№49 ギブミー"キー"!
夢小説設定
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+暗黒城+
「…って事だし!」
マオが本を戻したのを見て
マネーラがその場で立ち上がる。
意気込むように両手のひらを弾かせると深呼吸をした。
「ある意味謹慎中みたいな感じだから~この城内で…」
「でも、もうお城の中はないかもしれないよ」
「え?なんでよ」
「マネーラが頑張ってくれてた時に
わたしもお城探索してたけど…
例の部下達が隠れてるだけで、何も見つからなくて」
彼女の声に反応して見下ろせば俯くマオが映る。
顔を上げお互いに視線が合えば彼女は苦笑を浮かべるも
マネーラは納得できてない様子で
軽く首を傾げながら小さく唸った。
「でもぉ~マオの部屋で鍵を見つけた時って、
本当の最初は、何もなかったんでしょ?」
「うん…」
「じゃあ絶対無いだなんて確証ないじゃない!
マオの時みたいに、またどこかで変化が起きてるかもよ?」
マネーラの表情と声色は依然として明るく、前向きなままだ。
その変化は数あるうちの二つのみだが、
確かに彼女の言う通りだ。
命令で向かった初めての場所にたまたま立ち寄った場所。
それらの関連性はなにも掴めていないが、
まるで鍵と南京錠に
導かれているように見つけているのは事実。
「そんでもって今回はアタシもいるんだから
探せる範囲も増えるし!」
「そう、だね。うん!お願いしてもいい?」
「勿論じゃない!ついでにアタシもその部下の処理とやらで
この溜まったストレスぶちまけてやるんだから!」
「あはは…それはほどほどにね」
マネーラの言葉にマオが笑い、釣られて彼女も笑った。
「…っ!」
そして扉へと向かうマネーラを追うように
立ち上がったマオだったが
彼女の方へと足を動かしたとき、一瞬全身に衝撃が走った。
声を上げたり倒れこむ程のものでもない、
ピリっと走る小さな痛み。
まるで電気が走った様な感覚に自身の両手を見つめるが
特に異変は起きておらず、握っても開いても平常のままで。
「…?マオ~どうしたのよ」
マオが来ない事に気付いたマネーラが
扉を開いたまま彼女の方を見て声をあげる。
大げさな反応を見せなかった事もあってか
マオの状態には気付いてないようだった。
「ううん、なんでもない!」
初めてあのような激しい戦闘をした
筋肉痛のようなものだろう。
普段の城内での過ごし方を考えれば
悲鳴をあげるのも当然だ。
そう受け止めたマオは特に気にする事なく
そのままマネーラの元へと駆け寄った。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「あ!いたーっ!」
「?…貴方たちですか」
わずかな壁の模様の違いなどを目印とし
相変わらずの果てしない黒い廊下を走っていれば
見覚えのある人影を見つける。
黒の背景でより映える鮮やかな配色の彼女、
ナスタシアはマネーラの声にゆっくりと振り向いていた。
「なにをそんなに慌てて…何か起こったのですか?」
「いやっ…何も起こってはないんだけど」
「だいたいマオは勇者達と戦ったあとでしょう?
伯爵様の足を引っ張らないよう、
もう少し自身を労りなさい。」
「ご…ごめんなさい」
話を切り出す前にナスタシアの説教が始まってしまう。
しかしその彼女の言葉も紛れもない事実で、
素直にお叱りを受けたマオは申し訳なさそうに俯いた。
「まあまあ~無事に帰ってこれただけいいじゃない?」
「はあ…そうですが。ところで、何の用ですか?」
「ナっちゃんのお手伝いと、ついでにお宝探し!」
「…なるほど」
そんなナスタシアの表情は呆れている方に近かった。
何やら既視感のある流れに宝探しというワード、
そして同行するマオを見て察したのだろう。
そう考えればお手伝いの方がついでな気もするが、
せっかくならとマネーラの言葉に素直に頷いた。
「お宝さがしというのは、例の本に関わる事ですか?」
「あら?知ってる感じ?」
「うん。マネーラがいないときに聞いたの。
文字を訳してくれたのもナスタシアで…あ、そうだ」
思い出したように口に出しながら腰の本を手に取る。
そのまま本を開きナスタシアの方へ向けようとすれば
目の前の彼女も何やら懐を漁り、何かを取り出していた。
ナスタシアの握られた手が開いた時、
マオとマネーラが激しく反応した。
「それ…!!」
「ええ。緑のヒゲを捕らえた後に見つけたものです」
その手の中には見覚えのある形の南京錠。
白い繊維が張り巡らされて輝く黄色をしており
ナスタシアの肌の色でより際立つそれを思わず凝視する。
「緑のヒゲって何よ…」
「ちなみにどこで見つけたの?」
「マオと別れたあの後でしたから、この城内ですね。
落とし物なのか…どこから入り込んだかはわかりませんわ」
「そうなんだ…」
「…うろ覚えですが、
その本に似たようなものありませんでした?」
「うん…うん!あったよ!
でね…また新しいページが開いたんだ!」
半ば興奮するようにマオも握りしめる本を差し出す。
開かれたページには先程マネーラと確認した新しい絵柄の所だ。
茨で覆われ、それに被さるように見れる何かの生き物。
「このページはどうやって?」
「カギと南京錠をこの本に組み合わせたら…
こうなったって感じ」
「そうそう!
ピカーって光って、マオは何か見えてたんだよね?」
「うん…誰かの夢みたいな。変な感じの」
心配そうに視線を向けるマネーラに釣られて
ナスタシアも見つめる。
彼女の視線は心配というよりは疑問の方が強いが
向けられたマオの答えを聞くなりすぐに本へと戻した。
「他に…異変は?」
「特にないかな…でも多分やっと進めた感じだから、
もう少し様子見てみたいかも」
「…わかりました」
危険性が一つでもあればどんな状況であれ手放す、と
ノワールとナスタシアにはそう伝えてある。
それを理解したうえでそう伝えれば、
ナスタシアは静かに頷くと差し出された本を手に取り、
指先で文字の関連性を探ろうとページに手を置いた。
「これはワタクシが解読しておきます。
その間にあの広間に籠城する部下共を何とかしてください」
「あの広間ぁ?」
「ずっと付いて来てた…ハンマーのヒト達は?」
「我々が圧されているこの状況です。シツケを終えた者達は
勇者の進行阻止へと出撃させていますので」
「なるほどねぇ」
ナスタシアの元へたどり着いた時は数十人ほどいたはずだが
確かに現状は片手で数えられるほどの
人員しかいなさそうだった。
彼女が指す方へと顔を向けてみれば
その数人の部下達がいる。
扉のない広間の中へと入るための
入口の壁を盾にし内部を伺っており
その入り口からは何やら魔法らしき光が飛び出して見える。
きっとその内部である広間から抵抗しているのだろう。
彼女の言う籠城とはこの事だ。
「どこに隠れていたのか…
どうやら魔法を扱える者も混じっていたようで」
「魔王の部下ってこう…多彩だね」
「ええ。ハンマーの者とは違う武装する部下もいます。
くれぐれも気を付けて」
「アタシ達を誰だと思ってるのよ?
伯爵様に認められたアタシ達なら
雑魚なんてちょちょいのチョイよ!」
困惑するマオに対してマネーラは何やら好戦的に反応していて。
その様子を見たナスタシアは
信頼と呆れも混じるような表情を見せると
二人はそのまま籠城しているという広間へと近付いた。
…………………
「ビバ!伯爵!大人しくワレワレに従いなさい!」
「我らの主は大魔王クッパ様のみ!
クッパ様を騙したお前達など誰が従うものかーっ!」
抵抗する声と共に魔法が飛び交う。
マネーラはそれを軽々と避けつつ接近し、
壁を盾にして身を隠す部下達より前に出るなり
堂々と入口に立った。
「この城に足を踏み入れた時点で
アンタ達はもう伯爵様の手の下!
変に抵抗して痛い目見たくないなら
さっさと投降しなさぁい」
「ふざけるな!
誰があのいけ好かないキザ野郎に服するものか!」
「ハァ!?今なんつったコラぁッ!?」
「ま、マネーラ…!」
部下の抵抗の言葉に激情する彼女を抑えつつ
マオも身を隠しながら拘束するために鋼線を解く。
依然してマネーラは身を隠そうとせず、
度々飛び交う魔法やハンマーを避けながら
怒りの姿を見せつけていた。
「ゴチャゴチャしつこんじゃぁっ!!」
マオの声に応える事はなく、
そのまま彼女の周囲に赤く輝く六角形の宝石を召喚させるなり
振りかぶった腕が広間に向けられた瞬間、
その宝石達が順々と独りでに発射されていった。
「うわああ!?」
「なんだ!?」
勿論内部からは悲鳴が響く。
その反応からしてマオが来るまでは
この人手の少なさと籠城効果で
これといった攻撃を食らっていなかったのだろう。
「マネーラ!手加減…」
「だいじょおぶよ!
アタシはちゃんと調節できるオンナだから♡」
にこりと微笑むその表情は
先程まで激情していた姿とは思えないもので。
安心か困惑か、マオも釣られて笑みを見せれば
反抗の声から呻き声に変わった広間へと目線を向ける。
「さぁてさてさて!誰から忠誠を誓ってもらおうかしらぁ~」
温度差が感じられる演技かかった声を響かせ
軽快に広間へと向かえば
糸を解き終わったマオも後を追う。
あの宝石に直撃したのだろう。
殆どの部下達が目を回してふらついていたり気絶していたりと
どう見てもこれ以上抵抗の出来ない状態なのはすぐにわかった。
こちら側の部下達が広間から引きずる姿を見て
マネーラは他に隠れていないか隅々まで確認をし始める。
「ふんッ…!」
様子を見ていたマオも糸を絡ませ何体かまとめて縛り上げると
部下達と同じようにズルズルと引っ張り
広間の外へと引きずり出す。
「ま~…すごい成長だこと」
その姿は以前までのマオでは考えられない光景だった。
ほんの少し走りこんだり
激しく体を動かすだけで息を切らしていたのに
マネーラが不在中の時か、ディメーンと出撃した際か。
知らぬうちに成長している彼女を見て
マネーラは思わず声を漏らす。
鎧装備のノコノコも混じっていたのもあり
金属の擦れる音も響かせながらも
なんとか籠城していた魔王の部下達を引きずり出す。
勿論、糸は解く事なく抵抗する部下達全員を縛り付け終わると
両手を叩きながら一息をついた。
「お見事~流石!そういう道具の使い方はアタシ以上ね」
「ありがとう。私も色々頑張っててさ」
「頑張るの良いけどぉ…
あの脳みそ筋肉みたいにならないでよ?」
「あはは…」
「お、おい!これを解けぇっ!」
そんな会話中、
気絶している者もいる中流石に目を覚ました者も現れ
彼女達の後ろでわめきだしたがマネーラは気にする事なく。
チラ見しそうになったマオを引き留めると
解読を進めてくれているだろうナスタシアの方へと向かった。
…………………
「ナっちゃ~ん、終わったわよ~」
「…早かったですね。ご苦労様です」
「あんなの威勢が良いだけのへっぴり腰集団よ」
ナスタシアの所へ戻れば例の本の解読を終えていたのか
以前の巨人やハートの絵柄のページを眺めており、
二人が近付くのを感じて本から目線をあげると
上機嫌そうなマネーラと苦笑を浮かべるマオと目が合う。
「本は…」
「ええ。以前同様、ワタクシなりの解釈になりますが」
「さっすがぁ!早く聞かせてよ~!」
「落ち着きなさい…」
この本の持ち主はマオのはずなのだが
何故か目を輝かせながら前のめりになるマネーラに呆れるも
軽くため息をついたのち、咳払いをした。
「新しいページの文章は【カサカサと蠢く音】…ですかね」
「カサカサ…?」
「うごめくぅ?」
「なので、前のページを確認していたのですが…
やはりまだどういう内容かは理解できませんね」
それは巨人のページにもあった文章と似た表現だった。
動きの擬声語、動き方、その音。
「【夢の外から忍び寄る音がする】…
【ドンドンと揺れる音】…【カサカサと蠢く音】…」
「はあ?意味わかんない…色んな音の表現する物語?」
「それにしては…凝りすぎた演出かと」
「そうよねぇ~読むにはどこにあるかわからない道具必要だし、
揃ったと思えばいきなり光って夢も見るぐらいだし」
「…」
描かれている絵柄の雰囲気と会った表現ではあるものの
あの短時間の夢の中で巨人も茨も現れていない。
確かに実際にマオが見た光景とは関連性がなさすぎる。
「とりあえず進めてみるしか、って感じだよね」
「そうですね…」
「おい…!早くしろ…!」
三人が本を囲って話している背後から声が響く。
ふとそちらの方へ視線を向けてみれば、
いつの間にか意識を取り戻したクリボーが
マオの縛った糸からいつの間にか抜け出していたのだ。
声の主はまとめ縛られたまま部下達の一人のトゲノコで、
その体格で抜け出せた
クリボーが何とかしようとしていた最中だ。
しかし痺れを切らして声を荒げてしまったせいで
相談する彼女達の耳へと入ってしまい
視線を向けられたトゲノコとクリボーはピシャリと硬直する。
「失礼…先に貴方たちの対応をすべきでしたね」
本を半ば押し付けるようにマオへと返すと
細い靴音を立てながら捕らえた部下達の元へと接近する。
「くっくそぉ…!」
「あ~~ららぁ!マオ~」
それを見て諦めたクリボーがその場から逃げようとするも
マネーラの声に応えるようマオは黙ったまま咄嗟に糸を放つ。
一直線に飛ぶ糸は綺麗にクリボーへと到達し
その場で手を動かすとそのままクリボーの体に糸が巻き付く。
「ぐへえっ!」
そして突然体の自由を奪われたクリボーは
逃げた勢いのまま、前から倒れてしまった。
それを見ていたナスタシアは進む方角を捕らわれ集団から
一人逃げようとし孤立したクリボーの元へと変える。
「大丈夫です。懐かしい仲間が出迎えてくれますから」
「あばばばば~~~っ!」
彼女の後ろ姿でよく見えないが
その悲鳴とバチバチと光る赤い光を見るなり
術をかけているのだろう。
マネーラとマオはじっとその光景を眺めて待機した。
勇者Side▷