№28 絡みあう迷路
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伯爵側はカタカナだとより楽しめます。
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+暗黒城+
「ナスタシア?」
順調に洗脳作業を進めていると、
先頭を歩いていたナスタシアが何かに反応し
ピタリと足の動きが止まる。
「…マネーラが、動きはじめたみたいですね」
「えっ!?」
思わずマオの声があがるもナスタシアは反応せず。
手前に倒れこむ部下の姿を視界にとらえると、
そのまま術を放ち、赤い閃光で貫いた。
「あばばばば~っ!!」
いつものごとく、瞳が赤く光ると術が解除される。
ノワールに忠誠を誓うようになった証拠として
ゆっくりと立ち上がると定番の掛け声を叫んだ。
「ビバ!伯爵!!」
敬礼を見せ、ドタドタと軍団の中に混じっていく。
それを横目で見送った後、周囲を見渡せば
あれだけ騒がしかった城内が一気に静まり返っていた。
「…ふう。お疲れ様でした。
貴方のお陰で予定より早く終わりました」
「それはよかった…けど、マネーラが動いたって?」
ただ呆然と立ち尽くしてたマオがそう声をかける。
背を向けたまま改めて周囲を確認し、
軍団の数人に見回りの指示を与えると
マオの方に向き合った。
「無敵守りの力を使ったのです。
今頃勇者を追い詰めている所でしょうか」
「流石マネーラ!使いこなしてるんだ…!」
「いえ、よく考えてくださいマオ。
無敵守りの力が発動したという事は…
マネーラが追い詰められていると言っても同然」
「…あっ、」
「何かしらの危害を与えられた故の反応ですよ。
なので…少し、作戦を新たに練らないといけませんね。
不審なヒトもいるみたいですし」
明るさのあったマオとは裏腹に
ナスタシアの表情は穏やかさが一瞬で消え、深刻になる。
その事情を知るなり確かにそうだと
納得したマオも言葉をうまく出せず黙り込んだ。
「不審な…?」
「ええ。偵察に向かわせた者の話によると、"黒髪の女"という事です」
「黒髪の…女…」
言葉を聞いてマオが見せた表情に
何かしらを感じたナスタシアは見逃す事なく
彼女の目を見つめた。
「…何か、知っているのですか?」
「これ…うーん…」
「マオ?」
「あの、お城のさ…多分、地下かな…」
「はい」
「同じ人かわからないけど、黒髪の女の人…いたんだ」
目の前の表情が険しくなる。
当たり前だろう。
その情報はディメーンとしか共有していないのだ。
後ろめたさのある表情で俯き、ちらりとナスタシアを見れば
呆れたようにため息をついていた。
「何故報告を怠ったのですか?」
「ごめんなさい!その…出入りができない地下だったし、
一緒にいたディメーンがなんとかしたのかなっ…て」
無意識に話の流れのまま責任を彼に擦り付けてしまっているのもあり、
徐々にマオの喋る声が小さくなる。
ただこの城には地下が存在するらしい。
らしい、と曖昧な答えになってしまうのは
彼女はそこの場所や入り方を知らないからだ。
ディメーン曰く、扉も外側の鍵から開閉する事が出来て
閉じ込められた者は移動魔法でも使えない限り
その空間に閉じ込める事ができるという。
いわゆる地下牢のような所らしい。
ナスタシアの反応を見る限り
その地下の存在は彼女には知っているようだ。
そう伝えたマオの表情は
何かを勘付いている様子にも見えるものの
軽く俯いている彼女の表情は殆ど隠れており
ナスタシアは気付いている様子を見せなかった。
ただじっと遠くを見据えて、口元に手を添える。
「…そうですか。わかりました。
ディメーンには後程ワタクシから事情を聞く事にします。
同一人物かも判明していませんですしね」
「………」
「マオ?」
確かにナスタシアの言う黒髪の女と
マオの出会った黒髪の少女が同一人物化は不明だ。
しかしタイミングが合っている事に引っ掛かる。
そして共通して浮かぶ人物が一人いたのだ。
その少女と出会った時に共にいた彼。
彼によってその少女は目の前で消える事はなかったものの
意識を奪って"生きてる力"とやらも奪った。
もう一つはあの桃色のお姫様を消した術。
殆ど隣にいる事の多いマオは気付く特徴的な魔法。
ディメーンが関わっているのだ。
あの後の桃色のお姫様の所在は不明だが、
もしあの黒髪の少女が勇者と共に進軍しているという事は
彼女は奪われてもなお生き延びていたという事になる。
ディメーンは"大丈夫"だと言っていた。
それはその少女の命を奪わなかった事だったのか
むしろ桃色のお姫様の様に後々処理する予定だったのか。
「ううん、ごめん。なんでもない」
「…そうですか」
勿論彼から聞いたわけではない。
全ては憶測だ。
どこか挙動のおかしくなるマオを少し怪しむも
ナスタシアは常備しているボードに記録を付け始める。
「とりあえず、伯爵様にも報告させていただきます」
「はい…」
「貴方の出会った黒髪の女の特徴は、覚えていますか?」
「ええと、わたしぐらいか少し年上…?
背はわたしより大きかったかな」
「…少女、という事ですか」
「確か黒い服と、青いスカート…ぐらいかな」
「ありがとうございます。
一旦そのぐらいにしておきましょう」
それはまるで職務質問の様な光景だろうか。
マオが答えた言葉をすらすらと書き留める。
それを終えるとボードを眼鏡の位置を整え
ふう、と一息を付いた。
「…確か、貴方はこの上の階の方にうろつく者達を
拘束していたと、言っていましたね」
「うん。一応動けないようにはしてるけど…」
「そちらへ案内してください。次はそこで行います」
ちらりと後方を確認すれば
居た事も忘れてしまう程の静寂を保っていた
部下軍団たちが静かに待機していた。
マオもその光景に思わずまばたきをする。
「何人かは勇者達の進行を阻む刺客として送り込みます。
残りはワタクシの業務の補助をする事。
いいですね!!?」
「「「「「「「「ビバ!!伯爵!」」」」」」」」
圧倒的に数を増やした軍団の声量は想像以上で。
静寂な廊下に彼らの声が木霊する。
「…では、行きましょう」
「は、はい…」
完全にONになった彼女の表情に
報告をしていた時のまだあったフランクさは皆無で。
鋭く光らせる瞳でマオを見つめれば
マオはただ素直に頷く事しかできなかった。
勇者Side▷