家族が一人増えました
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同日の夜、目を覚ました男は天月家のお誕生日席へ座っていた。
そんな席へ無理やり座らされた彼は、家族全員の興味津々な目に若干の恐怖を感じつつ、自己紹介を行った。
「リヴァイだ」
その言葉に誰より目を輝かせたのは、ヒカルの弟だった。
「初めましてリヴァイさんっ!」
テーブルから前のめりに、全身全霊を込めてリヴァイへ挨拶する弟を見て、気持ち悪いものでも見たかのように顔を歪める姉のヒカル。
だが、彼等の両親はそんなことを気にはしていないようだった。
「それで、リヴァイさん。貴方はどこから来られたんですか?」
父親の威厳たっぷりの声に怯えることなく、リヴァイはウォール・ローゼと答えた。
「………」
思わず黙る父親に対して、母親はにこやかな表情のまま動かない。ヒカルは、最早宇宙人だと決めてかかっているかのような、怪しいものを見るようにリヴァイを見ている。
彼女の弟は、ブツブツと独り言を呟いている。
「――――ローゼということは、まだ漫画でいうところの………」
リヴァイは、命の恩人である天月家の住人を見て、真面な人種ではないのかもしれないと、厄介なところに命を救われてしまったと深いため息をついた。
それはさておき、天月一家はリヴァイが進撃の巨人という漫画の登場人物であることを弟から聞き、彼が本来ならこの世界に存在することは有り得ないのだということを理解した。
「でも、そんなことって本当にあるの?」
リヴァイそっちのけで、家族で顔を寄せてボソボソと話す彼等。
「我が息子の言葉が全て真実だとして、彼はいつ元の世界に帰れるんだろうか?」
父親の言葉に、全員が口を噤んだ。暫く沈黙が続く中、動いたのは母親だった。
「とりあえず、リヴァイさん。行くところもないでしょうし、わからないことだらけでしょう? 元の世界に帰るまで、うちに住みませんか?」
にこやかに言う母親に、リヴァイは眉を上げた。
「…………」
どうすべきか迷っている様子のリヴァイを見て、母親はまた言った。
「遠慮しないで、好きなだけ居てちょうだい? ホストファミリーって、ちょっと憧れだったのよね~」
そう言って、母親は家族に同意を求めると、三人も母と同じ意見だと言う意味を込めてリヴァイを見てそれぞれ頷いた。
すると、リヴァイも心を決めたのか、「世話になる」とはっきり言葉を述べた。
ヒカルと弟は、リヴァイに部屋を案内するように言われて、大雑把だが部屋を全て案内することにした。
「ここが風呂場。で、隣のここがトイレ」
ヒカルが説明していると、リヴァイは何やら考え込んでいるようだった。弟が、リヴァイにどうかしたのか尋ねると、暫く思案してから彼は二人に聞いた。
「ホストファミリーとは、なんだ?」
「あ、そっか。リヴァイさんのいた所では、そういうのはないですよね」
しかし、ホストファミリーの意味の説明をどうしたものかと悩んでいた弟は、姉のヒカルに説明を頼むことにした。
「私もそんなに詳しいわけじゃないけど……ホストファミリーっていうのは、ホームステイの受け入れをする一家っていうか、家のこと」
「姉ちゃん、リヴァイさんにはホームステイって言葉もわからないんじゃない?」
二人は、未だに理解しづらいようなリヴァイの様子を見て、なるほどと頷き合った。
「えっと、ホームステイっていうのは私たちとは違う国、人種の人を家に招いて数日間滞在してもらうことなの。来た人に、自分の国のことを知ってもらうためにやるんだけど……」
これでわかっただろうかと思っていると、リヴァイは真っ直ぐにヒカルを見て言った。
「つまり、他の地域から人を招いて、自分の地域について学ばせるということだな?」
「そうそう! わかってもらえて良かった~」
「これ以外にも、何かわからないこととかってありますか?」
ホッと安心しているヒカルの横で、弟がリヴァイに尋ねると彼は頷いた。
「風呂とトイレの使用方法がわからない」
そこで二人はハッとした。
((まさか、現代にあるもののほとんどがわからないんじゃ……))
それから、二人はリヴァイにわからないことはその都度聞いてもらうことにして、全ての部屋の説明を行っていった。
通常なら五分もかからないはずのこの作業、二人が案内を終えてリヴァイに部屋に入ってもらうまでの間にかかった時間は二時間だ。
それもそのはず、リヴァイにはこの世界のものは発展しすぎていて、わからないことが多い。
その都度尋ねてくる出来事は様々だ。
なぜ水が突然お湯に変わる? 歯磨き粉とはなんだ? あの空に飛んでいる物体はなんだ? 電気とはなんだ? などなど。
数えればキリがない程だ。
聞かれる質問全てに、二人が完璧答えられるわけもなく、逆にリヴァイを混乱させてしまうこともあった。
そんな時は、弟が携帯でネットで調べてからそれを自分たちなりに、リヴァイにわかりやすいように伝える。
そんな作業を繰り返していたため、二時間もかかってっしまったのだろう。
二人は、リビングのソファでぐったりとしていた。
「あー、疲れた。家にあるものでも、聞かれると説明できないものってあるんだね」
「うーん、俺らみたいに十年以上生きててもわかんないことがあるんだ。リヴァイさんなんて、謎だらけなんだろうな」
「でも、リヴァイさんは頭良いんじゃない? お母さんは、そう思ったんだけど?」
コト、と二つのコップが置かれる。
ふんわりと香る香ばしい香りと、牛乳とコーヒーがグルグルと渦を巻いて混ざり合っていくのを見て、二人はカフェオレだと、コップを手に取った。
「ヒカル、リヴァイさんにもコーヒー届けてあげてくれる?」
「はーい」
お盆に、ブラックコーヒーとシュガースティック、コーヒーフレッシュを一つずつ、そして小さいお皿にシンプルな丸いクッキーが三つ。
「クッキーは、あなた達の分もあるからね。それで、もし良かったら一緒にリビングで食べるように誘ってくれる? お母さんも一緒に、ここのことを教えられるように頑張るわ。焦ることはないんだから、家族みんなでリヴァイさんが不安に思わないように、フォローしましょう」
「わかった」
ヒカルはお盆を持ち直して、リヴァイのいる部屋へと向かった。二回ノックをすると、リヴァイから返事があり、ヒカルは部屋の扉を開いた。
リヴァイは、窓を開けて空を見ていた。
「あの、良かったらリビングで皆でおやつ食べませんか? お母さんが、コーヒーとクッキーを作ったので」
ヒカルがそういうと、リヴァイは静かに振り向いてヒカルを見た。
「おやつとはなんだ?」
「え? えっと、おやつは間食だから……しょ、食事と食事の合間の空腹を避けるためのデザート?」
「空腹を避けるデザート…………この国では、それが普通なのか?」
リヴァイの問いかけに、ヒカルが頷くと、リヴァイは一歩ヒカルの方へ近付いた。
「で、コーヒーと言ったな」
「え、あ、言ったけど……?」
「そちらへ行く」
リヴァイがコーヒーに対して興味を示したことに、少し疑問を持ちながら、ヒカルはお盆を持ち直してリヴァイと共に廊下を歩いた。
無言で二人が並んで歩いていると、リヴァイが口を開いた。
「…………これから、世話になる」
家族全員でいた時にも言っていた言葉をもう一度言われ、ヒカルはちらりと隣を歩くリヴァイを見た。
突然、自分のいた世界とは異なる世界へと落とされてきたリヴァイ。
彼自身、まだよく状況を理解できていないはずで、ある一家が家にいてもいいと言ってきた。
疑心暗鬼にもなるだろうが、それでもリヴァイはヒカルに、家族に世話になると言ったのだ。
ヒカルは、彼がどんな思いを抱えているかを理解することは困難だろうが、それでもリヴァイが少し心を開いてくれているのだと思った。
だから、彼女は笑った。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
頭を下げたヒカルを見て、リヴァイは前を向いた。
そんな席へ無理やり座らされた彼は、家族全員の興味津々な目に若干の恐怖を感じつつ、自己紹介を行った。
「リヴァイだ」
その言葉に誰より目を輝かせたのは、ヒカルの弟だった。
「初めましてリヴァイさんっ!」
テーブルから前のめりに、全身全霊を込めてリヴァイへ挨拶する弟を見て、気持ち悪いものでも見たかのように顔を歪める姉のヒカル。
だが、彼等の両親はそんなことを気にはしていないようだった。
「それで、リヴァイさん。貴方はどこから来られたんですか?」
父親の威厳たっぷりの声に怯えることなく、リヴァイはウォール・ローゼと答えた。
「………」
思わず黙る父親に対して、母親はにこやかな表情のまま動かない。ヒカルは、最早宇宙人だと決めてかかっているかのような、怪しいものを見るようにリヴァイを見ている。
彼女の弟は、ブツブツと独り言を呟いている。
「――――ローゼということは、まだ漫画でいうところの………」
リヴァイは、命の恩人である天月家の住人を見て、真面な人種ではないのかもしれないと、厄介なところに命を救われてしまったと深いため息をついた。
それはさておき、天月一家はリヴァイが進撃の巨人という漫画の登場人物であることを弟から聞き、彼が本来ならこの世界に存在することは有り得ないのだということを理解した。
「でも、そんなことって本当にあるの?」
リヴァイそっちのけで、家族で顔を寄せてボソボソと話す彼等。
「我が息子の言葉が全て真実だとして、彼はいつ元の世界に帰れるんだろうか?」
父親の言葉に、全員が口を噤んだ。暫く沈黙が続く中、動いたのは母親だった。
「とりあえず、リヴァイさん。行くところもないでしょうし、わからないことだらけでしょう? 元の世界に帰るまで、うちに住みませんか?」
にこやかに言う母親に、リヴァイは眉を上げた。
「…………」
どうすべきか迷っている様子のリヴァイを見て、母親はまた言った。
「遠慮しないで、好きなだけ居てちょうだい? ホストファミリーって、ちょっと憧れだったのよね~」
そう言って、母親は家族に同意を求めると、三人も母と同じ意見だと言う意味を込めてリヴァイを見てそれぞれ頷いた。
すると、リヴァイも心を決めたのか、「世話になる」とはっきり言葉を述べた。
ヒカルと弟は、リヴァイに部屋を案内するように言われて、大雑把だが部屋を全て案内することにした。
「ここが風呂場。で、隣のここがトイレ」
ヒカルが説明していると、リヴァイは何やら考え込んでいるようだった。弟が、リヴァイにどうかしたのか尋ねると、暫く思案してから彼は二人に聞いた。
「ホストファミリーとは、なんだ?」
「あ、そっか。リヴァイさんのいた所では、そういうのはないですよね」
しかし、ホストファミリーの意味の説明をどうしたものかと悩んでいた弟は、姉のヒカルに説明を頼むことにした。
「私もそんなに詳しいわけじゃないけど……ホストファミリーっていうのは、ホームステイの受け入れをする一家っていうか、家のこと」
「姉ちゃん、リヴァイさんにはホームステイって言葉もわからないんじゃない?」
二人は、未だに理解しづらいようなリヴァイの様子を見て、なるほどと頷き合った。
「えっと、ホームステイっていうのは私たちとは違う国、人種の人を家に招いて数日間滞在してもらうことなの。来た人に、自分の国のことを知ってもらうためにやるんだけど……」
これでわかっただろうかと思っていると、リヴァイは真っ直ぐにヒカルを見て言った。
「つまり、他の地域から人を招いて、自分の地域について学ばせるということだな?」
「そうそう! わかってもらえて良かった~」
「これ以外にも、何かわからないこととかってありますか?」
ホッと安心しているヒカルの横で、弟がリヴァイに尋ねると彼は頷いた。
「風呂とトイレの使用方法がわからない」
そこで二人はハッとした。
((まさか、現代にあるもののほとんどがわからないんじゃ……))
それから、二人はリヴァイにわからないことはその都度聞いてもらうことにして、全ての部屋の説明を行っていった。
通常なら五分もかからないはずのこの作業、二人が案内を終えてリヴァイに部屋に入ってもらうまでの間にかかった時間は二時間だ。
それもそのはず、リヴァイにはこの世界のものは発展しすぎていて、わからないことが多い。
その都度尋ねてくる出来事は様々だ。
なぜ水が突然お湯に変わる? 歯磨き粉とはなんだ? あの空に飛んでいる物体はなんだ? 電気とはなんだ? などなど。
数えればキリがない程だ。
聞かれる質問全てに、二人が完璧答えられるわけもなく、逆にリヴァイを混乱させてしまうこともあった。
そんな時は、弟が携帯でネットで調べてからそれを自分たちなりに、リヴァイにわかりやすいように伝える。
そんな作業を繰り返していたため、二時間もかかってっしまったのだろう。
二人は、リビングのソファでぐったりとしていた。
「あー、疲れた。家にあるものでも、聞かれると説明できないものってあるんだね」
「うーん、俺らみたいに十年以上生きててもわかんないことがあるんだ。リヴァイさんなんて、謎だらけなんだろうな」
「でも、リヴァイさんは頭良いんじゃない? お母さんは、そう思ったんだけど?」
コト、と二つのコップが置かれる。
ふんわりと香る香ばしい香りと、牛乳とコーヒーがグルグルと渦を巻いて混ざり合っていくのを見て、二人はカフェオレだと、コップを手に取った。
「ヒカル、リヴァイさんにもコーヒー届けてあげてくれる?」
「はーい」
お盆に、ブラックコーヒーとシュガースティック、コーヒーフレッシュを一つずつ、そして小さいお皿にシンプルな丸いクッキーが三つ。
「クッキーは、あなた達の分もあるからね。それで、もし良かったら一緒にリビングで食べるように誘ってくれる? お母さんも一緒に、ここのことを教えられるように頑張るわ。焦ることはないんだから、家族みんなでリヴァイさんが不安に思わないように、フォローしましょう」
「わかった」
ヒカルはお盆を持ち直して、リヴァイのいる部屋へと向かった。二回ノックをすると、リヴァイから返事があり、ヒカルは部屋の扉を開いた。
リヴァイは、窓を開けて空を見ていた。
「あの、良かったらリビングで皆でおやつ食べませんか? お母さんが、コーヒーとクッキーを作ったので」
ヒカルがそういうと、リヴァイは静かに振り向いてヒカルを見た。
「おやつとはなんだ?」
「え? えっと、おやつは間食だから……しょ、食事と食事の合間の空腹を避けるためのデザート?」
「空腹を避けるデザート…………この国では、それが普通なのか?」
リヴァイの問いかけに、ヒカルが頷くと、リヴァイは一歩ヒカルの方へ近付いた。
「で、コーヒーと言ったな」
「え、あ、言ったけど……?」
「そちらへ行く」
リヴァイがコーヒーに対して興味を示したことに、少し疑問を持ちながら、ヒカルはお盆を持ち直してリヴァイと共に廊下を歩いた。
無言で二人が並んで歩いていると、リヴァイが口を開いた。
「…………これから、世話になる」
家族全員でいた時にも言っていた言葉をもう一度言われ、ヒカルはちらりと隣を歩くリヴァイを見た。
突然、自分のいた世界とは異なる世界へと落とされてきたリヴァイ。
彼自身、まだよく状況を理解できていないはずで、ある一家が家にいてもいいと言ってきた。
疑心暗鬼にもなるだろうが、それでもリヴァイはヒカルに、家族に世話になると言ったのだ。
ヒカルは、彼がどんな思いを抱えているかを理解することは困難だろうが、それでもリヴァイが少し心を開いてくれているのだと思った。
だから、彼女は笑った。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
頭を下げたヒカルを見て、リヴァイは前を向いた。