🐍- 約束だよ?
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そんな寂しそうな顔で笑わんでよ。
そう言いたいのに、喉の奥に言葉が引っかかって、結局何も言えない。
目の前のさくらは、いつもの柔らかい笑顔を浮かべている。
でもその笑顔が、少しだけ無理をしていることくらい、長く一緒にいれば分かってしまう。
身を引くって、決めたはずなのに。
その細い肩を抱き寄せて、 そのまま離さないで、自分のものにしてしまいたくなる。
そんな衝動を、必死で押し込める。
さくらが、保乃のことを好きだって相談してきたとき。
私は、応援するって決めた。
「ねえ天、聞いてほしいことあるんだけどさ」
そう言って、少し照れくさそうに笑うさくら。
「なに?」
「わたしさ……保乃ちゃんのこと、好きかもしれない」
そのときのさくらの顔は、今でもはっきり覚えている。
頬をほんのり赤くして、 嬉しそうで、恥ずかしそうで、 でもどうしようもなく幸せそうな顔で笑っていた。
その笑顔を見た瞬間、 ああ、って思った。
私の入る隙なんて、ないんだなって。
「そっかあ」
なるべく自然に笑って返した。
「応援するで」
そう言った私に、さくらは本当に嬉しそうに笑った。
その笑顔が好きだから。
だからこそ、壊したくなかった。
保乃と私じゃ、全然タイプが違う。
落ち着いていて、大人っぽくて、 少し余裕のある優しさを持っている保乃。
それに比べて私は、 まだまだ子どもで、 感情もすぐ顔に出てしまう。
「天ってさ、ほんと優しいよね」
なんて言われるたびに、 少しだけ胸が痛かった。
だってそれは、 私が一番なりたい立場じゃないから。
「私、年上のお姉さんっぽい人好きなんだよね」
そう笑って言われたとき。
ああ、やっぱり無理なんだって思った。
だからせめて、 さくらを傍で見守ろうって思ったのに。
「しょうがないよね」
ぽつりと、さくらが言った。
「保乃ちゃんは、ひかるちゃんが好きなんだろうなって……薄々わかってた」
その声は、思っていたより静かだった。
強がっているのが、痛いほど伝わってくる。
告白することも出来ず、 ただ自分の好きな人が、別の人と付き合ったのを知るだけ。
それでもさくらは、泣かなかった。
ただ少しだけ、寂しそうに笑っただけだった。
そんなさくらに、 今、自分の想いを伝えるのはきっとずるい。
伝えることも出来ず燻ったままのさくらの気持ちを知りながら、 自分だけ楽になるなんてできない。
だから私は、何も言えない。
「保乃ちゃん誘っちゃおっかなー」
そんなことを言って、さくらが笑いながら見せてきたのは、 水族館のチケットだった。
「ほら、これ。二枚あるんだよ」
「ええやん。誘ったら?」
「……うーん」
さくらは少しだけ困った顔をした。
「でもさ、断られたらちょっと立ち直れないかも」
「弱っ」
そう言って笑ったけど、 その気持ちは痛いほど分かった。
そのチケットの一枚は、今。
私の手の中にある。
本来ここにいるはずだったのは、 保乃だったのに。
隣にいるのが私なんて、 さくらは不本意だと思うけど。
それでも。
水族館なんて、どう見てもデートスポットな場所に、 代わりだとしてもさくらと来られたことが、嬉しい。
だから私は、 馬鹿なふりをして楽しもうと決めた。
「うわ、めっちゃでかい」
「ほんとだ」
巨大な水槽の前で、さくらが目を輝かせる。
ゆっくり泳ぐ魚たち。
青い光に包まれた空間。
そのガラスに、私たちの姿がぼんやり映る。
でも私は。
展示なんてほとんど見ていなかった。
水槽のガラスに反射する、 さくらの顔ばかり見つめてしまう。
楽しそうに笑う顔。
少し驚いたときの表情。
魚を指さして、子どもみたいに笑うところ。
全部が、愛おしくて。
好きだという気持ちが、 どんどん膨らんでいく。
こんなことなら、来なければよかったのかな。
そんな考えが、頭をよぎる。
でもきっと。
もし今日さくらが一人でここに来ていたら、 私はそれを想像してしまって、
結局後悔したんだろう。
一通り水族館を回ったあと。
館内のベンチに並んで座る。
人の少ないエリアで、 水槽の光だけが静かに揺れている。
今日ここまで、さくらは一度も 保乃の話をしなかった。
恋愛の話も、まったく。
だから少しだけ安心していたのに。
「ねえ天」
ぽつりと、さくらが言った。
「ん?」
「わたしさ」
少しだけ間があって。
「保乃ちゃんしか知らないんだ」
「うん」
「誰かを好きになるのって、あんな感じなんだなって思って」
そう言って、さくらは小さく笑った。
「きっとさ」
水槽を見つめたまま、さくらは続ける。
「私のことを好きになってくれる人なんて、いないんだろうなあ」
諦めたみたいな笑顔。
その瞬間。
胸の奥が、ぎゅっと痛くなった。
まるで、 私の気持ちが最初から存在しなかったみたいに思えて。
気づいたら、 さくらの手を握っていた。
ぎゅっと。
自分でも驚くくらい強く。
——しまった。
そう思ったときには、もう遅かった。
好きの一言も言えない。
誤魔化す言葉も出てこない。
ただ、手を握ったまま固まる。
数秒なのか、数分なのか。
とにかく長く感じる沈黙のあと。
さくらが、ゆっくり私の手を握り返した。
「ごめん」
小さな声だった。
「今のは正直、天がこうしてくれるの分かって言った」
「……え?」
「天が私のこと好きでいてくれてるの、気付いてた」
頭が真っ白になる。
「前から」
さくらは少しだけ困ったように笑った。
「でも、気付かないふりしてた」
驚いた。
でも同時に。
胸の奥で、何かが弾けた。
——じゃあ。
「じゃあ、わたしと…!」
付き合って。
そう言おうとした瞬間。
さくらが、ゆっくり首を振った。
その目は、まっすぐ私を見ていた。
「私こんなことして最低でしょ?」
「……」
「天のこと大切だから、保乃の代わりになんてしたくないんだ」
静かな声だった。
でも、嘘じゃないって分かる声だった。
「でもね」
さくらは少しだけ笑った。
「わがままなこと言うけど」
「天のこと、好きになりたいと思ってる」
その言葉を聞いた瞬間、 胸が強く鳴った。
「そんなん代わりでも私は——」
そこまで言いかけて、 言葉が止まる。
さくらの表情を見たから。
真剣で、 迷っていて、 でもちゃんと前を向こうとしている顔。
だから私は、 それ以上言えなかった。
少しだけ息を吐いて。
いつも通りの笑顔を作る。
「……絶対好きにさせたるわ」
そう言うと。
さくらが、少し驚いた顔をして。
それから。
ふっと笑った。
その笑顔は、 いつも保乃の話をしていたときに見せていた、
あのかわいい笑顔だった。
でも。
今、その笑顔は。
私だけに向けられている。
それだけで、 胸が跳ねてしまうんだから。
本当に、恋は盲目だと思う。
あの日の水族館から、私たちの関係は少しだけ変わった。
付き合っているわけでもない。
恋人同士でもない。
でも、前よりずっと近くなった。
前までは私が一方的に好きで、隣にいただけだったのに。
今は、さくらが時々私の名前を呼ぶ声が、少しだけ甘くなった気がする。
それだけで、十分だった。
そう言いたいのに、喉の奥に言葉が引っかかって、結局何も言えない。
目の前のさくらは、いつもの柔らかい笑顔を浮かべている。
でもその笑顔が、少しだけ無理をしていることくらい、長く一緒にいれば分かってしまう。
身を引くって、決めたはずなのに。
その細い肩を抱き寄せて、 そのまま離さないで、自分のものにしてしまいたくなる。
そんな衝動を、必死で押し込める。
さくらが、保乃のことを好きだって相談してきたとき。
私は、応援するって決めた。
「ねえ天、聞いてほしいことあるんだけどさ」
そう言って、少し照れくさそうに笑うさくら。
「なに?」
「わたしさ……保乃ちゃんのこと、好きかもしれない」
そのときのさくらの顔は、今でもはっきり覚えている。
頬をほんのり赤くして、 嬉しそうで、恥ずかしそうで、 でもどうしようもなく幸せそうな顔で笑っていた。
その笑顔を見た瞬間、 ああ、って思った。
私の入る隙なんて、ないんだなって。
「そっかあ」
なるべく自然に笑って返した。
「応援するで」
そう言った私に、さくらは本当に嬉しそうに笑った。
その笑顔が好きだから。
だからこそ、壊したくなかった。
保乃と私じゃ、全然タイプが違う。
落ち着いていて、大人っぽくて、 少し余裕のある優しさを持っている保乃。
それに比べて私は、 まだまだ子どもで、 感情もすぐ顔に出てしまう。
「天ってさ、ほんと優しいよね」
なんて言われるたびに、 少しだけ胸が痛かった。
だってそれは、 私が一番なりたい立場じゃないから。
「私、年上のお姉さんっぽい人好きなんだよね」
そう笑って言われたとき。
ああ、やっぱり無理なんだって思った。
だからせめて、 さくらを傍で見守ろうって思ったのに。
「しょうがないよね」
ぽつりと、さくらが言った。
「保乃ちゃんは、ひかるちゃんが好きなんだろうなって……薄々わかってた」
その声は、思っていたより静かだった。
強がっているのが、痛いほど伝わってくる。
告白することも出来ず、 ただ自分の好きな人が、別の人と付き合ったのを知るだけ。
それでもさくらは、泣かなかった。
ただ少しだけ、寂しそうに笑っただけだった。
そんなさくらに、 今、自分の想いを伝えるのはきっとずるい。
伝えることも出来ず燻ったままのさくらの気持ちを知りながら、 自分だけ楽になるなんてできない。
だから私は、何も言えない。
「保乃ちゃん誘っちゃおっかなー」
そんなことを言って、さくらが笑いながら見せてきたのは、 水族館のチケットだった。
「ほら、これ。二枚あるんだよ」
「ええやん。誘ったら?」
「……うーん」
さくらは少しだけ困った顔をした。
「でもさ、断られたらちょっと立ち直れないかも」
「弱っ」
そう言って笑ったけど、 その気持ちは痛いほど分かった。
そのチケットの一枚は、今。
私の手の中にある。
本来ここにいるはずだったのは、 保乃だったのに。
隣にいるのが私なんて、 さくらは不本意だと思うけど。
それでも。
水族館なんて、どう見てもデートスポットな場所に、 代わりだとしてもさくらと来られたことが、嬉しい。
だから私は、 馬鹿なふりをして楽しもうと決めた。
「うわ、めっちゃでかい」
「ほんとだ」
巨大な水槽の前で、さくらが目を輝かせる。
ゆっくり泳ぐ魚たち。
青い光に包まれた空間。
そのガラスに、私たちの姿がぼんやり映る。
でも私は。
展示なんてほとんど見ていなかった。
水槽のガラスに反射する、 さくらの顔ばかり見つめてしまう。
楽しそうに笑う顔。
少し驚いたときの表情。
魚を指さして、子どもみたいに笑うところ。
全部が、愛おしくて。
好きだという気持ちが、 どんどん膨らんでいく。
こんなことなら、来なければよかったのかな。
そんな考えが、頭をよぎる。
でもきっと。
もし今日さくらが一人でここに来ていたら、 私はそれを想像してしまって、
結局後悔したんだろう。
一通り水族館を回ったあと。
館内のベンチに並んで座る。
人の少ないエリアで、 水槽の光だけが静かに揺れている。
今日ここまで、さくらは一度も 保乃の話をしなかった。
恋愛の話も、まったく。
だから少しだけ安心していたのに。
「ねえ天」
ぽつりと、さくらが言った。
「ん?」
「わたしさ」
少しだけ間があって。
「保乃ちゃんしか知らないんだ」
「うん」
「誰かを好きになるのって、あんな感じなんだなって思って」
そう言って、さくらは小さく笑った。
「きっとさ」
水槽を見つめたまま、さくらは続ける。
「私のことを好きになってくれる人なんて、いないんだろうなあ」
諦めたみたいな笑顔。
その瞬間。
胸の奥が、ぎゅっと痛くなった。
まるで、 私の気持ちが最初から存在しなかったみたいに思えて。
気づいたら、 さくらの手を握っていた。
ぎゅっと。
自分でも驚くくらい強く。
——しまった。
そう思ったときには、もう遅かった。
好きの一言も言えない。
誤魔化す言葉も出てこない。
ただ、手を握ったまま固まる。
数秒なのか、数分なのか。
とにかく長く感じる沈黙のあと。
さくらが、ゆっくり私の手を握り返した。
「ごめん」
小さな声だった。
「今のは正直、天がこうしてくれるの分かって言った」
「……え?」
「天が私のこと好きでいてくれてるの、気付いてた」
頭が真っ白になる。
「前から」
さくらは少しだけ困ったように笑った。
「でも、気付かないふりしてた」
驚いた。
でも同時に。
胸の奥で、何かが弾けた。
——じゃあ。
「じゃあ、わたしと…!」
付き合って。
そう言おうとした瞬間。
さくらが、ゆっくり首を振った。
その目は、まっすぐ私を見ていた。
「私こんなことして最低でしょ?」
「……」
「天のこと大切だから、保乃の代わりになんてしたくないんだ」
静かな声だった。
でも、嘘じゃないって分かる声だった。
「でもね」
さくらは少しだけ笑った。
「わがままなこと言うけど」
「天のこと、好きになりたいと思ってる」
その言葉を聞いた瞬間、 胸が強く鳴った。
「そんなん代わりでも私は——」
そこまで言いかけて、 言葉が止まる。
さくらの表情を見たから。
真剣で、 迷っていて、 でもちゃんと前を向こうとしている顔。
だから私は、 それ以上言えなかった。
少しだけ息を吐いて。
いつも通りの笑顔を作る。
「……絶対好きにさせたるわ」
そう言うと。
さくらが、少し驚いた顔をして。
それから。
ふっと笑った。
その笑顔は、 いつも保乃の話をしていたときに見せていた、
あのかわいい笑顔だった。
でも。
今、その笑顔は。
私だけに向けられている。
それだけで、 胸が跳ねてしまうんだから。
本当に、恋は盲目だと思う。
あの日の水族館から、私たちの関係は少しだけ変わった。
付き合っているわけでもない。
恋人同士でもない。
でも、前よりずっと近くなった。
前までは私が一方的に好きで、隣にいただけだったのに。
今は、さくらが時々私の名前を呼ぶ声が、少しだけ甘くなった気がする。
それだけで、十分だった。
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