-歴史感じる風の下へ-
夢小説設定
少女達の名前を。勇者側はひらがなカタカナ漢字問わず、
伯爵側はカタカナだとより楽しめます。
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+暗黒城+
「相っっっ変わらず賑やかねえ…」
そう呟いたマネーラが自室の扉を開き、
廊下にも響き渡る音を睨みつける。
ガチャンガチャンと金属が擦れ合う音。
それは彼らが休息を取れるこのプライベートフロアに
あの機械に長けたミスターLの部屋がどこかにあるからだろう。
今彼女達がいるマネーラの部屋と真横からではないのに
近くで工事をしているのかと言わんばかりの激しい作業音だ。
「さっきのミスターL…さん、だよね。
なんか機械が得意そうだったし…」
「整備とか何とか言ってたしねぇ。
どうせオンボロなガラクタでしょ?あの変なロボットの」
「変…ああ、飛んで行ってたやつか」
「マイブラザーとか何とか言ってたじゃない。変でしょ?」
「ん~そう呼ぶぐらい愛情がある、って事じゃないかな?」
「マオは優しいわね~…っと、ココかしら」
マオはただ苦笑を浮かべるしかなかった。
そう愚痴を呟きながら発生源のありかを探そうと廊下を歩き、
それらしき部屋の扉へと近付き、耳を当てる。
「…きゃっ!?」
「うわっ!?」
すると突如その隣の方から乱暴に扉の開く音が
体を跳ねらせるほどに大きく響く。
マネーラは一瞬、マオが扉を開けたのかと思ったが
そのマオもどうやらマネーラと同じ反応を見せており、
彼女の向こう側に緑と黒の一人の人影が覗いて見えた。
「オンボロなガラクタっつーのはお前の事だろう?
マネーラサンよ!」
そこには腕を組みながら開いた扉にもたれ掛る
話題の種となっていたミスターLの姿があったのだ。
どこから話を聞いていたかはわからないが、
怒りの様子は見当たらずむしろ笑みを浮かべている。
「はあ?オンボロロボットだったのは事実でしょ」
「ハン!もう記憶がすっ飛んだか?小手調べって言っただろ?
マイブラザーにアイツらの力量を記憶させる為のテストだ!
初っ端から無計画で挑むバカがいるかよ」
「そもそも戦う前に多少分析するのが普通じゃ…」
「ホントよ!デビュー戦とか何とか張りきってたクセに!」
「自分の力でも伯爵の力を借りても敵わなかったヤツが
ゴチャゴチャ言ってるなあ?」
「ハァっ…!?」
「お前こそ意気揚々と挑んでそんな惨めな結果出してきたのに
先輩ヅラしてデカい口たたけるもんだ!」
上手く言い返せない悔しさか、新参者に侮辱されたからか。
マネーラはただ彼に対し歯を食いしばりながら睨み付けるも、
当の本人は効いていないのか鼻で嘲笑しており。
そして置いてけぼりなマオは二人を交互に見つつも
ふと彼の部屋の方へと耳を傾ける。
「あ、ええと…ミスターLさん」
「あ?」
「部屋の中の音の…は大丈夫?ずっと音が…」
それは彼が出てきた部屋の中から聞こえる音だ。
出てくる前から響く稼働音が鳴り続けており、
思わず声をかけるも彼は表情を変えることなく軽く頷く。
「ああ、今は自動運転に切り替えてある」
「そんな事もできるんだ…」
「当然だ!」
その音のリズムは多少変動しつつも
規則正しく一定の間隔で作業を進めている音が耳に届く。
彼が来るまでの伯爵ズにはいなかった才能に
思わず感心するようにその音に注目すれば
それを見守っていたマネーラは呆れて大きくため息をついた。
「…とにかく!今までなかった騒音なんだから!
少しは配慮ぐらいはしなさいよ!」
「ハア?なんでだよ。伯爵は許可したぞ?」
「アンタのその腕なら防音の一つや二つ作って
他人に迷惑かけるなって言ってるの!」
「ハァ~?うるさいのはお前の方だと思うがな~!?」
「アンタのせいでしょーが!!」
何を言い返してものらりくらりと避ける彼の対応に
マネーラはもうキリがないと感じたのか、
最後にミスターLをきつく睨みつけた後
マオをその場に残して自室へと帰って行ってしまった。
「あー…」
「フン。相当なヒステリック女だな」
「でも、なんで伯爵様の力の事…まだ居なかったよね?」
「ん~オレの冴えた勘」
自身の頭に指を当てながら笑みを浮かべる。
マオの苦笑を浮かべる反応を見るなり
彼はそのまま部屋に戻ろうと扉から離れ、閉めようとした。
「あっ…待って!」
すると何かを思い出したのか
マオは閉まりそうになった扉に手をかけ彼の行動を阻む。
案の定、扉がつっかえた動きを封じられたミスターLは
不機嫌な表情で彼女を見下した。
「一つだけ聞きたいことが…!」
「ゴチャゴチャ注文が多いやつらだな!オレは忙しいんだよ!」
「手短に言うから!その…そっちで
カギみたいなものとか、どこかで見つけなかった?」
「カギだあ…?」
乱暴に閉められる気配を感じて早口でそう告げると
彼の動きがぴたりと動きが止まった。
そして数秒、何かを思い出したのか
自身の服のポケットに手を入れる。
しかしその手を出そうとはせず
何か悩むようにそのポーズで停止すると
ポケットに手を入れたままマオを見下ろした。
「鍵…と、ハートの形をした南京錠とか…
綺麗な色や模様が付いたものなんだけど」
突然静まったミスターLに警戒しながらもそう伝えると
ポケットの中におさめていた手がゆっくりと引き抜かれる。
その手は握られた状態だったが
マオに見えないよう手を少し開き、その中身を確認する。
そしてそのままマオに見せるように
それを手のひらから指へと持ち替えた。
「コレの事か?」
それは彼の帽子と同じ緑色の南京錠。
傾きできらりと輝いていた。
「あっ!それ!それです!」
しかしそのまま無意識に手にしようと差し伸べれば、
その行動を阻むように彼は腕を上げる。
思わずとった自身の行動と彼の行動に驚く反応を見せると、
ミスターLは南京錠と彼女を交互に見つめた。
「なんだそのアホ面」
「あ…えぇと…」
「これはオレが拾ったやつだ。
誰もお前にやるなんて言ってないぞ?
…で、これがなんだ?」
「いや…出来ればそれを頂けないかな、って…」
「ハア…?」
今までの彼の反応の事を考えて低姿勢で懇願すれば
激情する事なく何かを考える様にその南京錠を見つめる。
そして何かを思い付いたのか
にやりと笑うとその南京錠をポケットに戻した。
その笑みにマオは思わず静かに後退る。
「じゃあよ、条件付きだ」
「条件?」
「オレのマイブラザーの相手になる事だ。簡単な事だろ?」
退いたマオを追い詰めるよう顔をグッと近づける。
何か他に悪い事を企んでいると思っていた彼女は
その言葉に呆然としながら瞬きをした。
マイブラザーというのは散々言っている
彼のロボットの事であろう。
「相手…っていうのは?」
「地上戦に改良したエルガンダーの戦闘相手だ。
あのデカいやつと仮面のやつはいねえしマネーラは論外だ」
「残ったのが…わたしってこと?」
「そうだ。他にまともに話せる奴がいねえしな。
コレが欲しいなら素直に承諾するよな?」
南京錠のいれたポケットを指さしながらそう言うと
マオは少々悩みつつもそのまま頷く。
それを見たミスターLは彼女の手が扉から退かれたのを見るなり
そのまま扉を閉め、部屋に戻ってしまった。
「……」
彼女の答えに何も言わずに戻ったという事は、
時間が経てばまたあちらから連絡が来るという事だろうか。
しかし探していたアイテムの一つが彼の手にあるという情報は
彼女の現状の進み具合からすればかなり朗報だ。
短くも長く感じたその会話に小さくため息をつくと
自室に帰ってしまったマネーラの部屋に向かい、彼女も戻った。
…………………………………
部屋の中に入るとふわ、と紅茶の良い香りがする。
きっとお茶を飲んで落ち着いているのだろう。
部屋の奥へと進んで行けばベランダの扉が開いており、
そこにはカップを手に外を眺めるマネーラが
暗黒城の暗い空を眺めていた。
「あんな奴と何の話してたのよ」
「聞いてみたんだ、カギの事。
なんかミスターLも持ってたみたいで…」
「ハァ?なんでよりによってアイツなのよ」
「わからない…でもさ…。
やっぱりこんな感じで偶然を待つしかないのかなあ」
呆れる様にベランダの外を眺めると、
青の混じった黒の空に禍々しくうごめく
次元のあなが大きく見える。
「仕方なく望んだこととはいえ、悠長に待ってたら
記憶が集まる前に世界無くなっちゃうわね」
「…そうなっちゃったらもう仕方ないよ。
新しい世界で、新しく生きるから」
「マオが良いならいいけどさぁ…」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
+??+
―ワタクシが、あの方の代わりになれたなら…そう思います…
その言葉がひたすら繰り返される。
ナスタシアの言うあの方、彼女は誰にでもなれない。
彼女は彼女だけの存在なのだ。
「…しかし」
今、何を思って自分はこんな所にいるのだろう。
彼女がその言葉を発したからだろうか。
目の前に広がるそこはかつて故郷だった場所。
人々は離れ、家々は崩れ、地は荒れ、緑は枯れ果てている。
「……」
そんな虚空の上には黒いあながぽっかりと開いている。
己が拓いた、徐々に広がる破滅へと導く鍵穴。
枯れた風すらも吹かない空間で
白いコートを靡かせながらその奥へと進む。
その先には他の住宅より酷く崩壊した家があった。
―ガチャ
自身の手では触れず、魔法の力で扉を開く。
人の手なく開いた扉は老朽化で悲鳴を上げており
朽ちた木製の内装が彼を歓迎した。
自然の力か、野蛮な輩か野生の生き物たちが荒らしたのか。
人が過ごしていた形跡が所々崩れている。
「—…」
ふと懐かしい名前を呼ぶ。
しかしその声に答える者は誰もいない。
唯一返事をしたのは
われた窓の外から聞こえる鳥の囀りぐらいだろう。
もはや何の部屋だったのかすらもわからない空間を通り過ぎ、
より一層崩壊具合の激しい場所に移動する。
そこにはボロボロの木々と本が崩れ落ちているが
これは本来の姿が何だったのかは明白なものたちだ。
瓦礫から覗く本を適当に拾い上げ
埃を払いながらパラパラとページをめくれば
人間の事や自然の生き物、魔法や御伽話など。
それはどうやら図鑑のようで、
様々な生態や記録が書き記されていた。
―バサッ
本を閉じると再び瓦礫を軽く払いのけ、
山積みになった本を更に探る。
中には持っただけで崩れ落ちるものもあれば
ページを虫に食われ解読不能なものもあって。
その中から一つ、この瓦礫の中もあって汚れてはいたが
他のと比べるとそこまで傷付いていない本を取り出す。
「…懐かしいものだ」
その本は彼の記憶の中に深く刻まれたものだった。
【旅をする少女】
中身はごく普通の村娘が異世界へと飛び込み
そんな世界で沢山の出会いに触れ、成長していく村娘の物語。
要は有名なアリスの物語をリスペクトしたような
よくあるファンタジーな創作物だ。
タイトルは白い背景に桃色の文字で書かれていて、
子供向けの絵本の様な表紙だが、
挿絵のない文字のみのちゃんとした小説である。
「…ああ」
これは彼女が好きだった物語の一つだった。
思えば、こんな安易なタイトルといい内容といい
どこにでもありふれてそうな内容なのだが
きっとこの王道まっしぐらな展開が
純粋な彼女の心を掴んだのであろう。
忘れていなかったらしい優しい笑みを思わず零す。
中身のページも汚れてはいたが脆い様子はない。
じっくりとその内容を改めて認識しようと
彼はただその場に佇んでいた。
「…ん?」
ふとページから視線をそらした先に何かを見つける。
それはかつてベッドがあった場所だろうか。
被されている布団は無残に裂かれ、
中の羽が周囲に散らばっている。
その汚れた白い羽の中に、光るものが見えたのだ。
本に付いていた栞紐をページに挟むと
そのままベッドの方へ近付き、ソレを確認する。
羽の束の方へと杖を向け集中させる。
その対象をゆっくりと持ち上げるように浮遊させると
ノワールも見た事のある形が視界に映った。
「これは…」
それは白い模様の入った水色のカギと青の南京錠だったのだ。
マオが探し、ナスタシアから報告され、
ノワールが調べても何もわからなかったアイテム達。
目の前のそれは、過去にマオが一度見せてきた
オレンジの鍵とほぼ同じ形と雰囲気のものだった。
"こうして探す事自体が間違いなんじゃないかって"
"今まで見つけてきたヤツは偶然見つけたモノだったのよ"
あの大広間でマオとマネーラが話していた言葉を思い出す。
彼女達の言葉のみで構築された鍵の情報だったが
実際にその曖昧な推測が
鍵を求めていない彼の目の前で実現されていたのだ。
手を差し出すとその下にふわりと揺らぐ鍵と南京錠が落ちる。
金属の重みを感じ自身の元へとその手を戻すと
改めてその鍵と南京錠を観察した。
「…確かに、ただの器具ではなさそうだな」
静寂とした空間にカチャリと擦れる音がする。
マネーラ・ナスタシア・ドドンタスなどと
環境は違えどマオに関わった者に与えられたアイテム。
本来ならば計画には不要の金属ゴミになるところだが
その手から感じる僅かな魔力、そしてマオとの関連性に
しばらくその場で何かを考える。
そしてずっと手にしていた小説を
先程の羽の上へと静かに置くと
バサリと白いマントをなびかせた。
「…否。今はヨはヨのなすべき事をやり遂げるのみでワ~ル!」
鍵と南京錠を懐に入れると
廃屋に迷い込んだ"男"から"執行人"の姿に戻し、
そのまま移動魔法でその場から消えてしまった。
№59 導き
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