✂️→🐍→🦉- 視線
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グループに入る、ずっと前から好きだった。
私の心はもう――天さんに奪われていた。
テレビ越しに見た、あの真っ直ぐで凛とした姿。
ステージに立てば、誰よりもまばゆく、けれどふとした瞬間には、どこか寂しげな横顔を見せる。
私の中で、天さんはずっと「特別」だった。
だから、オーディションに合格したときは夢のようだった。
嬉しさと興奮と、そして何より「これから天さんに会える」という事実が、胸の奥を熱くした。
アイドルとして叶えたい夢はたくさんあった。
大きなステージに立つこと。たくさんの人に歌を届けること。
けれど、それと同じくらい――いや、それ以上に強く願ったのは、天さんの「特別」になりたい、ということだった。
誰よりも天さんのことを好きだという自信があった。
だからこそ、どんなふうに話しかけよう、どんなタイミングで気持ちを伝えようと、毎日のように妄想を膨らませていた。
その妄想が、厳しいレッスンの日々を乗り越える力になった。
夢の中のような日々。
けれど、現実は残酷だった。
オーディションからしばらくして、ついに天さん、そして先輩たちとの初対面の日が訪れた。
緊張で手が震える中、挨拶をして、共に収録に臨み、レッスンを重ねるたびに――少しずつ、天さんとの距離が縮まっていくような気がしていた。
私はいつも、天さんを目で追っていた。
視線の先にある微細な感情や仕草を、まるでスポンジのように吸収していった。
だからこそ、気付いてしまったのだ。
天さんが、特別な想いを向けている人の存在に。
それは、私ではなかった。
天さんの目の先にいたのは、茉里乃さん――私の先輩だった。
最初は、ただの思い過ごしかもしれないと思った。
森田さんや藤吉さんのような、いつも一緒にいる印象の強い人ならまだしも、天さんと茉里乃さんは、表立って特別仲がいいようには見えなかったから。
もしかしたら、妹のように可愛がっているだけかもしれない。
年も近いし、ふわふわしていて守ってあげたくなるタイプだから。
……そう、思い込もうとした。
けれど、無理だった。
私だって、天さんに恋をしているから分かる。
あの視線――まっすぐで、優しくて、どこか切なさを孕んだ眼差しは、恋をしている人のものだった。
天さんが茉里乃さんを見つめるその目に、私は何度も胸を刺された。
天さんが誰かをこんなふうに愛おしく想うこと、それが自分ではないことに、気付かされるたびに。
私の恋は、何も始まらないまま終わったのだと悟るのに、それほど時間はかからなかった。
「まだ付き合っていないなら、チャンスがあるかもしれない」そんな希望すら、抱けなかった。
天さんの心は、すでに茉里乃さんに向かっていた。そして茉里乃さんも、それを受け止める準備をしているようだった。
ふたりが恋人になるのは、時間の問題だ。
私はそう、確信した。
それが悔しくて、切なくて、でも、どこか納得している自分もいた。
だって――お似合いだったから。
茉里乃さんは、私よりもずっと女の子らしくて、柔らかくて、守りたくなるような人だ。
私とは、何もかもが違っていた。
だけどそれでも、まだ……まだ天さんが誰のものでもないままでいてほしかった。
私の見えるところで誰かのものになるくらいなら、せめて、まだ夢を見させてほしかった。
そんな小さな願いさえ、数日後、天さんの言葉で打ち砕かれる。
「茉里乃と付き合うことになった」
――あの、晴れやかな笑顔とともに。
笑って、喜びを語る天さんを、私はただ見つめることしかできなかった。
ああ、終わったんだ。
私の恋は、ここで本当に終わったのだと、深く深く実感した。
「これもきっと、いい経験になる」 そう自分に言い聞かせるには、まだ私は強くなかった。
私の想いは、そんなに簡単に片付けられるような、軽いものじゃなかった。
だから今は――ただ泣かせてほしい。
叶わなかった恋に、意味なんて求めなくていい。
失ったものの大きさに、胸が張り裂けそうなこの夜を、私はただ、静かに泣いて過ごしたい。
いつかこの恋を、優しい記憶として笑える日が来るのだろうか。
その答えはまだ、見つからないまま――私はただ、天さんの笑顔を思い出して、また涙を流すのだった。
私の心はもう――天さんに奪われていた。
テレビ越しに見た、あの真っ直ぐで凛とした姿。
ステージに立てば、誰よりもまばゆく、けれどふとした瞬間には、どこか寂しげな横顔を見せる。
私の中で、天さんはずっと「特別」だった。
だから、オーディションに合格したときは夢のようだった。
嬉しさと興奮と、そして何より「これから天さんに会える」という事実が、胸の奥を熱くした。
アイドルとして叶えたい夢はたくさんあった。
大きなステージに立つこと。たくさんの人に歌を届けること。
けれど、それと同じくらい――いや、それ以上に強く願ったのは、天さんの「特別」になりたい、ということだった。
誰よりも天さんのことを好きだという自信があった。
だからこそ、どんなふうに話しかけよう、どんなタイミングで気持ちを伝えようと、毎日のように妄想を膨らませていた。
その妄想が、厳しいレッスンの日々を乗り越える力になった。
夢の中のような日々。
けれど、現実は残酷だった。
オーディションからしばらくして、ついに天さん、そして先輩たちとの初対面の日が訪れた。
緊張で手が震える中、挨拶をして、共に収録に臨み、レッスンを重ねるたびに――少しずつ、天さんとの距離が縮まっていくような気がしていた。
私はいつも、天さんを目で追っていた。
視線の先にある微細な感情や仕草を、まるでスポンジのように吸収していった。
だからこそ、気付いてしまったのだ。
天さんが、特別な想いを向けている人の存在に。
それは、私ではなかった。
天さんの目の先にいたのは、茉里乃さん――私の先輩だった。
最初は、ただの思い過ごしかもしれないと思った。
森田さんや藤吉さんのような、いつも一緒にいる印象の強い人ならまだしも、天さんと茉里乃さんは、表立って特別仲がいいようには見えなかったから。
もしかしたら、妹のように可愛がっているだけかもしれない。
年も近いし、ふわふわしていて守ってあげたくなるタイプだから。
……そう、思い込もうとした。
けれど、無理だった。
私だって、天さんに恋をしているから分かる。
あの視線――まっすぐで、優しくて、どこか切なさを孕んだ眼差しは、恋をしている人のものだった。
天さんが茉里乃さんを見つめるその目に、私は何度も胸を刺された。
天さんが誰かをこんなふうに愛おしく想うこと、それが自分ではないことに、気付かされるたびに。
私の恋は、何も始まらないまま終わったのだと悟るのに、それほど時間はかからなかった。
「まだ付き合っていないなら、チャンスがあるかもしれない」そんな希望すら、抱けなかった。
天さんの心は、すでに茉里乃さんに向かっていた。そして茉里乃さんも、それを受け止める準備をしているようだった。
ふたりが恋人になるのは、時間の問題だ。
私はそう、確信した。
それが悔しくて、切なくて、でも、どこか納得している自分もいた。
だって――お似合いだったから。
茉里乃さんは、私よりもずっと女の子らしくて、柔らかくて、守りたくなるような人だ。
私とは、何もかもが違っていた。
だけどそれでも、まだ……まだ天さんが誰のものでもないままでいてほしかった。
私の見えるところで誰かのものになるくらいなら、せめて、まだ夢を見させてほしかった。
そんな小さな願いさえ、数日後、天さんの言葉で打ち砕かれる。
「茉里乃と付き合うことになった」
――あの、晴れやかな笑顔とともに。
笑って、喜びを語る天さんを、私はただ見つめることしかできなかった。
ああ、終わったんだ。
私の恋は、ここで本当に終わったのだと、深く深く実感した。
「これもきっと、いい経験になる」 そう自分に言い聞かせるには、まだ私は強くなかった。
私の想いは、そんなに簡単に片付けられるような、軽いものじゃなかった。
だから今は――ただ泣かせてほしい。
叶わなかった恋に、意味なんて求めなくていい。
失ったものの大きさに、胸が張り裂けそうなこの夜を、私はただ、静かに泣いて過ごしたい。
いつかこの恋を、優しい記憶として笑える日が来るのだろうか。
その答えはまだ、見つからないまま――私はただ、天さんの笑顔を思い出して、また涙を流すのだった。
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