Existant Hero
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「頭の傷が痛むんだが?」
「そりゃ、アンタが失言したからでしょエルヴィン」
「違う、あいつにやられた分だ」
コツコツと、自身の頭を指で軽く叩きながら彼は苦笑した。
その言葉を聞いて、彼女は満足そうに微笑んだ。
彼女とエルヴィンは、作戦通り王都の地下街にある闘技場で、マリア奪還作戦で使えそうな、兵士になれそうな人材を探していた。
想像以上に収穫があったのか、彼女は満足そうな顔で馬に乗っている。
その一方でエルヴィンは、頭の傷が痛むのか、時折米神を抑えるような仕草をするが、彼女はそんなことはどうでもいいようだった。
王政から、別で調査兵団本部に「材料を届ける」と連絡があったため、二人は真っ直ぐ本部へと帰還していた。
そこへ、ふと見知った顔を見つけた彼女は、立体起動装置を使って馬から離れて一直線に彼の元へと飛んで行った。
「ナーイールーっ!!」
もちろん、そのまま彼に直撃したのだから、彼はジーンの重みと物凄いスピードに驚く間もなく押し倒された。
「ぐはっ!」
彼がそんな声を上げてしまうのも、仕方のないことだろう。
だが、やはり彼女にとってはそれはどうでもいいことのようで、すぐに起き上がって彼の肩を掴み物凄い勢いで揺さぶった。
「いつになったら肉送ってくれんのよ!? すっごい待ってたんだけど! 待ちきれなくて取りに来ちゃった! だから、さっさと上質な肉寄越せ」
「おいおいおいおい! ちょっと待て! なんでお前ここにいるんだ!? あ、お前エルヴィンか! 見てないでとりあえず助けろっ!」
「いや、肉は私も食べたいのでな」
「さぁ、寄越せ」
「おかしいだろ! お前らは王政の作戦でここに――――」
ナイルの口を塞いだのはジーンだ。
彼女は、至極笑顔でいる。
それがまた、彼の恐怖を煽る。
「あ、あぁ、すまん。ここでいうべきことではないな。とりあえず、退いてくれるか調査兵団団長。これでは、話せるものも話せん」
「話すことはないわ。肉貰いに来ただけなんだから」
「あのなぁ、俺だって忙しいのはお前だってわかってるだろ。もうちょっと待て。お前がマリア奪還作戦から戻った時には、極上の肉を鱈腹食べられるように手配しておく」
「まじで? じゃあ、頑張る」
「あぁ、必ずだ」
彼女が、エルヴィンを置いて馬に乗って走り出してしまったのを見届けてから、ナイルはすぐに後を追いかけようとしていたエルヴィンに声をかけた。
「お前、あの作戦に参加するのか――――?」
「あぁ、受け入れることはできないが、仕方のないことだろう。それに、あいつがやると言ってるんだ。やらざるを得ない」
「あの時の作戦会議には、ピクシス指令と俺も参加させられたんだが、アイツまさか本当に囚人を見繕ってきたのか?」
「あぁ、先ほどまでそれで王都に来ていたが?」
「アイツ、調査兵団の優秀な部下は一人も犠牲にしたくないから、死んでもいい囚人たちを全員寄越せと言って、俺たち憲兵団や駐屯兵団からの人材派遣も一切拒否しやがったんだ」
その言葉を聞いて、エルヴィンはナイルの想像通り驚いていた。
彼女からそんなことは、一言も聞いていなかったからである。
自分たちだけでなく、兵団の戦力が重要であることを優先して、処刑されるはずだった囚人たちや地下にいるゴロツキを適当に見繕っていたなんて、調査兵団では誰も知らないことだろう。
彼女にとって、普段からバカにされたり役立たずだと罵られ、巨人に仲間が殺されても「弱いから当然だ」と罵倒するほど、部下の存在はいくらでも替えの効く適当な存在だと思われているのだろうと誰もが思っていた。
だが、実際は違っていた。
マリア奪還作戦で、大勢の犠牲が出ることを知っていながらその作戦を提案し、そして自身の部下たちは守ろうとする。
自己中心的で、犠牲になる人たちにとってはそんなことは堪ったものではないだろう。
なぜ、彼ら兵士が生きて自分たち村人が死なねばならんのだと。
それでも、エルヴィンは思ってしまった。
(バカな団長だ……)
「エルヴィン、俺はもうお前らと同じ兵団ではない。アイツは、放っておくと勝手に自爆しかねない程の大馬鹿者だ。キース元団長も心配していたが、正直俺でも心配だ。お前よりアイツの方が強いのは知っているが…………守ってやれよ」
ナイルの目を真っ直ぐに見て、エルヴィンはすぐに返事した。
「当然だ」
そのまま、エルヴィンは馬に跨りナイルの前から去って行った。
「――――さて、選び抜かれた新たな調査兵団の戦力を、調査兵団本部に送る手配をするか」
ナイルは、ふとジーンによって選び抜かれた者達がいる馬車を見ると、大勢の中に一人だけ、小柄なのにとんでもない殺気を放つ少年を見つけた。
彼のもつ、その只ならぬ空気にナイルは背筋がぞわりとした。
調査兵団本部へと無事に帰還した二人は、すぐさまマリア奪還計画へ向けて、着々と準備を始めた。
「それにしても、まさか本当にエルヴィンが壁外まで着いてくるとは思わなかったわ」
「兵士長として、団長の命を守らなければならないからな」
「私が勝てない相手なら、人類は滅亡するしかないよ」
「それもそうだが」
部下に用意させた馬の状態を確認しながら、二人は互いに目を合わせる。
「なに? まだ奪還作戦のこと怒ってんの?」
「もう何も怒ってはいない」
「怒っては、ね。まー別にどうでもいいけど」
立体起動装置を、急遽入団させる者達の分もきっちり用意させ、きちんと作動するかどうかの確認も行い、彼らはとりあえずひと段落つけて、食堂へと向かった。
すると、食堂についた途端に、数人に彼女は囲まれた。
「団長! 俺たちも、マリア奪還作戦に参加させてください!」
「人類の、団長のためなら、心臓を奉げることができます!」
「巨人と戦うのが、我々調査兵団の役割だと自分は思っています! ぜひ、ご同行の許可を!!」
数人から一気に話されて、心底鬱陶しそうに彼女は彼らを押しのける。
「はいはい、勝手にすれば?」
そう彼女が嫌そうにつぶやくと、エルヴィンのため息と共に兵士たちが大きな歓声を上げた。
「そりゃ、アンタが失言したからでしょエルヴィン」
「違う、あいつにやられた分だ」
コツコツと、自身の頭を指で軽く叩きながら彼は苦笑した。
その言葉を聞いて、彼女は満足そうに微笑んだ。
彼女とエルヴィンは、作戦通り王都の地下街にある闘技場で、マリア奪還作戦で使えそうな、兵士になれそうな人材を探していた。
想像以上に収穫があったのか、彼女は満足そうな顔で馬に乗っている。
その一方でエルヴィンは、頭の傷が痛むのか、時折米神を抑えるような仕草をするが、彼女はそんなことはどうでもいいようだった。
王政から、別で調査兵団本部に「材料を届ける」と連絡があったため、二人は真っ直ぐ本部へと帰還していた。
そこへ、ふと見知った顔を見つけた彼女は、立体起動装置を使って馬から離れて一直線に彼の元へと飛んで行った。
「ナーイールーっ!!」
もちろん、そのまま彼に直撃したのだから、彼はジーンの重みと物凄いスピードに驚く間もなく押し倒された。
「ぐはっ!」
彼がそんな声を上げてしまうのも、仕方のないことだろう。
だが、やはり彼女にとってはそれはどうでもいいことのようで、すぐに起き上がって彼の肩を掴み物凄い勢いで揺さぶった。
「いつになったら肉送ってくれんのよ!? すっごい待ってたんだけど! 待ちきれなくて取りに来ちゃった! だから、さっさと上質な肉寄越せ」
「おいおいおいおい! ちょっと待て! なんでお前ここにいるんだ!? あ、お前エルヴィンか! 見てないでとりあえず助けろっ!」
「いや、肉は私も食べたいのでな」
「さぁ、寄越せ」
「おかしいだろ! お前らは王政の作戦でここに――――」
ナイルの口を塞いだのはジーンだ。
彼女は、至極笑顔でいる。
それがまた、彼の恐怖を煽る。
「あ、あぁ、すまん。ここでいうべきことではないな。とりあえず、退いてくれるか調査兵団団長。これでは、話せるものも話せん」
「話すことはないわ。肉貰いに来ただけなんだから」
「あのなぁ、俺だって忙しいのはお前だってわかってるだろ。もうちょっと待て。お前がマリア奪還作戦から戻った時には、極上の肉を鱈腹食べられるように手配しておく」
「まじで? じゃあ、頑張る」
「あぁ、必ずだ」
彼女が、エルヴィンを置いて馬に乗って走り出してしまったのを見届けてから、ナイルはすぐに後を追いかけようとしていたエルヴィンに声をかけた。
「お前、あの作戦に参加するのか――――?」
「あぁ、受け入れることはできないが、仕方のないことだろう。それに、あいつがやると言ってるんだ。やらざるを得ない」
「あの時の作戦会議には、ピクシス指令と俺も参加させられたんだが、アイツまさか本当に囚人を見繕ってきたのか?」
「あぁ、先ほどまでそれで王都に来ていたが?」
「アイツ、調査兵団の優秀な部下は一人も犠牲にしたくないから、死んでもいい囚人たちを全員寄越せと言って、俺たち憲兵団や駐屯兵団からの人材派遣も一切拒否しやがったんだ」
その言葉を聞いて、エルヴィンはナイルの想像通り驚いていた。
彼女からそんなことは、一言も聞いていなかったからである。
自分たちだけでなく、兵団の戦力が重要であることを優先して、処刑されるはずだった囚人たちや地下にいるゴロツキを適当に見繕っていたなんて、調査兵団では誰も知らないことだろう。
彼女にとって、普段からバカにされたり役立たずだと罵られ、巨人に仲間が殺されても「弱いから当然だ」と罵倒するほど、部下の存在はいくらでも替えの効く適当な存在だと思われているのだろうと誰もが思っていた。
だが、実際は違っていた。
マリア奪還作戦で、大勢の犠牲が出ることを知っていながらその作戦を提案し、そして自身の部下たちは守ろうとする。
自己中心的で、犠牲になる人たちにとってはそんなことは堪ったものではないだろう。
なぜ、彼ら兵士が生きて自分たち村人が死なねばならんのだと。
それでも、エルヴィンは思ってしまった。
(バカな団長だ……)
「エルヴィン、俺はもうお前らと同じ兵団ではない。アイツは、放っておくと勝手に自爆しかねない程の大馬鹿者だ。キース元団長も心配していたが、正直俺でも心配だ。お前よりアイツの方が強いのは知っているが…………守ってやれよ」
ナイルの目を真っ直ぐに見て、エルヴィンはすぐに返事した。
「当然だ」
そのまま、エルヴィンは馬に跨りナイルの前から去って行った。
「――――さて、選び抜かれた新たな調査兵団の戦力を、調査兵団本部に送る手配をするか」
ナイルは、ふとジーンによって選び抜かれた者達がいる馬車を見ると、大勢の中に一人だけ、小柄なのにとんでもない殺気を放つ少年を見つけた。
彼のもつ、その只ならぬ空気にナイルは背筋がぞわりとした。
調査兵団本部へと無事に帰還した二人は、すぐさまマリア奪還計画へ向けて、着々と準備を始めた。
「それにしても、まさか本当にエルヴィンが壁外まで着いてくるとは思わなかったわ」
「兵士長として、団長の命を守らなければならないからな」
「私が勝てない相手なら、人類は滅亡するしかないよ」
「それもそうだが」
部下に用意させた馬の状態を確認しながら、二人は互いに目を合わせる。
「なに? まだ奪還作戦のこと怒ってんの?」
「もう何も怒ってはいない」
「怒っては、ね。まー別にどうでもいいけど」
立体起動装置を、急遽入団させる者達の分もきっちり用意させ、きちんと作動するかどうかの確認も行い、彼らはとりあえずひと段落つけて、食堂へと向かった。
すると、食堂についた途端に、数人に彼女は囲まれた。
「団長! 俺たちも、マリア奪還作戦に参加させてください!」
「人類の、団長のためなら、心臓を奉げることができます!」
「巨人と戦うのが、我々調査兵団の役割だと自分は思っています! ぜひ、ご同行の許可を!!」
数人から一気に話されて、心底鬱陶しそうに彼女は彼らを押しのける。
「はいはい、勝手にすれば?」
そう彼女が嫌そうにつぶやくと、エルヴィンのため息と共に兵士たちが大きな歓声を上げた。