🐍- ハートの温度
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彼女が新メンバーとしてグループに配属されることが発表された、あの配信の日のことを、私は今でもはっきりと覚えている。
一目惚れって、こういう瞬間に起こるんだろうな、って。
震える声で決意を語るその小さな身体を見て、一生かけて守りたい、そう思ったんだ。
彼女――さくらは、私より一つだけ年上だった。
眩しいくらいに無邪気な笑顔も、ふとした瞬間に覗く儚げな横顔も、メンバーにちょっかいをかけるお茶目な姿も、どれもが愛おしくて仕方がなかった。
毎日のように話しかけて、誘って、距離を縮めた。
配属された時期は別々だったけど、オーディションに受かったのは同じ日。そこにある微妙な距離感を埋めるように、自主練に誘い、一緒に寮の部屋で映画を観て、言葉を交わした。
彼女が私の名前を「天さん」から「天ちゃん」、そして「天」と呼び捨てにするようになった頃――私はついに、告白した。
さくらは、頬を真っ赤に染めて、小さくうなずいた。その仕草があまりにも可愛くて、今でもその時の表情は、まぶたの裏に焼きついている。
あれから、もう四年半が経つ。
喧嘩らしい喧嘩はしていない。きっと、順調な関係だ。そう思いたい。
少なくとも、私は彼女を不安にさせないように、気をつけている。
男装企画で他のメンバーに胸きゅんゼリフを言った日は、収録が終わるなり彼女の元へ駆けつけ、「演技だったんだよ、好きなのはさくらだけ」と伝える。
ライブで他のメンバーと近い距離の演出があれば、すぐに説明し、彼女への愛を上塗りするように言葉を重ねる。
それくらい、私は彼女を大切に思っている。失いたくなくて、誰よりも笑顔にしたいと願っている。
けれど、いつだってさくらは笑うのだ。
私の言葉に驚いたような顔をしたあと、すぐに取り繕ったような笑顔で「大丈夫だよ、心配してないよ」って。
私はいちいち嫉妬して、彼女を気にしてばかりなのに。さくらは、まるで気にしていないふうにふるまう。
その落ち着いた態度が、大人びた仕草が、たった一歳違いの年齢以上に距離を感じさせた。
私はいつまで経っても子どもで、さくらはいつも、大人だ。
彼女が本当に私のことを好きなのか、不安になる瞬間がある。
今日もまた、男装する企画。三期生のお願いを叶えるために、純葉に胸きゅんゼリフを囁いた。もちろん、演技。
でもそれをちゃんと伝えたくて、さくらの元へ向かった。
「演技だからね、本当に好きなのはさくらだけだから」
そう言った私に、さくらはいつも通り、笑って「知ってるよ、大丈夫」と答える。
自分だけが子どもみたいで、なんだか苦しくて。
そのまま近くにいた唯衣ちゃんとゾノに、思わず愚痴をこぼしてしまった。
「……さくらって、ほんとにわたしのこと、好きなのかなあ」
そう呟くと、2人はケラケラと笑い出した。
「ちょっと!人の気も知らないで!」
そう言いかけたとき、ゾノが笑いを堪えながら私の耳元でささやいた。
「さくら、ほんとはめっちゃ嫉妬してるよ?」
からかってると思って反応すると、唯衣ちゃんがさらに追い打ちをかけてきた。
「ほんまやで。天ちゃんの前じゃ隠してるけど、他のメンバーが近づくと、拗ねて麗奈とか保乃に当たり散らしてるもん」
驚きと喜びと、ほんの少しの嫉妬――いや、独占欲だろうか。
私の知らないさくらを、他の人たちが知っている。その事実が、胸の奥でひっかかった。
そのとき、ゾノが笑いながら指をさした。
「ほら、見てみ。さくら、今ちょうど麗奈ちゃんのとこで顔しかめてる」
振り返ると、ほんとうにそうだった。私はもう迷わず、さくらのもとへ向かった。
「さくら」
低くなった声に、驚いたように振り返った彼女の顔が、なんだかとても愛しくて――そのまま腕を引き、楽屋の外へ連れ出した。
人気のない廊下。自販機の横。さくらを壁に押し付けるようにして、見下ろす。
「嫉妬してたって、どういうこと?聞いてない。」
さくらは笑って、「なにそれ、知らないよ」なんて白を切ったけど、そんなの通じない。
「他の人が知ってて、私が知らないなんて許せない。私ばっか、嫉妬してバカみたいやん……」
次第に声が弱くなって、顔を伏せた私の頬を、さくらが両手で包んだ。
「天に、重いって思われたくなかったの」
上目遣いでそう言った彼女に、胸がきゅうっと締め付けられる。
「そんなことで重いとか思わんし。むしろ、重いほうがうれしい」
私がそう告げると、さくらはふっと表情を緩めて、
「そっか、ごめんね。これからはちゃんと言うね」
と優しく微笑んだ。やっぱりこの人は、大人で。私は子どもなんだなって、ちょっとだけ傷ついた。
でもその瞬間、頬を包んでいたさくらの手が、ぐにっと私の顔を潰す。
「ちょ、なにっ」
驚いていると、さくらが怒涛のように喋り出した。
「じゃあ言うけどね、今日のあれ何?!純葉と近すぎ!あんなにサービスして!かわいいとかかっこいいとか言われて!天は私の恋人でしょ!」
さっきまでの穏やかな顔はどこへやら。マシンガンのように不満を並べ立て、そして最後には真っ赤な顔で小さな声でこう言った。
「……ちゃんと、好きでいてね」
その一言が、心に深く染みた。
気がつけば、私は彼女を強く抱きしめていた。
「さくらがグループに加入したときから、ずっとさくらだけやから」
「知ってるよ。天、わたしのこと大好きだもんね」
そう言って唇を重ねてきたさくらに、ああ、やっぱり敵わないな、と思った。
でも、これでいい。来年も、再来年も。その先の未来も、ずっとさくらと、こんなふうにたわいもない話をしていたい。
彼女のすべてを知りたいと思ってしまう、こんな子どもな私でも。愛してくれますように。
おまけ
楽屋に戻ると、さくらは一直線にゾノと唯衣ちゃんの元へ駆け出していった。
「ちょっと!玲ちゃん!唯衣ちゃん!天に変なこと吹き込んだでしょ!!」
「え〜?違うって、唯衣ちゃんが言ったんだよ。私は止めたのに〜」
「ちょっと唯衣ちゃん?!勝手にそんなこと言わないでよ!恥ずかしいでしょ!!」
「え〜だって玲ちゃんが先に……」
「言い訳しないの!」
「ええ?でもさくらが嫉妬してるって伝えた方が、天が喜んで、2人がラブラブになれると思ってさ?」
バタバタと繰り広げられる三人のやりとりに苦笑していると、さくらがぽつりと――
「……まあ、それは……ありがと」
と照れくさそうに笑った。
「うわ、かわいい」
唯衣ちゃんのその言葉に、思わず私もムッとする。
「ちょっと!人の彼女口説かないで!」
するとゾノがにやりと笑ってさくらの頭を撫でながら言った。
「さくら〜、天ちゃんに何かされたら、すぐ私のとこおいでね?」
懐いてるのか、さくらはまんざらでもなさそうに笑っていて、私はたまらず叫んだ。
「さくらは私のことが、好きだよねっ?!」
「もちろんだよ。天、大好き」
その一言に、全身の力が抜けていく。
視線を感じて振り返ると、いつのまにか他の2期生たちまでが私たちを見守っていた。
「誰もさくらちゃんと天ちゃんの邪魔なんてせえへんから、安心しいや」
保乃のその言葉に、みんながうなずく。
同期って、ほんとうにいいな。
そして――その中心にいて、少し照れくさそうに笑うさくらが、私は世界で一番好きだ。
一目惚れって、こういう瞬間に起こるんだろうな、って。
震える声で決意を語るその小さな身体を見て、一生かけて守りたい、そう思ったんだ。
彼女――さくらは、私より一つだけ年上だった。
眩しいくらいに無邪気な笑顔も、ふとした瞬間に覗く儚げな横顔も、メンバーにちょっかいをかけるお茶目な姿も、どれもが愛おしくて仕方がなかった。
毎日のように話しかけて、誘って、距離を縮めた。
配属された時期は別々だったけど、オーディションに受かったのは同じ日。そこにある微妙な距離感を埋めるように、自主練に誘い、一緒に寮の部屋で映画を観て、言葉を交わした。
彼女が私の名前を「天さん」から「天ちゃん」、そして「天」と呼び捨てにするようになった頃――私はついに、告白した。
さくらは、頬を真っ赤に染めて、小さくうなずいた。その仕草があまりにも可愛くて、今でもその時の表情は、まぶたの裏に焼きついている。
あれから、もう四年半が経つ。
喧嘩らしい喧嘩はしていない。きっと、順調な関係だ。そう思いたい。
少なくとも、私は彼女を不安にさせないように、気をつけている。
男装企画で他のメンバーに胸きゅんゼリフを言った日は、収録が終わるなり彼女の元へ駆けつけ、「演技だったんだよ、好きなのはさくらだけ」と伝える。
ライブで他のメンバーと近い距離の演出があれば、すぐに説明し、彼女への愛を上塗りするように言葉を重ねる。
それくらい、私は彼女を大切に思っている。失いたくなくて、誰よりも笑顔にしたいと願っている。
けれど、いつだってさくらは笑うのだ。
私の言葉に驚いたような顔をしたあと、すぐに取り繕ったような笑顔で「大丈夫だよ、心配してないよ」って。
私はいちいち嫉妬して、彼女を気にしてばかりなのに。さくらは、まるで気にしていないふうにふるまう。
その落ち着いた態度が、大人びた仕草が、たった一歳違いの年齢以上に距離を感じさせた。
私はいつまで経っても子どもで、さくらはいつも、大人だ。
彼女が本当に私のことを好きなのか、不安になる瞬間がある。
今日もまた、男装する企画。三期生のお願いを叶えるために、純葉に胸きゅんゼリフを囁いた。もちろん、演技。
でもそれをちゃんと伝えたくて、さくらの元へ向かった。
「演技だからね、本当に好きなのはさくらだけだから」
そう言った私に、さくらはいつも通り、笑って「知ってるよ、大丈夫」と答える。
自分だけが子どもみたいで、なんだか苦しくて。
そのまま近くにいた唯衣ちゃんとゾノに、思わず愚痴をこぼしてしまった。
「……さくらって、ほんとにわたしのこと、好きなのかなあ」
そう呟くと、2人はケラケラと笑い出した。
「ちょっと!人の気も知らないで!」
そう言いかけたとき、ゾノが笑いを堪えながら私の耳元でささやいた。
「さくら、ほんとはめっちゃ嫉妬してるよ?」
からかってると思って反応すると、唯衣ちゃんがさらに追い打ちをかけてきた。
「ほんまやで。天ちゃんの前じゃ隠してるけど、他のメンバーが近づくと、拗ねて麗奈とか保乃に当たり散らしてるもん」
驚きと喜びと、ほんの少しの嫉妬――いや、独占欲だろうか。
私の知らないさくらを、他の人たちが知っている。その事実が、胸の奥でひっかかった。
そのとき、ゾノが笑いながら指をさした。
「ほら、見てみ。さくら、今ちょうど麗奈ちゃんのとこで顔しかめてる」
振り返ると、ほんとうにそうだった。私はもう迷わず、さくらのもとへ向かった。
「さくら」
低くなった声に、驚いたように振り返った彼女の顔が、なんだかとても愛しくて――そのまま腕を引き、楽屋の外へ連れ出した。
人気のない廊下。自販機の横。さくらを壁に押し付けるようにして、見下ろす。
「嫉妬してたって、どういうこと?聞いてない。」
さくらは笑って、「なにそれ、知らないよ」なんて白を切ったけど、そんなの通じない。
「他の人が知ってて、私が知らないなんて許せない。私ばっか、嫉妬してバカみたいやん……」
次第に声が弱くなって、顔を伏せた私の頬を、さくらが両手で包んだ。
「天に、重いって思われたくなかったの」
上目遣いでそう言った彼女に、胸がきゅうっと締め付けられる。
「そんなことで重いとか思わんし。むしろ、重いほうがうれしい」
私がそう告げると、さくらはふっと表情を緩めて、
「そっか、ごめんね。これからはちゃんと言うね」
と優しく微笑んだ。やっぱりこの人は、大人で。私は子どもなんだなって、ちょっとだけ傷ついた。
でもその瞬間、頬を包んでいたさくらの手が、ぐにっと私の顔を潰す。
「ちょ、なにっ」
驚いていると、さくらが怒涛のように喋り出した。
「じゃあ言うけどね、今日のあれ何?!純葉と近すぎ!あんなにサービスして!かわいいとかかっこいいとか言われて!天は私の恋人でしょ!」
さっきまでの穏やかな顔はどこへやら。マシンガンのように不満を並べ立て、そして最後には真っ赤な顔で小さな声でこう言った。
「……ちゃんと、好きでいてね」
その一言が、心に深く染みた。
気がつけば、私は彼女を強く抱きしめていた。
「さくらがグループに加入したときから、ずっとさくらだけやから」
「知ってるよ。天、わたしのこと大好きだもんね」
そう言って唇を重ねてきたさくらに、ああ、やっぱり敵わないな、と思った。
でも、これでいい。来年も、再来年も。その先の未来も、ずっとさくらと、こんなふうにたわいもない話をしていたい。
彼女のすべてを知りたいと思ってしまう、こんな子どもな私でも。愛してくれますように。
おまけ
楽屋に戻ると、さくらは一直線にゾノと唯衣ちゃんの元へ駆け出していった。
「ちょっと!玲ちゃん!唯衣ちゃん!天に変なこと吹き込んだでしょ!!」
「え〜?違うって、唯衣ちゃんが言ったんだよ。私は止めたのに〜」
「ちょっと唯衣ちゃん?!勝手にそんなこと言わないでよ!恥ずかしいでしょ!!」
「え〜だって玲ちゃんが先に……」
「言い訳しないの!」
「ええ?でもさくらが嫉妬してるって伝えた方が、天が喜んで、2人がラブラブになれると思ってさ?」
バタバタと繰り広げられる三人のやりとりに苦笑していると、さくらがぽつりと――
「……まあ、それは……ありがと」
と照れくさそうに笑った。
「うわ、かわいい」
唯衣ちゃんのその言葉に、思わず私もムッとする。
「ちょっと!人の彼女口説かないで!」
するとゾノがにやりと笑ってさくらの頭を撫でながら言った。
「さくら〜、天ちゃんに何かされたら、すぐ私のとこおいでね?」
懐いてるのか、さくらはまんざらでもなさそうに笑っていて、私はたまらず叫んだ。
「さくらは私のことが、好きだよねっ?!」
「もちろんだよ。天、大好き」
その一言に、全身の力が抜けていく。
視線を感じて振り返ると、いつのまにか他の2期生たちまでが私たちを見守っていた。
「誰もさくらちゃんと天ちゃんの邪魔なんてせえへんから、安心しいや」
保乃のその言葉に、みんながうなずく。
同期って、ほんとうにいいな。
そして――その中心にいて、少し照れくさそうに笑うさくらが、私は世界で一番好きだ。
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