🍀→🦒→🦉- 幸せ
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ずっと、井上の隣は私だった。
加入したばかりで、右も左も分からず、不安で押し潰されそうだったあの頃。
そんな時期を乗り越えられたのは、隣に井上がいてくれたからだ。
その存在が、どれだけ心強かったことか。
私はずっと、井上も同じ気持ちでいてくれているのだと思っていた。
番組や雑誌の撮影で隣に並ぶことが多く、シンメとしてパフォーマンスしたこともあった。
ステージで息を合わせて踊るたびに、自然と視線が交わり、同じタイミングで笑う。
そんな瞬間が、特別だった。
私にとって井上は、誰よりも近くて、特別な存在だった。
そして私は、井上にとってもそうでありたいと、ずっと思っていた。
でも、好きだったからこそ、分かってしまった。
井上が私じゃない人に、少しずつ恋をしていくのを。
気づいた時にはもう遅くて、どんなに井上との仲の良さを振りかざしてみても、番組で茉里乃との関係を茶化して笑いに変えてみても、それはただの強がりでしかなかった。
私に勝ち目なんてなかった。
井上が茉里乃に惹かれていく様子を、何も言えずに隣で見ているのは、正直つらかった。
せめて見えないところで想っていてくれたらよかったのに、それなのに私は、“井上の相棒”というポジションに収まってしまっていた。
本人も気づいていないのかもしれない。
茉里乃のまっすぐすぎるアプローチに、どこか嬉しそうにしている井上に、私はもう何も言えなかった。
「茉里乃ちゃん、勘弁してや〜。唯衣ちゃんもなんとか言ったって」
そう笑いながら、私のほうを振り返るその顔が、無邪気で、残酷で、それでも私は、必死で笑顔を作っていた。
井上が茉里乃を好きだと気づいてから、私は自然と井上と2人でいる時間を避けるようになっていた。
だけどある日、久しぶりに井上からご飯に誘われた。
レッスン帰り、かつて何度も通ったお気に入りのお店。
テーブルに向かい合って座ると、井上は茉里乃の話ばかりしていた。
茉里乃ちゃんの好きな食べ物は何か、仲の良い後輩は誰なのか。
茉里乃の押しの強さに困っている、なんて言いながら、どこか嬉しそうな井上を見て、私は胸の奥がひやりと冷たくなった。
本当は聞きたくなかった。
こうなることはわかっていたはずなのに。
それでも私は、誘いを断れなかった。
井上と話せないよりは、ましだったから。
この“相棒”という立場だって、本当は欲しくなかった。
だけど、井上のいちばん近くにいられるのはこの場所だとしたら、私はこのポジションを、簡単には手放せなかった。
たとえ一瞬でも、この位置にいると実感できるその時だけは、まるで茉里乃に勝てたような気がしてしまうから。
ああ、いつの間に、こんなに好きになってしまったんだろう。
もしどこかで立ち止まって気づいていれば、今こんな思いをせずに済んだのかもしれない。
それでも、私が望んで井上に恋をした。
叶わなくても、気持ちを伝えられなくても、誰にも気づかれなくても――
それでも、この小さな初恋を、私は大切にしたいと思った。
茉里乃の思わせぶりな言動に井上が頭を抱えているとき。
ゾノや天ちゃんに甘やかされている茉里乃を、井上が少し寂しそうに見つめているとき。
そんな井上を、私は静かに見つめて、心の奥で少しずつ傷ついていた。
「私の方が先だったのに」
そんな思いが、ふと頭をかすめる。
でも、それはただの自己満足だ。
私が何もしなかっただけ。
井上の隣にいることに安心して、甘えて、ただ時間だけが過ぎていった。
特別仲が良いわけでもなかった茉里乃が、まっすぐに気持ちをぶつけていったその勇気と、
行動を起こさずに「相棒」の立場にすがっていた私。
比べるまでもない。答えは、最初から明らかだった。
それに、私が井上を好きな気持ちと同じくらい、井上も茉里乃のことを想っているのなら――
やっぱり、私は“違った”のだと思う。
最初から、井上の幸せだけを願っていたはずなのに。
いつの間にか、私は井上の隣を奪われることを恐れて、自分勝手になっていた。
でも、最後だけはちゃんとしたい。
この気持ちに蓋をして、笑顔で井上の背中を押したい。
「誰よりも茉里乃を幸せにしてあげてね」
そう伝えて、私は“相棒”でいてあげる。
井上のすぐ隣で、いちばん近くで、でも決して届かない場所から。
今はまだ、いい人のふりをして、自分を守ることしかできないけれど。
この気持ちがばれないように、隠したままでもいい。
誰にも見つからないように、そっと、この想いを胸の奥にしまっておく。
いつかこの恋も、きっと思い出になる。
そう思える日が来るまで、私は笑っていよう。
それがたとえ、少しだけ苦しくても。
まだ、もう少しだけ。
井上の隣にいさせて。
“相棒”という名前の、私なりの片想いの居場所で。
加入したばかりで、右も左も分からず、不安で押し潰されそうだったあの頃。
そんな時期を乗り越えられたのは、隣に井上がいてくれたからだ。
その存在が、どれだけ心強かったことか。
私はずっと、井上も同じ気持ちでいてくれているのだと思っていた。
番組や雑誌の撮影で隣に並ぶことが多く、シンメとしてパフォーマンスしたこともあった。
ステージで息を合わせて踊るたびに、自然と視線が交わり、同じタイミングで笑う。
そんな瞬間が、特別だった。
私にとって井上は、誰よりも近くて、特別な存在だった。
そして私は、井上にとってもそうでありたいと、ずっと思っていた。
でも、好きだったからこそ、分かってしまった。
井上が私じゃない人に、少しずつ恋をしていくのを。
気づいた時にはもう遅くて、どんなに井上との仲の良さを振りかざしてみても、番組で茉里乃との関係を茶化して笑いに変えてみても、それはただの強がりでしかなかった。
私に勝ち目なんてなかった。
井上が茉里乃に惹かれていく様子を、何も言えずに隣で見ているのは、正直つらかった。
せめて見えないところで想っていてくれたらよかったのに、それなのに私は、“井上の相棒”というポジションに収まってしまっていた。
本人も気づいていないのかもしれない。
茉里乃のまっすぐすぎるアプローチに、どこか嬉しそうにしている井上に、私はもう何も言えなかった。
「茉里乃ちゃん、勘弁してや〜。唯衣ちゃんもなんとか言ったって」
そう笑いながら、私のほうを振り返るその顔が、無邪気で、残酷で、それでも私は、必死で笑顔を作っていた。
井上が茉里乃を好きだと気づいてから、私は自然と井上と2人でいる時間を避けるようになっていた。
だけどある日、久しぶりに井上からご飯に誘われた。
レッスン帰り、かつて何度も通ったお気に入りのお店。
テーブルに向かい合って座ると、井上は茉里乃の話ばかりしていた。
茉里乃ちゃんの好きな食べ物は何か、仲の良い後輩は誰なのか。
茉里乃の押しの強さに困っている、なんて言いながら、どこか嬉しそうな井上を見て、私は胸の奥がひやりと冷たくなった。
本当は聞きたくなかった。
こうなることはわかっていたはずなのに。
それでも私は、誘いを断れなかった。
井上と話せないよりは、ましだったから。
この“相棒”という立場だって、本当は欲しくなかった。
だけど、井上のいちばん近くにいられるのはこの場所だとしたら、私はこのポジションを、簡単には手放せなかった。
たとえ一瞬でも、この位置にいると実感できるその時だけは、まるで茉里乃に勝てたような気がしてしまうから。
ああ、いつの間に、こんなに好きになってしまったんだろう。
もしどこかで立ち止まって気づいていれば、今こんな思いをせずに済んだのかもしれない。
それでも、私が望んで井上に恋をした。
叶わなくても、気持ちを伝えられなくても、誰にも気づかれなくても――
それでも、この小さな初恋を、私は大切にしたいと思った。
茉里乃の思わせぶりな言動に井上が頭を抱えているとき。
ゾノや天ちゃんに甘やかされている茉里乃を、井上が少し寂しそうに見つめているとき。
そんな井上を、私は静かに見つめて、心の奥で少しずつ傷ついていた。
「私の方が先だったのに」
そんな思いが、ふと頭をかすめる。
でも、それはただの自己満足だ。
私が何もしなかっただけ。
井上の隣にいることに安心して、甘えて、ただ時間だけが過ぎていった。
特別仲が良いわけでもなかった茉里乃が、まっすぐに気持ちをぶつけていったその勇気と、
行動を起こさずに「相棒」の立場にすがっていた私。
比べるまでもない。答えは、最初から明らかだった。
それに、私が井上を好きな気持ちと同じくらい、井上も茉里乃のことを想っているのなら――
やっぱり、私は“違った”のだと思う。
最初から、井上の幸せだけを願っていたはずなのに。
いつの間にか、私は井上の隣を奪われることを恐れて、自分勝手になっていた。
でも、最後だけはちゃんとしたい。
この気持ちに蓋をして、笑顔で井上の背中を押したい。
「誰よりも茉里乃を幸せにしてあげてね」
そう伝えて、私は“相棒”でいてあげる。
井上のすぐ隣で、いちばん近くで、でも決して届かない場所から。
今はまだ、いい人のふりをして、自分を守ることしかできないけれど。
この気持ちがばれないように、隠したままでもいい。
誰にも見つからないように、そっと、この想いを胸の奥にしまっておく。
いつかこの恋も、きっと思い出になる。
そう思える日が来るまで、私は笑っていよう。
それがたとえ、少しだけ苦しくても。
まだ、もう少しだけ。
井上の隣にいさせて。
“相棒”という名前の、私なりの片想いの居場所で。
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