№20 爆弾フェアリン
夢小説設定
少女達の名前を。勇者側はひらがなカタカナ漢字問わず、
伯爵側はカタカナだとより楽しめます。
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+暗黒城+
ノワールが大広間現れるまでの数時間前…
「ほ…本当に大丈夫?」
「ウム!こんなもの痛くも痒くもないっ!」
相変わらずの豪快な声が部屋全体を響かす。
あれからドドンタスはマオの糸を何本か束ねた縄で
なんとか元の彼女のいる塔の場所まで戻ってきた。
しかしボロボロと端か崩れ落ちる状態を見て
気を使ったのかドドンタスは瞑想をしていた時の塔へ戻る。
相変わらず全ての威力は半端ではない。
マオはただその光景を見て苦笑した。
「…でもありがとう、話してくれて…」
「気にするな!気になった事を聞く事は大事だからな
でもどうして気になったんだ?」
そう問えば、今度はマオが静かに俯く。
ドドンタスも慌てた様子を見せるも彼女はすぐにその顔を上げた。
「…わたし、自分の事よく分かってないって
言ってた事、覚えてる?」
「ん?ンン…ああ、そんな事も言ってたな」
「頭に何かが浮かぶとか、思いつく事はないんだけど
こう…たまに体は反応する、みたいな事はあるんだ」
自身の装備品から纏めた糸を手に取る。
彼女が塔へ登って来た時と
先程ドドンタスを救出した時に使用していた鋼線だ。
ドドンタスはそれをまじまじと見ている。
「その糸さばきもか?」
「うん。言葉で説明してって言われたら無理なんだけど、
体は覚えてるのか…自然と動かせるんだ」
それにはドドンタスも納得していた。
本人はそれとは程遠い存在ではあるものの、
確かに糸を武器にするのはその道の熟練者か
そうとう器用な者ぐらしいか使いこなせないイメージなのは
彼なりにも理解はしていたのだ。
それをマオはまさにその道の熟練者のように
軽々と優雅に糸を操っていたのだ。
「そんな感覚がね、その…
ドドンタスの背中のマークでも感じたんだ」
「なにッ!?」
お互いに座って聞いていたが
その言葉にドドンタスは思わず立ち上がる。
見えないはずの背中部分を見ようと四苦八苦したのち
着ていたトップスを脱がずにくるくると回転させ
前面部分にその紋が来る形に着替えた。
「これはかつての俺様の部隊の証だぞ!?
それを知っている者は…死んだか、除隊した者しか…」
「除隊…」
ふとマオも自身の服を見る。
どう見ても軍服とは程遠いディテールをしているものの
このほぼ全身にボロついた状態は今になっても謎のままだ。
マネーラにみすぼらしいから着替えたらと言われた事もある。
しかしディメーンに拾われた時からに着ている服だ。
彼の口から語られた事はないが
きっとなにかの理由があってのこの状態なのは確実で。
何を見てもピンと来なかったはずなのに
伯爵ズの一員として城に来て、
初対面のはずのドドンタスの服を見て気付いたのだ。
これを問うまでに時間がかかってしまったのは
この時期になって心身がほぐれて来たからであろう。
「わたし…ドドンタスの部隊の一人だったとか?」
「そんなはずはないぞ?俺様は立派な大将だったからな!
隊員たちの顔はよーーーーーく覚えている!」
「そうなんだ…じゃあ違いそうだね」
「残念だがそうだな。
そもそも俺様の部隊に女は居なかったのも確かだ!」
希望の眼差しから光が消え、肩を落とす。
しかしドドンタスはまだ悩んでいるのか腕組んで視線を上に向けていた。
「しかし!見覚えがあると言うことは、俺様と同郷の者か
マオの身内に関係者がいたのかもしれんぞ!」
「…それは、確かにあるかも!」
だがそれだけだ。
それ以上に情報はないものの
想定外だった共通点にマオの表情は一気に明るくなった。
それを見たドドンタスも釣られるように笑みを浮かべ
満足気な表情で大きく頷く。
「ウム!やっぱりマオは笑顔がドドンッと似合う!」
「え!そ、そんなに笑ってた?」
「俺様の前では初めて見たぞ!」
思わず照れくさそうに頭かきながら微笑んだ。
違う塔にいるため距離はあるものの
それを眺めるドドンタスの姿はとても安心感があった。
それはまるで、抜け落ちた記憶の中にあるだろう
彼女を見守る親のような………
「お楽しみ中だけどお邪魔するよ~?」
そんな和やかな空気の中、ある声が響く。
しかし聞き覚えのあるその声に驚愕すること無く
ただ声のした方を向いた。
マオとドドンタスを挟んだ空間に
見慣れたピエロ姿がふわふわと浮いていたのだ。
「うおっ!!驚かせるな!ディメーン!!」
「んっふっふ~出張お疲れさま、ドドンタくん♪
勇者の進行は無事に阻止できた?」
「ヌ………」
威勢を見せていたドドンタスであったが
その彼の発言で言葉が詰まり、歯を食いしばる。
「あらら〜ダメだったみたいだね」
「貴様こそ!勇者の元へ向かったと聞いたぞ!
手柄を横取りするつもりか知らんが、どうなったんだ!」
「ん〜?」
とぼけた様子で浮遊したまま足を組む。
マオは黙って二人を交互に見ていた。
「僕はまだ手を出してないよ。
少しだけちょっかいをかけてみただけさ」
「チョッカイ、だあ?」
「冒険ってさあ~スリルがあってこそだ思ってさ。
楽しんでもらうために、チョコっとね♪」
「刺激をしてどうする!!!」
「うわっ…!」
ドンドンと激昂の感情を地団駄にぶつける。
浮いているディメーンには勿論影響はないものの
同じ地上から建つ塔にいるマオは少しだけ体が揺れ
それに耐えるように踏ん張っていた。
「ま、始まったばっかだし〜慌てない慌てない♪」
「グヌヌヌ………」
「じ、じゃあ…ディメーンは何しにここに?」
「ひと段落したから、少し様子を見に来ただけさ」
「何がひと段落だ!」
「マオの方はどうしてたかなあって♪」
彼に向かってガヤが飛ぶも平然とした態度のままで。
マオはその謎にスマートなあしらいに苦笑する。
「ナスタシアと一緒に魔王の部下達を…
…仲間に引き入れてるよ」
「んっふっふ〜なるほど?引き入れてるねえ…」
「それでドドンタスが帰ってきたから、
次はマネーラが行ったところ」
その言葉を聞くと周囲を見渡し
納得したような声色で声を漏らしながら頷いた。
「賑やかなのが足りないと思ったら、そういう事ね」
「ディメーンはこれからどうするの?」
「う〜ん。その様子だとやっぱり雲行きが怪しいからねえ…
他に対策がないか、個人的に探ってこようかなって」
「そうなんだ…」
その場で優雅に足を組みかえると
視界の端で見える大きな姿をスルーしつつ
マオを見てなにかに気付き、ゆらりと彼女の方へ接近した。
「例の本は進展あったかい?」
「ううん。手がかり全く無し…
落ち着いたらナスタシアか伯爵様に聞こうかなって」
「ほん?また新しいものが増えたのか?」
「いやぁ、ドドンタ君に見せてもわかるかなあ」
「なぁにをおーッ!?」
「ま、まあまあ…!」
再び暴れだしそうな彼の言葉に被せるよう
急いで腰に装備していた例の本を見せた。
しかしドドンタスは首を傾げる。
予想通りの反応にディメーンは笑っていたがマオは気にせず表紙を開き
例の挿絵のページに文字の読めないページ、
最後の謎のくぼみのあるページで止めた。
「ん!?仕掛け絵本か?」
「………あ!!」
「うおっ!?」
するとマオが突然声を上げ、慌てたように荷物を漁る。
そこからオレンジに輝く物体を手に取ると
そのくぼみの中にゆっくり差し込んだ。
「…!」
そのオレンジの南京錠が、ぴったりとはまったのだ。
ディメーンも声に出さずとも表情が変わる。
しかしそこから何も起こらない。
再び荷物から同じオレンジに輝くカギを取り出し
一度はまらなかった南京錠の鍵穴へと差し込もうとする。
「…あ、あれ」
しかしそれでも変化は起こらない。
やはり形が違うのか、鍵穴に合わなかったのだ。
ドクドクと高鳴っていた心臓がゆっくりになっていく。
彼女が深くため息をつけば、
同じく緊張していたドドンタスも軽く一息を付いた。
「…ふうん。なるほどね」
「あ、カギ…そう。カギもさっき新しく見つけたの!」
「みたいだねえ~!もう一個の赤いのは?」
「マネーラが預かったままだから…後でかな」
「しかし、その本とカギとやらはどういう関係なのだ?」
「それをずっと探してるんだけどね…」
これ以上答えが出ない事を悟ったマオは
南京錠をはめた状態のままゆっくりと本を閉じる。
それを合図にディメーンは再び元の位置へ戻った。
「とりあえず、その状況が把握できただけでもよかったよ」
「え?どうして?」
「ん~?せっかくだし、手助けしてあげようかなって♪」
ふわりとより高く飛び上がると
マオも見上げていた視線を高くする。
「それじゃ、僕も色々やる事あるからさ~
マオの事よろしくね?ドドンタくん♪」
「ぬあ!?オ、オイ!」
返事をする間もなく、お得意の魔法でその場から消え去り
見上げていた二人はただ呆然と天井を眺めた。
「…」
「…」
そしてお互いに取り残された状況で顔を見合わせ、
困ったように笑みを浮かべあった。
勇者Side▷