№5 次元ワザを求めて
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少女達の名前を。勇者側はひらがなカタカナ漢字問わず、
伯爵側はカタカナだとより楽しめます。
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+暗黒城+
どこを見渡しても黒い部屋に白の模様と輪郭線。
しかしこの部屋には白のフルリや色鮮やかな装飾が飾られている。
大きなクローゼット、ドレッサー、天蓋付きベッド。
世の女の子が憧れるお姫様の様な可愛らしい家具たちや
どこで調達したのか、多様なデザインの衣服が飾られている。
そんなマネーラの部屋に、幹部の二人が何故かくつろいでいた。
「マオ~…暇になっちゃったわね」
「あはは…仕方ないよ。本格的に動くことになったんだから」
「むう」
マネーラが腕をぐーんと伸ばすとベッドへ仰向きに倒れこむ。
マオはそのマネーラの様子をちらりと反応するも
座っていた傍に見えていた窓の方へと視線を向けていた。
本来なら現れたという勇者の対策を彼女達も練るべきなのだが
他に何かないかと既にナスタシアに聞いたばかりであった。
今の様子を見れば結果はこの通りなのだが。
「アタシだって守りの力もあるのにさあ…」
「ちょっと…伯爵様の前ではしゃぎ過ぎちゃった、とか」
「だってぇ~そりゃあワクワクするでしょ…ウゥーン!ひま!」
今はドドンタスがノワールの許可を得て勇者の元へ向かっている。
迂闊に手を出して計画の進行を妨げる行為は避けるべきだと
結局自室でゴロゴロと怠惰に過ごしていたのだ。
マオはふとその場から立ち、カーテンをめくる。
窓の外には紫のモヤに隠れた暗黒の空が見えており
その下に見える城外の一番下、つまり地上では
一頭身の歩く生物やサングラスをかけた亀がいた。
「…ねえ」
「んんー?」
「城内でも見たけど…あのキノコみたいなの。何か知ってる?」
「なんかねぇ、伯爵様が連れて来た魔王とかの手下とかなんとか」
「魔王…その魔王ってどうなったの?」
「さあ?もう必要ないみたいだし、
なっちゃんに"処理"されたんじゃない?」
「しょり…」
「でもせっかくあんなに連れてきたんだったらさあ~?
一人ぐらいイケメン手下もいてもいいよね…」
寝転がっていたマネーラも体を起こし、
マオの側に駆け寄ると同じように窓の外を見る。
目を細め口角を上げながら地上を見るマネーラを横目に
マオはただ苦笑するしかなかった。
—ドンドンッ
「!?」
突然部屋の外から扉を叩く大きな音が聞こえた。
それに驚いた二人は勢いよく扉の方を向く。
「おーい!マネーラ!マオ!いないかー!!」
それはドドンタスの声だった。
まるで部屋の中にいるのではないかと錯覚するほどの立派な声量。
扉も耳も壊れそうな大音量にマネーラは眉をひそめる。
「ちょっと!アタシの部屋壊さないでよね!?」
マネーラも耳を塞ぎながら負けじと大きな声で返事をし
扉の方へ近付くとゆっくりと開いた。
そこにはその大音量の主がにこやかに立ち塞がっている。
「おう!マオもいないか?」
流石に対面では声量はおさえられているもののやはり大きい。
爽やかな笑顔でむさ苦しい声をあげながら挨拶をするも
出迎えたマネーラの表情は既にゲッソリとしていた。
その背後からマオもひょいと姿を見せる。
「ドドンタス?」
「相っ変わらず騒音ね…何よ。
例の勇者の所に行くんじゃなかったの?」
「おお!いたか!!マオもいるなら丁度いい!
実はドドンと渡したいモノがあるんだ!」
目の前の彼女の様子などお構いなしに
ごそごそと懐のポケットを漁るとそこから何かを取り出す。
そして二人の前に勢いよく腕を差し出すとソレを見せた。
「…カギぃ?」
それは真っ赤な鍵。
光沢感の素材なのか光に反射して輝いており
よく見ればまるで張り巡らされた血管のようなツタの様な。
そんな繊細な模様が散りばめられていたのだ。
「これお前達のじゃないか?
マネーラが好きそうだと思ったのだが」
「んー…綺麗だけど、残念。アタシのじゃないわ」
「フムゥ」
「というかそれどこで拾ったのよ?」
「俺様の部屋の中に落ちてあったのだ。
皆に聞いてからドドーン!と
勇者をぶっ飛ばそうと思ってな!!」
熱が入れば増える声量にマネーラの表情が険しくなる。
しかし目の前のドドンタスは誇らしげな様子のままだ。
片手を腰に当て胸を張り、
鍵を持つ方の手首をゆらゆらと揺らしている。
それをマネーラがひったくる様に鍵を取り上げた。
「じゃあアタシが調べておくから、
ちゃっちゃと勇者を倒してきなさいよ」
「おう!それは有り難い!!では行ってくるぞ!!」
「はいは~い」
鍵をひったくられたことで一瞬驚く表情を見せるも
マネーラの言葉に安心したのかニカっと笑みを浮かべる。
そうしてドドンタスは気合の入った雄叫びをあげながら
長い静かな廊下を走り去って行った。
それを呆れた様子で見送ると、
背後に放置されていたマオの方を振り向いた。
「鍵を見つけたの?」
「えぇ。これ、マオのじゃない?」
流石に話の流れは把握していたのか。
様子を見たマネーラはひったくった赤い鍵をマオに見せ、
彼女もそれを手にとり見つめる。
間近で見るとそれは金属ではなくガラスに近い感触で
はっきり透き通るような透明度ではないが
鍵の下にある自分の指の輪郭が
ぼやけて見えるぐらいにうっすらと見える。
それでも十分に綺麗な質感だった。
「ガラスの…カギ?」
「ねぇー。チョ~綺麗」
「なんでドドンタスの部屋にあったんだろう」
「あの筋肉バカの事だから、
どっかのカギ持って帰って落としてたんじゃないの?」
「う~ん…」
そもそもあのドドンタスに鍵という概念はあるのだろうか。
自身の部屋の鍵をも壊して
それ以降鍵なしの部屋で過ごしているというのに。
言われたマオも言ったマネーラも後から気付き
鍵を見つめながら静寂になった。
「…この暗黒城で、こんな鍵使うかな」
「さあ…」
それはマネーラも少し思った事だった。
暗黒城はその名の通り、黒に染められている。
色があるとしても空の紫か、
その城を根城としたノワール達であろう。
お互いに悩むように唸り、再び黙り込む。
しかしその二回目の静寂は
マネーラの「あ、」という言葉で破られた。
「でもさあ。このお城、
案外使われてない部屋とか沢山あるかもよ?」
「使われてない部屋?」
「ホラ、このお城ってかなり大きいじゃない?
でもちゃんと使ってるのはこういう自分の部屋とか、
大広間ぐらいで…」
「…確かに」
「そこにあるのに開かない扉とかも見かけたことあるし…
隠し部屋とか!」
そう話すマネーラの声色はどんどん弾んでいけば
マオもそれに釣られるように頷き、表情が明るくなる。
「どうせ暇なんだからさあ、いっちょ宝探しにでもいく?」
「ふふっなんだか楽しそう!」
「でしょ?勇者を叩きのめすヒントも見つかるかも!」
お互いの意見が合い、笑みを見せあう。
マオは手に持った鍵を懐のポケットに収めると
マネーラと共に鍵の正体を探すため、城の探検に向かった。
勇者Side▷