№11 vs武人
夢小説設定
少女達の名前を。勇者側はひらがなカタカナ漢字問わず、
伯爵側はカタカナだとより楽しめます。
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+コダーイ砂漠+
砂漠特有の熱風と共に視界を阻む砂。
慣れるどころかただただ辛いという感情だけが上昇し続け
多少の体力は付いてきたものの、やはりマリオのスタミナには敵わず。
率先して歩く彼の背中を見つつ、
神菜は体力を温存させるため後方でアイテム収集や
アンナとトるナゲールと共に謎解きに励んでいた。
そしてどこにでもあるらしい定番の緑の土管も
この砂漠で初めて見つけ、探索がてらに潜り込んでみれば
そこは室内の地下のような空間。
「はあーーーーーーっ!涼しぃ…」
しかしあの砂漠と比べると温度に劇的な差があった。
冷え冷えのレベルではないものの、丁度良い冷たさのある床と壁。
黙々とコインやアイテムを回収するマリオをよそに
神菜は思わず大の字になってその場で寝転んでいた。
アンナとトるナゲールは彼女の顔の元に降り立ち、
遠くにいるマリオを眺めていた。
「もーしばらく砂漠はこりごりだ…」
《…あともう少し先。少しずつ近付いているわ》
「それが聞けただけでも安心したよ…」
草原や山道と違い道なのかすらわからない
途方もない広さを歩いてきたのだ。
これが真逆のルートでしたと言われたら
しばらく動けなくなっていただろう。
そんな脱力感が露骨に出ている神菜のもとに
奥を探索していたマリオが何かを手にして戻ってきた。
「おかえり~」
「コレ、お前が食っとけ」
「え?」
そう言って彼の手に持っていたモノを確認する。
そこにあるのは水色のカサをしたキノコ、スーパーキノコ。
神菜のリュックの中にあったキノコ缶とは違い、
そのまんまのキノコだ。
「マリオは?」
「俺はまだ大丈夫だ。
そもそも、そんな様子見せられて食えるかってーのっ」
「うわっ」
神菜が地面に座ったまま胴体を起こしたのを確認すれば
手にしていたスーパーキノコを彼女に向けて放り投げる。
柄の部分には顔らしきものも付いており、
そのつもりはなかったのに目が合ってしまう。
どう食べるべきかと悩みつつも、とりあえずカサの部分に嚙り付いた。
「…これは俺の直感だが、」
「モグ…ん?」
「この先、何かが居る気がする」
「何って…モグ、なに?」
「…わからん」
「わからんのかい…モグモグ…」
彼女の知らない所で様々な旅をしてきたマリオにとっては、
そのキノコの回収でこの後に何かあると勘ぐってしまうのだろう。
それを知る訳がない彼女はただ渡されたキノコを貪っている。
どういう味と言われると何とも言えないが
生の状態でもわかるその美味しさに気付いたのか
柄を握りしめソフトクリームに食いつくようにキノコを味わっていた。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
キノコを完食し、万全の状態になった事を確認すると行動を始めた。
神菜はどこか名残惜しそうに地下空間を見つめ、
灼熱の砂漠へと戻るがキノコの効果があったのか
その様子は先程よりは断然良くなっていた。
「どわっはっはっはー!」
「!」
「なに!?」
それは再び砂一面の砂漠を歩いていた時だった。
砂漠に入ってから初めて聞く仲間以外の声色にマリオは身構える。
神菜も周囲を見渡せるよう彼に背を向け
お互い背を向け合うような体勢で警戒を強めた。
「ようやく現れおったな!
伯爵様の行いに逆らおうとするお邪魔虫め!!」
「おい!どこにいる!!」
「…!」
確実にミハールの様な協力者ではなさそうな発言にマリオは声を張った。
そんな敵意をむき出しにする聞いたことのないの声に
彼の見えない所で思わず神菜の肩がビクッと震える。
「ッ…」
「うわっ…!?」
ドシンと重い音と共にマリオの目の前に何かが落下する。
その衝撃で砂が舞い、視界が一時的に遮られるも
見えなかった地面が見える程砂が消え、地が割れているのは確認できた。
彼女も音の方へ振り向き、その光景に目を見開く。
砂埃が消えるとそこにはやはりヒトが佇んでいた。
ガッシリとしたシルエットでマリオの身長よりはるかに大きい。
そして明けた砂埃からマリオと神菜の存在に気付くなり
ニヤリと笑みを浮かべると勢いよく息を吸った。
「どわっはっはっはっは!勇者だか風車だか知らぬが、
ここはドドーンと通行止めだ!」
「はあ…?」
《貴方…伯爵の手先ね?》
大男の発言に険しい顔を見せるもすました顔は変えず。
マリオの背後からひらりと現れたアンナがそう指摘した。
すると大男は突然決めポーズらしき体勢をマリオ達に見せつける。
その動きにマリオも呆然としながらも反応するが
大男はそこから大きく動くことはない。
「そうとも!俺様はドドンタス!!
ノワール伯爵様直属部隊、ザ・伯爵ズの自称No.1だ!」
「ザ・伯爵……」
マリオの後ろに隠れるように様子を見ていた神菜が小声で復唱するも
それをドドンタスにどう聞こえていたかは謎だが、
ポーズをとっていた片腕を彼女の方へ向け勢いよく指を指した。
「この小娘!!伯爵様にアダなす者は
このドドンタス様がドドーンとさいばいしてくれる!!」
ぴたりと空気が止まるも、砂埃と風は静かに通る。
ドドンタスの勢いのある声量もあって余計に静かさが目立っていた。
するとマリオが身構えた状態で口角を上げる。
「…おいおい、俺達を"さいばい"してどうすんだよ」
「なにィ?」
「成敗、だろ?
栽培なんかしたら、お前どうなるんだろうな」
その煽りが完全に効いたのか、ドドンタスは片足で力強く地面を蹴る。
その衝撃ですらもとても強く軽く地上が揺れるほどだ。
「ええい!どっちでもいい!
とにかくお前達の思い通りにはさせんぞ!!」
ポーズを解いたドドンタスもマリオと向き合うように戦闘体勢をとるも
様子を見ていたアンナが再びひらりと前に出た。
《貴方…伯爵が何をしようとしているかわかってるの…?》
「勿論だ!!伯爵様はその力で
この乱れた世界を正しい姿に創り変えて下さるのだ!
それを邪魔する者は俺様の敵!何人たりともゆるさん!
ドドンっと消えてもらう!!」
両手を力強くぶつけるその音ですら聞いたことのない衝撃音だ。
思わず後ずさる神菜をよそに、アンナは冷静にマリオ達に向き合う。
《このドドンタスは今までの敵よりも手強い…
戦いが始まったら…神菜、私の力を使ってドドンタスを調べて…》
「りょーかい…!」
今までとは違う大きな威力の障害で、神菜も不安な様子を見せる。
しかし目の前にいるマリオの様子はどこか好戦的のようにも見えた。
「では…!いっくドーン!!!」
そうして戦いの幕開けの合図が響く。
早速ドドンタスが低い体勢を取るとそのまま勢いよく飛び上がり、
攻撃を仕掛けるためにマリオ達と距離を縮めた。
「っ…!」
遠くで飛び上がった時に舞い上がる衝撃によって砂が舞い、
目の前で飛び降りた衝撃の砂で更に視界が塞がれてしまう。
スモークに覆われたような状況でなるべく眼球に砂が入り込まないよう
マリオは息を止め、瞼を細める。
「くぁッ…!?」
「マリオ!!」
そして砂埃から勢いよく何かが飛び出しマリオの胸倉を掴む。
砂に覆われないソレはドドンタスの大きな腕で、
苦しむマリオをよそに、彼の両足が浮く高さまで持ち上げた。
神菜もその状況下で身動きが取れないままで、
砂埃からもう片方の腕も彼の胸倉を掴むと
先ほどより高い位置まで吊り上げられてしまっていた。
「ふんッヌッ!!」
そしてその場で踏ん張ると、胴体をぐるりと回転させる。
そのフォームはハンマー投げに近いだろう。
竜巻を起こすのではないかと思うほどぐるぐると回り
その勢いは視界を塞いでいた砂が振り払われる程のもので
掴まれてるマリオの様子もうまく確認できない。
勢いが最大になったタイミングで手を離せば
掴まれていたマリオは高く舞い上がり、
うまく受け身も取れずにそのまま強く地面に叩き付けられた。
「マリオッ!!」
「どわっはっは!勇者にしては案外ニブいな!!」
《ワ~~~っ!グルグルグル…》
《神菜!早くワタシの力を…!》
目をぐるぐると回すトるナゲールに見向きもせず
アンナはただ神菜のそばで必死に羽ばたいていた。
目の前のドドンタスは技が上手く決まった事に喜んでいるのか。
喜びの舞を披露するドドンタスの隙を見るなり
安全な距離を確保しようと咄嗟に走ろうとする。
「うわっ!」
彼女なりの俊敏さで背を向けた時だった。
地面をけろうとした瞬間背後で大きく突風が舞う。
その直後に彼女の足元へ強い衝撃が走り、
思わずその場で前から勢いよく倒れてしまった。
空を見上げれば大きなシルエットが彼女を見下ろしている。
太陽による逆光で暗くなりつつも、
大きなシルエットはドドンタスだとよくわかる。
あの謎の舞は何だっのかと思えるほどの察知能力と
動き回るには向いていない砂の地面で追い詰める彼は
明らかにただモノではないと、心臓が大きく震えた。
《神菜っ!!ってうわあっ…》
「い…ったあ…」
「小娘だろうが!勇者の仲間なら容赦はせん!」
彼女の声を呼んでいたトるナゲールの声が遠くなるも
それを見る余裕は今の神菜にはなかった。
そして倒れた神菜のリュックに腕を伸ばした、
その時だった。
「!!」
遠くから何かが飛来し、
ドドンタスの横を勢いよく横切って行った。
ぶつかる事はなかったものの多少顔をかすっており、
ソレが落ちた方を見ればヤシの木の実がゴロンと転がっていた。
先ほど後方から飛び出た物体はコレだったのだ。
「オラァッッ!!!」
それを確認した時だった、後方から声が響く。
咄嗟に振り向けば、そこには拳を構えたマリオが突進していた。
「…なッ!?」
「フン!」
しかしそれすらも軽々と受け止められ、
奇襲をかけたマリオも思わず目を見開く。
「そんなヨワッチィ拳など、
俺様にとってはナメクジ以下も同然!」
そして空いている方の手で受け止めた拳の手首を掴むと
先ほどと同じように再び振り回し、空高く投げ飛ばした。
しかし先程の無様に地面に打ち付けられるような状態を避けるためか、
高く飛び上がった拍子に地上に手を勢いよく差し伸ばす。
するとその手に何かが引き付けられ、彼のもとに来た。
《わっわっ!今度は高ーい!》
それはトるナゲールだった。
今度、というのはこれがこの戦闘中に2回目という事で
普段から浮遊しているカレらでも
ここまで青空に近い場所はあまりないのだろう、
ピョンピョンと飛び跳ねるように楽しんでいた。
しかしマリオは上昇していた状態から落下する感覚に気付くと
構わずトるナゲールを再び地上へと投げ飛ばした。
急降下していくトるナゲールを確認すると、
自身の体も空中で体勢を整え
砂埃を舞わせながら地上で受け身を取り着地を成功させる。
そして体を起き上がらせ真正面を見れば、
彼に向ってまた何かが引き寄せられるように飛んできた。
「うわああーーーっ!!?」
それは神菜だった。
彼の咄嗟の判断で空中でトるナゲールの力を発動、
受け取る対象を神菜に定めた後に地上へ帰還、
放ったトるナゲールは持ち主の所に戻ってくる性質を利用し
孤立し追い詰められていた神菜を救出したのだ。
…少々手荒い方法であったが、無事な姿を確認すれば
彼女の制服の襟もとに隠れるように潜んでいたのか。
アンナがちらりと姿を覗かせた。
神菜は困惑した様子でマリオを見上げる。
「なっなに!?マリオだったの!?」
「おい!早くあいつを調べろ!
普通に向かってもらちが明かねえ…!」
「わ、わかってる!!でも今なら…!」
彼女が引き寄せられた距離を考えると
ドドンタスとはかなりの距離がとれているはず。
チャンスと確信した神菜は
彼女の近くに止まっていたアンナに手を添える。
眩しく光ると輪が出現すると同時に世界がピタリと止まった。
「…はっ!?」
アンナの力を使うのは2度目だが、
これを喧騒とした場面で使うのは初めてだった神菜は思考が止まる。
こちらの気配に気付き突進してくるドドンタスが
完全に停止していたのだ。
しかもその姿勢は走っている最中なのがよくわかる。
ふと近くにいるだろうマリオの方へ視線を向ければ
ドドンタス同様世界が止まる直前の状態で静止している。
隣にいたトるナゲールも何やら楽しそうな表情で固まっていた。
「こ、コレってあってる…?」
《ワタシの力を使うと、一時的に世界が停止する…
この隙を狙って分析するの》
「すごい…」
《時間を止められるのはワタシの力を使う時だけ…注意して》
「オッケー!」
元の世界が緊迫している状況というのもあるだろうが
ここまで様々な不可思議に出くわした彼女にとって
アンナの力に対して変に驚く様子は見せなかった。
そして言われた通りに輪をドドンタスの方へ向けた。
《ドドンタス。怪力無双の戦士で、
腕力には絶対の自身を持っている…。
得意ワザは相手を捕まえて投げるジャイアント・スイング…》
「マリオを投げ飛ばしたアレか…」
《ええ。彼の手が届く所にいるとあっという間に
捕まえられてしまうから迂闊に近づかないようにしないと》
「えっ…!?じゃあどうやって攻撃を…」
《慌てないで最後まで聞いて。
自分が投げられるのには弱いみたいだから、
こちらが捕まえて投げてしまえば
チャンスがうまれるわ…》
アンナの落ち着いた聞き取りやすい声に冷静になる。
説明を頭に入れ軽く頷けば何かを思いついたのか
そのままアンナの能力を解除し、世界が動き出した。
そして能力を使ったのだろうと
判断したマリオが神菜に問いかける。
「何かわかったか?」
「うん!とりあえず、アイツには近づいちゃダメ!」
「はあ?じゃあどうすりゃあ…」
「投げるのは得意だけど、
投げられるのは苦手らしいからさ…!」
そう話している間にも走り続けるドドンタスは
確実に距離を縮めてきている。
「トナ!ちゃんと掴まえてきてよ!」
《どえーす!》
しかし神菜の様子はどこか自信に満ちている。
トるナゲールを引き寄せ立ち上がると、
目の前に接近するドドンタスに向けてカレを投げ飛ばした。
「フンッ!」
しかし目の前でその一部始終を見せられていたのもあり
ドドンタスは軽々とトるナゲールを避ける。
彼の向こう側に飛んでいったトるナゲールだったが、
ちらりと方向を確認するとドドンタスの背後から急接近した。
「ぬわァッ!?」
「よっしゃ!」
離れていても使用者の本来の意思が通ったのか、
半分使用者の意思、残りはトるナゲールの判断で
ドドンタスに接触すると無事にカレの能力が発動し、
勢いよく神菜の元へ引き寄せられる。
「マジか…」
《…》
勿論その技術を教えたわけではないし
ここに至るまでにトるナゲールの特訓をした記憶もない。
まるで長年のパートナーの様な息の合った動きに
マリオはただ呆然と眺めていることしかできなかった。
そして引き寄せたドドンタスを両手で掴むと頭上へ持ち上げる。
彼らと比べると華奢寄りの少女が
大男を持ち上げる絵面は不思議な光景だ。
しかしトるナゲールの効果で重さがほぼゼロになっているのか
多少暴れるドドンタスに対して
彼女の両腕はピンと真っすぐ伸ばされていた。
「よっ…!こいっ!しょーーーーーーッ!!」
「うおおおおっ!!??」
その掛け声とともにドドンタスは勢いよく投げ飛ばされる。
彼の様に一工夫つけた技術は一切ないものの
激しい音を立てドドンタスはそのまま砂山に突っ込む。
その豪快さに砂が舞い上がり、姿が見えなくなるも
あの不格好に持ち上げられた姿を考えれば
受け身は取れてはいないだろう。
神菜はスッキリとした表情で手を払うと
マリオ達の方へ振り向いた。
口を開けて眺めていた彼もその視線に気付き我に返る。
「ほら!アンナの言う通りだ!」
《…さすがだわ》
「…っ!!」
嬉しそうに拳を作りアンナに笑顔を見せる。
しかし彼女の方を向いていたマリオはその後ろに動く影を見つけると
咄嗟に彼女を横へ追いやるように押し飛ばした。
「あいてっ…っておわあ!」
「貴様ァ!一体何の力を使ったッ!!」
勿論突然押し飛ばされ驚く彼女だったが、
その直後に轟音と共に何度目かわからない砂埃が舞う。
マリオ達の居た場所に復活したドドンタスが突進してきたのだ。
彼女による投げ飛ばしの影響か、多少ふらついており
その表情は困惑と怒りと混じっているようにも見えるだろう。
マリオは素早く動き避けた体勢からそのままドドンタスに突撃した。
「言ってもお前さんにはわからないだろうよ!」
「ンなんだとーーーッ!?」
威勢のある声だが明らかに反応が鈍っている。
マリオの勢いついた蹴りをなんとか受け止めるも
拳の時の様に捕捉する事なく、防御態勢を取っていたのだ。
ただ受け止める事しかできなくなっている
ドドンタスに隙を作らせない為に
そのまま間髪を入れず拳を打ち込み続ける。
「グッ…グ!?」
なんとか隙を探しマリオに反撃しようとしたその時だった。
一度味わった事のある浮遊感が再び彼を襲い、
気が付けば強制的に地面から足を離されていた。
グンと勢いよく引き寄せられた先には神菜が待っており
今度は引き寄せて掴んだ勢いのまま体を回転させる。
まるでドドンタスのジャイアント・スイングを
真似るよう空高く投げ飛ばした。
宙に浮かび無防備な状態のまま
ドドンタスは受け身を取ろうとするが
地面に近付いたその時、目の前に赤い影がちらついた。
「おらあッ!!」
ドドンタスが飛ばされたのを見て
彼も地面を蹴り飛び上がっていたのだ。
そして落下途中のドドンタスと同じ目線に辿り着けば
にやと笑みを浮かべ真下へ落ちる角度に回し蹴りを与えた。
―ドシィインッ!
ドトンタスが豪快に現れた時と同じように、砂が高く舞う。
「マリオっ!」
その後に着地した彼に神菜が駆け寄れば
息を整えながら立ち上がり、笑みを浮かべながら親指を立てる。
そのジェスチャーの返事で彼女も大きく息をついた。
その歓喜もつかの間、マリオはすぐに表情を鋭く戻せば
ドドンタスが落下したであろう場所にゆっくりと近付いた。
舞い上がった砂埃が揺れる事はなく、静かに消えていく。
その中から片膝をつくドドンタスの姿が見える。
体へのダメージが激しいのか、その姿勢から動く事はない。
「ば…馬鹿な…!
無敵と謳われた俺様がこんなにあっさりと…お前達…一体何者だ!」
俯かせた顔から悔しさの滲む瞳で彼らを見上げる。
奇襲に対応できるよう、ただ睨みつけるマリオの背後から
アンナがひらりと前に出てきた。
《彼等は…勇者マリオと、神菜よ…》
そう伝えればそうか、と静かに頷く。
そして今度は勢いよく立ち上がれば、悔しそうな表情から
初めて会った時のすました表情になっていた。
どことなく恨めない満面の笑みと勢いに、
マリオも思わずたじろぐ。
「マレオとかるなか!覚えておこうその名前!!」
「…」
「かるな…?」
「覚えておけ!マレオとかるな!!
今の戦い…実力では俺様が勝っていた!
ただあまりにも弱そうなのでちょっと油断してしまったのだ!!」
だからお前の頑張りに免じて、
今日は引き分けということにしておいてやる!!」
ビシッと音が鳴るような速度で指を指したのち、
マリオ達に背を向けるとその場から数歩進み距離を取る。
念のために二人は身構えるも、
ドドンタスからはっきりとした敵意はもう現れず。
「しかし次はこうはいかんぞ!ヒゲを洗って待っておれ!!」
離れた位置から片腕を高くあげる。
「ではサラバだ・・マレオ達!
グッドドン・バーイ!」
全身に力を入れているのか両膝を曲げる。
そして周囲の砂が再び舞い上がれば、その砂と共に上空へ飛び上がった。
まるで打ち上げられたロケットのように立ち去るドドンタスを眺める。
広がる砂埃が晴れたころには人影も雲一つない青い空が姿を見せた。
《騒がしい男…》
全員が空を見上げる中、マリオは自身のヒゲを撫でつつ
付着した砂によって大きなクシャミを連発した。
伯爵Side▷