№16 光を追いかけて
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階段を下りていくとひんやりとした空気が肌を伝う。
遺跡の中へ潜っていく時のようにも感じるが、少し違う。
松明がない影響でその冷えた空気がより感じやすくなっており
壁はガラスのようで幻想的な模様が描かれている。
床も大理石で水色の模様が刻まれているのもあり
まるで氷の中にいる錯覚もあってより寒さを感じるのだろう。
ふと手を添えてみても氷の様なストレートな冷たさはない。
ただ遺跡とは違い好奇心よりは、心が落ち着くような感覚だった。
「綺麗…」
思わず声を出してみればその声も響く。
一言でまとめれば、幻想的な空間という事だ。
足を動かすたびに二人の靴の音が響く。
そんな長い階段を下りると、大広間のような空間にたどり着いた。
「よく来ました、勇者よ」
するとどこからか女の人の声が響く。
その声がしたであろう天井付近を見上げてみれば
案の定その近くに一人のヒトがそこにいた。
青いドレスに白いマント、
輝くとした飾りが付いた大きな帽子を被り、口元を隠す姿。
声色からして女性だという事はわかるものの
実体がないのか、その体越しには壁や天井が透けて見えていたのだ。
「ワタシの名はクリスタール。
ピュアハートを貴方達に授けるためにここに眠りし魂です」
「魂…」
「1500年間、貴方達が来るのを待ち続けていました」
デアールのような末裔達と雰囲気が似ているものの
彼女の方がより神秘的なものを感じる。
透き通るような、しかし芯のある声色で語り掛けると
ゆっくりと天井からマリオ達の近くまで降下してきた。
「貴方達がここに来た、ということはついに
世界の崩壊が始まってしまったのですね」
《ええ…それを食い止めるため、私達はここに来た…》
「ピュアハートを渡す前に、貴方達に伝えねばならないことがあります。
大事な話なのでよく聞いてください」
「わかった」
どこか悲しげな表情を見せたクリスタールは一度瞼を閉じると
氷のように冷たい瞳で、しかしぬくもりのある表情で
目の前のを彼らを見つめる。
その様子からしてこの場にいる全員にとって重要な話なのだろう。
マリオも神菜も真剣な眼差しで頷くと、
クリスタールは瞼を閉じ、口を開いた。
「遠い遠い昔…私達は今より進んだ文明を築いていました。
しかしその私達でもどうすることも出来ないものがあったのです。
それが、【黒のヨゲン書】です」
「例のヤツね…」
「誰が書いたのかもわからないその黒い書物には、
これから起きる未来の出来事が予言されていました。
そして最後のページには…世界は混沌の力に覆われ滅びると。
そう書かれていたのです」
《……》
「このままではいけない…
そう思った私達はその悲劇を防ぐ手段を考えました。
悪しき"混沌"に対向するには純粋な"愛"の力を束ねるものが必要だ…。
そう考えた私達が研究の末造り出した物…それがピュアハートです」
神菜からするとどちらも言葉だけの存在で本物を見た事はない。
しかしその名称に使われている言葉の意味は理解できており、
彼女はただ静かにクリスタールの話を聞いていた。
ゆっくりと瞼を開き、大広間の天井を見上げる。
「それから私達はピュアハートを8つに分け別々の世界に隠しました。
予言に書かれし者…【勇者】の登場まで
それを奪われないようにするためです」
「8つ…デアールも言ってたな」
「ていうか…なんでそんなに分ける必要が?」
「唯一その混沌に対抗できる我が一族のアーティファクト…
決して敵の手に渡ることは許されない。
そのため、簡単に揃わないよう各地に散りばめ
対策していたのです」
「あーてぃ…?」
《人工物、という意味…》
「1500年もの時が経った今、ピュアハート以外で
新たに対抗する力を生み出すことはもうできないのです」
その言葉に神菜が頷けば、クリスタールは静かに俯く。
「全ては順調に進んでいる…ように見えました。
しかし運命の歯車は静かに狂い始めていたのです」
俯かせた表情を上げる。
そこには先程とは違う感情的な瞳を揺らめかせていた。
神菜は食い入るように彼女を見つめるが
マリオは何かを勘付いたのか、
腕を組みながら体の力を抜くような姿勢になり
アンナも羽を休める為にマリオの頭にとまった。
「それはまず、非常に些細な出来事から始まりました…」
「……」
「その頃私はまだ純情可憐で
プリチーなイケイケピチピチギャルでした」
「…ん?」
「…」
マリオは瞼を細め、どこか呆れたような目で見上げるが
語り始めた彼女は気付かない。
気品のある落ち着いたん声色から溢れ出る想定外の単語に
神菜の方は無意識に声が漏れ、首をかしげていた。
「そんな私はある日
二人の男性からその想いを打ち明けられたのです。
その日から私の生活は引き返す事の出来ない
ラブ・バミューダへ突入しました」
所々挟まれる英単語の発音の良さに口角が上がる。
といっても失笑というよりはほぼ苦笑だ。
こんな話を聞かされてどう思っているのかと隣のマリオを横目で見るが
ここまでの疲労が彼女の心地よい声色で刺激されているのか
うとうとと立ちながら睡魔に襲われていた。
「…」
「私は二人をデートに誘いウキウキでしたが―けれど…
やっぱりそれは――だったのです…
つまり…ぶっちゃけ――――――で――がだったとは―――
全く――――――――事です…」
悲しいことに神菜に睡魔がやってくる事はなく。
マリオは完全にうたた寝に入っており、顔は下を向いていた。
「――――で………は―――……よりも…………――――
に――――――――あ……………………――――……」
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「……というわけで、
ピュアハートこそが暗黒の力に対向する希望なのです」
体感時間は数時間ほどか。
途中から話を頭に入れずにそのまま流しながら聞いていれば
いつの間にか話が終わっていた状況だ。
流石に数時間は経っていないものの、何分経過したかはわかっていない。
マリオはもちろんトるナゲールは神菜に寄り添う形で、
まさかのアンナもマリオの帽子の上で寝ていたものの
無心の状態の神菜が肘で突けばぴく、と体が反応した。
「私達、古代の民が造った8つのピュアハートを集め、
世界を救うのです」
「承知…しました~…」
横目でマリオを見て、いまだに目が覚めてないのに気付くと
軽く突いていた動きから力を込め、脇腹に一発与えた。
「っ!?」
「伝えたい事は以上ですが…ちゃんと聞いていましたか勇者よ!?」
「あっ?あ、ああ、うん。はい」
その衝撃でマリオが飛び起きて目を覚ました事で
アンナも驚くような動きを見せて羽を動かした。
寝起きの眠そうな目をこじ開けながら
反射的にクリスタールの言葉に返事をすれば
その返答に彼女の表情も穏やか表情を見せる。
それでいいのかと呆れた様子で神菜が見つめる中、
トるナゲールは寝ぼけた表情を見せながらのんびり目を覚ましていた。
「そうですか…手短に話してしまったけれど、
大丈夫だったでしょうか?」
「ええ、もう十分。お腹いっぱいなぐらいです」
「それならよかったです。とにかく貴方達に
この希望のかけら、ピュアハートを託します。
貴方達が世界を救ってくれることを願っていますよ…」
そして両手を手前に差し出せば、そこからピュアハートが出現する。
空間の青と対照的で温かみを感じさせるオレンジ色。
光り輝くそれがふわりとマリオの手元に移動し、
勇者たち一行を鮮やかに包んだ。
「勇者よ…世界を頼みます」
消え入りそうなクリスタールの声が響く。
ふと彼女のいた場所に目を移せばすでに姿は消えており
幻想的な壁画だけが残っているだけだった。
《さあ、ハザマタウンへ…》
そうアンナが伝えると二人は頷く。
マリオが手にした光を優しく包めば
ピュアハートが自然に彼らの頭上へ浮上する。
そして眩しく輝きだすと、視界に映るものすべてが白い光に染まった。
瞼を開けるのも苦労するほどの眩さの先に
見覚えのあるの赤い扉が見える。
安心感を漂わせるその扉に向かい、マリオ達は一斉に走り出した。
伯爵Side▷