№51 めくりフェアリン
夢小説設定
少女達の名前を。勇者側はひらがなカタカナ漢字問わず、
伯爵側はカタカナだとより楽しめます。
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+暗黒城+
「じゃあアタシ達は上の方見ておくわね~」
「ありがとうございます。助かります」
マネーラとマオは再び二人で城内を散策する事になるも
ナスタシアの手伝いをする事に変わりはなく、
やる事は本来の目的のモノと身を隠す部下達の捜索で。
籠城していたトゲノコやカメックを無事に洗脳させた結果、
ナスタシア側の人手不足が解消されたこともあって
二人は彼女から離れた場所で行動を移していた。
「改めて見るとま~刺激的よねぇ」
「なにが?」
「ナっちゃんのアレ!バチバチ~って!」
「ああ…」
「アレであの勇者どもをまとめてやっちゃえば早そうなのにさ」
「そうなんだけど…
あの部下達と違ってあまり効かないんだって」
「え?なんでわかるのよ」
「伯爵様がそんな事言ってたから…」
「ふぅ~ん…まあ、あの雑魚たちと比べたらそうよね」
それは実際に対峙したマオも納得できてしまう言葉だった。
魔王の部下とはいえ
所詮は"部下"という肩書に似つかわしい実力。
そんな魔王と肩を並べて応戦していた黒髪の少女や、
その少女以上に能力の高い桃色の姫とヒゲの勇者と比べれば
一戦を交えただけでもわかる天と地の差だろう。
そんな会話をかわしつつ、二人は探索を続けていた。
まるでかくれんぼの鬼のように
声をかけながら覗き込むマネーラに
マオは思わず苦笑を浮かべながら歩みを進める。
「…!」
ふと何かを感じ取った気配に足を止め周囲を見渡せば
丁度向けた目線の先の空間がジワリと滲んだ。
「サリュ~!マオ♪」
「ディメーン…」
予想通りだったのか、
マオはさほど驚くような反応は見せず。
ただにこやかに声をかけるディメーンに答えれば
流石に気付いたマネーラも振り返り、彼らに近付く。
「何のご用?」
「んん~散歩?」
「はあ…?」
「だって次は伯爵サマが用意した刺客がいるらしいからねぇ」
例の男。
ノワールがそうナスタシアに告げていた謎の人物。
「マネーラが言ってた、緑のヒゲ男…?」
「緑?そうなのかい?」
「アタシはナっちゃんそう聞いたわよ」
「用意周到だねえ。
まるで僕たちが負ける事を見越したみたいにさ」
「なによそれ…」
そのへらりとした声に思わず言葉が詰まる。
勇者と直々に対峙できる最後の伯爵ズでもあったディメーンと
マオの戻ってきた敗北姿を見た時も
ノワールは動揺も怒気も見せる事なく、
いつもの冷静な対応で次の手段を下していた。
彼の性格上ああいう態度になっているのかもしれないが
最後の砦と同様の立場と思い込んでいたマオはどこか複雑で。
連続の敗北から既に期待されていなかったのか、
彼なりに再び出動させるために奮起させようとしているのか。
「まあ、あのヨゲン書自体も複雑らしいからさ。
備えてた策を出さざるを得ない状況になっただけかもよ」
「それが例の…緑のヒゲ男って事なの?」
「さあ~?
僕は予言者でも執行人でもないから、詳しい事はさっぱりさ」
「妙に鋭い所あるのに肝心な所で使えないわね…」
呆れたように睨みつけるもディメーンはただ笑みを浮かべる。
それを見たマネーラはそのまま廊下を歩き探索を再開すると
彼女の後姿を見てマオは彼の方を見た。
「そういえば…!さっき本のカギ、開いたよ!」
「へえ!何か変わった事は?」
「短くてまだわからないけど、夢みたいなの見たんだ。
誰かの目線になっているような…」
「ふうん…」
「新しいページにも進んでね…だから
これを繰り返していけばきっと何か真実がわかるかもって」
本を取り出し、例のページを開く。
共に大樹の元で見たものではない新しい絵柄に
ディメーンも思わず食い入るように目線を向けた。
そしてまたページを進めるとくぼみに収まった黄色の南京錠。
ナスタシアと離れた後に
タイミングを見て組み合わせていたのだろう、
角度によって輝くハート型の南京錠も静かに見つめる。
「だから今はナスタシアの手伝いをしながら
もう一回お城の中を探索してみようって状態なんだけど…」
「…ふんふん。なるほどねえ」
そんな反応に首をかしげるも
ディメーンは構わず一歩後ろへ下がる。
マオを見下ろすように高く浮上すれば
それを追うように彼女も見上げた。
「ディメーンもどうかなって…思ったけど、難しそうかな」
「ん~嬉しいお誘いだけど、ちょっと忙しくて」
「何か作戦でもあるの?」
「作戦…うん、そうだねえ。伯爵が僕たちに隠していたように、
僕もコッソリいい案を模索してみようかな~って」
申し訳なさそうに笑みを浮かべるも、
その視線の先にいるマオはどこか納得したように頷く。
「いいと思うよ。表に出さない作戦って、なんかかっこいいし」
「ん~?そうかい?」
「うん。相手の不意をつく事は卑怯かもしれないけど…
みんなの望む新しいセカイの為に、
やり遂げなくちゃいけないから」
その瞳は真っすぐ輝いていた。
ディメーンの知る静かだった彼女から離れるような姿に
何かを思い出す様に表情を和らげ、ゆっくりと頷いた。
「それなら張りきって頑張ってみようかな~?」
「あはは。期待してるね」
「んっふっふ!メルシ~♪」
お互い微笑みながら言葉を交わせば
ディメーンは上機嫌な様子のまま移動魔法で立ち去った。
一気に静まり返った廊下に一息つき、視線を下へと降ろせば
丁度その目線の先にマネーラの姿が映る。
「…?」
変わらず散策をしていたが、何かに気付いたのか
廊下の突き当り部分にある大きな両開きの扉の方へと移動する。
マオもマネーラの居る場所へと移動すれば
彼女が感じ取ったものだろう、ある音が微かに耳に入った。
「…何の音?」
いつからかこの城から機械の音が響くようになっていた。
その追加された音に気付いたのは丁度出動から帰ってきた後で、
間近に聞こえるものではない、遠くから聞こえる機械音。
電子音というよりは何かを組み立てているのか
打ち込んだり削ったりと、様々な金属音の方が近いその音。
「ねえマネーラ…」
「この音よね?最近うるさくて仕方なかったんだけど…」
しかし今聞こえる音は組み立てるような作業音よりは
完成した何かを起動するような、動かしているような音。
城に待機していたマネーラは
その機械音を一部始終聞こえていたらしく
そんな聞き覚えのある音にうんざりとした様子を見せていた。
「明らかにこの外から聞こえるわ」
「じゃあこの音の正体…」
「あの雑魚部下の誰なのかかは知らないけど!
無許可で騒音起こした苦情を入れてやらないとねえ!」
怒ったようなしかしどこか楽しそうな表情を見せるなり
目の前の大きな扉を両手で開こうとする。
それを見たマオも応戦するように片方の扉に身を置くと
マネーラも反対側の扉に移動し、同時に扉を開いた。
………………………
「…はッ!?」
「なに…これ!?」
そこは暗黒城の屋上であろうか。
屋根もない大きく広がり胸壁に囲まれた内郭。
そんなだだっ広い敷地を贅沢に使って設置される巨大な機械が
彼女達の目の前にあったのだ。
台座が用意され地面に接さないように配置されたソレ。
よく目を凝らして見れば見る程不思議な構造をしており
装飾らしき緑の物体を飾った本体であろう大きな楕円型の球体。
その本体の真下、丁度地面に接していない場所に
ジェットエンジンらしきものも見える。
既に無機質な暗黒城と不安になりそうな世界であったのに
更に世界観が狂いそうな物体に
思わずまばたきを繰り返してしまう。
しかし今まで聞こえていた機械音の正体を目の当たりにし
フォルムはどうであれパーツ的に
ロケットにも見えなくもないソレへと
マネーラは恐れる事なくズカズカと近付く。
「ちょっとお!アンタ何してるのよ!!」
機械音に負けないように声を張り上げるも
目の前の機械自体に変化は起きる事はなく。
ムス、と眉をひそめたマネーラがもう一度深呼吸をした瞬間、
目の前の機械から耳をつんざく様な高い電子音が響いた。
—キィィンッ
「うっ…るさっ!」
その高音の後にボスボスと何かを叩く様な音が聞こえる。
籠って聞こえるその音を逃さないように耳を澄ませていれば
ゴホン、と機械の主であろう人物の声が聞こえた。
「ハン!何かと思えば!
こっぴどくやられた惨めな奴らじゃないか!」
「ハァ!?」
マイク越しなのだろう、
声量もあるがノイズかかった声色が響いた。
その声は以前にどこかできいたことがある。
しかしその時に聞いた声よりも少し低く凄みのある声色だ。
その応えに案の定
感情を現すマネーラの背後で首をかしげていれば
緑の装飾部分にある扉が開き、そこから声の主が現れた。
「み、緑の…男…」
やはりその姿もマオの記憶にあるものだった。
それは欠けた記憶ではなく、
ここに来てから追加された新鮮なものだ。
茶髪とふさふさのヒゲに緑の帽子。
しかし記憶の中の姿にある共通点はそこまでで、
彼女の中の記憶では紺色のツナギを着ていたが
目の前で見下ろす彼の姿は全身が黒色だ。
緑の帽子には"L"の鏡文字が刻印されており
顔にも黒い覆面をつけ、そこから覗く瞳は
どこか赤く見えるのが遠くからでもよくわかった。
既に見下ろす形なのに
更に顔を上へと向けながら視線を向ければ
まじまじとマオとマネーラの姿を眺める。
硬直し睨みつける彼女達を見て、
緑のヒゲ男は嘲笑するように口角を上げた。
「お~お~!コレが噂の負け犬どもか!
噂通り弱そうだし、オレの嫌いな赤色もいやがる!」
「挨拶もなしに失礼ね!誰よアンタ!」
「はあ?あの伯爵から聞いていないのかあ?」
怒鳴りつけるマネーラを気に留める事なく
緑のヒゲ男は首をかしげる。
ディメーンとはまた違うお道化るような態度に
あまり気が長い方ではないマネーラは
わかりやすく眉をひそめた。
「その機械は…あなたが造ったの?」
「あん?ああ、こいつはオレのマイブラザーさ!」
「まい…?」
「お前達の尻拭いがデビュー戦なのが気に食わないがな。
大人しく指でもくわえて待ってな!
いい手土産持って帰ってやるよ!」
緑のヒゲ男は指をさしながら
そう一方的に彼女達へ宣言するや否や
二人の反応を見る事なく背を向け、
機械の中へと戻ってしまう。
「うわっ…!」
マネーラが思わず前に出て問い詰めようとすれば
そのロケットのジェットエンジンから突然火が吹き始め、
同時に突風が二人を襲う。
どうやらその火の正体はターボジェットエンジンだったらしく、
踏ん張りながら機械の方を見れば弾ける火花と共に熱が伝わり
猛烈な風が熱風に変わって彼女達の動きを止めていた。
「浮いてる…!?」
そしてそのままゆっくりと機械が浮上する。
速度も徐々に上がればまるでヘリコプターのように一度滞空し、
更に上空へと勢いよく飛んで行ってしまった。
「ちょ…待ちなさいよーーっ!」
真っ黒の闇の中で小さな粒となって消えていく機体を眺め
風が止み身動きが取れるようになったマネーラは
胸壁へと駆け寄るとしがみ付き、空を睨みつけた。
勇者Side▷