№23 必要なモノ
夢小説設定
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+サンデールの館+
「どこにも…いないんですが…」
マリオ達はやっと見つけた奥に進む廊下を歩く。
途中にある扉をひたすら開け、部屋を探し回るが
サンデールの姿はどこにも見当たらなかった。
「本当にいるのか?」
《…ピュアハートの存在が感じられない…
でも、多分…こっち…》
さすがのアンナも戸惑いを隠せないのか
部屋を見渡す彼らについて行き同じように飛び回ったり
距離を離さず独自に感じ取ろうと動き回っていた。
そして歩き続けた末にたどり着いた部屋、
やはりそこもやはり変わらない雰囲気だった。
「あれは何かしら?」
何かを見つけたピーチが指をさした。
そこにはいつもマリオが通り際に壊す
コインの出て来るブロックがあるが
その上に奇妙な壺があった。
紫色で何かを模したのか、独特な形状の壺。
「えぇ…?」
「さっきから全部があからさますぎるんだよな」
「でもキノコではないわ。今度は別の何かがあるのかも…」
案の定、マリオと神菜は怪しんで凝視するも
第一発見者であるピーチが率先してそのブロックへ近付く。
そしてつま先を立ててその壺を取ろうと手を差し伸べた。
―ガチャンッ!
「あ?」
「あ」
《あっ!》
「あ、あら…?」
《……》
軽く触れただけで揺れる程の軽さなのか、
不運にも落ちやすい位置で触れてしまったのか、
しかしピーチ表情は困惑した様子で。
だが壺は簡単に揺れ、
そのまま床に落ちると粉々に割れてしまった。
「ああ~~~っ!!」
そして見計らっていたのだろうかと思う程の
バッチリなタイミングで奥の扉が激しく開く。
突然の騒音に警戒したマリオがピーチの腕を引くと
彼の後ろに隠すように移動させ、
神菜も尻込みつつあったものの
その聞き覚えのある声にマリオと並ぶように前に出た。
そんな悲鳴と共に走る音が徐々に近づき、
粉々の壺見るなり改めて小さく悲鳴をあげる。
「割ってしまいましたね…ワタシの大事な大事な壺を…」
「…」
その聞き覚えのある声の主は
先程ダイバンケンに追い掛け回されていたマーネだった。
膝をつきかけらをつまみとってからの震えた声色。
警戒し眉をしかめながら見下ろしていれば
勢いよく立ち上がり、力強い足踏みでマリオへ近付く。
「くぉらワレ!」
「きゃっ…!?」
「ア…!?」
「ワシの壺バランバランやんけ~!?
どないしてけつかるんじゃ~~!!?」
そのままマリオの胸倉に掴みかかり、
今までの可憐さがゼロのような恐ろしい形相で怒鳴りつけた。
マリオもそんな豹変ぶりに思わず固まり
掴んだ胸倉を揺さぶっていたマーネは
そのまま距離を取るように数歩後ろに下がる。
ただ相変わらずのガラの悪い形相だ。
「こら弁償してもらわなあかんな…」
「弁償…?」
「壺のお値段ザッと"1000000マネー"…
きっちり耳を揃えて払ってもらおか~~~~~~~!?」
「ひゃ…!?」
どこかの仙人もびっくりしそうなほどの高額に
神菜は思わず変な声を上げてしまう。
その場にいる全員が驚愕した様子を見せる中、
アンナだけは静かに反応し、マリオの帽子のツバにとまる。
《"マネー"…?そんなものマリオ達は持ってないわ…
"コイン"とは違うものなの…?》
「コインなんちゅうしょーないもんと
一緒にせんといてくれるか~!そんなもんいらんわ~っ!!」
「えぇ…?」
「…ちゅうことは何か?
あんたらマネーは持ってへんってことか~!?」
「ま、まね…」
じりじりと睨みつけるように今度は神菜へと接近すれば
思わずその勢いに流されるように財布を取り出す。
これこそまさにカツアゲの光景だ。
その財布もイッパイサックのように謎に異空間に近い構造だ。
目の前の少女が睨みつけているという事もあり
焦り気味で所持している硬貨を漁る。
しかし今まで手に入れた硬貨は同じ構造のコインのみであり、
それでも何となく"ぽい"もの取り出しマーネに見せるが
彼女の望む"マネー"ではないのか眉間のしわが深くなる。
それを数回繰り返し、さすがにヤバイと察した神菜は
降参と言わんばかりに首を横に振った。
マーネの顔がより険しくなり、
その場で勢いよく片足を地面に叩きつける。
「ほな働いてマネーを稼がんか~~~い!!!
「働く、だあ…?」
「きっちり稼ぐまでシャバの空気は吸えへんからのう…
覚悟しとけや~!!」
「しゃ…しゃば…」
他人の高価なものを壊してしまえば怒られるのも当然だろう。
まるで重犯罪を犯した犯罪者を激しく罵るような勢いだ。
館に来る前にいた囚人らしきヒト、シャバの空気。
彼の言っていた言葉を思い出したのか
ピーチは静かに頷いていた。
そしてマーネは言いたい事を全て言い切ってすっきりしたのか、
マリオ達に数秒背を向けたのち、
スカートをひらりと風に乗せながら体を回転させこちらを向く。
その表情は最初に会った時と同じ穏やかな微笑みだった。
思わずまばたきをし、全員がマーネに注目した。
「マネーは一番上のフロアの発電ルームで稼ぐ事が出来ます。
マネーが1000000貯まったら、
この奥の部屋で返済してくださいね」
「は、はつでんるーむ…?」
「残りのマネー残高も奥の部屋で確認出来ます。
それじゃっ、頑張って下さ~い♪」
「……」
背筋を伸ばし、礼儀正しくお辞儀をする。
そしてそのまま優雅に歩いて奥の部屋に戻って行った。
一行はただその場で立ち去る彼女を眺める事しかできず。
「プロ…だなあ…」
「関心してる場合か」
「ふふ…いえ、ごめんなさい。私が触ろうとしたから…」
「いやいや!あんなところに置いてるのが悪いだけだよ」
「それはそうだが…見事にはめられたな」
「さすがにゼロが3つ以上の借金なんて初めてだけどね…」
「…とりあえず、あいつの行った部屋に行ってみるか」
喧騒で慌ただしかった空気が止んだことに一息つくも
結局来たばかりの空間という事もあって
まずマーネが戻った部屋に向かう事になった。
……………
「いらっしゃいませ。マネーローンへようこそ~!!」
そこにはガラス張りで内側がガードされた受付場があった。
その受付の内側には何故かメイド服ではなく
受付嬢であろうフォーマルな青い制服を着たマーネがいる。
胸元のリボンの位置を整え
部屋の中に入ってきた一行に気付くと新たな笑みを見せれば
先にマリオが率先して受付へと近付いた。
「いつもマネーローンをご利用頂きありがとうございます。
本日はどのようなご用件でしょうか?」
「いや…どこになにがあるか、確認しただけだ」
「さようでございますか、ではとっととおかえり下さい」
営業スマイルのままマーネの声色に気怠さが生まれる。
多少マリオの表情にも感情が現れるも
後ろにいる神菜の方が露骨に呆れた反応を見せていた。
「まるで役者みたいね」
《……》
さすがのピーチも苦笑を浮かべるしかない。
しかし彼女のその言葉を最後に何も語らなくなったのを合図に
マリオはそのまま背を向けて二人に目線を送ると
そのまま部屋の外へと出ていった。
彼を追いかけて廊下に出ると
改めてその空間に何があるのか周囲を見渡した。
《わぁお!ここもなんだかありそうだビン!》
「何が?」
《たくさんの電波…ビンビン感じる…!》
聞く言葉を聞いているのかいないのか
たかぶっていたボムドッカんがぴょんぴょんと跳ねると
一人で二階の方へのぼっていってしまった。
彼らがいるフロアは一階部分で
見上げて見える天井の開いた部分から
ボムドッカんが飛び去った二階へ上れる構造だった。
先程までの長い廊下からは抜けたものの
あの罠部屋が揃っていたフロアの様な
広い場所へと辿り着いていたのだ。
《彼女の言っていた発電ルーム…それを探しましょう》
「ピュアハート探しで労働かあ…」
「目的がはっきりしてるだけマシだろうよ」
マリオがそう宥めるように伝えると
先程壺が置かれていたブロックを伝って二階へあがる。
確かに以前の世界のように
ひたすら険しい山道やあてのない砂漠を歩くよりは
遥かに進みやすい道しるべだ。
労働というのが少々不安なところだが。
神菜とピーチもマリオの様に
ブロックを使い二階へ上がっていく。
二階部分にはマリオはおらずホールクロックが飾られている。
そこから三階へにも続く足場が設置されており
その足場を登り、そこから三階部分を覗き込めば
先に進んでいたマリオが立っていた。
「なにかあった?」
「入れそうな部屋と…ロック付きのだな」
「じゃあ、入れそうなところから見てみましょうか」
そこには三つの扉が並んでおり、
三つ並ぶ真ん中の扉のみ電子パスワードが設置されていたのだ。
だがここに来るまでにパスワードのようなヒントは
一切見かけた事はなかった。
そのまま手始めに三階に上がって
一番最初にあたる扉の部屋の探索を始める。
「うわ…っ」
少し開いた扉の隙間から部屋の空気がムッと伝う。
蒸し暑いような熱気と、何とも言えない匂い。
神菜とピーチは鼻を軽く抑えたが
マリオは構わず扉を開いて中へと入っていく。
入ったその先には沢山の囚人達。
館の外にいた囚人と全く同じ衣服のヒト達だった。
そんな彼らの頭上には電気の塊が溜まったブロック。
天井には電線や配管が張り巡らされており
ブロックから伸びた導線がそれらに流れていくのが
目視でもわかる構造になっている。
そのブロックや彼らは用意された段があり
段の下にもスパークが飛び出すほどの電流が走っている。
囚人達をサボらせないようにしているのだろう、
一定の速度でぐるぐると彼らの足元にスパークが巡回していた。
それを避けつつ、足枷で重い片足を必死に持ち上げ
頭上にあるブロックを叩いていたのだ。
「そ~れ!ピョンピョ~ン!
心をこめてジャンプするのだ~っ!!
マーネ様は暗いのが人参よりも御嫌いだっ!
もっと電気を~~~~~~~~っ!!」
部屋の奥から大きな怒鳴り声が響く。
バシンと力強く鞭で地面を叩き、活を入れている。
そんな彼はブロックをひたすら叩く囚人とは違う衣服を纏う。
きっと彼らの監視員のような役職だろう。
入った時の強烈な匂いはそんな彼らの体臭だったのだ。
換気扇は回っているようだが、正直効果は薄いだろう。
少し同情の視線を向けながら横切り、監視員の所へ行く。
「ねえ、ここが発電ルーム?」
「ああそうだ。
ブロックを叩いて発電すれば、
その分だけマネーを得ることが出来る」
「なるほどな…」
「醜いマネーの亡者よ、お前達もここで働きたいのか?」
「い…イエス?」
戸惑いながらマリオたちの方へ振り向くも
二人ともうん、とシンクロして静かにうなずいた。
―バチン!
「ヒイッ!?」
「ならば空いているブロックを叩くのだ!
心をこめて!気持ちをこめて!
ついでに日頃の鬱憤をこめて…
叩いて叩いて叩きまくれ!!」」
「おや…」
「叩き終わったら俺様の所へ来るがいい、
稼いだマネーをくれてやろう」
緩んだ心の状態に響く鞭の音に悲鳴を上げると
目の前の監視員はその鞭でブロックをさす。
いくつか囚人が使用しているため埋まっていたが
まばらな位置であれば三人分の枠は残ってあった。
マリオはため息をつきながらブロックの元へ移動し
神菜とピーチもその後を追って
空いているブロックの下に付いた。
「よっし!なるべく100以上!稼ぐぞ!」
「おう」
「ええ!」
バラバラに配置になった一行達だったが
黙々と叩き続ける囚人達を横に掛け声を上げ、気合を入れた。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
…そして数分。
「っはあ…」
一番初めに脱落したのはピーチだった。
火照った顔に手うちわで風を送りながら監視員の所へ戻る。
「なんだもう欲しいのか?」
「ごめんなさい。どれぐら頂けるのかしら?」
監視員が管理しているのだろう
背後にあった大きな金庫から
数個の赤い六角形にカットされた宝石を取り出す。
「…4、5…ほら、66マネー。お前の稼いだマネーだ」
「ありがとう」
束になったその赤い宝石をピーチへ手渡す。
ガーネットの様な深みのある透き通った石。
とても綺麗だが、お金というよりかはただの宝石にも見える。
これがマーネの言っていたマネーというものだろうが、
一国の姫である彼女でも見た事も聞いた事のない通貨だ。
66個は66回叩いたからだろうか。
持っていたハンカチで軽く汗をぬぐいながら、
長いブロンドを軽くまとめると未だに続けるマリオ達を見る。
マリオはまだ余裕そうだが、
神菜の叩くスピードが遅くなっているのがわかった。
「ぶはっ…」
丁度彼らに目線を送ったタイミングで力尽きたのか
そのまま段から降りると中腰で息を整える。
「神菜、お疲れ様」
「はあ…お金…」
「お前のは……………84マネーだ。ほらよ」
「だぁ~~100いかなかったか…」
深くため息を付きながらマネーを手渡される。
ピーチがその背中をぽんぽんと優しく撫でると、
神菜は落胆で俯かせた顔を上げた。
「にしても、マリオ全然余裕だな…」
「フフ。彼のジャンプ力は侮れないわよ」
「ですよねえ~」
流石に汗は流れているもののそこまで辛そうな様子ではない。
どこか嬉しそうに微笑むピーチを見て
神菜も少し笑みを浮かべると
マリオが終わるまでゆっくりと休息をとる事にした。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
…更に数分。
神菜は床に座り込んでおり
ピーチはフェアリンたちと会話をしていた時、
力尽きたマリオが息を切らしながら段を降り
彼女達がいる監視員にの元へ近付いた。
「お前のは…221マネーだ」
「うおお!さっすが!」
マネーを手渡されるとやはり怪訝な表情で眺める。
彼も見た事がないものだったのだろう。
手元のマネーを見つめながら彼女達の方を向く。
「合わせて何マネーだ?」
「371マネー…ね」
「程遠~…」
そして労働と密室で火照った体を冷やすために
マリオは被っていた帽子をうちわのように扇ぎ始めた。
マーネが提示した1000000マネーを集まるまで
この地味かつ負担の大きいジャンプを続けるとなると
相当の体力と気力がないと続けられない。
現に100を越えなかった神菜とピーチにとっては
これを続けるのは苦痛であろう。
《そういえば~ほかの扉もあったよね~?》
「うん。奥にパスワードのない扉なら」
《一旦そこに行ってみたらどうえーす?》
「…そうだな。なさそうならここで地道にやるか」
発電ブロックを叩き続ける囚人達を避け一度部屋を出る。
もはやこれが娑婆の空気なのかと錯覚するぐらい
廊下の涼しい空気の感動しつつ、
パスワード付きの扉をスルーし一番奥の部屋に入る。
だがそこはマネーを稼ぐような所ではなく
囚人達が2、3人いるだけの狭い部屋だった。
いわゆる休憩所のような場所なのだろうか、
先程の発電ルームと比べると全員の表情が穏やかだ。
「…?」
すると赤い囚人服を着た人がマリオ達を見つけるなり
神妙な表情でこちらへ手招きをする。
マリオ達も凝視の眼差しを向けながらもその囚人に近付いた。
「なあ、良いこと教えてやろうか?
ただし1マネーくれたらだがね」
「1…わかった」
その言葉が聞こえていた神菜は
リュックをまさぐり1マネーを取り出す。
それを囚人に渡すとその囚人はケケッと小さく笑った。
「噂だけどよ…
この館、あちこちに隠し通路があるらしいぜ!」
「隠し通路?」
「ああ、あちこちの壁を調べてみな!
前だけじゃなく後ろにも気をつけて念入りにな!」
「…ほう」
「ケケッ。1マネーだからな、これでしまいだ」
それだけを伝えると彼らから離れ
他の囚人の元へと向かって行ってしまう。
それを静かに見送るとマリオはヒゲを撫でた。
「壁を調べる…というのは、次元ワザかしら?」
「その可能性、しかないな」
そう小さく頷くとその場で次元ワザを使う。
神菜達は部屋の様子を見渡していたが
1分ほどでマリオが帰ってくる。
だがその顔はどこかスッキリとしない様子だった。
「何かあった?」
「10000マネーで情報をくれてやる…ってヤツだけだ」
「10000!?」
デジャヴを感じさせる桁数と共に
改めて突き出される高額に神菜の目が見開く。
最終目標の1000000マネー程ではないものの
あの発電ルームで10000マネーを稼ぐにも
かなりの体力が必要なのは確実だ。
そもそも裏世界にいるヒトとは
一体何者なのだという部分もあるのだが。
「とはいえ調べる場所はまだたくさんあるはずよ。
言われた通りにもう少し次元ワザで探しましょう?」
「だ、だよね」
全員が頷き納得すると
再び広い廊下に出て、探索を先にすることにした。
伯爵Side▷