アインクラッド編
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『――――というわけで、レアアイテムは瞬間回復薬の板チョコレートでしたよ』
今朝方、届いたメールを開いてみれば、自分が強制的にゲームに参加させた少女からだった。
肩すかしを喰らったと、非常に不服そうなメール内容を見て、ヒースクリフは思わず声に出して笑ってしまった。
すると、近くにいた血盟騎士団のメンバーたちは驚いて彼に声をかけた。
「どうかしましたか?」
「いや……何でもない」
くっくっくっ、と笑いを噛み殺して彼はメールを見た。
「面白いな……」
いずれは、攻略組の会議にも参加しているであろうスーの姿を想い、彼はメールを閉じた。
「いつまで寝てるんですかー」
やる気なさそうな声に、思わず目を開ける。
「あ、シリカ。おはよう」
「おはようじゃないです! こんなところで呑気に昼寝してないで、早く次の町へ行かなきゃ駄目なんですよ!?」
「なんで?」
「スーが、攻略組に入りたいって言ってたんじゃないですか!? 私、ここしばらく色々調べてみたんですけど、次の町に攻略組に入ろうとしてるギルドがあるって聞いたんです」
「へー。じゃ、行ってみよっか」
ようやく起き上がった私に、シリカは一つ溜息をついた。
どんな顔をしても可愛いなんて、ほんと可愛い子は得だなぁとつくづく思った。
「それよりスー、聞きましたよ?」
「なにを?」
「ここずっと、その変身マントで男になっては女の子たちを侍らせて遊んでるって!」
「シリカも遊んでほしい?」
「い、いやですよっ!」
変身マントをアイテム欄から取り出して、男に変身する。
何となく、沢山歩くときはこの姿の方が体力の消耗が少ないような気がした。
どれだけ多く歩いても疲れないような体だけど、歩く時間が長ければ長いほど、気持ち的にダルくなってしまうのは、どうしようもなかった。
「シリカ、可愛いよ」
「はいっ!? な、何言ってるんですか、スー!?」
シリカの目線に合わせて、彼女にそう言った。
すると、一瞬で彼女の顔は真っ赤に染まった。
慌てふためき、彼女は視線を彷徨わせている。
(ふふふっ、かっわい~)
大抵の女性は、この顔で目線を合わせてゆっくり、優しく微笑めば大抵頬を染めてくれる。
しかし、こんなことをしていると本当に男の気分になる。
いかんいかんと頭を振り、変身マントを脱ぐ。
未だに頬を染めて、何やら悶絶しているシリカに「早く行くよー」と適当に声をかけた。
「もう! スーっ!!」
ポカポカと、遠慮して背中を叩かれて、お互いに笑いながら次の町へ向かった。
次の町へ辿り着くと、シリカはまっすぐ酒場へと向かった。
「今日は、そこで会議をしてるって聞いたんです」
真っ直ぐにその酒場へ向かい入ると、大所帯の集団が確かにいた。
「お話し中すみません」
シリカがどうやって声をかけようかと悩んでいるのを放置して、私は団体で座っている中でも、角に座っている人に声をかけた。
「あぁ?」
若い割に、想像以上に柄の悪そうな男が振り向いた。
「攻略組を目指してるギルドがあるって聞いたんですけど、貴方たちがそうですか?」
「そうだね、一応目指してるけど……入団希望者?」
「はい、それなりにレベルはあります」
「……そっちの子も?」
優しそうな顔で、男は私の横に立つシリカを見た。
「いや、シリカは……」
「私もです!」
「シリカ!?」
「私だって、このゲームを終わらせる戦いに参加する権利はあります!」
「……なるほど」
私は、そっと彼等に見えないところで、彼女の震える手を撫でた。
(怖いなら、嫌なら止めておけばいいのに……)
暫く一緒に戦ってきてわかることだが、彼女は結構根性が座っている。
「僕たちは、攻略組に混ざろうと思っている。そのために、彼等攻略組よりも早く、ボス攻略をして実力を示した上で混ざろうと考えていたんだ。だから、人数は多い方がいいと思っている」
「この少数で、行うつもりなんですか?」
「あぁ、それに参加することができるなら、僕は君たちが入団することを歓迎するよ。人数は多い方がいいからね」
「私はできる。参加させてください。それぐらい実力見せてからの方が、攻略組に参加してからでも意見が言いやすい」
「わかってんじゃねぇか。でもよ、アンタみたいな新入り、信用してもらえるとでも思ってんのか?」
このゲームにおいて、攻略すべきは敵、モンスターたちであるが、稀に人間を襲うプレイヤーもいる。
そんなプレイヤーには、もちろんシステムにバレればペナルティがあったりすると、シリカに聞いたことがある。
彼等ギルドは、そう言った意味で私たちを簡単に信用することは出来ないのだろう。
「信用は、実力でもぎ取る。攻略組に混ざりたい。お願いします」
「わ、私も、頑張ります!」
「おい、言っておくがボス攻略に行くのは明日を予定してるんだぞ!? 本当に来るつもりかよ!?」
ガタッと席を立って男がいう。
「そうね、少し心配かもしれないわね。何度かボス部屋を調査してみたけど、私たちだって自分のことで手一杯で、もしもの時があっても、カバーしてあげられるかどうか……」
「自分と、シリカのことは絶対に私が守ります」
「スー……」
シリカの視線が私に向いていることはわかっていたが、私は彼等に頭を下げた。
「なんで、そうまでして攻略組に?」
そう聞かれ、私は頭を上げて真っ直ぐ答えた。
「早く、平和な高校生活に戻るため。じっとしてたって、攻略組が動いてくれないなら、自分がやるしかないと思ったから」
そう告げると、座っているメンバーたちは、皆私を見た。
そして、優しそうな顔をしたメンバーの中心にいる男が椅子から立ち上がり、私たちの前に歩いてきた。
「僕たちも、同じ思いで攻略組への参加を目指している。明日のボス攻略、一緒に行ってくれるか?」
「「もちろん(です)!」」
私とシリカが頷くと、彼はやっぱり優しそうに笑った。
「僕はこのギルド≪フィーニクス≫のマスターをやらせてもらってる、ベンヌだ。よろしく」
「私はスー、こっちはシリカ。よろしく」
ギルドへの入団手続きを済ませて、私とシリカはフィーニクスに所属することとなった。
早速、彼等のボス攻略会議に参加させてもらい、ボスの特徴、武器、HP、弱点、ボス部屋までの経路、様々な情報を頭に入れていく。
「スー、君の武器は?」
「両手剣だけど、大剣も使える。そっちが主体」
「大剣って、両手剣よりデカイ剣だろ?」
「普通の大剣の二倍はあるヤツだよ。知り合いに聞いたら、ユニーク武器だって言ってた」
「まじかよっ!?」
茅場から聞いた情報をそのまま伝えると、彼らはざわめき出した。
どうやら、聞くところによるとユニーク武器やら、ユニークスキルというのは滅多に出ない希少価値が高いものらしい。
「どうやって出したんだよっ!?」
「さぁ? なんか、よくわかんないうちに……」
さすがに、茅場からもらったとは言えず、言葉を濁した。
「まぁまぁ、皆とりあえず落ち着け。シリカは?」
「ダガー使いです」
「じゃあ、シリカにはサブマスターのロコと組んでもらう。スーには、ボス攻略の火力部隊として前線に出てもらうよ」
「わかった」
それから、それぞれの役割分担を行い、会議は終了した。
「今日中に、武器のメンテナンスは全て行っておいてくれ。回復アイテムや、転移結晶などのアイテムは、明日の朝全員にそれぞれ支給する。じゃ、解散!」
メンバー達は、それぞれまだ話していたり、もう酒場から出て言ったりと様々だったが、まだ座ったままのベンヌの元へ向かった。
「ベンヌ、聞きたいことがあるんだけど」
「なに?」
「私、武器のメンテナンスとかしたことないんだけど、どこですればいいの?」
「この町に、リズベット武具店があったと思うから、そこに行ってみたら? プレイヤーが経営してるところなんだけど……キクコ!」
誰かを探していたベンヌは、同じギルドメンバーのキクコを呼んだ。
セミロングの髪をハーフアップにしており、おっとりとした印象の女性だった。
「キクコ、今からリズベット武具店行くって言ってたよな? スーのやつ、メンテしたことないらしいから、一緒に連れて行ってやってくれないか?」
「あ、私も行きたいですキクコさん!」
シリカもやってきたため、キクコは「じゃあ、三人で行きましょうか」と言い、酒場を出ようとするとまた誰かやってきた。
「俺も行くよー!」
「だれだっけ?」
「タクヤだよタクヤ! さっき自己紹介したじゃーん」
(チャラ男だ)(チャラ男ですね)
シリカと二人、目だけでそんな会話をしていると、キクコがクスクスと笑った。
「大丈夫よ、タクヤはチャラチャラしてるけど、戦闘では結構頼もしいから」
私たちがホッと胸を撫で下ろしていると、タクヤは「なにそれっ!?」とショックを受けていた。
そんなことを話しながら、あっという間に辿り着いた一件の家。
「ここ?」
「えぇ、事前に連絡しておいたから、いてくれてるはずよ」
扉を開けて入っていくと、中にはたくさんの防具や剣など、武器が所狭しと並んでいた。
「うわー、すごい……」
私が、思わず感嘆の声を漏らすと、店の奥から笑い声が聞こえた。
「リズベット武具店へようこそ! どれも、丹精込めた武器たちよ! 褒めて貰えてうれしいわ」
タクヤとキクコとは、やはり知り合いらしく何やら三人は話し込んでいるようだった。
「シリカ~、今の武器ってどこで買ったの?」
「普通の武器屋ですよ。NPCが運営してるところのですけど……」
「へ~。やっぱり手作りとなると、値段とかって跳ね上がるんだねぇ」
武器を買ったことのない私にとって、この武器につけられている値段は、正直言ってバカ高い。
「そりゃそうですよ。材料集めから、スキルを用いて武器を作るんですから、時間と労力分ぐらいは取られます。まぁ、だから普通の武器屋で買ってたんですけど……お金ないですし」
後半、段々と声を小さくしていくシリカ。
「まだ買ってるだけえらいよ、シリカは。私なんて、貰い物ばっかりだしね。お金は全部食事に注ぎ込んできちゃってたし」
「そうですね、スーの暴飲暴食っぷりはホントひどいです」
「あははは、そんな褒められても」
「褒めてませんっ!」
シリカとじゃれ合っていると、キクコさんに呼ばれた。
「紹介するわね、ウチの新しいギルドメンバーのスーと、シリカよ」
「よろしく、スーです」
「シリカです! よろしくお願いします」
「二人ともよろしく! リズベットよ。二人は、今まで武器のメンテをしたことは?」
「私は、一度だけあります。でも、スーは……」
「初心者だと思ってほしいです。一度もメンテをしたことがないです」
キッパリと言ってのけると、リズベットは一瞬呆気に取られたかと思うと、すぐに表情を切り替えた。
「オーケー。それぐらい正直に言ってくれる方が、かえってやりやすいわ。スーの分は、一から私がメンテしてあげる。任せなさい」
同い年ぐらいのイメージだったが、話しているときと違い、武器を手渡した瞬間、職人のような顔になった。
職人顔を知っているわけではなけれど、何だかそんな感じがした。
今朝方、届いたメールを開いてみれば、自分が強制的にゲームに参加させた少女からだった。
肩すかしを喰らったと、非常に不服そうなメール内容を見て、ヒースクリフは思わず声に出して笑ってしまった。
すると、近くにいた血盟騎士団のメンバーたちは驚いて彼に声をかけた。
「どうかしましたか?」
「いや……何でもない」
くっくっくっ、と笑いを噛み殺して彼はメールを見た。
「面白いな……」
いずれは、攻略組の会議にも参加しているであろうスーの姿を想い、彼はメールを閉じた。
「いつまで寝てるんですかー」
やる気なさそうな声に、思わず目を開ける。
「あ、シリカ。おはよう」
「おはようじゃないです! こんなところで呑気に昼寝してないで、早く次の町へ行かなきゃ駄目なんですよ!?」
「なんで?」
「スーが、攻略組に入りたいって言ってたんじゃないですか!? 私、ここしばらく色々調べてみたんですけど、次の町に攻略組に入ろうとしてるギルドがあるって聞いたんです」
「へー。じゃ、行ってみよっか」
ようやく起き上がった私に、シリカは一つ溜息をついた。
どんな顔をしても可愛いなんて、ほんと可愛い子は得だなぁとつくづく思った。
「それよりスー、聞きましたよ?」
「なにを?」
「ここずっと、その変身マントで男になっては女の子たちを侍らせて遊んでるって!」
「シリカも遊んでほしい?」
「い、いやですよっ!」
変身マントをアイテム欄から取り出して、男に変身する。
何となく、沢山歩くときはこの姿の方が体力の消耗が少ないような気がした。
どれだけ多く歩いても疲れないような体だけど、歩く時間が長ければ長いほど、気持ち的にダルくなってしまうのは、どうしようもなかった。
「シリカ、可愛いよ」
「はいっ!? な、何言ってるんですか、スー!?」
シリカの目線に合わせて、彼女にそう言った。
すると、一瞬で彼女の顔は真っ赤に染まった。
慌てふためき、彼女は視線を彷徨わせている。
(ふふふっ、かっわい~)
大抵の女性は、この顔で目線を合わせてゆっくり、優しく微笑めば大抵頬を染めてくれる。
しかし、こんなことをしていると本当に男の気分になる。
いかんいかんと頭を振り、変身マントを脱ぐ。
未だに頬を染めて、何やら悶絶しているシリカに「早く行くよー」と適当に声をかけた。
「もう! スーっ!!」
ポカポカと、遠慮して背中を叩かれて、お互いに笑いながら次の町へ向かった。
次の町へ辿り着くと、シリカはまっすぐ酒場へと向かった。
「今日は、そこで会議をしてるって聞いたんです」
真っ直ぐにその酒場へ向かい入ると、大所帯の集団が確かにいた。
「お話し中すみません」
シリカがどうやって声をかけようかと悩んでいるのを放置して、私は団体で座っている中でも、角に座っている人に声をかけた。
「あぁ?」
若い割に、想像以上に柄の悪そうな男が振り向いた。
「攻略組を目指してるギルドがあるって聞いたんですけど、貴方たちがそうですか?」
「そうだね、一応目指してるけど……入団希望者?」
「はい、それなりにレベルはあります」
「……そっちの子も?」
優しそうな顔で、男は私の横に立つシリカを見た。
「いや、シリカは……」
「私もです!」
「シリカ!?」
「私だって、このゲームを終わらせる戦いに参加する権利はあります!」
「……なるほど」
私は、そっと彼等に見えないところで、彼女の震える手を撫でた。
(怖いなら、嫌なら止めておけばいいのに……)
暫く一緒に戦ってきてわかることだが、彼女は結構根性が座っている。
「僕たちは、攻略組に混ざろうと思っている。そのために、彼等攻略組よりも早く、ボス攻略をして実力を示した上で混ざろうと考えていたんだ。だから、人数は多い方がいいと思っている」
「この少数で、行うつもりなんですか?」
「あぁ、それに参加することができるなら、僕は君たちが入団することを歓迎するよ。人数は多い方がいいからね」
「私はできる。参加させてください。それぐらい実力見せてからの方が、攻略組に参加してからでも意見が言いやすい」
「わかってんじゃねぇか。でもよ、アンタみたいな新入り、信用してもらえるとでも思ってんのか?」
このゲームにおいて、攻略すべきは敵、モンスターたちであるが、稀に人間を襲うプレイヤーもいる。
そんなプレイヤーには、もちろんシステムにバレればペナルティがあったりすると、シリカに聞いたことがある。
彼等ギルドは、そう言った意味で私たちを簡単に信用することは出来ないのだろう。
「信用は、実力でもぎ取る。攻略組に混ざりたい。お願いします」
「わ、私も、頑張ります!」
「おい、言っておくがボス攻略に行くのは明日を予定してるんだぞ!? 本当に来るつもりかよ!?」
ガタッと席を立って男がいう。
「そうね、少し心配かもしれないわね。何度かボス部屋を調査してみたけど、私たちだって自分のことで手一杯で、もしもの時があっても、カバーしてあげられるかどうか……」
「自分と、シリカのことは絶対に私が守ります」
「スー……」
シリカの視線が私に向いていることはわかっていたが、私は彼等に頭を下げた。
「なんで、そうまでして攻略組に?」
そう聞かれ、私は頭を上げて真っ直ぐ答えた。
「早く、平和な高校生活に戻るため。じっとしてたって、攻略組が動いてくれないなら、自分がやるしかないと思ったから」
そう告げると、座っているメンバーたちは、皆私を見た。
そして、優しそうな顔をしたメンバーの中心にいる男が椅子から立ち上がり、私たちの前に歩いてきた。
「僕たちも、同じ思いで攻略組への参加を目指している。明日のボス攻略、一緒に行ってくれるか?」
「「もちろん(です)!」」
私とシリカが頷くと、彼はやっぱり優しそうに笑った。
「僕はこのギルド≪フィーニクス≫のマスターをやらせてもらってる、ベンヌだ。よろしく」
「私はスー、こっちはシリカ。よろしく」
ギルドへの入団手続きを済ませて、私とシリカはフィーニクスに所属することとなった。
早速、彼等のボス攻略会議に参加させてもらい、ボスの特徴、武器、HP、弱点、ボス部屋までの経路、様々な情報を頭に入れていく。
「スー、君の武器は?」
「両手剣だけど、大剣も使える。そっちが主体」
「大剣って、両手剣よりデカイ剣だろ?」
「普通の大剣の二倍はあるヤツだよ。知り合いに聞いたら、ユニーク武器だって言ってた」
「まじかよっ!?」
茅場から聞いた情報をそのまま伝えると、彼らはざわめき出した。
どうやら、聞くところによるとユニーク武器やら、ユニークスキルというのは滅多に出ない希少価値が高いものらしい。
「どうやって出したんだよっ!?」
「さぁ? なんか、よくわかんないうちに……」
さすがに、茅場からもらったとは言えず、言葉を濁した。
「まぁまぁ、皆とりあえず落ち着け。シリカは?」
「ダガー使いです」
「じゃあ、シリカにはサブマスターのロコと組んでもらう。スーには、ボス攻略の火力部隊として前線に出てもらうよ」
「わかった」
それから、それぞれの役割分担を行い、会議は終了した。
「今日中に、武器のメンテナンスは全て行っておいてくれ。回復アイテムや、転移結晶などのアイテムは、明日の朝全員にそれぞれ支給する。じゃ、解散!」
メンバー達は、それぞれまだ話していたり、もう酒場から出て言ったりと様々だったが、まだ座ったままのベンヌの元へ向かった。
「ベンヌ、聞きたいことがあるんだけど」
「なに?」
「私、武器のメンテナンスとかしたことないんだけど、どこですればいいの?」
「この町に、リズベット武具店があったと思うから、そこに行ってみたら? プレイヤーが経営してるところなんだけど……キクコ!」
誰かを探していたベンヌは、同じギルドメンバーのキクコを呼んだ。
セミロングの髪をハーフアップにしており、おっとりとした印象の女性だった。
「キクコ、今からリズベット武具店行くって言ってたよな? スーのやつ、メンテしたことないらしいから、一緒に連れて行ってやってくれないか?」
「あ、私も行きたいですキクコさん!」
シリカもやってきたため、キクコは「じゃあ、三人で行きましょうか」と言い、酒場を出ようとするとまた誰かやってきた。
「俺も行くよー!」
「だれだっけ?」
「タクヤだよタクヤ! さっき自己紹介したじゃーん」
(チャラ男だ)(チャラ男ですね)
シリカと二人、目だけでそんな会話をしていると、キクコがクスクスと笑った。
「大丈夫よ、タクヤはチャラチャラしてるけど、戦闘では結構頼もしいから」
私たちがホッと胸を撫で下ろしていると、タクヤは「なにそれっ!?」とショックを受けていた。
そんなことを話しながら、あっという間に辿り着いた一件の家。
「ここ?」
「えぇ、事前に連絡しておいたから、いてくれてるはずよ」
扉を開けて入っていくと、中にはたくさんの防具や剣など、武器が所狭しと並んでいた。
「うわー、すごい……」
私が、思わず感嘆の声を漏らすと、店の奥から笑い声が聞こえた。
「リズベット武具店へようこそ! どれも、丹精込めた武器たちよ! 褒めて貰えてうれしいわ」
タクヤとキクコとは、やはり知り合いらしく何やら三人は話し込んでいるようだった。
「シリカ~、今の武器ってどこで買ったの?」
「普通の武器屋ですよ。NPCが運営してるところのですけど……」
「へ~。やっぱり手作りとなると、値段とかって跳ね上がるんだねぇ」
武器を買ったことのない私にとって、この武器につけられている値段は、正直言ってバカ高い。
「そりゃそうですよ。材料集めから、スキルを用いて武器を作るんですから、時間と労力分ぐらいは取られます。まぁ、だから普通の武器屋で買ってたんですけど……お金ないですし」
後半、段々と声を小さくしていくシリカ。
「まだ買ってるだけえらいよ、シリカは。私なんて、貰い物ばっかりだしね。お金は全部食事に注ぎ込んできちゃってたし」
「そうですね、スーの暴飲暴食っぷりはホントひどいです」
「あははは、そんな褒められても」
「褒めてませんっ!」
シリカとじゃれ合っていると、キクコさんに呼ばれた。
「紹介するわね、ウチの新しいギルドメンバーのスーと、シリカよ」
「よろしく、スーです」
「シリカです! よろしくお願いします」
「二人ともよろしく! リズベットよ。二人は、今まで武器のメンテをしたことは?」
「私は、一度だけあります。でも、スーは……」
「初心者だと思ってほしいです。一度もメンテをしたことがないです」
キッパリと言ってのけると、リズベットは一瞬呆気に取られたかと思うと、すぐに表情を切り替えた。
「オーケー。それぐらい正直に言ってくれる方が、かえってやりやすいわ。スーの分は、一から私がメンテしてあげる。任せなさい」
同い年ぐらいのイメージだったが、話しているときと違い、武器を手渡した瞬間、職人のような顔になった。
職人顔を知っているわけではなけれど、何だかそんな感じがした。