フェアリィ・ダンス編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「————スー、一つ聞くが」
「なに?」
「節約だからと言って、同じ部屋で寝る必要があるのか?」
「しかも一つのベッドで? ってこと?」
次の街に辿り着いた私たちは、安宿を一つ取った。
ベッドはもちろん、一つだけ。
理由は簡単。
「だって茅場、ログアウトするでしょ?」
もったいないじゃない? そう私が言うと、茅場は一つ溜息をついた。
次の街で、十分に溜まったユルド————このALOでの通貨単位がユルドなわけだが、大量に入ったユルドをもって私たちはいくつかある武器屋と防具屋、露店などを見て回ったのだが、レイピアを何度か強化してしまったためか、他の武器よりも今使用しているレイピアの方が強い状態になってしまっていた。
「これは、困った…………」
「せめて、突き攻撃に変えたらどうだ?」
「いや、そうすると命中率が下がると思う……私、ほとんど斬り攻撃重視してたし、命中は最低限しかスキルも取ってないし」
「……まぁ、使えるのならそのままでいいんじゃないか?」
「う〜ん、仕方ないか。ま、カッコいいからいっか?」
テレビで見たことのあるフェンシングのポーズをとる。
テレビで見たときは、結構かっこよかったという記憶がある。
いい感じだ。
「その辺で判断する辺りが、やはりスーだな」
「褒め言葉として受け取っておきます」
「いいんじゃないか?」
クックック、と噛み殺したように笑う茅場に怒鳴りたくなったが、我慢した。
現在、私たちは一応このゲームマスターの、妖精王オベイロンという人に見つかると色々まずい状況にある。
茅場は、このゲームにいる時点でシステムである彼をいいように利用されてしまうかもしれない。
私もまた、茅場の開発した特殊な光云々のことがバレる要因の一つで、存在を知られるのはマズイ。
なるべく、人目につかないように行動することも心掛けている。
武器屋巡りも終わり、宿屋で休息も取った。
そろそろ次の街へ向けて出発しようとしていた時だった。
「おい、お前……サラマンダーだな?」
突然肩を掴まれて、そう小さく呟くように言われて、思わず条件反射で剣の柄を握ると「落ち着け、俺もサラマンダーだ」と言われ、振り返る。
そこには、赤毛の重装備をした男が立っていた。
「お前も同じ種族なら、少し手を貸してもらいたいことがあるんだが?」
「?」
私一人に言っているのだろうか。
とりあえず、茅場の意見も聞こうと振り返ると、既に彼の姿はなかった。
そこで私は気付く。
(逃げたか、隠れたんだ……俊敏すぎる)
目の前の男に見えないように一つ溜息をついて、とりあえず話を聞くことにした。
彼、ユージーンはサラマンダーの領主・モーティマーの弟であり、サラマンダー部隊の指揮官をしているALO最強プレイヤーと言われている男らしい。
ユージーンの話では、どうも他種族が自分たちの邪魔をしているから、何とかして彼等の足止めをしたい。
それに協力してほしいとのことだった。
「それって、結構大勢なんじゃないの? 他種族との戦争みたいなのって、ゲーム的にアリなわけ?」
「お前、初心者か? それにしては、結構手練れの装備をしているようだが……?」
「親切に色々教えてくれる人がいたおかげです」
「まぁいい、とりあえず禁止されているわけではない。特に何も言われていないということは、アリになるんだろう」
自分でうんうんと頷きながら話すユージーンに、私もつられてうんうん頷いてしまった。
「だが、俺達とて戦争がしたいわけではない。相手は二人だそうだ。だが、相当な手練れがいると聞いた。こちらの部隊の人手不足は否めない。頼まれてくれないか?」
「…………まぁ、いいけど」
同じ種族同士、しかも自分の種族の領主の弟ともなれば、仲良くしておいて損はないだろう。
それに、ALO最強プレイヤーというのが本当なら、是非世界樹に行くのを手伝ってほしいぐらいだ。
「じゃあさ、一個条件出していい?」
「強欲な奴だな」
「いいじゃん、大したことじゃないし。フレンド登録してください」
「ふん……まぁ、いいだろう」
「ありがとう。強い人がフレンドにいると、心強いからね」
「正直な奴だな」
ふっとユージーンが笑う。
装備も厳つくて、顔も厳つい彼だが、笑うと何だか優しそうな人に見えた。
「では、早速だがこのルグルー回廊に行ってもらうぞ」
「え、もしかして近くにいるの?」
ルグルー回廊とは、今私たちがいる町を出てすぐのところにある。
「あぁ、既に作戦は始まっている」
「へー」
「呆けるな。さっさと行け! その間に俺は、他種族との会合があるからな。フレンド登録したからといって、気軽に連絡してくるなよ」
釘を刺す様にそう言い残して、彼は空へと飛んで行ってしまった。
去っていった彼を見上げて、また一つ溜息をついた。
「…………仕方ない、行くか」
なるべくゆっくりと歩いて、私はルグルー回廊へと向かった。
ルグルー回廊の門が閉まっていたため、空を飛び門の上へと立ち下を見下ろすと、サラマンダーの何人かの部隊が二人を門の際へと追い詰めていくところだった。
どう見ても、サラマンダーの方が悪役のように見えた。
しかし、頼まれたことはキッチリやらなければと、私は二人のうちの補助魔法や回復魔法をして後方支援をしている金髪の女の子の方へと飛び降りた。
「ちょっと、動かないでくれる?」
スッと腰から引き抜いたレイピアを喉元に突き付けると、彼女は怯えたように息を詰まらせた。
「ごめんね、頼まれてるんだ」
「リーファ!!」
サラマンダーの部隊と戦うもう一人が、私が捕えている人の名前を呼ぶ。
そこで、ふと捕えている彼女を見た。
「え……リーファ?」
「っ!? スー!!」
私が捕えたのは、この世界に来てから色々と教えてくれたリーファだった。
「うわっ!? ごめん! リーファだってわからなくて……」
「スーなの!? 貴女、なんでこんなところにいるのよ!?」
「いやいや、そっちこそ「スーっ!!?」」
リーファと話していると、一際大きな声で名前を呼ばれた。
呼ばれた方へ振り返ると、そこには何だか見たことのあるような男がいた。
「お前……生きてたのか!?」
「キリト…………」
「キリト君、知り合いなの?」
「あぁ、それにしてもお前……現実世界に戻ってから連絡が誰も取れなくて、皆心配してたんだぞ」
「キリト………………」
「なんだよ?」
私は、上から下までキリトを見た。
「そのツンツン頭、死ぬほど似合ってないね」
ブフッ! と噴き出して、私は笑った。
「あはははははははははっ! なんかダサいっ! 見慣れない!」
「お前な〜、俺達がどれだけ心配したと………」
ジトッとした目で見られ、涙目ながら腹を抱えて笑っていた私は、ようやく笑い声を引っ込めた。
「ごめんごめん。色々あってさ……それより、今の状況どうなってるの? サラマンダーの邪魔してる人が二人いるから、何とかするの手伝ってくれって言われたんだけど?」
「それはこっちの台詞よ!」
憤慨するリーファから話を聞くと、どうやらただ世界樹を目指して二人で旅をしていただけなのに、どうにも彼等が邪魔をしてくるらしい。
私たちの弾丸トークが始まり、戦闘をしようにも出来なくてうずうずしているサラマンダー部隊の方へ行き、私は彼等に聞いた。
「なんで、あの二人狙ってるの? 私、こっち手伝えって言われたんだけど」
そう聞くと、彼等は口をそろえて邪魔そうだから、やっつけておくのだと言う。
今ここで彼等をやっつけておけば、もう一度前の村からここまでまた長時間飛ばなければならなくなる。
どうやら、彼等の狙いは、二人を足止めすることだったのは本当のようだ。
しかし、その理由はどうにも正当な理由あってのことではないらしい。
「……わかった」
「スー!」
リーファの呼ぶ声に振り返り、私はニッコリと微笑む。
「今回の戦闘、私は降りる」
「「「「「はあああぁ??!」」」」」
両者から、疑問の声が聞こえた。
「無駄な勝負してる時間ないし、同種族だから味方したいけど、リーファ達は私の友達だし。しかも、普通に勝負するなら悔しいけどキリトに勝てなさそうだし」
そういって、ひらひらと手を振ってから私は翼を広げる。
「お前、本当にこのまま去るつもりかよ!?」
キリトの言葉も、笑顔でスルーする。
「まー、機会があったらまた会おうね! サラマンダーの人も、次はちゃんと味方になりまーす」
そう言い残して、呆然とする彼等を見捨てて私は町に戻る。
すると、宿泊していた安宿の入り口に、フードを深く被ったベンヌがいた。
「お待たせ」
「いや、構わない」
「次の街に向けて、出発しよっか」
「彼等を放っておいていいのか?」
「見てたの?」
茅場に問うと、彼は「君がどうするのか、興味があったからな」と嬉しそうに言った。
「なにそれ、見てたなら茅場の魔法でドカーンと解決すればよかったのに」
「彼、キリト君にはベンヌがわかるのでな。できることなら、顔を合わせたくない」
「それもそうだね」
こうして、私たちは二人でまた次の街を目指して飛び立つのだった。
「なに?」
「節約だからと言って、同じ部屋で寝る必要があるのか?」
「しかも一つのベッドで? ってこと?」
次の街に辿り着いた私たちは、安宿を一つ取った。
ベッドはもちろん、一つだけ。
理由は簡単。
「だって茅場、ログアウトするでしょ?」
もったいないじゃない? そう私が言うと、茅場は一つ溜息をついた。
次の街で、十分に溜まったユルド————このALOでの通貨単位がユルドなわけだが、大量に入ったユルドをもって私たちはいくつかある武器屋と防具屋、露店などを見て回ったのだが、レイピアを何度か強化してしまったためか、他の武器よりも今使用しているレイピアの方が強い状態になってしまっていた。
「これは、困った…………」
「せめて、突き攻撃に変えたらどうだ?」
「いや、そうすると命中率が下がると思う……私、ほとんど斬り攻撃重視してたし、命中は最低限しかスキルも取ってないし」
「……まぁ、使えるのならそのままでいいんじゃないか?」
「う〜ん、仕方ないか。ま、カッコいいからいっか?」
テレビで見たことのあるフェンシングのポーズをとる。
テレビで見たときは、結構かっこよかったという記憶がある。
いい感じだ。
「その辺で判断する辺りが、やはりスーだな」
「褒め言葉として受け取っておきます」
「いいんじゃないか?」
クックック、と噛み殺したように笑う茅場に怒鳴りたくなったが、我慢した。
現在、私たちは一応このゲームマスターの、妖精王オベイロンという人に見つかると色々まずい状況にある。
茅場は、このゲームにいる時点でシステムである彼をいいように利用されてしまうかもしれない。
私もまた、茅場の開発した特殊な光云々のことがバレる要因の一つで、存在を知られるのはマズイ。
なるべく、人目につかないように行動することも心掛けている。
武器屋巡りも終わり、宿屋で休息も取った。
そろそろ次の街へ向けて出発しようとしていた時だった。
「おい、お前……サラマンダーだな?」
突然肩を掴まれて、そう小さく呟くように言われて、思わず条件反射で剣の柄を握ると「落ち着け、俺もサラマンダーだ」と言われ、振り返る。
そこには、赤毛の重装備をした男が立っていた。
「お前も同じ種族なら、少し手を貸してもらいたいことがあるんだが?」
「?」
私一人に言っているのだろうか。
とりあえず、茅場の意見も聞こうと振り返ると、既に彼の姿はなかった。
そこで私は気付く。
(逃げたか、隠れたんだ……俊敏すぎる)
目の前の男に見えないように一つ溜息をついて、とりあえず話を聞くことにした。
彼、ユージーンはサラマンダーの領主・モーティマーの弟であり、サラマンダー部隊の指揮官をしているALO最強プレイヤーと言われている男らしい。
ユージーンの話では、どうも他種族が自分たちの邪魔をしているから、何とかして彼等の足止めをしたい。
それに協力してほしいとのことだった。
「それって、結構大勢なんじゃないの? 他種族との戦争みたいなのって、ゲーム的にアリなわけ?」
「お前、初心者か? それにしては、結構手練れの装備をしているようだが……?」
「親切に色々教えてくれる人がいたおかげです」
「まぁいい、とりあえず禁止されているわけではない。特に何も言われていないということは、アリになるんだろう」
自分でうんうんと頷きながら話すユージーンに、私もつられてうんうん頷いてしまった。
「だが、俺達とて戦争がしたいわけではない。相手は二人だそうだ。だが、相当な手練れがいると聞いた。こちらの部隊の人手不足は否めない。頼まれてくれないか?」
「…………まぁ、いいけど」
同じ種族同士、しかも自分の種族の領主の弟ともなれば、仲良くしておいて損はないだろう。
それに、ALO最強プレイヤーというのが本当なら、是非世界樹に行くのを手伝ってほしいぐらいだ。
「じゃあさ、一個条件出していい?」
「強欲な奴だな」
「いいじゃん、大したことじゃないし。フレンド登録してください」
「ふん……まぁ、いいだろう」
「ありがとう。強い人がフレンドにいると、心強いからね」
「正直な奴だな」
ふっとユージーンが笑う。
装備も厳つくて、顔も厳つい彼だが、笑うと何だか優しそうな人に見えた。
「では、早速だがこのルグルー回廊に行ってもらうぞ」
「え、もしかして近くにいるの?」
ルグルー回廊とは、今私たちがいる町を出てすぐのところにある。
「あぁ、既に作戦は始まっている」
「へー」
「呆けるな。さっさと行け! その間に俺は、他種族との会合があるからな。フレンド登録したからといって、気軽に連絡してくるなよ」
釘を刺す様にそう言い残して、彼は空へと飛んで行ってしまった。
去っていった彼を見上げて、また一つ溜息をついた。
「…………仕方ない、行くか」
なるべくゆっくりと歩いて、私はルグルー回廊へと向かった。
ルグルー回廊の門が閉まっていたため、空を飛び門の上へと立ち下を見下ろすと、サラマンダーの何人かの部隊が二人を門の際へと追い詰めていくところだった。
どう見ても、サラマンダーの方が悪役のように見えた。
しかし、頼まれたことはキッチリやらなければと、私は二人のうちの補助魔法や回復魔法をして後方支援をしている金髪の女の子の方へと飛び降りた。
「ちょっと、動かないでくれる?」
スッと腰から引き抜いたレイピアを喉元に突き付けると、彼女は怯えたように息を詰まらせた。
「ごめんね、頼まれてるんだ」
「リーファ!!」
サラマンダーの部隊と戦うもう一人が、私が捕えている人の名前を呼ぶ。
そこで、ふと捕えている彼女を見た。
「え……リーファ?」
「っ!? スー!!」
私が捕えたのは、この世界に来てから色々と教えてくれたリーファだった。
「うわっ!? ごめん! リーファだってわからなくて……」
「スーなの!? 貴女、なんでこんなところにいるのよ!?」
「いやいや、そっちこそ「スーっ!!?」」
リーファと話していると、一際大きな声で名前を呼ばれた。
呼ばれた方へ振り返ると、そこには何だか見たことのあるような男がいた。
「お前……生きてたのか!?」
「キリト…………」
「キリト君、知り合いなの?」
「あぁ、それにしてもお前……現実世界に戻ってから連絡が誰も取れなくて、皆心配してたんだぞ」
「キリト………………」
「なんだよ?」
私は、上から下までキリトを見た。
「そのツンツン頭、死ぬほど似合ってないね」
ブフッ! と噴き出して、私は笑った。
「あはははははははははっ! なんかダサいっ! 見慣れない!」
「お前な〜、俺達がどれだけ心配したと………」
ジトッとした目で見られ、涙目ながら腹を抱えて笑っていた私は、ようやく笑い声を引っ込めた。
「ごめんごめん。色々あってさ……それより、今の状況どうなってるの? サラマンダーの邪魔してる人が二人いるから、何とかするの手伝ってくれって言われたんだけど?」
「それはこっちの台詞よ!」
憤慨するリーファから話を聞くと、どうやらただ世界樹を目指して二人で旅をしていただけなのに、どうにも彼等が邪魔をしてくるらしい。
私たちの弾丸トークが始まり、戦闘をしようにも出来なくてうずうずしているサラマンダー部隊の方へ行き、私は彼等に聞いた。
「なんで、あの二人狙ってるの? 私、こっち手伝えって言われたんだけど」
そう聞くと、彼等は口をそろえて邪魔そうだから、やっつけておくのだと言う。
今ここで彼等をやっつけておけば、もう一度前の村からここまでまた長時間飛ばなければならなくなる。
どうやら、彼等の狙いは、二人を足止めすることだったのは本当のようだ。
しかし、その理由はどうにも正当な理由あってのことではないらしい。
「……わかった」
「スー!」
リーファの呼ぶ声に振り返り、私はニッコリと微笑む。
「今回の戦闘、私は降りる」
「「「「「はあああぁ??!」」」」」
両者から、疑問の声が聞こえた。
「無駄な勝負してる時間ないし、同種族だから味方したいけど、リーファ達は私の友達だし。しかも、普通に勝負するなら悔しいけどキリトに勝てなさそうだし」
そういって、ひらひらと手を振ってから私は翼を広げる。
「お前、本当にこのまま去るつもりかよ!?」
キリトの言葉も、笑顔でスルーする。
「まー、機会があったらまた会おうね! サラマンダーの人も、次はちゃんと味方になりまーす」
そう言い残して、呆然とする彼等を見捨てて私は町に戻る。
すると、宿泊していた安宿の入り口に、フードを深く被ったベンヌがいた。
「お待たせ」
「いや、構わない」
「次の街に向けて、出発しよっか」
「彼等を放っておいていいのか?」
「見てたの?」
茅場に問うと、彼は「君がどうするのか、興味があったからな」と嬉しそうに言った。
「なにそれ、見てたなら茅場の魔法でドカーンと解決すればよかったのに」
「彼、キリト君にはベンヌがわかるのでな。できることなら、顔を合わせたくない」
「それもそうだね」
こうして、私たちは二人でまた次の街を目指して飛び立つのだった。