結び守
「審神者様の現在の座標は天禄、112.59864.3……いえ、待って下さい」
審神者のいる本丸では、彼女が行方不明前にこんのすけに出した救援要請から、政府より特殊部隊が派遣されていた。
既に作戦立案まで済んでおり、審神者の持ち物からサイコメトリー、物体に残る残留思念を読み取る技術を用いて審神者の現在いる時代、座標を特定している最中である。
そこでサイコメトリーを行っていた男性が端末と八卦の描かれた羅針盤から視線を外し、上司であるスーツの女性へ報告する。
「現在、審神者様の座標が高速移動中! 恐ろしい速度で時代を越えていきます!」
ガタッ、と周囲の機器を計測していた者達も慌てて動き出す。
審神者の現在地を見失っては、今までの調査が水の泡となってしまう。
静かだった本丸内の空気が、突如として慌ただしく動き出す。
外の庭には、未だに雨がしんしんと降っている。
審神者の心理状態を示すそれは、今は何より審神者が生きている証拠でもある。
静かな雨は今の状況にあまりに似つかわしくないが、刀剣達を少し安心させた。
審神者はまだ、生きていると。
「天禄、建久、正慶……………安政! 審神者様は現在安政の時代へ飛ばれました! 原因不明です!」
男は、審神者が降り立った時代を特定した。
「とっとと座標出しな! 第一、第二部隊は転移装置へ! 場所を特定次第行動を開始しろ!」
スーツの女性の檄が飛び、本丸内の刀剣達も動き出す。
そんな中で大和守や堀川など、新撰組の刀達は陸奥守と顔を見合わせた。
「…………安政の大獄……」
「……あぁ、分かっちゅう」
和泉守の言葉に、陸奥守は雨雲を見上げながら小さく答えた。
「救出に行こうという時に、なんて時代に行きやがる主」
そう溢したのは和泉守兼定。
彼は第一部隊に配置されており、隊長の膝丸の元へ渋々向かう。
それを見届けてから、陸奥守も第二部隊の元へ向かった。
彼等の生きた激動の時代、少し前。
安政以降、彼等には戦い続けた記憶しかない。
刀を振るわれることは彼等にとっては喜ばしいものではあったが、同時にそれを扱う者たちが苦しみ、葛藤をし続けた時代。
激動の時代以降、刀は戦いにおいて使用されなくなる。
この時代は、刀の最後の戦いと言っても過言ではない。
審神者がいるのは、そんな時代だということだ。
「刀剣男士様方、悪いが配置替えさせて下さい」
ここを現在取り仕切るスーツの女性は、そう言って彼等に頭を下げた。
「なぜ?」
第一部隊にいる今剣は、冷静な表情のままその女性を見上げた。
子どもの姿と言えど中身は付喪神であり、千年以上生きている人間より遥かな高みに存在する者。
その声や態度に女性は一瞬怯んだが、拳を握り締め明瞭な声で告げた。
「初めの想定は平安時代でしたが、江戸時代であるならその時代を生きた刀で行くべきです。その時代に精通した者の方が何かと都合が良いですから」
「一理ある。だが、主が外にいるとは限らん。建物内の捜索には短刀が適任であろう?」
今剣の方に手を置きながら、女性へ微笑みかけたのは三日月宗近。
「…………異存あるか?」
「……いえ。仰るとおりです」
「良かったな今剣。俺の分まで主の捜索、しかと頼んだぞ」
女性の了承を得て、今剣は三日月へ自信満々に笑みを浮かべた。
「みかづきも、るすをたのみましたよっ!」
「あい分かった」
審神者救出部隊は以下の通り。
第一部隊
部隊長、陸奥守吉行
加州清光、大和守安定、御手杵、今剣、小竜景光
第二部隊
部隊長、長曽根虎徹
和泉守兼定、堀川国広、膝丸、乱藤四郎、日本号
時代に合わせ、部隊長や編成が女性により変更された。
「第一部隊は審神者様の探索を最優先とする。同時期に行方不明となった髭切様、鶴丸国永様も審神者様と行動を共にしていると考えられます」
現在、審神者の位置は移動しているものの時代は固定されている。
誤差範囲も含めた座標地点と地図が、陸奥守のもつ端末にデータで送られる。
「念の為違う場所にいることを考慮し、第二部隊には二振りの刀剣男士の捜索を行なっていただきます」
第二部隊にも、二振りの刀剣男士の座標データが送られた。
「二振りの刀剣男士に関しましては、審神者様付近に座標が常に現れていることから、ほぼ確実に審神者様と行動を共にしていると思われます」
「第一、第二部隊は連携を取り早急に審神者様方を救出して下さい」
政府の者達の言葉に、刀剣男士達は頷き転移装置を作動させた。
「現在の審神者様の座標、安政7年の354039.6.139459.6。転移、開始します!」
各々、刀剣男士達は皆審神者と鶴丸、髭切を探すべく本丸から審神者のいる時代へ転移した。
審神者のいる本丸では、彼女が行方不明前にこんのすけに出した救援要請から、政府より特殊部隊が派遣されていた。
既に作戦立案まで済んでおり、審神者の持ち物からサイコメトリー、物体に残る残留思念を読み取る技術を用いて審神者の現在いる時代、座標を特定している最中である。
そこでサイコメトリーを行っていた男性が端末と八卦の描かれた羅針盤から視線を外し、上司であるスーツの女性へ報告する。
「現在、審神者様の座標が高速移動中! 恐ろしい速度で時代を越えていきます!」
ガタッ、と周囲の機器を計測していた者達も慌てて動き出す。
審神者の現在地を見失っては、今までの調査が水の泡となってしまう。
静かだった本丸内の空気が、突如として慌ただしく動き出す。
外の庭には、未だに雨がしんしんと降っている。
審神者の心理状態を示すそれは、今は何より審神者が生きている証拠でもある。
静かな雨は今の状況にあまりに似つかわしくないが、刀剣達を少し安心させた。
審神者はまだ、生きていると。
「天禄、建久、正慶……………安政! 審神者様は現在安政の時代へ飛ばれました! 原因不明です!」
男は、審神者が降り立った時代を特定した。
「とっとと座標出しな! 第一、第二部隊は転移装置へ! 場所を特定次第行動を開始しろ!」
スーツの女性の檄が飛び、本丸内の刀剣達も動き出す。
そんな中で大和守や堀川など、新撰組の刀達は陸奥守と顔を見合わせた。
「…………安政の大獄……」
「……あぁ、分かっちゅう」
和泉守の言葉に、陸奥守は雨雲を見上げながら小さく答えた。
「救出に行こうという時に、なんて時代に行きやがる主」
そう溢したのは和泉守兼定。
彼は第一部隊に配置されており、隊長の膝丸の元へ渋々向かう。
それを見届けてから、陸奥守も第二部隊の元へ向かった。
彼等の生きた激動の時代、少し前。
安政以降、彼等には戦い続けた記憶しかない。
刀を振るわれることは彼等にとっては喜ばしいものではあったが、同時にそれを扱う者たちが苦しみ、葛藤をし続けた時代。
激動の時代以降、刀は戦いにおいて使用されなくなる。
この時代は、刀の最後の戦いと言っても過言ではない。
審神者がいるのは、そんな時代だということだ。
「刀剣男士様方、悪いが配置替えさせて下さい」
ここを現在取り仕切るスーツの女性は、そう言って彼等に頭を下げた。
「なぜ?」
第一部隊にいる今剣は、冷静な表情のままその女性を見上げた。
子どもの姿と言えど中身は付喪神であり、千年以上生きている人間より遥かな高みに存在する者。
その声や態度に女性は一瞬怯んだが、拳を握り締め明瞭な声で告げた。
「初めの想定は平安時代でしたが、江戸時代であるならその時代を生きた刀で行くべきです。その時代に精通した者の方が何かと都合が良いですから」
「一理ある。だが、主が外にいるとは限らん。建物内の捜索には短刀が適任であろう?」
今剣の方に手を置きながら、女性へ微笑みかけたのは三日月宗近。
「…………異存あるか?」
「……いえ。仰るとおりです」
「良かったな今剣。俺の分まで主の捜索、しかと頼んだぞ」
女性の了承を得て、今剣は三日月へ自信満々に笑みを浮かべた。
「みかづきも、るすをたのみましたよっ!」
「あい分かった」
審神者救出部隊は以下の通り。
第一部隊
部隊長、陸奥守吉行
加州清光、大和守安定、御手杵、今剣、小竜景光
第二部隊
部隊長、長曽根虎徹
和泉守兼定、堀川国広、膝丸、乱藤四郎、日本号
時代に合わせ、部隊長や編成が女性により変更された。
「第一部隊は審神者様の探索を最優先とする。同時期に行方不明となった髭切様、鶴丸国永様も審神者様と行動を共にしていると考えられます」
現在、審神者の位置は移動しているものの時代は固定されている。
誤差範囲も含めた座標地点と地図が、陸奥守のもつ端末にデータで送られる。
「念の為違う場所にいることを考慮し、第二部隊には二振りの刀剣男士の捜索を行なっていただきます」
第二部隊にも、二振りの刀剣男士の座標データが送られた。
「二振りの刀剣男士に関しましては、審神者様付近に座標が常に現れていることから、ほぼ確実に審神者様と行動を共にしていると思われます」
「第一、第二部隊は連携を取り早急に審神者様方を救出して下さい」
政府の者達の言葉に、刀剣男士達は頷き転移装置を作動させた。
「現在の審神者様の座標、安政7年の354039.6.139459.6。転移、開始します!」
各々、刀剣男士達は皆審神者と鶴丸、髭切を探すべく本丸から審神者のいる時代へ転移した。