言ったわ。ここから逃亡することは、死罪に値すると」
「てめぇの腕は、巨人を絶滅させるためのものじゃねぇのか。なぜ、あいつ等を殺した」
「今さっき言ったでしょ。なに、耳が悪いの?」
「お前があいつ等を殺しても許されるのなら、俺がお前を殺すのも道理に合っていることになるんだな」
「アンタねぇ……」
ジーンは、思いっきり眉を顰めた。
そして次の瞬間、男の前から姿を消した彼女は彼の胸ぐらを掴み、廊下の壁に思いっきりぶつけた。
「もう一度だけ言ってあげる。この作戦から逃げる者、巨人から逃げる者は、死罪に値する。それを粛清することは私を含めて、数人には許可されている。わかった?」
彼女は、そう聞きながらも彼が頷けないよう、掴んだ胸ぐらを上に引き上げる。
彼の足が付くか付かないか、ギリギリのところでその腕を固定する。
「私に剣を向けたことは黙っていてやるから、さっさとマリア奪還作戦の準備に取り掛かれ」
そう言って、パッと手を離して、彼がしゃがみこんだのを確認して、ジーンは再び歩き出した。
しかし、彼はジーンに斬りかかった。
奪還作戦に参加する者には、特別に数日前から立体起動装置と剣の使い方を教え込まれている。
それにしては、呑み込みが良すぎるような動きに、数秒彼女は感心したが、それでも彼女は平然と彼が力の限り奮ってきた剣を、二本の指で止めた。
「話してること、理解できなかった?」
「黙れ。だからといって、貴様が人を殺していい訳がねぇだろ!」
「散々、地下で人殺しをしてたのはアンタでしょ? うちのエルヴィンと互角程度の実力なら、まぁそれぐらいできるだろうけど。ここは地下じゃない。アンタの道理やルールなんて関係ない。ここでは、私に従え。悔しければ実力をつけて、私を殺してアンタが上に立てばいい。そして、王政府を言いなりにできるように努力することね」
「今、殺してやる」
くるりと身体を反転させて、もう片方の剣を彼が抜いたのを確認したジーンは、すぐさま一歩半彼から距離を取る。
剣は空を切り、男はすぐさま彼女への距離を詰めようとしたが、先ほどまで前に立っていた彼女の姿は、既にそこにはない。
彼は四方に目をやるが彼女の姿は見当たらず、視線を彷徨わせる。
「上だっての」
突如、男の上に思いっきり圧し掛かったジーンは、彼の両腕から剣を叩き落とし、両腕を拘束した状態で地面に伏せさせた。
「アンタのせいで、沢山喋って疲れたじゃん。イライラさせないでよねー、まったく」
「くそっ! どきやがれ、このクソババァ」
「なんて言った? 聞こえなかった」
クツで、彼の顔をギリギリと思いっきり踏みつけながら、彼女は男に尋ねる。
勿論、その状態では話すことも出来ず、男は何も言えない。
「仕事柄、襲われることも多いからねぇ。アンタ程度じゃ、私には勝てないわよ。さすがにわかったでしょ?」
ようやく、彼女が彼の上から退くと、彼はすぐさま立ち上がって服に付いたゴミや埃をひとつ残らず手で落としていく。
「じゃーね」
やっとこれで着替えられる、と血塗れの服を見下ろしてジーンは笑顔になった。
「あ、そうだ。ねぇ、アンタ」
彼女に負けたのが余程悔しいのか、心底嫌そうにこれでもかと顰められた眉を見ながら彼女は言った。
「名前は?」
すると、忌々しそうに彼は聞こえるか聞こえないかの小さな声で「リヴァイだ」と呟いた。
「リヴァイ? ふーん。体が小さいと声も小さいものなのね。さっきとは大違い」
彼女の言葉に、リヴァイは先ほどより眉を顰めた皺を一つ増やした。