🌱🧸- きまぐれ
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「今日は飲むから帰り遅なる、ごめんね」
スマホの画面に表示されたその一文を、私は何度か見返していた。
「気をつけて帰ってきてね」
そう返してから、もう三時間以上が経っている。
部屋の中は静かで、時計の針の音だけがやけに耳についた。
気づけば日付が変わるまで、あと少し。
テレビもなんとなく点けてはいるけれど、内容はほとんど頭に入ってこない。
――そろそろ帰ってくるかな。
そう思ってスマホを手に取るけれど、連絡はない。
既読もつかないままだった。
待っていようと思っていたけれど、さすがに眠気も限界に近い。
今日は先に寝てしまおうか、とソファから腰を上げた、その瞬間だった。
ガチャ、と少し大きな音を立てて玄関の扉が開いた。
「……あ」
思わず小さく声が漏れる。
次の瞬間、廊下の向こうから聞こえてきたのは、聞き慣れた、けれど、どこかふにゃふにゃした声。
「ひぃちゃ〜ん……」
その声音に、ああ、結構飲んできたんだなとすぐにわかる。
慌てて玄関まで迎えに行くと、靴もちゃんと脱ぎきらないまま、ふらふらと立っている保乃ちゃんの姿があった。
「おかえり、大丈夫?」
声をかけると、顔を上げた保乃ちゃんがにへらっと笑う。
「ただいま〜……」
そう言いながら両手で私の顔をぺたぺたと触ってくる。
「ちょ、なに……」
「ひぃちゃんや〜……ほんものや……」
完全に出来上がっている様子に、思わず苦笑いが漏れた。
「とりあえず、お風呂入っておいで。冷えるよ」
やんわりとそう促すと、保乃ちゃんは一瞬ぽかんとしたあと、むっとした顔になる。
「えぇ〜……」
「えぇ〜じゃないよ」
「だって……そしたら、ひぃちゃん寝るやん……」
いつもはこんなこと言わないのに、と少し驚く。
拗ねたような、甘えたような声だった。
酔っ払いの相手は正直大変だな、と思いながらも、こういうところに弱いのは自覚している。
「寝ないよ。ちゃんと待ってる」
そう言って、私より高いところにある保乃ちゃんの頭を軽く撫でる。
「ほんま……?」
「ほんと。だから、ちゃんとお風呂入っておいで」
しばらくじっとこちらを見ていたけれど、やがて「……わかった」と小さく頷いて、素直にお風呂場へ向かっていった。
その背中を見送りながら、ふっと息をつく。
再びソファに腰を下ろすと、さっきよりも少しだけ部屋があたたかく感じた。
それからどれくらい経っただろうか。
バスルームのドアが開く音がして、顔を上げる。
「ひぃちゃ〜ん……あがったで……」
戻ってきた保乃ちゃんは、髪をびしょびしょに濡らしたままだった。
手にはドライヤーを持っているのに、使った様子はない。
「ちょっと、それ乾かさないと風邪ひくよ?」
そう言うと、「ん」とだけ返事をして、そのままドライヤーを差し出してくる。
「……自分でやらないの?」
「んー……むり……」
完全に甘えるモードだ。
仕方ないな、と小さく笑いながらドライヤーを受け取る。
「ほら、こっち来て」
ソファに座り直し、足の間に座らせると、保乃ちゃんは素直に収まった。
スイッチを入れると、温かい風と一緒にシャンプーの匂いがふわっと広がる。
「気持ちいい……」
目を細めながら、上機嫌にそう呟く保乃ちゃん。
濡れた髪に指を通しながら、ゆっくり乾かしていく。
その間も、ときどきこちらを振り返っては、にこっと笑う。
「そんなに嬉しい?」
「うん……」
「そっか」
なんでもない時間なのに、不思議と心が落ち着いた。
やがて髪もすっかり乾ききって、ドライヤーのスイッチを切る。
「はい、終わり」
「ありがと……」
「もう遅いし、寝よっか」
そう言った瞬間だった。
「ひぃちゃん!」
急に大きな声を出されて、びくっとする。
「なに?」
振り向くと、まっすぐこちらを見つめる瞳。
「すきっていって!」
あまりにも唐突で、一瞬言葉を失う。
「え……なんで急に……」
「……わたしのこと、すきじゃない……?」
みるみるうちに不安そうな顔になっていく保乃ちゃん。
今にも泣きそうな目を見て、慌てて言葉を返す。
「好きだよ!!!」
思わず大きな声になった。
一瞬の沈黙のあと、ぱっと表情が明るくなる。
「……よかったぁ」
安心したように笑って、今度は自分から私の手をぎゅっと掴む。
「ほのもすき〜」
そのまま手を引かれて、寝室へ。
横になるなり、保乃ちゃんはすぐに目を閉じた。
まるでスイッチが切れたみたいに、あっという間に寝息を立て始める。
「……ほんとにもう」
呆れながらも、頬にそっと触れる。
静かな寝顔に、さっきまでの賑やかさが嘘みたいだった。
「おやすみ」
小さく呟いて、隣に横になる。
そのまま私も、ゆっくりと眠りに落ちていった。
――そして翌朝。
「おはよ」
何事もなかったかのように起きてきた保乃ちゃんは、きょとんとした顔でこちらを見る。
「昨日、ちゃんと帰ってこれてた?」
「……え?」
どうやら、本当に何も覚えていないらしい。
「なにも覚えてないの?」
「え、なんかあった?」
その無邪気な反応に、思わずため息が出る。
これは、飲ませすぎないようにしないと。
心の中でそう固く誓った。
スマホの画面に表示されたその一文を、私は何度か見返していた。
「気をつけて帰ってきてね」
そう返してから、もう三時間以上が経っている。
部屋の中は静かで、時計の針の音だけがやけに耳についた。
気づけば日付が変わるまで、あと少し。
テレビもなんとなく点けてはいるけれど、内容はほとんど頭に入ってこない。
――そろそろ帰ってくるかな。
そう思ってスマホを手に取るけれど、連絡はない。
既読もつかないままだった。
待っていようと思っていたけれど、さすがに眠気も限界に近い。
今日は先に寝てしまおうか、とソファから腰を上げた、その瞬間だった。
ガチャ、と少し大きな音を立てて玄関の扉が開いた。
「……あ」
思わず小さく声が漏れる。
次の瞬間、廊下の向こうから聞こえてきたのは、聞き慣れた、けれど、どこかふにゃふにゃした声。
「ひぃちゃ〜ん……」
その声音に、ああ、結構飲んできたんだなとすぐにわかる。
慌てて玄関まで迎えに行くと、靴もちゃんと脱ぎきらないまま、ふらふらと立っている保乃ちゃんの姿があった。
「おかえり、大丈夫?」
声をかけると、顔を上げた保乃ちゃんがにへらっと笑う。
「ただいま〜……」
そう言いながら両手で私の顔をぺたぺたと触ってくる。
「ちょ、なに……」
「ひぃちゃんや〜……ほんものや……」
完全に出来上がっている様子に、思わず苦笑いが漏れた。
「とりあえず、お風呂入っておいで。冷えるよ」
やんわりとそう促すと、保乃ちゃんは一瞬ぽかんとしたあと、むっとした顔になる。
「えぇ〜……」
「えぇ〜じゃないよ」
「だって……そしたら、ひぃちゃん寝るやん……」
いつもはこんなこと言わないのに、と少し驚く。
拗ねたような、甘えたような声だった。
酔っ払いの相手は正直大変だな、と思いながらも、こういうところに弱いのは自覚している。
「寝ないよ。ちゃんと待ってる」
そう言って、私より高いところにある保乃ちゃんの頭を軽く撫でる。
「ほんま……?」
「ほんと。だから、ちゃんとお風呂入っておいで」
しばらくじっとこちらを見ていたけれど、やがて「……わかった」と小さく頷いて、素直にお風呂場へ向かっていった。
その背中を見送りながら、ふっと息をつく。
再びソファに腰を下ろすと、さっきよりも少しだけ部屋があたたかく感じた。
それからどれくらい経っただろうか。
バスルームのドアが開く音がして、顔を上げる。
「ひぃちゃ〜ん……あがったで……」
戻ってきた保乃ちゃんは、髪をびしょびしょに濡らしたままだった。
手にはドライヤーを持っているのに、使った様子はない。
「ちょっと、それ乾かさないと風邪ひくよ?」
そう言うと、「ん」とだけ返事をして、そのままドライヤーを差し出してくる。
「……自分でやらないの?」
「んー……むり……」
完全に甘えるモードだ。
仕方ないな、と小さく笑いながらドライヤーを受け取る。
「ほら、こっち来て」
ソファに座り直し、足の間に座らせると、保乃ちゃんは素直に収まった。
スイッチを入れると、温かい風と一緒にシャンプーの匂いがふわっと広がる。
「気持ちいい……」
目を細めながら、上機嫌にそう呟く保乃ちゃん。
濡れた髪に指を通しながら、ゆっくり乾かしていく。
その間も、ときどきこちらを振り返っては、にこっと笑う。
「そんなに嬉しい?」
「うん……」
「そっか」
なんでもない時間なのに、不思議と心が落ち着いた。
やがて髪もすっかり乾ききって、ドライヤーのスイッチを切る。
「はい、終わり」
「ありがと……」
「もう遅いし、寝よっか」
そう言った瞬間だった。
「ひぃちゃん!」
急に大きな声を出されて、びくっとする。
「なに?」
振り向くと、まっすぐこちらを見つめる瞳。
「すきっていって!」
あまりにも唐突で、一瞬言葉を失う。
「え……なんで急に……」
「……わたしのこと、すきじゃない……?」
みるみるうちに不安そうな顔になっていく保乃ちゃん。
今にも泣きそうな目を見て、慌てて言葉を返す。
「好きだよ!!!」
思わず大きな声になった。
一瞬の沈黙のあと、ぱっと表情が明るくなる。
「……よかったぁ」
安心したように笑って、今度は自分から私の手をぎゅっと掴む。
「ほのもすき〜」
そのまま手を引かれて、寝室へ。
横になるなり、保乃ちゃんはすぐに目を閉じた。
まるでスイッチが切れたみたいに、あっという間に寝息を立て始める。
「……ほんとにもう」
呆れながらも、頬にそっと触れる。
静かな寝顔に、さっきまでの賑やかさが嘘みたいだった。
「おやすみ」
小さく呟いて、隣に横になる。
そのまま私も、ゆっくりと眠りに落ちていった。
――そして翌朝。
「おはよ」
何事もなかったかのように起きてきた保乃ちゃんは、きょとんとした顔でこちらを見る。
「昨日、ちゃんと帰ってこれてた?」
「……え?」
どうやら、本当に何も覚えていないらしい。
「なにも覚えてないの?」
「え、なんかあった?」
その無邪気な反応に、思わずため息が出る。
これは、飲ませすぎないようにしないと。
心の中でそう固く誓った。
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