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「まりのちゃん、盗撮やめなさい!」
楽屋の隅でスマホを構えているまりのちゃんに、思わず声を上げる。
「だってひかるちゃんかわいいんやもん。すごい顔好き」
悪びれる様子もなくそう言って、まりのちゃんはまたカシャッとシャッターを切る。
「ほら見てこの写真、めっちゃかわええで」
当たり前みたいな顔で画面を見せてくるから、つい覗き込んでしまう。
そこには、ちょっと油断した顔の私が映っていた。
メイク直しの途中で、前髪を指で整えている瞬間。
「……普通じゃん」
「普通ちゃうって。ひかるちゃんの顔、ほんま好き」
さらっと言われてしまって、言い返す言葉が見つからない。
私の彼女は、グループに入った時からずっとこうだ。
とにかく私の顔が好きだと言って、よく写真を撮る。
最初は冗談だと思っていた。
メンバー同士でよくある、かわいいかわいいって言い合うあれだと。
でも、あまりにも「好き」とか「ガチ恋」とか、そんな言葉をかわいい顔で言ってくるものだから。
当時の私は、まんまとその気になってしまって。
――好き。
そう告白してから、もうすぐ五年が経とうとしている。
こんなに長い時間を一緒に過ごしているのに。
私の「好き」は、増えていくばかりなのに。
まりのちゃんは相変わらずだ。
「顔かわいい」
「写真撮らせて」
そればっかり。
もちろん、嫌なわけじゃない。
むしろ嬉しいはずなのに。
時々ふと、不安になる。
絶対に最初は、まりのちゃんの矢印の方が大きかったはずなのに。
気づいたら、私ばっかりまりのちゃんに振り回されてない?
この前だって。
突然「井上梨名ちゃんが好き」とか言い出したと思ったら、
数ヶ月後には「唯衣ちゃん気になってる」とか言い始める。
ネタだって分かってる。
分かってるけど。
あんな楽しそうな顔を、二人に向けてるのを見ると。
どうしても焦ってしまう。
保乃ちゃんや大園ちゃん、天ちゃんを筆頭に、 みんなまりのちゃんを可愛がっているし。
後輩ともすぐ仲良くなる。
それに綺良ちゃん。
きっと、綺良ちゃんにしか見せない姿も たくさんあるんだろうなって思う。
かわいくて、優しくて、おもしろいまりのちゃん。
そんなまりのちゃんが、
いつか他の子のところに行ってしまうんじゃないかって。
考えなくてもいいことまで考えてしまう。
自分に、自信がなくなっていく。
「……」
そんなことをぼんやり考えている間に、 いつの間にか写真を撮るのをやめたらしいまりのちゃんが、隣の席に腰を下ろしてきた。
椅子が少し軋む音がする。
「なあ、ひかるちゃん」
いつもの声。
その声を聞くだけで、胸が少し軽くなるのが悔しい。
この子を離したくない。
そう思ってしまって。
テーブルの下で、そっと手を伸ばして。
まりのちゃんの指に、ぎゅっと自分の指を絡ませた。
「……!」
まりのちゃんが少し驚いた顔をする。
でもすぐに、白い肌をほんのり赤くして。
同じように、握り返してくれた。
「ひかるちゃん、楽屋でこんなことしてくるの珍しいな?」
嬉しそうに笑う。
その顔を見て。
ああ、まだ。
まだ、私のこと好きでいてくれてるんだ。
そんな確認をしてしまう自分が、少し情けない。
「まだわたしのこと好きでいてくれてるんだ、よかった」
自分でも驚くくらい小さな声で、そう呟いた。
すると。
手を握るまりのちゃんの力が、ぐっと強くなる。
「なんなんそれ、まだとか」
淡々とした関西弁。
怒らせたかな、と思ったけど。
今日はなんだか、私の方がめんどくさいみたいで。
止まれそうになかった。
「綺良ちゃんとか、まりのちゃんの特別なんだろうなって思うし」
ぽつりぽつりと言葉が出てくる。
「井上とか唯衣ちゃんとかの話してるまりのちゃん、楽しそうだし」
目を合わせる勇気がなくて、ずっと俯いたまま。
「保乃ちゃんとかに甘やかされてるまりのちゃん、かわいすぎるし」
自分でも何言ってるんだろうって思うけど。
止められない。
「不安になるよ」
静かな声で言った。
「いつ取られちゃうんだろうって」
その瞬間。
まりのちゃんの、繋いでいない方の右手が伸びてきて。
ぐいっと顎を持ち上げられる。
強制的に、目線を合わせられた。
「ひかるちゃんがしてほしいなら」
まりのちゃんは、少しだけ困ったように笑って。
「綺良ちゃんみたいに雑に扱って欲しいならそうするし」
「井上梨名ちゃんみたいに番組で冷やかされたいんだったらやってもええし」
「保乃ちゃんにするみたいに妹みたいにやってもええけど」
少しだけ間を空けて。
まっすぐこっちを見て言う。
「でも、今のままで十分まりのはひかるちゃんが特別なつもりやってんけど」
胸が、ぎゅっとなる。
「伝わってへんかったなら」
まりのちゃんは少し息を吸って。
「何回も言うたるわ」
そして。
「好き好き好き好き好き好き――」
「ストップ!!!!」
慌てて止めた。
思わず手まで振ってしまう。
「ごめんごめん、ちゃんと受け止めるから、まりのちゃんの好き」
まりのちゃんが口を尖らせる。
「だから」
少し笑って。
「まりのちゃんは、私の好きだけ受け取っててね」
そう言って、頭をぽんぽんと撫でた。
さっきまで余裕そうだったまりのちゃんの顔が。
一瞬で、桜みたいな色に染まる。
「ひかるちゃん、それ無意識に言ってんの?」
顔を隠しながら、強い口調で言ってくる。
それが可愛くて。
わざと、顔を覗き込んでみる。
「……」
目が合った瞬間。
こつん、と軽く頭を叩かれた。
「調子乗んな」
そう言い残して、まりのちゃんは立ち上がって。
どこかへ行ってしまった。
その後ろ姿を、なんとなく目で追う。
……あ。
気付いたら。
私はスマホを取り出していて。
初めて、まりのちゃんの後ろ姿を盗撮していた。
画面に映るのは。
少し早足で歩いていく、まりのちゃんの背中。
カメラロールに残ったその姿を、しっかりお気に入りに保存する。
そして。
しばらく、眺める。
……かわいい。
まりのちゃんが、こんな気持ちで 私の写真を撮ってたんだと思うと。
なんだか少し、嬉しくなる。
今日は久しぶりに。
おうちに誘ってみようかな。
まりのちゃんの嬉しそうな顔を想像して。
気づけば、頬がゆるんでいた。
楽屋の隅でスマホを構えているまりのちゃんに、思わず声を上げる。
「だってひかるちゃんかわいいんやもん。すごい顔好き」
悪びれる様子もなくそう言って、まりのちゃんはまたカシャッとシャッターを切る。
「ほら見てこの写真、めっちゃかわええで」
当たり前みたいな顔で画面を見せてくるから、つい覗き込んでしまう。
そこには、ちょっと油断した顔の私が映っていた。
メイク直しの途中で、前髪を指で整えている瞬間。
「……普通じゃん」
「普通ちゃうって。ひかるちゃんの顔、ほんま好き」
さらっと言われてしまって、言い返す言葉が見つからない。
私の彼女は、グループに入った時からずっとこうだ。
とにかく私の顔が好きだと言って、よく写真を撮る。
最初は冗談だと思っていた。
メンバー同士でよくある、かわいいかわいいって言い合うあれだと。
でも、あまりにも「好き」とか「ガチ恋」とか、そんな言葉をかわいい顔で言ってくるものだから。
当時の私は、まんまとその気になってしまって。
――好き。
そう告白してから、もうすぐ五年が経とうとしている。
こんなに長い時間を一緒に過ごしているのに。
私の「好き」は、増えていくばかりなのに。
まりのちゃんは相変わらずだ。
「顔かわいい」
「写真撮らせて」
そればっかり。
もちろん、嫌なわけじゃない。
むしろ嬉しいはずなのに。
時々ふと、不安になる。
絶対に最初は、まりのちゃんの矢印の方が大きかったはずなのに。
気づいたら、私ばっかりまりのちゃんに振り回されてない?
この前だって。
突然「井上梨名ちゃんが好き」とか言い出したと思ったら、
数ヶ月後には「唯衣ちゃん気になってる」とか言い始める。
ネタだって分かってる。
分かってるけど。
あんな楽しそうな顔を、二人に向けてるのを見ると。
どうしても焦ってしまう。
保乃ちゃんや大園ちゃん、天ちゃんを筆頭に、 みんなまりのちゃんを可愛がっているし。
後輩ともすぐ仲良くなる。
それに綺良ちゃん。
きっと、綺良ちゃんにしか見せない姿も たくさんあるんだろうなって思う。
かわいくて、優しくて、おもしろいまりのちゃん。
そんなまりのちゃんが、
いつか他の子のところに行ってしまうんじゃないかって。
考えなくてもいいことまで考えてしまう。
自分に、自信がなくなっていく。
「……」
そんなことをぼんやり考えている間に、 いつの間にか写真を撮るのをやめたらしいまりのちゃんが、隣の席に腰を下ろしてきた。
椅子が少し軋む音がする。
「なあ、ひかるちゃん」
いつもの声。
その声を聞くだけで、胸が少し軽くなるのが悔しい。
この子を離したくない。
そう思ってしまって。
テーブルの下で、そっと手を伸ばして。
まりのちゃんの指に、ぎゅっと自分の指を絡ませた。
「……!」
まりのちゃんが少し驚いた顔をする。
でもすぐに、白い肌をほんのり赤くして。
同じように、握り返してくれた。
「ひかるちゃん、楽屋でこんなことしてくるの珍しいな?」
嬉しそうに笑う。
その顔を見て。
ああ、まだ。
まだ、私のこと好きでいてくれてるんだ。
そんな確認をしてしまう自分が、少し情けない。
「まだわたしのこと好きでいてくれてるんだ、よかった」
自分でも驚くくらい小さな声で、そう呟いた。
すると。
手を握るまりのちゃんの力が、ぐっと強くなる。
「なんなんそれ、まだとか」
淡々とした関西弁。
怒らせたかな、と思ったけど。
今日はなんだか、私の方がめんどくさいみたいで。
止まれそうになかった。
「綺良ちゃんとか、まりのちゃんの特別なんだろうなって思うし」
ぽつりぽつりと言葉が出てくる。
「井上とか唯衣ちゃんとかの話してるまりのちゃん、楽しそうだし」
目を合わせる勇気がなくて、ずっと俯いたまま。
「保乃ちゃんとかに甘やかされてるまりのちゃん、かわいすぎるし」
自分でも何言ってるんだろうって思うけど。
止められない。
「不安になるよ」
静かな声で言った。
「いつ取られちゃうんだろうって」
その瞬間。
まりのちゃんの、繋いでいない方の右手が伸びてきて。
ぐいっと顎を持ち上げられる。
強制的に、目線を合わせられた。
「ひかるちゃんがしてほしいなら」
まりのちゃんは、少しだけ困ったように笑って。
「綺良ちゃんみたいに雑に扱って欲しいならそうするし」
「井上梨名ちゃんみたいに番組で冷やかされたいんだったらやってもええし」
「保乃ちゃんにするみたいに妹みたいにやってもええけど」
少しだけ間を空けて。
まっすぐこっちを見て言う。
「でも、今のままで十分まりのはひかるちゃんが特別なつもりやってんけど」
胸が、ぎゅっとなる。
「伝わってへんかったなら」
まりのちゃんは少し息を吸って。
「何回も言うたるわ」
そして。
「好き好き好き好き好き好き――」
「ストップ!!!!」
慌てて止めた。
思わず手まで振ってしまう。
「ごめんごめん、ちゃんと受け止めるから、まりのちゃんの好き」
まりのちゃんが口を尖らせる。
「だから」
少し笑って。
「まりのちゃんは、私の好きだけ受け取っててね」
そう言って、頭をぽんぽんと撫でた。
さっきまで余裕そうだったまりのちゃんの顔が。
一瞬で、桜みたいな色に染まる。
「ひかるちゃん、それ無意識に言ってんの?」
顔を隠しながら、強い口調で言ってくる。
それが可愛くて。
わざと、顔を覗き込んでみる。
「……」
目が合った瞬間。
こつん、と軽く頭を叩かれた。
「調子乗んな」
そう言い残して、まりのちゃんは立ち上がって。
どこかへ行ってしまった。
その後ろ姿を、なんとなく目で追う。
……あ。
気付いたら。
私はスマホを取り出していて。
初めて、まりのちゃんの後ろ姿を盗撮していた。
画面に映るのは。
少し早足で歩いていく、まりのちゃんの背中。
カメラロールに残ったその姿を、しっかりお気に入りに保存する。
そして。
しばらく、眺める。
……かわいい。
まりのちゃんが、こんな気持ちで 私の写真を撮ってたんだと思うと。
なんだか少し、嬉しくなる。
今日は久しぶりに。
おうちに誘ってみようかな。
まりのちゃんの嬉しそうな顔を想像して。
気づけば、頬がゆるんでいた。
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