№54 スイートビター
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+大宇宙+
「だあーっ!!もう!!無駄に広い!!
無駄に長いあああいっ!!」
「そりゃ宇宙だからな」
そう声を上げる神菜だが全体に広がる事もなく
密封空間のヘルメット内だけに虚しく響くだけで。
そのおかげか突然の大声に耳を塞がずに済んだマリオは
それでも呆れた様子で彼女を軽く流していた。
あのワープの渦の中に入った後、
タマラをおいて進んだ一行はふた手に分かれることになり、
今この場には神菜とマリオ、
アンナにトるナゲール、バーリやーのメンバーだ。
わかれた理由も改めて味わう
この広すぎる宇宙空間という事もあったが、
一行がワープで飛ばされた場所から頭上側と足元側に
また違う青色のワープの歪みを発生していたのだ。
そしてルートを知っている案内人が居ない以上
怪しい場所は全て確認するしかない状況でもあったため、
神菜とマリオは足元側に、
ピーチとクッパは頭上側の渦へ向かう事になったのだ。
しかし神菜達が向かった先には
コインが散らばる空間しかなく、
とりあえずそのコインを全部回収し戻って来たところだ。
《でもココはまだ綺麗だっほ~
岩石も惑星の塵もなくて周りが良く見えるっほ!》
《…確かにそうね。ただ…それ以外のモノは多い気がするわ》
「ていうか…なんかがあっち側の方が多くないか?
その障害物?っていうの」
今までの宇宙遊泳と比べると比較的快適だったが
見上げていたマリオの視線を追って神菜達もその場で見上げる。
その先には箱型の宇宙物体、ヘドロンの存在しており
遠くからでもわかる程に大群として密集していたのだ。
危害を与えてくるわけではないが
周辺に浮遊していた岩石と同じようなもので
進行の妨げになっていることに変わりはない。
しかしそんなヘドロンは今彼らがいる場所には1体しかおらず
それと比べれば頭上側の方の密集度はかなりある。
万遍に散らばるものではないかもしれないが
あからさまな偏り方に違和感を覚える程だ。
《なるほど~!障害が多いほど
何かがあるかもしれない!ていうやつどえーす?》
「まあそんな感じだな」
マリオがトるナゲールの言葉に頷けば
どこか楽し気にぴょんぴょんとその場で飛び跳ねる。
「でもあそこはピーチ達が行ったよね?待っとく?」
「いや…ココは宇宙だぞ?
あのワープまでしかない訳がない」
「でもタマラが居ない状態で動き回るの怖いなあ~…」
《そうね…でも道があるなら、慎重に進んでみましょう》
「はぁ~い」
過去の冒険した世界と比べてもあまりにも広すぎる空間に
ほぼ無気力になっていた神菜を無理やり引っ張り出し、
マリオの言っていたヘドロンの大群の先を目指して体を動かした。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
道中に次元ワザを使ってみるもやはり変化は見られず
数の増えたヘドロンの大群をなんとか切り抜ける。
「…あ!隠れワープ!」
その辿り着いた場所にはまるで浮遊する岩石で隠すように
ワープの歪みがそこにあったのだ。
そしてそのワープでまた違うエリアへと飛ばされるも
そこには他の宇宙生物も妨げとなるヘドロンもおらず。
長老の自宅付近にあったような珍しい形状の岩もなければ
何かしらの特異な生物すらも見かけないエリア。
「…?」
すると神菜の視界に見覚えのある色が映り、
ふわりと浮遊するそれを目で追い、勢いよくつかみ取る。
それは折りたたまれた小さな赤色の紙のようなものだった。
しかし紙にしてはツヤが多く感触もつるつるとしており
折りたたまれた内側は赤色ではなく銀色に染まっていて
ぼやけているものの反射で神菜の肌の色が映っている。
《何を拾ったどえーす?》
「これ…ゴミ?」
《スペースデブリってやつっほ~?》
それは手元のものを見て咄嗟に浮かんだ言葉だった。
先端は細くなっており、
その反対側の先端はギザギザの形状をしている。
ギザギザ部分を指で軽くちぎろうとしてみれば
簡単に切れ目が生まれ、そのままツヤのある紙を分裂させる。
「…何かの包装の切れ端っぽいな」
「宇宙にもこういうのあるの?」
「さあ………アレは、あるみたいだが」
マリオの視線が神菜の手元にあるゴミから
彼女の先に見える物体を捉え、瞼を細めながらそれを凝視する。
彼女もその視線に釣られ後ろを振り向けば
その奥には明らかに場違いであろうカラフルな建物があった。
《いえーす!ビンゴどえーっす!!》
「…へ?え!?」
同じように凝視する神菜も
思わずまばたきを繰り返し自身の目を疑うように何度も確認した。
「あれって…コンビニ…?」
《こんびに~?》
それは狙った言葉ではなく確実に無意識に出た言葉で、
その言葉を口にして思わずハッと我に返る。
しかし視界に映る建物は黄色とピンクをメインに配色をした
街中でよく見かけるだろう見慣れた建築物だ。
そんな現代的なものが今この宇宙に存在している。
科学者や探検者が思わず椅子から立ち上がる様な発見であろう。
「宇宙の廃墟…とかじゃなさそうだな」
その状態を見て何故か冷静ながらも近付いたマリオは
コンビニの照明と店舗前で回転する看板を見て呟く。
《とりあえず、中に入ってみましょう》
―ティロリロ~
自動ドアと共に入店のコールがなる。
そしてそのままコンビニ内に足を踏み入れると
どういう原理か、小惑星についた時の様に宇宙の重力が解かれ
そのまま建物の床へと着地した。
「らっしゃいませ~!
閉まってない時はいつでも開いてる
【ティンクル☆マート】へようこそ!」
レジの方から声が聞こえ、そちらへと視線を向ければ
バルーンのような宇宙の住人というよりは
ハザマタウンなどで見るような眼鏡のヒトが立っており、
神菜に向かって爽やかな笑顔を見せる。
そんな彼はマリオ達のような即興性のあるものではなく
ちゃんとした構造の宇宙ヘルメットを装着していた。
そして神菜が気付いてお互いの視線ばバチっと合うと、
そのヒトは突然震えだし、瞳の奥からポロリと雫をこぼした。
「うぇ~んっ寂しかったよ~~!!」
「うえっ!?」
ビクリと反応するも、彼は依然として泣き続けており
涙の水滴がヘルメットの内側に所々付着する。
しかし外せない環境なのもあって
涙を拭うものを手渡せたとしても拭う事自体ができない状況だ。
嗚咽で息を乱す彼を見つめながら
彼らはとりあえず落ち着くのをじっと待った。
「…どう?落ち着いた?」
「ハイ…実はこの店をオープンして
からあなた方が初めてのお客さんなんです!」
「なんで宇宙のど真ん中でやろうと思ったのさ…」
「ウウン…店を出す場所…間違えたかな…」
逆にこの宇宙へどうやって店を建てたのかという
新たな疑問点が浮かび上がるものの
どうしようもない内容にただ苦笑を浮かべるしかなかない。
神菜が彼の様子を見ている間に
その小さなコンビニ内を探索していたのか、
知らぬ間に離れていたマリオが彼女のいる場所へ戻って来た。
手には商品が握られていたが、その表情は苦いもので。
「どうしたの?」
「いや…このコンビニ、チョコしか売ってない」
「え?」
よくよく思えば、このコンビニに入店してから
何かと甘い香りがずっと漂っている。
ピーチから漂うフルーティーやフローラルとは全く違う、
チョコと言われれば納得するスイーツな香り。
きっとその匂いがヘルメットを貫通するのも
目の前の彼の様な密封されたヘルメットではない
謎の便利アイテムと金魚鉢で作り上げた
隙間のある即席ヘルメットなのも原因だろう。
ヘルメットを被りながらスンスンと匂いを嗅げば
どこか申し訳なさそうな表情で彼が声を漏らす。
「当店ではチョコレート食品しか扱ってないコンビニでして…」
《わぁお!スウィ~トだけのお店!》
「それってもうただのチョコ専門店じゃん!」
「確かにな…」
勢い良くツッコミをいれるも
その言葉が突き刺さったのか、彼の瞳が再び潤い出す。
そしてマリオが呆れたようにため息をつくと
既に手にとっていた商品をそのままレジに置いた。
「とりあえず…コレで」
「ハイ!スウィートチョコバーはコイン10枚になります!」
そしてバーコードを読み取り表示された値段を見て
その安さに不思議に思った神菜は
イッパイサイフを取り出しつつも思わず声を漏らす。
「安~…それでいいの?」
「どうせ相手は腹すかした子供なんだ。
何チョコが良いとかなかったし、構わず食うだろ」
チョコバー単体で購入したという事もあってか
袋に入れられる事はなくシールを貼ると彼らに手渡す。
それを受け取ったマリオは改めて
包装紙の成分が書かれているであろう場所を見つめた。
《カカオと~はちみつ~?おいしそうどえーす!》
「な?子供向けだろ?」
《そうだけど…》
それを横目に神菜がコインを10枚支払うと
店員は先程の憂いさを消し去った笑顔をニコリと見せた。
「ありゃ~とやんした~!寂しいから、絶対また来てね~!」
出口へ向かう彼らに対して
まるで仲のいい友達と接するように大きく手を振れば
神菜もそれに応えつつ、コンビニを後にした。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「まったく…また無駄足ではないか!」
「宇宙だもの。仕方がないわ」
その後、先程の場所へ戻るとなんとか全員が合流できたが
不発ばかり引いているクッパの機嫌はあまり良くない。
それを慣れた様子でピーチがなだめ
マリオとが例の"頭にチョとつきおしりにコ"とつく物、
つまりチョコを手に入れたのを伝えると
早速タマラの待っている柱の元へ向かう。
「…お~まだいるよ」
「キュキュ~~~~もうペッコペコだっきゅ…
動けないっきゅ~~~ん!!
ていうか動くのがタルいっきゅ~ん」
マリオに無理やり押し込まれた姿ではあるが
その多少隙間のある状態から見て
本来は飛び出すこと自体は可能なのだろう。
しかし本人がそういう状態というのもあってか
身をよじらせながらそう叫んでいた。
「おい、マリオ」
「ん?」
「例のチョコよこすのだ」
「いいけど、食うなよ?」
「誰が食うか!」
不機嫌が露わになる声色でそう伝えれば
手に持っていた青いチョコバーをクッパへと手渡す。
それを半分ふんだくる様に受け取れば
大きな指で器用に包装を破り、中身を取り出す。
「…大丈夫?」
「まあ…様子を見てみましょう」
珍しく積極的なクッパを不思議そうに見つめていれば
チョコバーを手にタマラの元へと近付く。
「違いがわかるグルメなタマラ様を
こんなお菓子で満足させられると思ってるっきゅか~?
まあせっかくだからいやいや食べてやる~~っ」
―ガッ!
「もギュッ!!?」
《わあお!ダイナミック!!》
「く、クッパ!?」
「あらら…」
近付くクッパに気付いたタマラが大きく口を開けると
その口へ遠慮なくチョコバーを突っ込んだのだ。
しかしそれはまるでマリオがタマラを
柱へねじ込んだ時のような乱暴さ。
思わずえづきそうなほどの勢いに、
様子を見ていたマリオも呆然と顔を引き攣らせる。
タマラの横暴さ、ヘルメットの窮屈感。
そして成果を出せずにただ体力を消耗するだけ宇宙遊泳と
クッパにとってのストレスが爆発しかけていたのだろう。
それをタマラの食事に込めてしまった事が
正解か不正解化は定かではない。
しかしそんなタマラの様子はこれといって異変を見せず
むしろ頬を染めながらもぐもぐと咀嚼を続けていた。
「こ、これは…!?」
そして仰天とした様子を見せると
今度は何かに悶えるよう表情を緩めた。
「舌の上でチョコとナッツが軽やかに、
まろやかに溶け合うっきゅ…
まるで愛し合う二人が奏でる甘い恋のチョコソナタ………
ピュアーなラブ♡アンサンブル~~~!!」
「スウィートチョコバーだけに?」
「……」
エクスタシーを感じるように甘い声を響き渡らせると
クッパもその状態に付いていけず、
思わずふわりと距離を取って後ろに下がる。
「う……う……
う~ま~いっきゅ~!!」
「うおッ!?」
後ろに下がるのとその声が響いたのはほぼ同時だった。
すると突如タマラが穴から抜け出したと思えば
その全身が光り輝き、柱の中心部分へ移動する。
そして真っ白に発光したと思えば
今度はその光が二つに分裂した。
「な、なにが起きているのだ!?」
「あのチョコバー本当に大丈夫だったの!?」
「俺に聞かれても…!」
後ろで様子を見ていた神菜達も流石に驚く。
そしてその光がタマラと形状と同じ形に変形すると
二本の柱にあった穴の中にすぽりとはまった。
―ゴゴゴゴ…
すると空間が揺れ始め
今度こそ柱との間に大きな門が現れる。
そして無事役目を終えたタマラ達は
もう一度門の前に移動すると再び光り輝き、
元の一体の姿に戻った。
「きゅ~ちょっと弾けすぎたっきゅ…」
「かなり物理的に弾けたねえ…」
《扉が…現れた…》
「ゴールは目の前っきゅ!さっレッツラゴーゴ~~~!!」
呆然とするアンナの言葉を遮るように改めて声を上げると
いつもの如くタマラが指揮をとり
大きな扉をゆっくりと開いた。
「あっ!ああ!ちょっと待って!」
「なんだっきゅん!」
「ちょ~っと寄りたい場所があるんだけどさ…」
伯爵Side▷