カシウスとジータ

新年を迎えた一つの騎空艇。
そこでは、ある人物の歓迎会が開かれていた。

(なるほど、こうして新たな団員をお披露目することで、親睦を深めつつ顔見せをさせているということか)

彼の名はカシウス。
この騎空艇に今日から仲間として加わった。
彼を快く迎えた団長のジータは、女性たちとカラフルなノンカクテルを楽し気に飲んでいる。
年明けの名残もあってか、艇内では大人組が早くも顔を赤らめるほど酒を浴びており、数十人が在籍するここはもうお祭り騒ぎだ。

「カシウスー! 楽しんでるー!?」

ジータは、向日葵のような笑顔でカシウスへバーボンの入ったグラスを渡す。

「…………お前は、楽しんでいるのか?」
「うん、もちろんだよ! 仲間が増えるのは嬉しい!」

そういってまた笑ったジータの笑顔に、カシウスは知らぬうちに自分も笑みを浮かべているのに気付いた。

(笑いは伝染する、と聞いたことがあったが……)

彼は静かに目を閉じ、笑う。

(伝染と聞いて、病気のようなもののように感じていたが……心が躍るような、そんな気持ちになる)

(特に自分が楽しいわけではないはずが、楽しんでいる人といるとその気持ちに感化する、ということか)

「……私は、心地が良い」

カシウスがそう口にしてバーボンを飲む。

「うん! これから、きっともっと楽しいことがいっぱいあるよ!」

「そうだろうな」

(お前の傍にある限り、それは続いていくのだろう。自然と、そう思える。不思議だ)

「あ! ダーツやるみたいだよ! 私達もやろう、カシウス!」
「あぁ」

ジータの差し出された手を、柔らかな笑みを浮かべて撫でると、カシウスはそのまま手を滑らせる。
そして、ジータの手の甲を上に向けて持ち上げた。

「カシウス?」

柔らか笑みを浮かべたまま、彼女の手にそっと口付ける。

「ダーツはしたことがない。ぜひとも、教えてくれ」

その様子を見ていた仲間たちが騒ぎ出し、ジータが顔を真っ赤に染めたが、カシウスは気にした素振りも見せぬまま、ジータの手を引いた。
1/1ページ
    スキ