家族が一人増えました
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「あ、虹」
ゆとり教育で育った小学校、中学校の時代は終わり、土曜日は午前授業がある高校へ通い始めて数か月。
帰宅部のヒカルは、真っ直ぐ家へ帰宅した。
昼食を食べ終え、リビングの窓を全開にして傍に置いてある一人用のソファに腰かけて、棒アイスを食べながら携帯を弄っていた。
そのソファは、彼女のお気に入りだ。
両親も使うことがあるが、彼女の特等席として普段座ろうとする人は少ない。
英国の伝統スタイルのようなクラシカルな白いソファは、いるだけで高級感を醸し出す。
リビングの中でも群を抜いて存在感を放つソファである。
そんなソファに、スリッパを脱いで体育座りしていた彼女は携帯を弄るのを止め、そよそよと吹く小さな風に窓の外の景色を見た。
程よい日差しと涼しくて気持ちの良い風が、ヒカルに心地よい安心感を与える。
そんな時、雨も降っていないのに彼女は空に虹を見た。
「お母さーん、今日って雨降ってたっけ?」
ヒカルのそんな声に、キッチンで昼食の食器洗いをしていた彼女の母は、呑気な声で答える。
「え~? どうだったっけ~? 降ってたの?」
「いや、私が聞いてるんだけど」
「ヒカル学校行って外出てるんだから、覚えてるんじゃないの~?」
少し離れた距離にいるからか、洗い物をしながら話す彼女の母は語尾が伸びる。
そんな声に気にせず、彼女は「だってさ!」と続けた。
「雨降ってないのに、虹出てるんだけど!?」
食べ終えたアイスをゴミ箱に捨てるために、キッチンの近くに来たヒカルは、母に向かって話した。
すると、オープンキッチンに立っていた母は、顔だけヒカルの方へ振り返ってから、え~と言いながら窓を見た。
「ここからじゃ見えないわね~、虹」
「写メ撮る。怪奇現象かな?」
「あら、それ面白いわね」
珍しいもの、変なものには敏感な一家は、少しワクワクした様子だ。
ヒカルは、食器洗いを続ける母に虹を見せるために携帯を空へ向けた。
すると、ヒカルの携帯には空と虹と、小さい黒い斑点が見えた。
「あれ? ゴミかな?」
制服から着替えていたルームウェアで携帯のカメラ部分をゴシゴシと吹いてから、彼女はもう一度カメラを構えた。
すると、次に空へカメラを向けたときには、その斑点が人型になっているように見えた。
「え? ていうか、これ…………」
暫くカメラを向けたまま固まっていると、人型のその黒い斑点は物凄いスピードで近付いてきていた。
「お母さんっ!? 人落ちてきた!」
すぐさまヒカルはカメラからムービーへと切り替えて、録画ボタンを押してから、母へと叫んだ。
「へ~?」
ガシャガシャと、食器を濯ぎ始めてしまった母は、ヒカルの声がいまいち聞こえないらしく、気のない返事で返すが、ヒカルは焦っていた。
「どーしよ!? 宇宙人!?」
とりあえず、真っ直ぐ我が家へ落ちてくる人影にオロオロとしていると、物凄い轟音と共に人が落ちてきた。
これには、さすがの母も驚いたようで、ゴム手袋をはめたままヒカルの隣へやってきた。
「どうしたの?」
あくまでのマイペースな母に、ヒカルは「人が落ちてきた! 空から!」と端的かつわかりやすい、そのままのことを説明すると、彼女の母はニッコリと笑顔のまま言った。
「あら、ビックリね」
本当に驚いているのかはわからないが、とりあえず砂埃がすごかったため、ヒカルは一旦窓を閉めて部屋に砂が入ってこないようにしてから、母親と共に自分たちの庭へと出た。
砂埃の量が凄い割に、特にこれと言って庭が抉れたような様子も見えないため安堵した彼女の母。
「庭は大丈夫みたいね」
「庭は……って、落ちてきた人は大丈夫なのかな?」
「宇宙人なら、きっと大丈夫よ」
どこから来るのか、彼女の母は拳を握って自信たっぷりに言った。ゴム手袋をはめたまま。
「………………っう……」
小さく誰かの呻き声が聞こえて、二人は笑顔で飛び上がった。
「生きてる!?」
「おーい、生きてますかー?」
心配している様子が皆無である。それでも、砂埃がマシになってきたため、ヒカルは母に危ないかもしれないからそこにいるようにと注意してから、一歩一歩慎重に声のする方へと近付いて行く。
「気を付けてね、ヒカル」
「任しといて!」
ウキウキした様子の二人は、ようやく落ちてきた人の姿を捉えた。
その人物は、黒髪で緑のポンチョに白いパンツ、ロングブーツを履いた男の子のようだった。
「お母さん! 男の子だよっ! 歳近い子かも!?」
「そうみたいね、生きてるのかしら?」
母の言葉に、倒れたままの男の口元に手を近づけるヒカル。
暫くそのまま硬直していたかと思うと、ガバッと顔を上げて母を見て、「生きてる! 息してた!」と叫んだ。
「あら、じゃあ一旦お部屋の中へ運びましょう。怪我してたら、手当てしてあげないと。意識戻らなかったら、救急車呼びましょうね」
こうして、倒れて意識を失っている男は女性二人の手によって、天月家へと運ばれていくのだった。
ゆとり教育で育った小学校、中学校の時代は終わり、土曜日は午前授業がある高校へ通い始めて数か月。
帰宅部のヒカルは、真っ直ぐ家へ帰宅した。
昼食を食べ終え、リビングの窓を全開にして傍に置いてある一人用のソファに腰かけて、棒アイスを食べながら携帯を弄っていた。
そのソファは、彼女のお気に入りだ。
両親も使うことがあるが、彼女の特等席として普段座ろうとする人は少ない。
英国の伝統スタイルのようなクラシカルな白いソファは、いるだけで高級感を醸し出す。
リビングの中でも群を抜いて存在感を放つソファである。
そんなソファに、スリッパを脱いで体育座りしていた彼女は携帯を弄るのを止め、そよそよと吹く小さな風に窓の外の景色を見た。
程よい日差しと涼しくて気持ちの良い風が、ヒカルに心地よい安心感を与える。
そんな時、雨も降っていないのに彼女は空に虹を見た。
「お母さーん、今日って雨降ってたっけ?」
ヒカルのそんな声に、キッチンで昼食の食器洗いをしていた彼女の母は、呑気な声で答える。
「え~? どうだったっけ~? 降ってたの?」
「いや、私が聞いてるんだけど」
「ヒカル学校行って外出てるんだから、覚えてるんじゃないの~?」
少し離れた距離にいるからか、洗い物をしながら話す彼女の母は語尾が伸びる。
そんな声に気にせず、彼女は「だってさ!」と続けた。
「雨降ってないのに、虹出てるんだけど!?」
食べ終えたアイスをゴミ箱に捨てるために、キッチンの近くに来たヒカルは、母に向かって話した。
すると、オープンキッチンに立っていた母は、顔だけヒカルの方へ振り返ってから、え~と言いながら窓を見た。
「ここからじゃ見えないわね~、虹」
「写メ撮る。怪奇現象かな?」
「あら、それ面白いわね」
珍しいもの、変なものには敏感な一家は、少しワクワクした様子だ。
ヒカルは、食器洗いを続ける母に虹を見せるために携帯を空へ向けた。
すると、ヒカルの携帯には空と虹と、小さい黒い斑点が見えた。
「あれ? ゴミかな?」
制服から着替えていたルームウェアで携帯のカメラ部分をゴシゴシと吹いてから、彼女はもう一度カメラを構えた。
すると、次に空へカメラを向けたときには、その斑点が人型になっているように見えた。
「え? ていうか、これ…………」
暫くカメラを向けたまま固まっていると、人型のその黒い斑点は物凄いスピードで近付いてきていた。
「お母さんっ!? 人落ちてきた!」
すぐさまヒカルはカメラからムービーへと切り替えて、録画ボタンを押してから、母へと叫んだ。
「へ~?」
ガシャガシャと、食器を濯ぎ始めてしまった母は、ヒカルの声がいまいち聞こえないらしく、気のない返事で返すが、ヒカルは焦っていた。
「どーしよ!? 宇宙人!?」
とりあえず、真っ直ぐ我が家へ落ちてくる人影にオロオロとしていると、物凄い轟音と共に人が落ちてきた。
これには、さすがの母も驚いたようで、ゴム手袋をはめたままヒカルの隣へやってきた。
「どうしたの?」
あくまでのマイペースな母に、ヒカルは「人が落ちてきた! 空から!」と端的かつわかりやすい、そのままのことを説明すると、彼女の母はニッコリと笑顔のまま言った。
「あら、ビックリね」
本当に驚いているのかはわからないが、とりあえず砂埃がすごかったため、ヒカルは一旦窓を閉めて部屋に砂が入ってこないようにしてから、母親と共に自分たちの庭へと出た。
砂埃の量が凄い割に、特にこれと言って庭が抉れたような様子も見えないため安堵した彼女の母。
「庭は大丈夫みたいね」
「庭は……って、落ちてきた人は大丈夫なのかな?」
「宇宙人なら、きっと大丈夫よ」
どこから来るのか、彼女の母は拳を握って自信たっぷりに言った。ゴム手袋をはめたまま。
「………………っう……」
小さく誰かの呻き声が聞こえて、二人は笑顔で飛び上がった。
「生きてる!?」
「おーい、生きてますかー?」
心配している様子が皆無である。それでも、砂埃がマシになってきたため、ヒカルは母に危ないかもしれないからそこにいるようにと注意してから、一歩一歩慎重に声のする方へと近付いて行く。
「気を付けてね、ヒカル」
「任しといて!」
ウキウキした様子の二人は、ようやく落ちてきた人の姿を捉えた。
その人物は、黒髪で緑のポンチョに白いパンツ、ロングブーツを履いた男の子のようだった。
「お母さん! 男の子だよっ! 歳近い子かも!?」
「そうみたいね、生きてるのかしら?」
母の言葉に、倒れたままの男の口元に手を近づけるヒカル。
暫くそのまま硬直していたかと思うと、ガバッと顔を上げて母を見て、「生きてる! 息してた!」と叫んだ。
「あら、じゃあ一旦お部屋の中へ運びましょう。怪我してたら、手当てしてあげないと。意識戻らなかったら、救急車呼びましょうね」
こうして、倒れて意識を失っている男は女性二人の手によって、天月家へと運ばれていくのだった。
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