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「はじめまして」
白髪の少年は、そう言って微笑んだ。
彼と初めて会ったのは、英会話教室。
神田せんせーの授業日だったため、いつも以上に早く着いたあたしは受付のラビと話していた。
そこへ、彼はやってきた。
「今日から、改めてよろしくお願いします」
「おー、アレン・ウォーカーだろ?今日はコイツと一緒にレッスンさ。ヒカル、色々と教えてやれよ?」
ラビは、ヒカルの頭に手を置きながら笑った。
「いちいち頭触らないでくださーい」
「お前なー、そんなんじゃ可愛くねぇさ」
「あ、はじめまして、ウォーカー君。あたしは天月です。教室はこっちです、ラビなんて放っておいて行きましょう」
「は、はい」
ラビを軽く無視しつつも、横目でギンとラビを睨みつけてからヒカルは彼を教室まで誘導した。
「遅い」
「神田せんせー、いつもより15分早く来たんですけど」
「五分遅刻だ」
「いつもより大進歩です!」
「遅刻だろうが・・・・そっちは」
「はじめまして、アレン・ウォーカーと言います」
黙っていても整った顔に、笑顔は更に洗練されている。女のあたしでも見惚れるほどで、完璧すぎる笑顔が、綺麗だった。
「・・・・・・・始めるぞ」
アレンは、むっと顔をしかめる。無視されれば誰だっていい気はしないだろうし。
「ごめんねウォーカー君。神田先生照れ屋だから」
「レッスンは始まってるぞ、天月。日本語は喋るな」
「はーい」
「・・・・・・・・・」
「Yes,Mr.Kanda.」
「OK.Open your text book page32.」
あたしは32ページを開けて、アレン君にも見えるように置いた。
「Lesson1,―――」
神田先生は、ベラベラと問題文を読み始めた。どこかの世界的超人気アイドルの長髪よりも長い髪を一つに束ねて、視線を伏せて教科書を読んでいき、合間にホワイトボードにポイントを書き説明していく先生の姿は、そのアイドルよりもずっとカッコイイ。
そんな先生が呼んでいるその数秒間で、あたしはちらりとウォーカー君も見た。
隣の席で、先生の読む英文を追いかけるように目を動かして読んでいて、彼の正面から見た顔も綺麗だと思っていたけれど。横顔も綺麗だと、思った。
白髪の髪は、とても珍しくて。黒い服が、神田先生みたいによく似合う人だと見惚れてしまって、目元にある傷すら綺麗だと―――――
わずか数秒の中のほんの一瞬で、そう思った。
「Q1,What does she doing?」
いつの間にか英文を読み終えた先生は、ウォーカー君を睨むように見た。
「・・・・・・・・・・・」
「ウォーカー君・・・当たってるよ」
「え、僕ですか?」
「神田先生が睨んでるから」
「名前呼んでくれないんですね」
「先生は照れ屋だから」
「天月」
「うわっ、ごめんなさい!じゃなくて、I'm sorry.」
先生が教科書を丸めて、あたしの頭を叩く準備をしたものだから、慌てて謝った。
すると、先生はゆっくりと教科書を元に戻し、教科書に視線を移してくれた。
それを見計らったかのように、ウォーカー君は話し始める。
「えっと・・・・・・She is reading magazine and drinking tea」
「うわー、ウォーカー君発音綺麗だね」
「そうですか?」
「すっごい流暢だよ!」
ヒカルがそういうと、その横からひょいっとラビが顔を出した。
「すげーなアレン」
「あれ、ラビいたの?」
「なんか今日俺に冷たいさ、ヒカル」
ラビはわざとらしく、ぐったり項垂れた。
「ラビ、お前用がないなら出てけ。授業の邪魔だ」
「いやー、アレンが初授業でユウだから、大丈夫かなぁって思って」
「ファーストネームで呼ぶな!」
「せんせー、早く授業してくださーい!」
「「お前が言うかヒカル!」」
「なんで二人ツッコミ!?」
「お前がいつも一番授業妨害してるだろーが」
「そーさ!ヒカルのせいで、いっつもユウの八つ当たりが全部オレに回ってくるんさ!!」
「うわー、ご愁傷様でーす」
「棒読みで言うなっ!」
「お前はファーストネームで呼ぶなっ!」
(なんか、この三人の関係大体わかった気がする)
アレンは、ぎゃーぎゃーと煩い三人から少し距離を取り、次に来るレッスンの予定をチェックした。
出来れば、ヒカルと神田のいないレッスンにしたいと願いながら。
そんなんで今日の授業は終わり、途中までウォーカー君と一緒に帰ることにした・・・・けど。
「あ、歩くの早いね!ウォーカー君」
「すいません、今日は急いでいるので早く帰りたいんです」
ニッコリと、それはもう素敵な笑顔で彼は笑った。ヒカルと一緒に帰りたくないという気持ちを、ありったけ込めて。
「そうだったんだ。じゃあ早く歩くように頑張るね」
しかし、ヒカルにはその気持ちはちっとも伝わらなかった。
「・・・・・もちろんです」
ヒカルは、頑張ってウォーカー君に歩幅を合わせて歩いた。
必死に歩いた。
ちょっと小走りで頑張った。
「ちょ、あ、あのさ!女性に対しての紳士的態度が、ちっとも欠片も感じられないんだけど!」
「あ、すいません!」
ウォーカー君は、あたしの声でやっと歩幅を少し合わせてくれた。
「すいません、急いでいるとはいえ天月さんに大変失礼なことを」
「あ、いや・・・遅いあたしも悪いんだけど」
こう急に素直に謝られると、これ以上責められない。
「本当にすいません、いつもは出来るんですけど・・・・」
ヒカルが相手だと、イライラしてできない。そういう意味を込めて言葉を発したアレン。
「あ、そうなんだ」
そう言ったアレンの言葉に、ヒカルはハッと気付いた。
(ウォーカー君、あたしのこと嫌いなんじゃ・・・・・・)
夜風が吹いて、背筋が冷たくなった。
少しだけ、ヒカルにアレンの気持ちが伝わったのかもしれない。
その後、「すいません、やっぱり急ぐので」とウォーカー君はあの後走って帰っていった。
「あの時はよく考えなかったけど、明らかに避けられてるじゃんあたし」
呟いて、余計に悲しくなった。
「ま、気にしてたって仕方ないよね」
何を言ったって、今日も英会話教室。
今日もウォーカー君と同じレッスンで、神田先生だ。
教室の扉を開けると、受付にラビの姿がなくあたしはそのまま教室へ向かうと、神田先生の姿もなく、空しい教室で一人ぽつんと皆が来るのを待った。
レッスンが始まる五分前、ようやく神田せんせーがやってきた。
「おはよーございます、神田先生」
「Good evening」
「あ、Good evening,Mr.Kanda!」
「少しは、発音がマシになったな」
「ほんと!?やったー!神田先生に褒められた!後でラビに自慢しなきゃ!!」
「やめろ、バカかお前」
「バカですが何か」
「・・・・・・・」
「ちょ、先生怒んないで!ごめんなさい!」
手を伸ばしてきた先生に、怖くなってぎゅっと目を瞑った。
すると、痛みがどこにも降ってくることはなく、前髪をそっとかき上げられた。
「?」
「お前、熱でもあるんじゃないか?」
「え、いや確かに熱っぽいかもしれないけど・・・・」
「お前が、授業の時間前に来てるのはおかしいからな」
「・・・・・・・は?」
「熱は、微熱か。なら今日は槍が降ってくるかもな」
「せんせー、あたしに対して物凄く失礼じゃないですか!?」
「何言ってんだ天月」
うっ、と言葉が詰まったあたしに、先生はふんっと鼻で笑った。
「授業時間内にお前が来たんだ。ありえねぇよ」
「ちょ、それが頑張って来た生徒に言う言葉ですか!?」
「こんばんはー」
あたしが神田先生と言い争っていると、一分遅れでウォーカー君がやってきた。
「すいません、遅刻しました」
あっけらかんというウォーカー君に、神田先生はまたさらに眉間にシワを寄せた。
「はっ、授業二回目で遅刻か。いい度胸だなモヤシ」
「モヤシじゃありません、アレンです!」
「二人とも仲良しだね」
「「ありえねぇよ」」
(ウォーカー君こわっ!)
その後の授業も、授業の一回目もそういえば遅刻していたなと神田先生が言ったのをきっかけに、二人はまた火花を激しく散らしていた。そんな二人がなんだかおかしくて、あたしは思わず笑ってしまった。
授業が終わり、あたしはウォーカー君と暗くなった夜道を歩く。
「あの、天月さん」
「ん?」
「前は、その・・・すいませんでした。一応女性の方を夜道で一人残して帰るようなことをして、足の長さも考えず失礼な真似を」
「あぁ、もういいって!そんなに謝らなくても」
良かった、やっぱりウォーカー君って良い人っぽい・・・・・のか?
「今日は、ちゃんと頑張って家まで送りますから」
にっこりと笑うウォーカー君。
なんか、さっきから所々失礼な気がしてならない・・・・・ま、いっか。
「うん、頑張ってね!」
「・・・・・・はい!」
二人の距離が、なぜか凄く離れた気がした。
それから暫く歩いていると、急に辺りの景色が歪んだ。
「え、え、え!?なにこれ、なにこれなにこれ!!」
「ちょ、落ち着いてください天月さん!」
地面も、辺りの家も、空も雲も星も全部。あたしたち以外の全てが歪んでいく。びっくりして、ウォーカー君に必死で抱きついた。
「なにこれ!?なんで、何があってどうなってこうなってんの!!?」
「知りませんってば!引っ付かないでくださいよっ!」
『タ・・・・・・・・ス、ケ・・・・・・・・・・テ』
「ひっど、女の子が怖がってんだから早くなんとかしてよ!男でしょ!?」
「男だからって何でも出来るわけじゃありませんよ!そっちこそ、女なんだからなんとかしてくださいよ!」
『タス・・・・・・・ケ、テ』
「ちょ、レディに向かって何てこと言ってんのよ!」
『タスケ、テ』
「誰がレディですか」
「レディじゃん!どう見ても!!ていうか前から言おうと思ってたけど、モヤシのくせにあたしの扱い酷くない!?まだ会って間もないのに!」
「君まで僕をモヤシ扱いですか!?僕はアレンです!君こそ会って間もないのに、僕をモヤシ扱いですか!?」
「あたしだって、君じゃないです!ヒカルです!」
「じゃあヒカル!」
「じゃあアレン!」
「「これで文句なし!」」
『タスケテッツッテンダローガ!!!!!!』
ぎゃーぎゃー言い合ってるあたしたちは、同時に怒鳴られた方へ振り返った。
『ヤットキヅイタカ、オマエラコロシテヤル』
「・・・・・・なにこれ。なんのドラマ?」
あたしがそう言って、ウォーカー君・・・・アレンを見るとアレンの目つきがさっきまでとはまるで別人のように変わっていた。
「AKUMA・・・・・・・」
「悪魔?」
「はい・・・・・・・・千年伯爵が造った悪性兵器のことです」
「悪魔って、あの黒い羽が生えてるとかいう悪魔ではなく?」
「兵器の総称ですよ」
「で、なんのドラマのやつ?」
「ドラマって、なんですか?」
「は?」
ドラマに対して、心底訳の分からない言葉だというようにアレンが聞いてくるものだから、あたしは思わず言葉が出てこなかった。
「とにかく、今は彼の魂を救済することが先です!ヒカルは下がっていてください!」
「た、戦う気?あんな化け物と!ていうか、ドラマ知らないとかあり得ないんですけど!テレビあるでしょテレビ!!」
「僕は寄生型イノセンスの適合者、エクソシストです」
「イノセンス、エクソシスト・・・・・?」
無視された。
とにかく、歪んで何がなんだかわからなくなった場所で、あたしはアレンとアクマから離れた場所に移動した。すると、不意に背後に何かを感じてゆっくり振り返ると、そこには沢山のアクマが現れた。
「なっ!?」
「ヒカル!!」
アクマという機械に幾つも付いた銃が全てあたしに向いた瞬間、アレン君があたしの方に走り出して、あたしの視界は全てゆっくりとスローモーションになった。撃たれた銃は、黒くて少し細長い大きな銃弾。1体が持つ銃の数も多いのに、何体もいるため銃の数が星の数ほどある。
避けきれない。
こんな訳の分からないまま、死ぬのは嫌だなぁ。
じっと銃が向かってくるのを見ていたら、不意に神田先生とラビがあたしの前に出てきて。二人が現れてからは、あたしの視界はすごく早くなった。
何が起きたのか。
一瞬で銃弾は全て消えていた。
そして、アレンの左腕が変だとか、神田せんせーの持っているものが真剣に見えるとか、ラビのは何かわかんないけど変なハンマーだとか、わからなさすぎて腰が抜けて座り込んだあたしに、三人は笑って手を出してくれた。
「ヒカル、怪我ありませんか?」
「うん、大丈夫」
「それは良かっ―――」
安心した途端、世界は止まった。歪んで渦巻いていた景色は止まった。
「ちょ、アレン!?神田先生??!ラビっ!」
名前を呼んでも返事はなく、動かそうとしても石のように固まってしまっている。
「どうなってんの?」
「やっほ~、ヒカル。どうだったぁ?」
「・・・・・・・だれ?!」
突然現れたその少女は、薄く笑った。
白髪の少年は、そう言って微笑んだ。
彼と初めて会ったのは、英会話教室。
神田せんせーの授業日だったため、いつも以上に早く着いたあたしは受付のラビと話していた。
そこへ、彼はやってきた。
「今日から、改めてよろしくお願いします」
「おー、アレン・ウォーカーだろ?今日はコイツと一緒にレッスンさ。ヒカル、色々と教えてやれよ?」
ラビは、ヒカルの頭に手を置きながら笑った。
「いちいち頭触らないでくださーい」
「お前なー、そんなんじゃ可愛くねぇさ」
「あ、はじめまして、ウォーカー君。あたしは天月です。教室はこっちです、ラビなんて放っておいて行きましょう」
「は、はい」
ラビを軽く無視しつつも、横目でギンとラビを睨みつけてからヒカルは彼を教室まで誘導した。
「遅い」
「神田せんせー、いつもより15分早く来たんですけど」
「五分遅刻だ」
「いつもより大進歩です!」
「遅刻だろうが・・・・そっちは」
「はじめまして、アレン・ウォーカーと言います」
黙っていても整った顔に、笑顔は更に洗練されている。女のあたしでも見惚れるほどで、完璧すぎる笑顔が、綺麗だった。
「・・・・・・・始めるぞ」
アレンは、むっと顔をしかめる。無視されれば誰だっていい気はしないだろうし。
「ごめんねウォーカー君。神田先生照れ屋だから」
「レッスンは始まってるぞ、天月。日本語は喋るな」
「はーい」
「・・・・・・・・・」
「Yes,Mr.Kanda.」
「OK.Open your text book page32.」
あたしは32ページを開けて、アレン君にも見えるように置いた。
「Lesson1,―――」
神田先生は、ベラベラと問題文を読み始めた。どこかの世界的超人気アイドルの長髪よりも長い髪を一つに束ねて、視線を伏せて教科書を読んでいき、合間にホワイトボードにポイントを書き説明していく先生の姿は、そのアイドルよりもずっとカッコイイ。
そんな先生が呼んでいるその数秒間で、あたしはちらりとウォーカー君も見た。
隣の席で、先生の読む英文を追いかけるように目を動かして読んでいて、彼の正面から見た顔も綺麗だと思っていたけれど。横顔も綺麗だと、思った。
白髪の髪は、とても珍しくて。黒い服が、神田先生みたいによく似合う人だと見惚れてしまって、目元にある傷すら綺麗だと―――――
わずか数秒の中のほんの一瞬で、そう思った。
「Q1,What does she doing?」
いつの間にか英文を読み終えた先生は、ウォーカー君を睨むように見た。
「・・・・・・・・・・・」
「ウォーカー君・・・当たってるよ」
「え、僕ですか?」
「神田先生が睨んでるから」
「名前呼んでくれないんですね」
「先生は照れ屋だから」
「天月」
「うわっ、ごめんなさい!じゃなくて、I'm sorry.」
先生が教科書を丸めて、あたしの頭を叩く準備をしたものだから、慌てて謝った。
すると、先生はゆっくりと教科書を元に戻し、教科書に視線を移してくれた。
それを見計らったかのように、ウォーカー君は話し始める。
「えっと・・・・・・She is reading magazine and drinking tea」
「うわー、ウォーカー君発音綺麗だね」
「そうですか?」
「すっごい流暢だよ!」
ヒカルがそういうと、その横からひょいっとラビが顔を出した。
「すげーなアレン」
「あれ、ラビいたの?」
「なんか今日俺に冷たいさ、ヒカル」
ラビはわざとらしく、ぐったり項垂れた。
「ラビ、お前用がないなら出てけ。授業の邪魔だ」
「いやー、アレンが初授業でユウだから、大丈夫かなぁって思って」
「ファーストネームで呼ぶな!」
「せんせー、早く授業してくださーい!」
「「お前が言うかヒカル!」」
「なんで二人ツッコミ!?」
「お前がいつも一番授業妨害してるだろーが」
「そーさ!ヒカルのせいで、いっつもユウの八つ当たりが全部オレに回ってくるんさ!!」
「うわー、ご愁傷様でーす」
「棒読みで言うなっ!」
「お前はファーストネームで呼ぶなっ!」
(なんか、この三人の関係大体わかった気がする)
アレンは、ぎゃーぎゃーと煩い三人から少し距離を取り、次に来るレッスンの予定をチェックした。
出来れば、ヒカルと神田のいないレッスンにしたいと願いながら。
そんなんで今日の授業は終わり、途中までウォーカー君と一緒に帰ることにした・・・・けど。
「あ、歩くの早いね!ウォーカー君」
「すいません、今日は急いでいるので早く帰りたいんです」
ニッコリと、それはもう素敵な笑顔で彼は笑った。ヒカルと一緒に帰りたくないという気持ちを、ありったけ込めて。
「そうだったんだ。じゃあ早く歩くように頑張るね」
しかし、ヒカルにはその気持ちはちっとも伝わらなかった。
「・・・・・もちろんです」
ヒカルは、頑張ってウォーカー君に歩幅を合わせて歩いた。
必死に歩いた。
ちょっと小走りで頑張った。
「ちょ、あ、あのさ!女性に対しての紳士的態度が、ちっとも欠片も感じられないんだけど!」
「あ、すいません!」
ウォーカー君は、あたしの声でやっと歩幅を少し合わせてくれた。
「すいません、急いでいるとはいえ天月さんに大変失礼なことを」
「あ、いや・・・遅いあたしも悪いんだけど」
こう急に素直に謝られると、これ以上責められない。
「本当にすいません、いつもは出来るんですけど・・・・」
ヒカルが相手だと、イライラしてできない。そういう意味を込めて言葉を発したアレン。
「あ、そうなんだ」
そう言ったアレンの言葉に、ヒカルはハッと気付いた。
(ウォーカー君、あたしのこと嫌いなんじゃ・・・・・・)
夜風が吹いて、背筋が冷たくなった。
少しだけ、ヒカルにアレンの気持ちが伝わったのかもしれない。
その後、「すいません、やっぱり急ぐので」とウォーカー君はあの後走って帰っていった。
「あの時はよく考えなかったけど、明らかに避けられてるじゃんあたし」
呟いて、余計に悲しくなった。
「ま、気にしてたって仕方ないよね」
何を言ったって、今日も英会話教室。
今日もウォーカー君と同じレッスンで、神田先生だ。
教室の扉を開けると、受付にラビの姿がなくあたしはそのまま教室へ向かうと、神田先生の姿もなく、空しい教室で一人ぽつんと皆が来るのを待った。
レッスンが始まる五分前、ようやく神田せんせーがやってきた。
「おはよーございます、神田先生」
「Good evening」
「あ、Good evening,Mr.Kanda!」
「少しは、発音がマシになったな」
「ほんと!?やったー!神田先生に褒められた!後でラビに自慢しなきゃ!!」
「やめろ、バカかお前」
「バカですが何か」
「・・・・・・・」
「ちょ、先生怒んないで!ごめんなさい!」
手を伸ばしてきた先生に、怖くなってぎゅっと目を瞑った。
すると、痛みがどこにも降ってくることはなく、前髪をそっとかき上げられた。
「?」
「お前、熱でもあるんじゃないか?」
「え、いや確かに熱っぽいかもしれないけど・・・・」
「お前が、授業の時間前に来てるのはおかしいからな」
「・・・・・・・は?」
「熱は、微熱か。なら今日は槍が降ってくるかもな」
「せんせー、あたしに対して物凄く失礼じゃないですか!?」
「何言ってんだ天月」
うっ、と言葉が詰まったあたしに、先生はふんっと鼻で笑った。
「授業時間内にお前が来たんだ。ありえねぇよ」
「ちょ、それが頑張って来た生徒に言う言葉ですか!?」
「こんばんはー」
あたしが神田先生と言い争っていると、一分遅れでウォーカー君がやってきた。
「すいません、遅刻しました」
あっけらかんというウォーカー君に、神田先生はまたさらに眉間にシワを寄せた。
「はっ、授業二回目で遅刻か。いい度胸だなモヤシ」
「モヤシじゃありません、アレンです!」
「二人とも仲良しだね」
「「ありえねぇよ」」
(ウォーカー君こわっ!)
その後の授業も、授業の一回目もそういえば遅刻していたなと神田先生が言ったのをきっかけに、二人はまた火花を激しく散らしていた。そんな二人がなんだかおかしくて、あたしは思わず笑ってしまった。
授業が終わり、あたしはウォーカー君と暗くなった夜道を歩く。
「あの、天月さん」
「ん?」
「前は、その・・・すいませんでした。一応女性の方を夜道で一人残して帰るようなことをして、足の長さも考えず失礼な真似を」
「あぁ、もういいって!そんなに謝らなくても」
良かった、やっぱりウォーカー君って良い人っぽい・・・・・のか?
「今日は、ちゃんと頑張って家まで送りますから」
にっこりと笑うウォーカー君。
なんか、さっきから所々失礼な気がしてならない・・・・・ま、いっか。
「うん、頑張ってね!」
「・・・・・・はい!」
二人の距離が、なぜか凄く離れた気がした。
それから暫く歩いていると、急に辺りの景色が歪んだ。
「え、え、え!?なにこれ、なにこれなにこれ!!」
「ちょ、落ち着いてください天月さん!」
地面も、辺りの家も、空も雲も星も全部。あたしたち以外の全てが歪んでいく。びっくりして、ウォーカー君に必死で抱きついた。
「なにこれ!?なんで、何があってどうなってこうなってんの!!?」
「知りませんってば!引っ付かないでくださいよっ!」
『タ・・・・・・・・ス、ケ・・・・・・・・・・テ』
「ひっど、女の子が怖がってんだから早くなんとかしてよ!男でしょ!?」
「男だからって何でも出来るわけじゃありませんよ!そっちこそ、女なんだからなんとかしてくださいよ!」
『タス・・・・・・・ケ、テ』
「ちょ、レディに向かって何てこと言ってんのよ!」
『タスケ、テ』
「誰がレディですか」
「レディじゃん!どう見ても!!ていうか前から言おうと思ってたけど、モヤシのくせにあたしの扱い酷くない!?まだ会って間もないのに!」
「君まで僕をモヤシ扱いですか!?僕はアレンです!君こそ会って間もないのに、僕をモヤシ扱いですか!?」
「あたしだって、君じゃないです!ヒカルです!」
「じゃあヒカル!」
「じゃあアレン!」
「「これで文句なし!」」
『タスケテッツッテンダローガ!!!!!!』
ぎゃーぎゃー言い合ってるあたしたちは、同時に怒鳴られた方へ振り返った。
『ヤットキヅイタカ、オマエラコロシテヤル』
「・・・・・・なにこれ。なんのドラマ?」
あたしがそう言って、ウォーカー君・・・・アレンを見るとアレンの目つきがさっきまでとはまるで別人のように変わっていた。
「AKUMA・・・・・・・」
「悪魔?」
「はい・・・・・・・・千年伯爵が造った悪性兵器のことです」
「悪魔って、あの黒い羽が生えてるとかいう悪魔ではなく?」
「兵器の総称ですよ」
「で、なんのドラマのやつ?」
「ドラマって、なんですか?」
「は?」
ドラマに対して、心底訳の分からない言葉だというようにアレンが聞いてくるものだから、あたしは思わず言葉が出てこなかった。
「とにかく、今は彼の魂を救済することが先です!ヒカルは下がっていてください!」
「た、戦う気?あんな化け物と!ていうか、ドラマ知らないとかあり得ないんですけど!テレビあるでしょテレビ!!」
「僕は寄生型イノセンスの適合者、エクソシストです」
「イノセンス、エクソシスト・・・・・?」
無視された。
とにかく、歪んで何がなんだかわからなくなった場所で、あたしはアレンとアクマから離れた場所に移動した。すると、不意に背後に何かを感じてゆっくり振り返ると、そこには沢山のアクマが現れた。
「なっ!?」
「ヒカル!!」
アクマという機械に幾つも付いた銃が全てあたしに向いた瞬間、アレン君があたしの方に走り出して、あたしの視界は全てゆっくりとスローモーションになった。撃たれた銃は、黒くて少し細長い大きな銃弾。1体が持つ銃の数も多いのに、何体もいるため銃の数が星の数ほどある。
避けきれない。
こんな訳の分からないまま、死ぬのは嫌だなぁ。
じっと銃が向かってくるのを見ていたら、不意に神田先生とラビがあたしの前に出てきて。二人が現れてからは、あたしの視界はすごく早くなった。
何が起きたのか。
一瞬で銃弾は全て消えていた。
そして、アレンの左腕が変だとか、神田せんせーの持っているものが真剣に見えるとか、ラビのは何かわかんないけど変なハンマーだとか、わからなさすぎて腰が抜けて座り込んだあたしに、三人は笑って手を出してくれた。
「ヒカル、怪我ありませんか?」
「うん、大丈夫」
「それは良かっ―――」
安心した途端、世界は止まった。歪んで渦巻いていた景色は止まった。
「ちょ、アレン!?神田先生??!ラビっ!」
名前を呼んでも返事はなく、動かそうとしても石のように固まってしまっている。
「どうなってんの?」
「やっほ~、ヒカル。どうだったぁ?」
「・・・・・・・だれ?!」
突然現れたその少女は、薄く笑った。
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