アインクラッド編
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「ここだな…………皆、準備はいいな?」
ギルドのサブマスターであるロコが、天井近くまである扉に手をつけた。
「長かったな、ベンヌ。でもよ、俺らはこれを倒してからが始まりだよな」
「あぁ、ロコ。今までありがとう……皆もだ。そして、これからも誰一人欠けることなく、このフロアボスを倒して、攻略組に参加しよう」
「おうよ! オレはいつまでもリーダーについていくぜ!」
皆、気合が入っているのがよくわかる。
でも、力み過ぎず、適度な緊張感がある。
空気が、ピリピリとしているような感覚は、平穏な現実では味わうことのないものだ。
きっと、誰もがそう思っているだろう。
そんな現実へ帰るための、第一歩が今だ。
「それにしても、スー。お前、その恰好はどうなんだ……」
「ただの男装だよ。気にすんな」
「気にするっつの!」
「いやー、なんか変身マント手に入れてからさ(最初からだけど)、ここぞ! って時は、男の姿の方が強くなれる気がするんだ」
「それ、絶対気分だけだろ」
「まぁまぁ、いいんじゃない? レアアイテムを持ってる人が、それをどう使ったとしても」
「だとしても、もったいねぇ……」
「でも、これ結構不便なんだよ。透明人間になったり、モンスターにも変身できるけど、モンスター達からはちゃんとプレイヤーって認識されたままで、攻撃されるし……」
「へー、そういうもんなんだ」
べちゃくちゃと話していると、ゴホンとベンヌが咳払いをしたため、慌てて黙る私たち。
「じゃ……行くぞ、時代を変えるのは俺たちだ!」
気合を入れ直す。
今の、閉鎖的な攻略組の凝り固まった考えを打ち砕くため、町で縮こまるプレイヤー達や、今なお自分たちと同じように攻略組を目指すプレイヤー達、様々なプレイヤー達と現実へ帰るため、そして――――
(私が、平和な高校生活に帰るため――――)
ギギギッ、と重々しい音と共に開く扉。
中へ入ると、真っ暗だった部屋に、一瞬で光が灯る。
真っ白な壁、床、柱――――そして、その一番奥の椅子に腰かけていたフロアボスは、立ち上がり武器を手にした。
「武器は情報通りだな。なら、予定通り行くぞ!」
周りの雑魚を倒す者、ボスの攻撃を防ぐもの、スイッチによる攻撃、及び側面や背面からの攻撃を行う。
「正面の鎧は固そうだ。側面、背面からの攻撃を主体とする。行くぞっ!」
何度攻撃を防いで、何度攻撃を喰らわせただろう。
自分たちのHPが、そんなに減ったわけじゃない。
ボスのHPも半分を切っている。
それなのに、勝てる気がしない。
(こんなに攻撃したのに、まだ半分切った程度だなんて…)
思わず、ベンヌの方を見た。
すると、彼も同じように思っていたらしく、彼は一つ頷いた。
それは、私がユニークスキルを使っていいというサイン。
「悪い、ちょっと抜ける」
一言告げて、敵のいない柱の陰に隠れる。
そこで、手早く装備を両手剣から、茅場から……ヒースクリフから貰った大剣に持ち替える。
身の丈の二倍ほどの大きさを持つそれを、片手で軽く背中に担ぎ、敵の攻撃を皆がはじいた瞬間に、叫ぶ。
「スイッチ!」
チームプレイでできる、守備と攻撃の素早い切り替え。
これにより、攻撃を弾かれたボスの数秒の硬直時間に攻撃を加えることが可能だ。
走りながら、考える。
スキルの発動方法……頭でパソコンがスキルを立ち上げる感覚。
すると、剣が光を帯びる。
後は、発動させるだけ。
発動させてしまえば、自分の身体を勝手に動かして、剣はボスを攻撃してくれる。
「……………うらあああああぁぁぁぁ!!」
赤く光る大剣を振り回し、敵のHPを削っていく。
近くにいた雑魚モンスターも、ついでにスキルの餌食となり消えていく。
このギルド内でも、どうやら最高火力だったらしいこの大剣の攻撃力と、スキルの連撃によりボスのHPはだいぶ減らすことが出来た。
赤くなったHPは、もう残量が少ないことを表す。
「気を付けろ、スー! 赤くなったら、奴は……」
誰かが言うより早く、もう一発斬りつけてやろうと剣を奮うと、それはボスの持ち出した盾により防がれた。
「くっ……そ…こんの、クソ野郎がっ!!」
ボスの盾を、何とか弾くと、すかさず皆が攻撃をしかける。
「奴に攻撃させる隙を与えるな! 一気に押し切るぞ!」
雑魚モンスターも放置して、全員でボスの滅多打ちである。
私も参加しようとしていると、ボス部屋の方から何か声が聞こえた。
「スー!?」
「キリト!?」
入口付近にいたのは、結構前に隠し部屋で板チョコレートを分け合った、一瞬だけチームを組んでママレードジャムを取りに行くのも手伝ってもらったキリトだった。
そして、隣にはもう一人、髪の長い可愛い女の子がいた。
しかし、それどころではない。
私も、ボスに向かって剣を奮う。
ボスに対して、ギルドメンバー全員という、集団リンチ状態にすることにより、何とかフロアボスを倒した私たち。
結局、決定打を打ち込んだのは我らのリーダー、ベンヌだったようだ。
手に入れたレアアイテムを売って、ギルドをもっと大きくしたいと、寝転びながら彼は言った。
全員、生きていた。
「スー?! お前、なにしてんだよっ! ボス攻略は、普通はこんな少数じゃ出来ないんだぞ!」
つかつかつかと、高速でやってきたキリトは、私の頭をスパーンと叩いた。
「いったいなっ! ちゃんとメンバー達で考えての攻略だったんだから、いいじゃん! 攻略組に入るためにやってたんだから」
「攻略組に……?」
「あれ? キリトさん!?」
私の元へ走って来たシリカは、私を叩いた男を見て驚愕した。
「シリカ!? お前まで?!」
キリトも、目をまん丸くさせて驚いているようだった。
「なに? 二人とも知り合いなの、キリト君」
ひょっこりと、キリトの背後から現れた少女は、本当に美少女だった。
「はじめまして、私はスー。どうぞよろしく」
「スー!?」
キリトを退けて、後ろにいた少女の手を取りニッコリと微笑むと、彼女もポッと頬を染めた。
すると、シリカに怒られた。
「あれ、本当に女なのか?」
「スーの奴、あの戦闘の後なのに元気だなー」
「ていうかアレ、≪閃光≫のアスナじゃない? 血盟騎士団、副団長」
「あー、あれが噂の……」
「隣の男は? キリトって言われてたけど」
「ほら、アレだよ……例の≪ビーター≫」
「へー」
メンバー達の声が聞こえてきて、キリトのことはガン無視してアスナと言う少女を見る。
「よ、よろしく」
「血盟騎士団の副団長とお会いできるなんて、光栄です」
「おい、スー!?」
またしても、スパーンと頭を叩かれる。
「いったい! キリト、お前ほんとに痛い! こんなんでスキル使うなバカ!」
「お前がへらへらしてるからだろ!?」
グダグダとしながら、結局アスナという少女が、血盟騎士団の名の元に次回から、ボス攻略への会議への参加、そして攻略への参加をさせてもらえることとなった。
キリトは何やら渋っている様子だったが、そんなものは無視だ無視。
ギルドへ戻り、早速女子たちで祝賀会の準備を行う。
「ちょっとー、スーも手伝ってよ!?」
「オレ、イマオトコデス」
「嘘つかない、棒読みしない、さっさと変身マント脱いで、こっちに来る」
「はーい」
テキパキと食事の準備を進めて行く女子と、ギルドの内装と部屋の拡大、そしてランクが上がったこと、それから攻略組への参加を認められたため、リーダーはサブリーダーと共に血盟騎士団に挨拶に行ったらしい。
他にも、攻略組に参加してるギルドマスターとは顔合わせをしてくるとのこと。
それから、今日のフロアボスの攻略方法、作戦立案方法についてなども、攻略組へと提示しなければならないため、男子たちはその書類をまとめたりと、結構戦闘が終わってからも忙しいものだった。
(ヒースクリフに報告、しとくべきかな……)
ちょっと、トイレに行ってくると言って、ギルドから出て人気のない路地裏に入る。
誰もいないことを確認してから、ヒースクリフ――――茅場にメールを送った。
フィーニクスのギルドに入っていること、今日フロアボスを倒して攻略組に参加することが決定したこと、ユニークスキルを披露したこと、血盟騎士団の副団長と出会ったことなど、簡潔にまとめて送ると、彼からすぐに返事が返ってきた。
『次のボス攻略会議で会おう』
ふぅ、と満足していると、下の方にまだ何か書いてあった。
『P.S 茅場、ヒースクリフとの今までの出来事は、くれぐれも外部に漏らさないよう、細心の注意をこれからも払ってくれ。でないと、混乱を招いて面白くなくなる。異常』
「……………」
最後の二文字に、目が釘付けになった。
「いや、漢字変換ミスってるし。以上だし」
小さく笑い、メールボックスを閉じる。
そして、路地裏から出て大きく伸びをした。
「よしっ! 戻るか」
その後、皆からサボっていたことがバレて、物凄く怒られたのは言うまでもない。
ギルドのサブマスターであるロコが、天井近くまである扉に手をつけた。
「長かったな、ベンヌ。でもよ、俺らはこれを倒してからが始まりだよな」
「あぁ、ロコ。今までありがとう……皆もだ。そして、これからも誰一人欠けることなく、このフロアボスを倒して、攻略組に参加しよう」
「おうよ! オレはいつまでもリーダーについていくぜ!」
皆、気合が入っているのがよくわかる。
でも、力み過ぎず、適度な緊張感がある。
空気が、ピリピリとしているような感覚は、平穏な現実では味わうことのないものだ。
きっと、誰もがそう思っているだろう。
そんな現実へ帰るための、第一歩が今だ。
「それにしても、スー。お前、その恰好はどうなんだ……」
「ただの男装だよ。気にすんな」
「気にするっつの!」
「いやー、なんか変身マント手に入れてからさ(最初からだけど)、ここぞ! って時は、男の姿の方が強くなれる気がするんだ」
「それ、絶対気分だけだろ」
「まぁまぁ、いいんじゃない? レアアイテムを持ってる人が、それをどう使ったとしても」
「だとしても、もったいねぇ……」
「でも、これ結構不便なんだよ。透明人間になったり、モンスターにも変身できるけど、モンスター達からはちゃんとプレイヤーって認識されたままで、攻撃されるし……」
「へー、そういうもんなんだ」
べちゃくちゃと話していると、ゴホンとベンヌが咳払いをしたため、慌てて黙る私たち。
「じゃ……行くぞ、時代を変えるのは俺たちだ!」
気合を入れ直す。
今の、閉鎖的な攻略組の凝り固まった考えを打ち砕くため、町で縮こまるプレイヤー達や、今なお自分たちと同じように攻略組を目指すプレイヤー達、様々なプレイヤー達と現実へ帰るため、そして――――
(私が、平和な高校生活に帰るため――――)
ギギギッ、と重々しい音と共に開く扉。
中へ入ると、真っ暗だった部屋に、一瞬で光が灯る。
真っ白な壁、床、柱――――そして、その一番奥の椅子に腰かけていたフロアボスは、立ち上がり武器を手にした。
「武器は情報通りだな。なら、予定通り行くぞ!」
周りの雑魚を倒す者、ボスの攻撃を防ぐもの、スイッチによる攻撃、及び側面や背面からの攻撃を行う。
「正面の鎧は固そうだ。側面、背面からの攻撃を主体とする。行くぞっ!」
何度攻撃を防いで、何度攻撃を喰らわせただろう。
自分たちのHPが、そんなに減ったわけじゃない。
ボスのHPも半分を切っている。
それなのに、勝てる気がしない。
(こんなに攻撃したのに、まだ半分切った程度だなんて…)
思わず、ベンヌの方を見た。
すると、彼も同じように思っていたらしく、彼は一つ頷いた。
それは、私がユニークスキルを使っていいというサイン。
「悪い、ちょっと抜ける」
一言告げて、敵のいない柱の陰に隠れる。
そこで、手早く装備を両手剣から、茅場から……ヒースクリフから貰った大剣に持ち替える。
身の丈の二倍ほどの大きさを持つそれを、片手で軽く背中に担ぎ、敵の攻撃を皆がはじいた瞬間に、叫ぶ。
「スイッチ!」
チームプレイでできる、守備と攻撃の素早い切り替え。
これにより、攻撃を弾かれたボスの数秒の硬直時間に攻撃を加えることが可能だ。
走りながら、考える。
スキルの発動方法……頭でパソコンがスキルを立ち上げる感覚。
すると、剣が光を帯びる。
後は、発動させるだけ。
発動させてしまえば、自分の身体を勝手に動かして、剣はボスを攻撃してくれる。
「……………うらあああああぁぁぁぁ!!」
赤く光る大剣を振り回し、敵のHPを削っていく。
近くにいた雑魚モンスターも、ついでにスキルの餌食となり消えていく。
このギルド内でも、どうやら最高火力だったらしいこの大剣の攻撃力と、スキルの連撃によりボスのHPはだいぶ減らすことが出来た。
赤くなったHPは、もう残量が少ないことを表す。
「気を付けろ、スー! 赤くなったら、奴は……」
誰かが言うより早く、もう一発斬りつけてやろうと剣を奮うと、それはボスの持ち出した盾により防がれた。
「くっ……そ…こんの、クソ野郎がっ!!」
ボスの盾を、何とか弾くと、すかさず皆が攻撃をしかける。
「奴に攻撃させる隙を与えるな! 一気に押し切るぞ!」
雑魚モンスターも放置して、全員でボスの滅多打ちである。
私も参加しようとしていると、ボス部屋の方から何か声が聞こえた。
「スー!?」
「キリト!?」
入口付近にいたのは、結構前に隠し部屋で板チョコレートを分け合った、一瞬だけチームを組んでママレードジャムを取りに行くのも手伝ってもらったキリトだった。
そして、隣にはもう一人、髪の長い可愛い女の子がいた。
しかし、それどころではない。
私も、ボスに向かって剣を奮う。
ボスに対して、ギルドメンバー全員という、集団リンチ状態にすることにより、何とかフロアボスを倒した私たち。
結局、決定打を打ち込んだのは我らのリーダー、ベンヌだったようだ。
手に入れたレアアイテムを売って、ギルドをもっと大きくしたいと、寝転びながら彼は言った。
全員、生きていた。
「スー?! お前、なにしてんだよっ! ボス攻略は、普通はこんな少数じゃ出来ないんだぞ!」
つかつかつかと、高速でやってきたキリトは、私の頭をスパーンと叩いた。
「いったいなっ! ちゃんとメンバー達で考えての攻略だったんだから、いいじゃん! 攻略組に入るためにやってたんだから」
「攻略組に……?」
「あれ? キリトさん!?」
私の元へ走って来たシリカは、私を叩いた男を見て驚愕した。
「シリカ!? お前まで?!」
キリトも、目をまん丸くさせて驚いているようだった。
「なに? 二人とも知り合いなの、キリト君」
ひょっこりと、キリトの背後から現れた少女は、本当に美少女だった。
「はじめまして、私はスー。どうぞよろしく」
「スー!?」
キリトを退けて、後ろにいた少女の手を取りニッコリと微笑むと、彼女もポッと頬を染めた。
すると、シリカに怒られた。
「あれ、本当に女なのか?」
「スーの奴、あの戦闘の後なのに元気だなー」
「ていうかアレ、≪閃光≫のアスナじゃない? 血盟騎士団、副団長」
「あー、あれが噂の……」
「隣の男は? キリトって言われてたけど」
「ほら、アレだよ……例の≪ビーター≫」
「へー」
メンバー達の声が聞こえてきて、キリトのことはガン無視してアスナと言う少女を見る。
「よ、よろしく」
「血盟騎士団の副団長とお会いできるなんて、光栄です」
「おい、スー!?」
またしても、スパーンと頭を叩かれる。
「いったい! キリト、お前ほんとに痛い! こんなんでスキル使うなバカ!」
「お前がへらへらしてるからだろ!?」
グダグダとしながら、結局アスナという少女が、血盟騎士団の名の元に次回から、ボス攻略への会議への参加、そして攻略への参加をさせてもらえることとなった。
キリトは何やら渋っている様子だったが、そんなものは無視だ無視。
ギルドへ戻り、早速女子たちで祝賀会の準備を行う。
「ちょっとー、スーも手伝ってよ!?」
「オレ、イマオトコデス」
「嘘つかない、棒読みしない、さっさと変身マント脱いで、こっちに来る」
「はーい」
テキパキと食事の準備を進めて行く女子と、ギルドの内装と部屋の拡大、そしてランクが上がったこと、それから攻略組への参加を認められたため、リーダーはサブリーダーと共に血盟騎士団に挨拶に行ったらしい。
他にも、攻略組に参加してるギルドマスターとは顔合わせをしてくるとのこと。
それから、今日のフロアボスの攻略方法、作戦立案方法についてなども、攻略組へと提示しなければならないため、男子たちはその書類をまとめたりと、結構戦闘が終わってからも忙しいものだった。
(ヒースクリフに報告、しとくべきかな……)
ちょっと、トイレに行ってくると言って、ギルドから出て人気のない路地裏に入る。
誰もいないことを確認してから、ヒースクリフ――――茅場にメールを送った。
フィーニクスのギルドに入っていること、今日フロアボスを倒して攻略組に参加することが決定したこと、ユニークスキルを披露したこと、血盟騎士団の副団長と出会ったことなど、簡潔にまとめて送ると、彼からすぐに返事が返ってきた。
『次のボス攻略会議で会おう』
ふぅ、と満足していると、下の方にまだ何か書いてあった。
『P.S 茅場、ヒースクリフとの今までの出来事は、くれぐれも外部に漏らさないよう、細心の注意をこれからも払ってくれ。でないと、混乱を招いて面白くなくなる。異常』
「……………」
最後の二文字に、目が釘付けになった。
「いや、漢字変換ミスってるし。以上だし」
小さく笑い、メールボックスを閉じる。
そして、路地裏から出て大きく伸びをした。
「よしっ! 戻るか」
その後、皆からサボっていたことがバレて、物凄く怒られたのは言うまでもない。