Existant Hero
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親愛なる、かつての同志へ。
もうそろそろ、憲兵団支部へ到着しましたか?
まぁ、そんなどうでもいいことはさておき、重大発表があります。
私、この度調査兵団第12代団長に就任いたしました。
どう? すごいでしょ!? ぎゃふんってやつね!
貴方より早く、団長の任に就けて、正直言って憲兵団の団長になる貴方を恨めしく思っていたけれど、上質な牛肉を送ってくれれば許すことにするわ。
寛大な私に感謝し、どうか一刻も早く美味しいお肉を私に食べさせてくれることを願います。
あ、忘れてたけど、私が団長になっちゃったから、兵士長にはエルヴィンを置くことにしました。
本人から連絡がもうあったかもしれないけど、一応報告だけしておきます。
貴方にぎゃふんといえて非常に満足している調査兵団団長より。
「ぎゃふんと言わせたいのは、俺じゃないのか?」
届いた手紙を呼んだナイルは、思わずぼそりと呟いた。
一方、手紙を送ってから忙しい毎日を送っていた彼女は、今日も壁外調査へ赴くための資料作りに勤しんでいた。
「あー、めんどくさい」
誰もいない部屋で、酒を飲みながら彼女は項垂れた。
特に今年は、巨人によりシガンシナ区およびウォール・マリアが巨人に占拠された影響により、新兵の調査兵団志願者が少なかった。
というよりも、新兵の数が減っているのだ。
それは、彼女にはどうしようもないことだったが、毎回の壁外調査での被害はおよそ三割強。
一度の調査で三割も失ってしまい、ロクに成果が得られない調査を行うことは、あまり好ましくない。
そのため、新兵はすぐ壁外調査に参加することが出来ない。
明らかに兵力が少ない中で壁外調査に赴くことは、正直言って意味のないことだ。
それでも、彼女はそれを行う必要があった。
兵団に対して援助してくれている財力のある人間たちに、一刻も早く巨人を絶滅させろと言われているからだ。
彼らは、ウォール・マリアが陥落したことで、そろそろ人類が危ないということを十分理解している。
自身たちの保身のために、調査兵団に金をやり彼女に巨人を一刻も早く絶滅させてほしいのだろう。
そのことを考え、彼女は深いため息をついた。
「あー、めんどくさい」
酒を飲み干して、彼女はもう一度呟いた。
すると、突然扉からノック音が聞こえてきて、彼女は資料を粗方片付けてから「うぇ~い」と適当な返事をして、入室を許可した。
「仕事中だったか?」
入ってきたのがエルヴィンだとわかると、彼女はすぐに資料を片付ける手を止めた。
普通の兵士は、見てはいけないような極秘資料であっても、エルヴィンには既に何度も様々なことを手伝わせていたため、見られて困るものはないと彼女は判断していた。
「どうしたの? 何か用?」
「特に用がなければ、来てはいけなかったか?」
「べっつに~」
椅子にダラリともたれて、ちらりとエルヴィンを見る。
彼女の視線に気付いたエルヴィンは、笑顔のまま部屋の真ん中に置かれたふかふかのソファに腰を下ろした。
「シガンシナ、ウォール・マリアの陥落は、我々調査兵団にとっては痛手だな」
「なに今更なこと言ってんの。んなことは、調査兵団じゃなくても思ってるわよ。そこに住んでた人たちの分の食糧全て賄ってたら、人類はすぐに餓死するってわかってるから、近頃食糧難とか言って権力者たちが食糧確保に精を出してるんでしょ。馬鹿な豚共よ、全く。食べちゃいたいわ」
「一刻も早く、ウォール・マリアを奪還しなくてはならないな」
「それも、人類すべてが理解してることよ。一からルートを模索しなきゃいけないのに、奪還も急げだなんて無理な話だけどね」
「作戦会議は明日だぞ。どうするつもりだ」
「どうするもこうするも、上から既に作戦命令が出てる。明日はそれを伝えて、昼からはすぐに材料調達よ。私と、アンタでね」
「材料調達?」
「そう、正しくは人材調達? 詳しくは、明日資料を見たらわかるわ。今見たいならみせるけど……」
資料の束を彼女が差し出すと、エルヴィンはそれを受け取って目を通し始めた。
「……言っておくけど、その作戦は王政直々の命令だからね」
「これが…………これが、作戦だと?!」
読み終えたエルヴィンは、たちまち顔を真っ赤にして机に資料を叩きつけて、彼女に怒鳴った。
「私に怒るな。それだけの犠牲で、人類は生存するための場所を得るんだ」
「そんなことが許されると思っているのか!?」
「王政は、既にウォール・マリアを放棄するつもりでいる。ローゼとシーナだけでは、今の人口を支えることは出来ない。二割の人口で、残りの人類が救えるんだから、安いものよ」
「……この作戦の、立案者は…………?」
「私よ。王政から半分以上の人口を確実に生き永らえさせるための作戦を考えろと言われて、これを提出した」
「キース団長なら、こんな作戦は立てなかったはずだ!」
彼が叫んだ瞬間、彼は壁に吹き飛ばされていた。
やったのは彼女だ。
一瞬で間合いを詰めて、彼を壁まで蹴り飛ばしたのだ。
ゆっくりとした足取りで、壁に倒れこむエルヴィンの頭を掴み、地面に叩きつけて、彼女は言う。
「黙れ、エルヴィン。いくら同期とはいえ、私は現団長よ。作戦に従えないのなら、作戦に参加しろとは言わない。だが、異論は認めない。話は以上だ、下がれ」
今まで一緒に戦ってきたエルヴィンでさえ聞いたことのないほど低い声で言われ、彼は頭から流れる血を手で拭い、部屋から出て行った。
冷たく、感情のない鋭い目を閉じて、彼女は一つ息を吐くとクスリと笑う。
一度笑うと、止まらなくなったのか、突然声を出して彼女は笑い出した。
「あはははははっ! やっぱり、エルヴィンに団長はまだ無理ね~」
一頻り笑って満足したのか、彼女は再び資料に目を通して、ニヤリと静かに口角を上げたのだった。
次の日、作戦会議を終えて王都へ向かおうと馬を走らせていた彼女の元へ、もう一頭の馬が走ってきた。
「私も連れていくんじゃなかったのか、ジーン」
「作戦からは外れるんじゃなかったの、エルヴィン」
「作戦に参加しないとは一言も言っていない」
「たしかに」
ちらりと彼女がエルヴィンを見ると、彼は迷いのない真っ直ぐな目で先を見つめていた。
それを見て、彼女は静かに笑い小さな声で「アホだなぁ、まったくもう」と言った。
彼らがやってきたのは、王都の地下街だ。
ここでは、金持ちどもの道楽が盛んになっている地区があり、彼らは真っ直ぐにそこを目指した。
やってきたのは、大きな闘技場だ。
巨人の存在に怯えることのない王都では、人間同士の殺し合いを見世物として賭け事をしている者達もいる。
その人間同士の殺し合いも、囚人だったり、どこかから売られてきた子どもだったりと様々な者が行う。
その中から、良さそうな人材を調査兵団に引っ張り込むために今日、彼らはここに来ていた。
未だかつてありえないほどの人数を投入して行われる無謀なマリア奪還作戦のための、人数集めを行うための一つの仕事であったからだ。
「あ、いいこと思いついた!」
「どうした?」
「エルヴィン、手伝ってくれる?」
「そのために、一緒に来ているんだろう?」
「やった!」
彼女は、それからいそいそとどこかへ姿を消した。
そして、すぐに戻ってきてありえない一言を放った。
「闘技場への参加申請出してきたから! 勝ち抜き戦らしいから、戦いまくって強そうな奴物色してきて!」
この時のジーンの笑顔があまりにも綺麗で、一瞬見惚れてしまったのだと、後に彼女はエルヴィン自身から報告される。
そして、それに対して彼女が自信満々に「当然よ!」と生意気そうに笑うことは、想定内の出来事だった。
もうそろそろ、憲兵団支部へ到着しましたか?
まぁ、そんなどうでもいいことはさておき、重大発表があります。
私、この度調査兵団第12代団長に就任いたしました。
どう? すごいでしょ!? ぎゃふんってやつね!
貴方より早く、団長の任に就けて、正直言って憲兵団の団長になる貴方を恨めしく思っていたけれど、上質な牛肉を送ってくれれば許すことにするわ。
寛大な私に感謝し、どうか一刻も早く美味しいお肉を私に食べさせてくれることを願います。
あ、忘れてたけど、私が団長になっちゃったから、兵士長にはエルヴィンを置くことにしました。
本人から連絡がもうあったかもしれないけど、一応報告だけしておきます。
貴方にぎゃふんといえて非常に満足している調査兵団団長より。
「ぎゃふんと言わせたいのは、俺じゃないのか?」
届いた手紙を呼んだナイルは、思わずぼそりと呟いた。
一方、手紙を送ってから忙しい毎日を送っていた彼女は、今日も壁外調査へ赴くための資料作りに勤しんでいた。
「あー、めんどくさい」
誰もいない部屋で、酒を飲みながら彼女は項垂れた。
特に今年は、巨人によりシガンシナ区およびウォール・マリアが巨人に占拠された影響により、新兵の調査兵団志願者が少なかった。
というよりも、新兵の数が減っているのだ。
それは、彼女にはどうしようもないことだったが、毎回の壁外調査での被害はおよそ三割強。
一度の調査で三割も失ってしまい、ロクに成果が得られない調査を行うことは、あまり好ましくない。
そのため、新兵はすぐ壁外調査に参加することが出来ない。
明らかに兵力が少ない中で壁外調査に赴くことは、正直言って意味のないことだ。
それでも、彼女はそれを行う必要があった。
兵団に対して援助してくれている財力のある人間たちに、一刻も早く巨人を絶滅させろと言われているからだ。
彼らは、ウォール・マリアが陥落したことで、そろそろ人類が危ないということを十分理解している。
自身たちの保身のために、調査兵団に金をやり彼女に巨人を一刻も早く絶滅させてほしいのだろう。
そのことを考え、彼女は深いため息をついた。
「あー、めんどくさい」
酒を飲み干して、彼女はもう一度呟いた。
すると、突然扉からノック音が聞こえてきて、彼女は資料を粗方片付けてから「うぇ~い」と適当な返事をして、入室を許可した。
「仕事中だったか?」
入ってきたのがエルヴィンだとわかると、彼女はすぐに資料を片付ける手を止めた。
普通の兵士は、見てはいけないような極秘資料であっても、エルヴィンには既に何度も様々なことを手伝わせていたため、見られて困るものはないと彼女は判断していた。
「どうしたの? 何か用?」
「特に用がなければ、来てはいけなかったか?」
「べっつに~」
椅子にダラリともたれて、ちらりとエルヴィンを見る。
彼女の視線に気付いたエルヴィンは、笑顔のまま部屋の真ん中に置かれたふかふかのソファに腰を下ろした。
「シガンシナ、ウォール・マリアの陥落は、我々調査兵団にとっては痛手だな」
「なに今更なこと言ってんの。んなことは、調査兵団じゃなくても思ってるわよ。そこに住んでた人たちの分の食糧全て賄ってたら、人類はすぐに餓死するってわかってるから、近頃食糧難とか言って権力者たちが食糧確保に精を出してるんでしょ。馬鹿な豚共よ、全く。食べちゃいたいわ」
「一刻も早く、ウォール・マリアを奪還しなくてはならないな」
「それも、人類すべてが理解してることよ。一からルートを模索しなきゃいけないのに、奪還も急げだなんて無理な話だけどね」
「作戦会議は明日だぞ。どうするつもりだ」
「どうするもこうするも、上から既に作戦命令が出てる。明日はそれを伝えて、昼からはすぐに材料調達よ。私と、アンタでね」
「材料調達?」
「そう、正しくは人材調達? 詳しくは、明日資料を見たらわかるわ。今見たいならみせるけど……」
資料の束を彼女が差し出すと、エルヴィンはそれを受け取って目を通し始めた。
「……言っておくけど、その作戦は王政直々の命令だからね」
「これが…………これが、作戦だと?!」
読み終えたエルヴィンは、たちまち顔を真っ赤にして机に資料を叩きつけて、彼女に怒鳴った。
「私に怒るな。それだけの犠牲で、人類は生存するための場所を得るんだ」
「そんなことが許されると思っているのか!?」
「王政は、既にウォール・マリアを放棄するつもりでいる。ローゼとシーナだけでは、今の人口を支えることは出来ない。二割の人口で、残りの人類が救えるんだから、安いものよ」
「……この作戦の、立案者は…………?」
「私よ。王政から半分以上の人口を確実に生き永らえさせるための作戦を考えろと言われて、これを提出した」
「キース団長なら、こんな作戦は立てなかったはずだ!」
彼が叫んだ瞬間、彼は壁に吹き飛ばされていた。
やったのは彼女だ。
一瞬で間合いを詰めて、彼を壁まで蹴り飛ばしたのだ。
ゆっくりとした足取りで、壁に倒れこむエルヴィンの頭を掴み、地面に叩きつけて、彼女は言う。
「黙れ、エルヴィン。いくら同期とはいえ、私は現団長よ。作戦に従えないのなら、作戦に参加しろとは言わない。だが、異論は認めない。話は以上だ、下がれ」
今まで一緒に戦ってきたエルヴィンでさえ聞いたことのないほど低い声で言われ、彼は頭から流れる血を手で拭い、部屋から出て行った。
冷たく、感情のない鋭い目を閉じて、彼女は一つ息を吐くとクスリと笑う。
一度笑うと、止まらなくなったのか、突然声を出して彼女は笑い出した。
「あはははははっ! やっぱり、エルヴィンに団長はまだ無理ね~」
一頻り笑って満足したのか、彼女は再び資料に目を通して、ニヤリと静かに口角を上げたのだった。
次の日、作戦会議を終えて王都へ向かおうと馬を走らせていた彼女の元へ、もう一頭の馬が走ってきた。
「私も連れていくんじゃなかったのか、ジーン」
「作戦からは外れるんじゃなかったの、エルヴィン」
「作戦に参加しないとは一言も言っていない」
「たしかに」
ちらりと彼女がエルヴィンを見ると、彼は迷いのない真っ直ぐな目で先を見つめていた。
それを見て、彼女は静かに笑い小さな声で「アホだなぁ、まったくもう」と言った。
彼らがやってきたのは、王都の地下街だ。
ここでは、金持ちどもの道楽が盛んになっている地区があり、彼らは真っ直ぐにそこを目指した。
やってきたのは、大きな闘技場だ。
巨人の存在に怯えることのない王都では、人間同士の殺し合いを見世物として賭け事をしている者達もいる。
その人間同士の殺し合いも、囚人だったり、どこかから売られてきた子どもだったりと様々な者が行う。
その中から、良さそうな人材を調査兵団に引っ張り込むために今日、彼らはここに来ていた。
未だかつてありえないほどの人数を投入して行われる無謀なマリア奪還作戦のための、人数集めを行うための一つの仕事であったからだ。
「あ、いいこと思いついた!」
「どうした?」
「エルヴィン、手伝ってくれる?」
「そのために、一緒に来ているんだろう?」
「やった!」
彼女は、それからいそいそとどこかへ姿を消した。
そして、すぐに戻ってきてありえない一言を放った。
「闘技場への参加申請出してきたから! 勝ち抜き戦らしいから、戦いまくって強そうな奴物色してきて!」
この時のジーンの笑顔があまりにも綺麗で、一瞬見惚れてしまったのだと、後に彼女はエルヴィン自身から報告される。
そして、それに対して彼女が自信満々に「当然よ!」と生意気そうに笑うことは、想定内の出来事だった。