Existant Hero
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時は、人類最大の平和な時期を迎えていた。
どこから現れ、どうやって繁殖しているのかも不明な、人類最大の敵、巨人の存在は彼ら人類にとって非常に驚異的な存在であった。
けれども、もうかれこれ百年も、巨人が人類を脅かしにやってくることはなかった。
それは、馬鹿デカい壁のおかげなのかもしれない。
だが、やはり訳も分からぬ奴らに今まで人類がやられた被害は、非常に甚大なものだった。
そのせいで、彼らの秘密を暴くため、調査兵団なんていうものが作られた。
平和な壁の内側ではなく、危険を承知で壁外へと挑んでいく兵士たちを、彼らはそう分類した。
そんな勇気ある若者、無法者など、有象無象の輩が集まる調査兵団の中でも、調査兵団兵士長を務める女性は、一際強かった。
そう、それこそ人類最強と言われていたリヴァイ兵士長より、実は強い存在であったと言われる女性が存在していた。
845年。
「ナイルー、アンタ今日が壁外調査最終ってほんと?」
馬に乗りながら、ニヤニヤと彼女はナイルを見た。
「なに? そうなのか、ナイル」
エルヴィンは、彼女の言葉にすぐさま反応した。
彼は、彼女とは違って心配そうな顔をしていた。
おそらく、どこか怪我でもしてしまい、もう戦うことが出来なくなってしまったのではないかと思ったのだろう。
「耳が早いな、兵長」
「鼻がいいのはミケだがな」
「なんでアンタがミケの自慢するのよ」
エルヴィンのすぐ後ろにいたミケは、心なしか嬉しそうに鼻を啜った。
「で? なんで、俺が異動することを知ってたんだ?」
「キース団長が言ってたからよ。それで、一人いなくなる分、次の分隊長選ぶのに付き合えってさ。アンタ、何で憲兵団何かに行くわけ? 引き抜き?」
「そういうことだ」
「そうか、何だか少し残念だな、ナイル」
「調査兵団分隊長から憲兵団団長なんて、物凄い出世よねぇ。うらやまし~」
「お前、それが本音だろ」
ナイルのツッコミをまるっと無視して、彼女はエルヴィンに同意を求めた。
「あぁ、すごいなナイル!」
「……そりゃどーも」
「私も早く団長になりたいわ。キース団長って、いつ引退するのかしら」
「お前、目の前に団長いるんだぞ! 少しは慎め!」
馬を走らせながら、ナイルは器用に彼女の頭を叩こうとした。
だが、それは彼女の見事な反射神経によって軽やかに避けられた。
「時期団長の私に、一発でも食らわせれると思ったら大間違いよ」
「時期団長は俺だ! お前は、ただの兵士長だろ」
「お前ら! 今は壁外だぞ! 子どもの遠足気分か、貴様らは!?」
ようやく、キース団長の怒りが爆発したのか、前方から怒鳴り声が聞こえてきて、ナイルとエルヴィンは素直に黙り込んだ。
「キース団長! いつ引退しますか?!」
そんな中、ワクワクとまるで子どものように目をキラキラさせて質問してきた彼女に、キースは最早呆れるしかなかった。
「…………まるで壁外とは思えんな」
誰が呟いた言葉だったのか、森を馬で駆け抜けていく中、そんなやりとりが暫く続いた。
だが、そんな平和な中、突如キース団長の元へ前衛部隊がやってきて報告した。
「報告します! 前方に一体、10m級の巨人を発見しました! すぐに接触します!」
一気に、緊迫した雰囲気になり、兵士長、分隊長の彼らはそれぞれ顔を見合わせて頷き合った。
「予定通り、五つに分かれて全員戦闘配置につけ! 我々が巨人を引き付ける!」
この、四方八方に塞がれた森は、立体起動装置を持つ彼らにとっては有利な状況にあるといえる。
障害物があればあるほど、立体起動装置は力を発揮する。
この森一帯にいる巨人を殺して、ここを壁外における最初の拠点を置いて進撃を開始したい意向は、ここにいる兵士が全員把握しているところだ。
それぞれの部隊は、馬から立体起動装置へと移り、巨人を四方で囲みこんだ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
誰が最初に飛び掛かったのか、全員で斬りかかったおかげで、大した被害もなく巨人を討伐することはできた。
だが、その後拠点として荷を運び入れている最中に、数十体の巨人の群れに襲われ、調査兵団は退却を余儀なくされた。
その後、町の凱旋途中で、エルヴィンがふとどこかを見ていた。
「どうしたの、エルヴィン」
隣にいた彼女は、小さな声で彼に声をかけると、彼は「子どもが彼らを英雄でも見るかのような目で見ていた」と、小さく零した。
彼女はそれを聞いて、「ふーん」と興味もなさそうに返事する。
その後、彼をちらりと見たが、彼もまた他の者達と同様に町の人たちに合わせる顔がないのだろうと、暗い顔を眺めてから大きくため息をついた。
そんな長い凱旋を終えて、彼女はキース団長に呼び出されていた。
団長もまた、他の兵士たちと同様に暗い顔をしていた。
それを知っていた彼女は、足取りの重い中、団長のいる部屋へと向かった。
(何の話かしら。今日のことについての後悔だったり、相談だったりしたらぶん殴っちゃいそうね)
途中、ナイルに会った彼女は、仲間と別れを惜しむ兵士たちの中で、大きな声で叫んだ。
「内地から、上等なお肉が送られてくるのを待ってるわ! 時期団長さん!」
厭味ったらしさ満点のその笑顔と声に、その場にいた全員は呆気にとられていたが、ナイルだけが「はいはい」と苦笑した。
それだけを告げて、ナイルの姿もロクに見ることもなく、彼と別れて彼女は真っ直ぐ団長の元へと向かった。
「失礼します」
ドアのノックと同時に扉を開けて、そう言った彼女からは団長に敬意を払おうという気概は微塵も見られない。
だが、それは最早いつものことであり、現在のキースはそんなことを一々注意している余裕がなかった。
「スミス兵士長、お前に今から大事なことをいう。心して聞いてくれ」
「…………はい」
思えば、この時の彼女の何かを堪えるような顔は、キースが次に何を言うか全てわかった上で、笑みが零れるのを必死に我慢している顔だったのかもしれない。
だが、この時のキースは肉体的にも精神的にも疲労が溜まっていたこともあって、勝手に泣きそうな顔をしているなどと勘違いをしてしまっていた。
後に彼は、この勘違いに対して非常に悔やんでいた。
「お前に、団長の座を譲ることに決めた」
だから、この時彼女が嬉々としていたことなんて、キースはもちろん知らない。
どこから現れ、どうやって繁殖しているのかも不明な、人類最大の敵、巨人の存在は彼ら人類にとって非常に驚異的な存在であった。
けれども、もうかれこれ百年も、巨人が人類を脅かしにやってくることはなかった。
それは、馬鹿デカい壁のおかげなのかもしれない。
だが、やはり訳も分からぬ奴らに今まで人類がやられた被害は、非常に甚大なものだった。
そのせいで、彼らの秘密を暴くため、調査兵団なんていうものが作られた。
平和な壁の内側ではなく、危険を承知で壁外へと挑んでいく兵士たちを、彼らはそう分類した。
そんな勇気ある若者、無法者など、有象無象の輩が集まる調査兵団の中でも、調査兵団兵士長を務める女性は、一際強かった。
そう、それこそ人類最強と言われていたリヴァイ兵士長より、実は強い存在であったと言われる女性が存在していた。
845年。
「ナイルー、アンタ今日が壁外調査最終ってほんと?」
馬に乗りながら、ニヤニヤと彼女はナイルを見た。
「なに? そうなのか、ナイル」
エルヴィンは、彼女の言葉にすぐさま反応した。
彼は、彼女とは違って心配そうな顔をしていた。
おそらく、どこか怪我でもしてしまい、もう戦うことが出来なくなってしまったのではないかと思ったのだろう。
「耳が早いな、兵長」
「鼻がいいのはミケだがな」
「なんでアンタがミケの自慢するのよ」
エルヴィンのすぐ後ろにいたミケは、心なしか嬉しそうに鼻を啜った。
「で? なんで、俺が異動することを知ってたんだ?」
「キース団長が言ってたからよ。それで、一人いなくなる分、次の分隊長選ぶのに付き合えってさ。アンタ、何で憲兵団何かに行くわけ? 引き抜き?」
「そういうことだ」
「そうか、何だか少し残念だな、ナイル」
「調査兵団分隊長から憲兵団団長なんて、物凄い出世よねぇ。うらやまし~」
「お前、それが本音だろ」
ナイルのツッコミをまるっと無視して、彼女はエルヴィンに同意を求めた。
「あぁ、すごいなナイル!」
「……そりゃどーも」
「私も早く団長になりたいわ。キース団長って、いつ引退するのかしら」
「お前、目の前に団長いるんだぞ! 少しは慎め!」
馬を走らせながら、ナイルは器用に彼女の頭を叩こうとした。
だが、それは彼女の見事な反射神経によって軽やかに避けられた。
「時期団長の私に、一発でも食らわせれると思ったら大間違いよ」
「時期団長は俺だ! お前は、ただの兵士長だろ」
「お前ら! 今は壁外だぞ! 子どもの遠足気分か、貴様らは!?」
ようやく、キース団長の怒りが爆発したのか、前方から怒鳴り声が聞こえてきて、ナイルとエルヴィンは素直に黙り込んだ。
「キース団長! いつ引退しますか?!」
そんな中、ワクワクとまるで子どものように目をキラキラさせて質問してきた彼女に、キースは最早呆れるしかなかった。
「…………まるで壁外とは思えんな」
誰が呟いた言葉だったのか、森を馬で駆け抜けていく中、そんなやりとりが暫く続いた。
だが、そんな平和な中、突如キース団長の元へ前衛部隊がやってきて報告した。
「報告します! 前方に一体、10m級の巨人を発見しました! すぐに接触します!」
一気に、緊迫した雰囲気になり、兵士長、分隊長の彼らはそれぞれ顔を見合わせて頷き合った。
「予定通り、五つに分かれて全員戦闘配置につけ! 我々が巨人を引き付ける!」
この、四方八方に塞がれた森は、立体起動装置を持つ彼らにとっては有利な状況にあるといえる。
障害物があればあるほど、立体起動装置は力を発揮する。
この森一帯にいる巨人を殺して、ここを壁外における最初の拠点を置いて進撃を開始したい意向は、ここにいる兵士が全員把握しているところだ。
それぞれの部隊は、馬から立体起動装置へと移り、巨人を四方で囲みこんだ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
誰が最初に飛び掛かったのか、全員で斬りかかったおかげで、大した被害もなく巨人を討伐することはできた。
だが、その後拠点として荷を運び入れている最中に、数十体の巨人の群れに襲われ、調査兵団は退却を余儀なくされた。
その後、町の凱旋途中で、エルヴィンがふとどこかを見ていた。
「どうしたの、エルヴィン」
隣にいた彼女は、小さな声で彼に声をかけると、彼は「子どもが彼らを英雄でも見るかのような目で見ていた」と、小さく零した。
彼女はそれを聞いて、「ふーん」と興味もなさそうに返事する。
その後、彼をちらりと見たが、彼もまた他の者達と同様に町の人たちに合わせる顔がないのだろうと、暗い顔を眺めてから大きくため息をついた。
そんな長い凱旋を終えて、彼女はキース団長に呼び出されていた。
団長もまた、他の兵士たちと同様に暗い顔をしていた。
それを知っていた彼女は、足取りの重い中、団長のいる部屋へと向かった。
(何の話かしら。今日のことについての後悔だったり、相談だったりしたらぶん殴っちゃいそうね)
途中、ナイルに会った彼女は、仲間と別れを惜しむ兵士たちの中で、大きな声で叫んだ。
「内地から、上等なお肉が送られてくるのを待ってるわ! 時期団長さん!」
厭味ったらしさ満点のその笑顔と声に、その場にいた全員は呆気にとられていたが、ナイルだけが「はいはい」と苦笑した。
それだけを告げて、ナイルの姿もロクに見ることもなく、彼と別れて彼女は真っ直ぐ団長の元へと向かった。
「失礼します」
ドアのノックと同時に扉を開けて、そう言った彼女からは団長に敬意を払おうという気概は微塵も見られない。
だが、それは最早いつものことであり、現在のキースはそんなことを一々注意している余裕がなかった。
「スミス兵士長、お前に今から大事なことをいう。心して聞いてくれ」
「…………はい」
思えば、この時の彼女の何かを堪えるような顔は、キースが次に何を言うか全てわかった上で、笑みが零れるのを必死に我慢している顔だったのかもしれない。
だが、この時のキースは肉体的にも精神的にも疲労が溜まっていたこともあって、勝手に泣きそうな顔をしているなどと勘違いをしてしまっていた。
後に彼は、この勘違いに対して非常に悔やんでいた。
「お前に、団長の座を譲ることに決めた」
だから、この時彼女が嬉々としていたことなんて、キースはもちろん知らない。
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