1日目
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『いってて············すみません!!』
「あ、」とその人が言ったのは、私とほぼ同時だった。
その人は私の方を見ると、少し驚いたような顔をした。
⎯⎯ それもそのはず。
だってその人は、私のリボンとお揃いの柄のネクタイを付けていたから。
『もしかして⎯⎯』
運命とは、たまには味方をしてくれることもあるらしい。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
もう時刻は8時20分を過ぎているというのに、閑散とした住宅街に、少女が1人。
通常ならば、そのような茜色のリボンを付けた学生は、もうとっくにこのような道は通り過ぎている筈である。
······いや、通り過ぎていなければならない、と言った方が正しいか。
しかしその少女は今も尚立ち止まっているどころか、顔を顰めながらスマホの画面を必死に覗き込んでいた。
汗ばんだ手で慌ただしく画面を何度もスライドさせるその動作から、少女がいかに窮地に追い込まれているのかが分かるだろう。
巷では便利だと噂されているその地図アプリも、今自分がどこにいるのかが分からなければ意味が無い。
······つまりはそういうことである。
少女は紛れもない、迷子なのだ。
転校初日。今の気持ちは、期待6割、不安4割。
しかしその半分にも満たない不安のせいで、朝から食欲は湧かないわ、胃も痛いわで、かなり微妙なスタートである。
環境を変えたからって、すぐにこの症状が治まるわけではない。仕方のないことだ。
私が今知っているのは、「ここにアイツらはいない」という“事実”と、「もうあんなことは起こらない」という“可能性”だけであって、それは未だ現実ではない。
それを現実にするためには、まずは学校に辿り着かなければならないのだが······。
登校時間の約15分前には学校に着いている予定で家を出たのに、今はその時刻である8時20分をとっくに過ぎて、8時25分にさしかかろうとしていた。
しかし今も尚目の前に広がっているのは、家を出たばかりの時に見たのとさして変わらない住宅街。
もう私以外にこの茜色のリボンを付けている人は ⎯⎯ というか学生自体誰1人として歩いておらず、おそらくご近所さんなのであろうお婆さんやサラリーマンが忙しそうに通り過ぎていくだけである。
これがすっかり通い慣れた1ヶ月後の話だったら良かったのに。
そしたら迷うことなんてなく、ダッシュで学校に向かうことができただろう。
それにもしかしたら、近道なんかも知っていたかもしれない。
だが生憎今日は転校初日である。そんなものは知らない。
しかしそのように、今の状況がもう既に詰んでいるということを悟っても、無慈悲にも、勝手に学校の目の前までワープしているなんて事は無いし、学校までの道のりが突然光出すわけでもない。時間がただ過ぎていくだけである。
もういっそのこと学校に電話してしまおうかとも思ったが、「道に迷っていて、遅刻します」だなんてとても恥ずかしくて言えない。
ああ、もちろん、たったの20分程度の道のりで、地図を持っているのにも関わらず、迷子になっているのが、とんでもなく馬鹿で恥ずかしいことだとは自覚している。
仕方がない。自力で辿り着くしかないか······と再びスマホの電源を付けたそのとたん、
プツリと画面が真っ暗に。
あ、終わった。本気で終わった。私このまま一生迷子?
ここは雪山でも何でもないのに、というか冬ですらないのに、ただの住宅街で遭難だなんて笑えない。いや、逆に笑えてくるかもしれない。
こうなったらもう己の勘を信じて歩いてみるしかなかった。
今までそこそこ過酷な人生だったのに、生き延びてこられたのだ。それなりの運は持っている筈である。
「あ、」とその人が言ったのは、私とほぼ同時だった。
その人は私の方を見ると、少し驚いたような顔をした。
⎯⎯ それもそのはず。
だってその人は、私のリボンとお揃いの柄のネクタイを付けていたから。
『もしかして⎯⎯』
運命とは、たまには味方をしてくれることもあるらしい。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
もう時刻は8時20分を過ぎているというのに、閑散とした住宅街に、少女が1人。
通常ならば、そのような茜色のリボンを付けた学生は、もうとっくにこのような道は通り過ぎている筈である。
······いや、通り過ぎていなければならない、と言った方が正しいか。
しかしその少女は今も尚立ち止まっているどころか、顔を顰めながらスマホの画面を必死に覗き込んでいた。
汗ばんだ手で慌ただしく画面を何度もスライドさせるその動作から、少女がいかに窮地に追い込まれているのかが分かるだろう。
巷では便利だと噂されているその地図アプリも、今自分がどこにいるのかが分からなければ意味が無い。
······つまりはそういうことである。
少女は紛れもない、迷子なのだ。
転校初日。今の気持ちは、期待6割、不安4割。
しかしその半分にも満たない不安のせいで、朝から食欲は湧かないわ、胃も痛いわで、かなり微妙なスタートである。
環境を変えたからって、すぐにこの症状が治まるわけではない。仕方のないことだ。
私が今知っているのは、「ここにアイツらはいない」という“事実”と、「もうあんなことは起こらない」という“可能性”だけであって、それは未だ現実ではない。
それを現実にするためには、まずは学校に辿り着かなければならないのだが······。
登校時間の約15分前には学校に着いている予定で家を出たのに、今はその時刻である8時20分をとっくに過ぎて、8時25分にさしかかろうとしていた。
しかし今も尚目の前に広がっているのは、家を出たばかりの時に見たのとさして変わらない住宅街。
もう私以外にこの茜色のリボンを付けている人は ⎯⎯ というか学生自体誰1人として歩いておらず、おそらくご近所さんなのであろうお婆さんやサラリーマンが忙しそうに通り過ぎていくだけである。
これがすっかり通い慣れた1ヶ月後の話だったら良かったのに。
そしたら迷うことなんてなく、ダッシュで学校に向かうことができただろう。
それにもしかしたら、近道なんかも知っていたかもしれない。
だが生憎今日は転校初日である。そんなものは知らない。
しかしそのように、今の状況がもう既に詰んでいるということを悟っても、無慈悲にも、勝手に学校の目の前までワープしているなんて事は無いし、学校までの道のりが突然光出すわけでもない。時間がただ過ぎていくだけである。
もういっそのこと学校に電話してしまおうかとも思ったが、「道に迷っていて、遅刻します」だなんてとても恥ずかしくて言えない。
ああ、もちろん、たったの20分程度の道のりで、地図を持っているのにも関わらず、迷子になっているのが、とんでもなく馬鹿で恥ずかしいことだとは自覚している。
仕方がない。自力で辿り着くしかないか······と再びスマホの電源を付けたそのとたん、
プツリと画面が真っ暗に。
あ、終わった。本気で終わった。私このまま一生迷子?
ここは雪山でも何でもないのに、というか冬ですらないのに、ただの住宅街で遭難だなんて笑えない。いや、逆に笑えてくるかもしれない。
こうなったらもう己の勘を信じて歩いてみるしかなかった。
今までそこそこ過酷な人生だったのに、生き延びてこられたのだ。それなりの運は持っている筈である。