フェアリィ・ダンス編
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「————ようやく、お目覚めかな?」
薄らと開いた目に飛び込んできたのは、金髪の男。
聞こえてくる声は、意識を手放す前に聞こえた声と同じで、瞬時に彼が私に何かしたと思った。
目をしっかり開けると、その男の向こう側……
椅子に座り、絶望したような顔をしているアスナがいた。
呼びかけようとしたが、ひとまず止めておく。
目の前の男が、ニヤニヤとこちらの様子を伺っていたからだ。
「どうかな、調子は」
「頭がグルグル回っています」
正直にそう答えると、彼はうんうんと頷いた。
「そうかい、そうかい。実はね、僕らはずっと君を探していたんだ」
「あなたは?」
「僕かい? 僕は、妖精王オベイロン!」
自信満々に答える目の前の男は、やっぱり薄気味悪い男だと思った。
「このゲームの管理責任者であり、この国の王様! それが僕! そして、向こうに座っている彼女こそ、妖精王の妃、ティターニアなのさ!」
(嘘くさっ……ていうか、何この小芝居。ここ笑うとこ? 大人に見えるのに、何でこんなにバカっぽい喋り方するんだろ?)
とりあえず、適当に返事をすると彼は満足そうにニヤリと笑った。
「そして、君はスー。本名不明、出身地不明、血液型、誕生日など、全ての情報が不明。SAOでも、唯一謎に包まれたプレイヤーだったそうだね」
ギクリとした。
だが、それを目の前の男に悟られたくなくて、寝かされていたベッドから起き上がった。
すると、彼は私にくるりと背を向けて、更に語りだした。
「君のことを調べるのは、本当に骨が折れたよ。SAOのサーバーの維持管理をしようと思ったら、その奥の方に一人分のSAOでのゲームデータがあるじゃないか!? しかも、それがどこかへと移動しようとしていた。慌てたね。慌ててそのデータごと全てを一度凍結させ、僕らは君のデータを入手した」
さて、ここで一つ疑問だ。
そう彼は言いながら、右手の人差し指をピン、と立てた。
「君のデータは、現実に一切存在しない。探すことも出来ない。履歴を辿れば、君はSAOのゲームに途中から参加している。しかも、あの人が無理やり君のデータをどこかから、SAOへと組み込んでいる」
ご丁寧に、裏ワザのようなものまで加えて————
そこまで聞いて、彼はようやくこちらへ振り向いた。
私は、イライラして彼を思い切り睨みつけたが、男は笑うばかりだ。
「そこで我々は、推測した。君が、僕らのいる現実ではない場所から来たのではないかと、ね……」
顔には何も出なかったはず、表情を動かさなかったはずなのに、彼を睨んでいただけで彼は笑みを深くした。
「やはり、当たりなんだね。心音が早くなった」
何か、携帯のようなものを見て、彼は心底嬉しそうに笑っている。
(心音って、そんな機械取り付けられてないのに!?)
「不思議そうな顔をしているね。でも、教えないよ。君は、ここでティターニアと静かに過ごしていてくれ。僕が君の脳をぐちゃぐちゃに調べて、綺麗にするまでの間ね」
グロイ言葉を言い残し、彼はこの部屋から姿を消した。
男がいなくなってから部屋を見渡すと、どうやら空の上……というより、木の上に鳥かごが置いてあり、その中が部屋になっているようだった。
「趣味悪い部屋」
そうポツリと呟き、ベッドから椅子に座ったまま動こうとしないアスナを見る。
どうかしたのかと思い、彼女の方へ近付くとアスナはキッ! と物凄い目つきで私を見た。
「え? なになに?!」
その目つきに足を止めた瞬間、彼女は私に飛びついてきた。
「スーっ!!」
どうやら泣いている様子だったので、ポンポンと背中をゆっくり撫でるように叩いた。
「……っ……っ…………」
余程、あの男に怖い思いでもさせられたのかと、聞きたかったけど、今はとりあえずアスナが落ち着くのを待とうと決めて、彼女が離れようとするまで私は、ずっと彼女の背中をゆったりとしたリズムで叩き続けた。
「…………ごめんね、ありがとう」
そういって、アスナは私から離れる。
「スー、さっきのアイツが言ってた話って……」
「あぁ、うん。どう話せばいいのかな」
「現実の世界にいないって、どういうことか聞いていいの?」
「…………うん」
心配そうな表情のアスナを見て、しっかりと頷いた私は、自分の知り得る限りの情報をアスナに全て伝えた。
自分が、茅場から無理やりSAOの世界に連れて来られたこと。
それが、体ごと強制的にゲームに呼び込んだことで、自分のいた所へ戻れないこと。
それが、アスナ達のいる現実世界ではない、別の私がいた現実世界があること。
私を現実へ返すために必要なデータが、SAOのデータを引き継いだALOにあるため、強制的にこのゲーム世界へ来たこと。
世界樹に、私のデータがあること。
「つまり、団長…………茅場さんの手によって、スーはSAOに体ごとデータとして取り込まれているのね?」
「多分、そんな感じだと思う。正直言って、よくわからないこととか、腑に落ちないことも多いんだ」
「ごめんなさい、私……何も知らないで、貴方のことを…………」
「いやいや、いいよ、そんなの。私の態度も悪かったし。私こそ、ごめんね」
アスナが下を向いてしまったため、覗き込むようにしてそういうと、アスナが私を見てクスリと笑った。
「なに? なんで今笑ったの!?」
笑うところなんて、一つもなかったと思ったけれども……。
そう思い、彼女を見ると、彼女はクスクスと笑い続けていた。
「だって、スーってば男の子みたいなんだもん」
「え、一応今は変身マントとか持ってないから、そのまんまの私なんだけど!?」
「スーが男の子だったら、私スーに惚れちゃってたかもね」
「それは、嬉しい限りだけど」
「やっぱり嬉しいんだ」
二人で、声を出して笑う。
「それで、アスナはどうしてこんなところに? あのおべいろんって男、何者なの? 知り合い?」
「うん。あの男、人の脳を使って色々と実験してるみたいで、記憶を改ざんする方法を見つけたらしいの」
「…………現実味のない話だね」
「でも、できない話じゃないわ。それで、私の脳を変えて、あの男に…………」
アスナの表情と、オベイロンという男の口ぶりからして、彼はどうやらアスナに脳を弄って、「アスナは、オベイロンが好き」という風な感じにしたいのだろうと悟った。
「いいよ、アスナ。言わなくても、もう大体わかった。オベイロンは変態、ってことでしょ?」
「…………スー」
「とにかく、ここからまず脱出しよう。のんびりしてたら、私の脳がグロテスクなことになるらしいし」
「ここの部屋はロックがかかってるの。待って、今から開けるわ」
「ロックの番号、覚えてるの?」
「何度もアイツの指の動きを見たのよ。それぐらい、どうってことないわ」
さらりとそう言ってのけるアスナに、さすがだと感心しているとあっという間に部屋の鍵が開く音がした。
「行きましょう、スー」
「はいよ、副団長さま」
「アスナでいいのよ。今は、血盟騎士団でもないんだから」
「うん、まずは一旦ここから出よう」
「えぇ」
なるべく足音を立てず、階段を滑り落ちるかのようなスピードで駆け下りていく。
不思議と、恐怖心や不安感はなかった。
私たち二人いれば、SAOで行きぬけた私たちなら、できないことなどないだろうと、そう思っていたからかもしれない。
それが、油断だとも知らずに————
薄らと開いた目に飛び込んできたのは、金髪の男。
聞こえてくる声は、意識を手放す前に聞こえた声と同じで、瞬時に彼が私に何かしたと思った。
目をしっかり開けると、その男の向こう側……
椅子に座り、絶望したような顔をしているアスナがいた。
呼びかけようとしたが、ひとまず止めておく。
目の前の男が、ニヤニヤとこちらの様子を伺っていたからだ。
「どうかな、調子は」
「頭がグルグル回っています」
正直にそう答えると、彼はうんうんと頷いた。
「そうかい、そうかい。実はね、僕らはずっと君を探していたんだ」
「あなたは?」
「僕かい? 僕は、妖精王オベイロン!」
自信満々に答える目の前の男は、やっぱり薄気味悪い男だと思った。
「このゲームの管理責任者であり、この国の王様! それが僕! そして、向こうに座っている彼女こそ、妖精王の妃、ティターニアなのさ!」
(嘘くさっ……ていうか、何この小芝居。ここ笑うとこ? 大人に見えるのに、何でこんなにバカっぽい喋り方するんだろ?)
とりあえず、適当に返事をすると彼は満足そうにニヤリと笑った。
「そして、君はスー。本名不明、出身地不明、血液型、誕生日など、全ての情報が不明。SAOでも、唯一謎に包まれたプレイヤーだったそうだね」
ギクリとした。
だが、それを目の前の男に悟られたくなくて、寝かされていたベッドから起き上がった。
すると、彼は私にくるりと背を向けて、更に語りだした。
「君のことを調べるのは、本当に骨が折れたよ。SAOのサーバーの維持管理をしようと思ったら、その奥の方に一人分のSAOでのゲームデータがあるじゃないか!? しかも、それがどこかへと移動しようとしていた。慌てたね。慌ててそのデータごと全てを一度凍結させ、僕らは君のデータを入手した」
さて、ここで一つ疑問だ。
そう彼は言いながら、右手の人差し指をピン、と立てた。
「君のデータは、現実に一切存在しない。探すことも出来ない。履歴を辿れば、君はSAOのゲームに途中から参加している。しかも、あの人が無理やり君のデータをどこかから、SAOへと組み込んでいる」
ご丁寧に、裏ワザのようなものまで加えて————
そこまで聞いて、彼はようやくこちらへ振り向いた。
私は、イライラして彼を思い切り睨みつけたが、男は笑うばかりだ。
「そこで我々は、推測した。君が、僕らのいる現実ではない場所から来たのではないかと、ね……」
顔には何も出なかったはず、表情を動かさなかったはずなのに、彼を睨んでいただけで彼は笑みを深くした。
「やはり、当たりなんだね。心音が早くなった」
何か、携帯のようなものを見て、彼は心底嬉しそうに笑っている。
(心音って、そんな機械取り付けられてないのに!?)
「不思議そうな顔をしているね。でも、教えないよ。君は、ここでティターニアと静かに過ごしていてくれ。僕が君の脳をぐちゃぐちゃに調べて、綺麗にするまでの間ね」
グロイ言葉を言い残し、彼はこの部屋から姿を消した。
男がいなくなってから部屋を見渡すと、どうやら空の上……というより、木の上に鳥かごが置いてあり、その中が部屋になっているようだった。
「趣味悪い部屋」
そうポツリと呟き、ベッドから椅子に座ったまま動こうとしないアスナを見る。
どうかしたのかと思い、彼女の方へ近付くとアスナはキッ! と物凄い目つきで私を見た。
「え? なになに?!」
その目つきに足を止めた瞬間、彼女は私に飛びついてきた。
「スーっ!!」
どうやら泣いている様子だったので、ポンポンと背中をゆっくり撫でるように叩いた。
「……っ……っ…………」
余程、あの男に怖い思いでもさせられたのかと、聞きたかったけど、今はとりあえずアスナが落ち着くのを待とうと決めて、彼女が離れようとするまで私は、ずっと彼女の背中をゆったりとしたリズムで叩き続けた。
「…………ごめんね、ありがとう」
そういって、アスナは私から離れる。
「スー、さっきのアイツが言ってた話って……」
「あぁ、うん。どう話せばいいのかな」
「現実の世界にいないって、どういうことか聞いていいの?」
「…………うん」
心配そうな表情のアスナを見て、しっかりと頷いた私は、自分の知り得る限りの情報をアスナに全て伝えた。
自分が、茅場から無理やりSAOの世界に連れて来られたこと。
それが、体ごと強制的にゲームに呼び込んだことで、自分のいた所へ戻れないこと。
それが、アスナ達のいる現実世界ではない、別の私がいた現実世界があること。
私を現実へ返すために必要なデータが、SAOのデータを引き継いだALOにあるため、強制的にこのゲーム世界へ来たこと。
世界樹に、私のデータがあること。
「つまり、団長…………茅場さんの手によって、スーはSAOに体ごとデータとして取り込まれているのね?」
「多分、そんな感じだと思う。正直言って、よくわからないこととか、腑に落ちないことも多いんだ」
「ごめんなさい、私……何も知らないで、貴方のことを…………」
「いやいや、いいよ、そんなの。私の態度も悪かったし。私こそ、ごめんね」
アスナが下を向いてしまったため、覗き込むようにしてそういうと、アスナが私を見てクスリと笑った。
「なに? なんで今笑ったの!?」
笑うところなんて、一つもなかったと思ったけれども……。
そう思い、彼女を見ると、彼女はクスクスと笑い続けていた。
「だって、スーってば男の子みたいなんだもん」
「え、一応今は変身マントとか持ってないから、そのまんまの私なんだけど!?」
「スーが男の子だったら、私スーに惚れちゃってたかもね」
「それは、嬉しい限りだけど」
「やっぱり嬉しいんだ」
二人で、声を出して笑う。
「それで、アスナはどうしてこんなところに? あのおべいろんって男、何者なの? 知り合い?」
「うん。あの男、人の脳を使って色々と実験してるみたいで、記憶を改ざんする方法を見つけたらしいの」
「…………現実味のない話だね」
「でも、できない話じゃないわ。それで、私の脳を変えて、あの男に…………」
アスナの表情と、オベイロンという男の口ぶりからして、彼はどうやらアスナに脳を弄って、「アスナは、オベイロンが好き」という風な感じにしたいのだろうと悟った。
「いいよ、アスナ。言わなくても、もう大体わかった。オベイロンは変態、ってことでしょ?」
「…………スー」
「とにかく、ここからまず脱出しよう。のんびりしてたら、私の脳がグロテスクなことになるらしいし」
「ここの部屋はロックがかかってるの。待って、今から開けるわ」
「ロックの番号、覚えてるの?」
「何度もアイツの指の動きを見たのよ。それぐらい、どうってことないわ」
さらりとそう言ってのけるアスナに、さすがだと感心しているとあっという間に部屋の鍵が開く音がした。
「行きましょう、スー」
「はいよ、副団長さま」
「アスナでいいのよ。今は、血盟騎士団でもないんだから」
「うん、まずは一旦ここから出よう」
「えぇ」
なるべく足音を立てず、階段を滑り落ちるかのようなスピードで駆け下りていく。
不思議と、恐怖心や不安感はなかった。
私たち二人いれば、SAOで行きぬけた私たちなら、できないことなどないだろうと、そう思っていたからかもしれない。
それが、油断だとも知らずに————